パルキア
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花魁道中、私は兵庫髷に結った髪に美しい簪を差して、顔に化粧を施す。そして絢爛豪華な着物を身に纏い、外八文字にゆったりと歩く。
禿の子達が、着物の裾が地に付かないように気を使ってくれながら私の横を歩く。このままこの子達を連れて逃げ出せたら良いのに、なんて無責任な事を昔は思っていた。だが今ではそんな夢なんてもう捨ててしまった。私達は身請けされない限り吉原から出る事は出来ないのだから。逃げ出したところで痛々しい折檻が待っているだけである。
「花魁様、花魁様。もう少しで着く様ですよ」
禿の子にそう言われ、私は伏せていた顔をゆっくりと上げて辺りを見た。そこにはいつも通りの見慣れた花街の光景があり、その奥には大きな建物が聳え立っていた。私は小さく溜め息をつくと、大門の前へと歩を進める。大門の前では番所にいる門番の男が、私の姿を見るとすぐに頭を下げた。
「……藤壺花魁様、中でお客様がおまちでございます。どうぞ中へ」
藤壺…これは吉原に来た時に私へ与えられた源氏名だ。私の本名は「藤壺」なんて大層な名前とは似ても似つかない「ナマエ」という名前なのだが、吉原に来てからは藤壺の名前で通っている。
門番の男と一緒に長い長い廊下を進み、客の待つ部屋へと向かう。その間は決して一言も話さずにただひたすら歩くだけだ。そもそも花魁と話せる人間なんて、吉原で共に生活する禿や女中達、それと大金を支払ってまで来る太客ぐらいしかいないのだが。
そんなこんなで客が待つ部屋の前へ着き、門番と共に襖の前に立つと、門番が膝をつき深々と礼をした。それにならって私も軽く会釈をする。そして、門番が大きな声で中にいる人物に声をかける。
「失礼致します。藤壺花魁がいらっしゃいました」
「やっとか、入れ」
若々しくて凛とした、でも決して逆らってはならないような威厳に満ちた声。この声は、もしかして。
私は門番に会釈をすると、ゆっくりと襖を開けて客の元へと歩いて行く。そして今1度、深く頭を垂れると、顔を上げて口を開いた。
「本日は御指名頂き誠にありがたく存じます。どうか今夜ひとときの間だけでも宜しければ、わっちをお選びくだしんした事を後悔させませぬよう努めさせていただきとうござんす…パルキア様」
そう、今回の客は、空間を操る神様であり、伝説のポケモンと名高いパルキア。何でそんな凄い方がこんな吉原に来て金を使うのかは分からないが、私にとって彼は神でも伝説のポケモンでもない。ただ毎回指名しては大金を使ってくれる太客だ。そして、私が恋焦がれている愛しいひとでもある。
「うむ、今日も美しいな。藤壺花魁…否、ナマエ」
「ありがたき幸せでありんす……」
「…どうやら、身請けの話が散々出ているのに全て断っているそうじゃないか」
「はい……まだ、禿の子達も未熟ですので」
「……そうか」
本当はあなたに身請けしてもらいたいから全て断っているだけ。私は好きでも無い男に買ってもらいたくなんか無い。私の一生を買えるのはあなただけ。それなのにあなたは私を身請けしてくれる素振りを全然見せてくれやしない。
「勿体ないものだ。身請け話にさえ乗れば、この狭苦しい吉原から出られるというのに」
「……えぇ、そうでござんすね」
嗚呼、私はきっと、一生吉原から出られることは無いのだろうな。そう思うと胸が締め付けられるように痛んだ。パルキアの、馬鹿。
禿の子達が、着物の裾が地に付かないように気を使ってくれながら私の横を歩く。このままこの子達を連れて逃げ出せたら良いのに、なんて無責任な事を昔は思っていた。だが今ではそんな夢なんてもう捨ててしまった。私達は身請けされない限り吉原から出る事は出来ないのだから。逃げ出したところで痛々しい折檻が待っているだけである。
「花魁様、花魁様。もう少しで着く様ですよ」
禿の子にそう言われ、私は伏せていた顔をゆっくりと上げて辺りを見た。そこにはいつも通りの見慣れた花街の光景があり、その奥には大きな建物が聳え立っていた。私は小さく溜め息をつくと、大門の前へと歩を進める。大門の前では番所にいる門番の男が、私の姿を見るとすぐに頭を下げた。
「……藤壺花魁様、中でお客様がおまちでございます。どうぞ中へ」
藤壺…これは吉原に来た時に私へ与えられた源氏名だ。私の本名は「藤壺」なんて大層な名前とは似ても似つかない「ナマエ」という名前なのだが、吉原に来てからは藤壺の名前で通っている。
門番の男と一緒に長い長い廊下を進み、客の待つ部屋へと向かう。その間は決して一言も話さずにただひたすら歩くだけだ。そもそも花魁と話せる人間なんて、吉原で共に生活する禿や女中達、それと大金を支払ってまで来る太客ぐらいしかいないのだが。
そんなこんなで客が待つ部屋の前へ着き、門番と共に襖の前に立つと、門番が膝をつき深々と礼をした。それにならって私も軽く会釈をする。そして、門番が大きな声で中にいる人物に声をかける。
「失礼致します。藤壺花魁がいらっしゃいました」
「やっとか、入れ」
若々しくて凛とした、でも決して逆らってはならないような威厳に満ちた声。この声は、もしかして。
私は門番に会釈をすると、ゆっくりと襖を開けて客の元へと歩いて行く。そして今1度、深く頭を垂れると、顔を上げて口を開いた。
「本日は御指名頂き誠にありがたく存じます。どうか今夜ひとときの間だけでも宜しければ、わっちをお選びくだしんした事を後悔させませぬよう努めさせていただきとうござんす…パルキア様」
そう、今回の客は、空間を操る神様であり、伝説のポケモンと名高いパルキア。何でそんな凄い方がこんな吉原に来て金を使うのかは分からないが、私にとって彼は神でも伝説のポケモンでもない。ただ毎回指名しては大金を使ってくれる太客だ。そして、私が恋焦がれている愛しいひとでもある。
「うむ、今日も美しいな。藤壺花魁…否、ナマエ」
「ありがたき幸せでありんす……」
「…どうやら、身請けの話が散々出ているのに全て断っているそうじゃないか」
「はい……まだ、禿の子達も未熟ですので」
「……そうか」
本当はあなたに身請けしてもらいたいから全て断っているだけ。私は好きでも無い男に買ってもらいたくなんか無い。私の一生を買えるのはあなただけ。それなのにあなたは私を身請けしてくれる素振りを全然見せてくれやしない。
「勿体ないものだ。身請け話にさえ乗れば、この狭苦しい吉原から出られるというのに」
「……えぇ、そうでござんすね」
嗚呼、私はきっと、一生吉原から出られることは無いのだろうな。そう思うと胸が締め付けられるように痛んだ。パルキアの、馬鹿。
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