ホウオウ
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
長い睫毛に縁取られた、その力強い眼に私は一瞬で心を奪われた。
私の旅路は、「何となく」から始まった。「ナマエちゃん、優しいママとパパにいつまでも甘えてる訳にも行かないのよ」と厳しい祖母からそう言われ、私はとりあえずトレーナーズスクールを出た後すぐにポケモントレーナーとしての道を歩み始めたのだ。
何となくで始めた事とはいえ、最初に貰った子、初めて捕まえた子。みんな私にとって大事な存在だ。この子達となら、どこまでも駆け抜けていけると、私はこの時までは本気でそう思っていた。
でもどうしてなのだろう。ジムとリーグを制覇してからというもの、トレーナーとしてのやりがいや目標が、炎が燃え尽きたかのように消えてしまったのだ。手持ちの強さも上限まで達してしまったし、この地方のトレーナーとも粗方戦ってきた。もうすっかり、私は目標を失ってしまったのだ。前までは、あんなに旅が楽しかったのに。
今の自分は何をすれば良いのか。その答えを導き出すために、私は海へやってきていた。まだ太陽が青い空の上で燦々と輝いている時間だからか、熱を吸った砂場はかなり熱い。足の裏が焦げちゃうかもなあ、と私は白い砂を手で掬いながら、そっと海水を足にかけた。
この地方でやるべき事を全て終えてしまった私は今、ここで一体何が出来るのだろう。そんな事を海に来て小一時間ほど考えてみてはいるのだが、答えは全く出てこない。─Not found。炎天下の中でずっと海を眺めて考え事をしてたのに、実際はただ足を海水に浸していただけだったなんて。我ながら惨めである。
「日傘、ありがとね」
ずっと後ろで日傘を差していてくれたマリルリの頭をそっと撫でる。するとマリルリは嬉しそうに「きゅう」と鳴いて笑って、日傘をこちらに渡してくれた。相変わらず優しい子だ。
「これからどうしよう」とポツリと呟いてみる。誰かが答えをくれないだろうか、という淡い期待も込めて。
もうやる事がないよ。でも、今更家に帰ってまた両親のお荷物になるのは嫌だ。それに、元々祖母に言われて何となくポケモントレーナーになった身だ。やるべき事を終えた後の目標なんて定まっている訳が無い。
私は「これからどうするのよ……」とその場にしゃがみこんでもう一度考えた。誰か答えをください。消えてしまった私の火を、誰かもう一度灯してよ。
そうやってウジウジと砂浜にしゃがみこんでいると、頭上から「どうかしたのか」と男性の声が聞こえてきた。思わず顔を上げてその人の顔を見てみると、長い睫毛に縁取られた力強い瞳が目に入ってきた。
「……やるべき事が分からなくなったんです」
見知らぬ人でもいい。とにかく誰かに相談したくて、その男性に私は悩みを全て打ち明けた。この人とは初対面なのに、何故か口からはスラスラと言葉が出てきた。
「……俺ならお前をもう一度灯してやれると言ったら、お前はどうする?」と、私の話を一通り聞き終えた彼は私にそっと問いかける。
「…一緒に旅をするという事ですか」
「ああ。理解が早くて何よりだ。俺はホウオウ。名前だけなら聞いた事があるだろ。…この俺が、お前の旅にまた彩りを与えてやる」
私の上着のポケットに虹色に光る羽根をそっと入れて、彼は私をじっと見つめた。その真っ直ぐで力強い瞳に射抜かれて声を発せずにいると、後ろにいたマリルリが「きゅう!」と鳴いた。その声に急かされるように、私は迷いながらも口を開く。
「私に幸運を、運んで頂けるなら…」
私は上着のポケットから虹色の羽根を取り出して、そっと光る部分を撫でながら言った。それを見て、ホウオウは満足そうに微笑んだ。
私の旅路は、「何となく」から始まった。「ナマエちゃん、優しいママとパパにいつまでも甘えてる訳にも行かないのよ」と厳しい祖母からそう言われ、私はとりあえずトレーナーズスクールを出た後すぐにポケモントレーナーとしての道を歩み始めたのだ。
何となくで始めた事とはいえ、最初に貰った子、初めて捕まえた子。みんな私にとって大事な存在だ。この子達となら、どこまでも駆け抜けていけると、私はこの時までは本気でそう思っていた。
でもどうしてなのだろう。ジムとリーグを制覇してからというもの、トレーナーとしてのやりがいや目標が、炎が燃え尽きたかのように消えてしまったのだ。手持ちの強さも上限まで達してしまったし、この地方のトレーナーとも粗方戦ってきた。もうすっかり、私は目標を失ってしまったのだ。前までは、あんなに旅が楽しかったのに。
今の自分は何をすれば良いのか。その答えを導き出すために、私は海へやってきていた。まだ太陽が青い空の上で燦々と輝いている時間だからか、熱を吸った砂場はかなり熱い。足の裏が焦げちゃうかもなあ、と私は白い砂を手で掬いながら、そっと海水を足にかけた。
この地方でやるべき事を全て終えてしまった私は今、ここで一体何が出来るのだろう。そんな事を海に来て小一時間ほど考えてみてはいるのだが、答えは全く出てこない。─Not found。炎天下の中でずっと海を眺めて考え事をしてたのに、実際はただ足を海水に浸していただけだったなんて。我ながら惨めである。
「日傘、ありがとね」
ずっと後ろで日傘を差していてくれたマリルリの頭をそっと撫でる。するとマリルリは嬉しそうに「きゅう」と鳴いて笑って、日傘をこちらに渡してくれた。相変わらず優しい子だ。
「これからどうしよう」とポツリと呟いてみる。誰かが答えをくれないだろうか、という淡い期待も込めて。
もうやる事がないよ。でも、今更家に帰ってまた両親のお荷物になるのは嫌だ。それに、元々祖母に言われて何となくポケモントレーナーになった身だ。やるべき事を終えた後の目標なんて定まっている訳が無い。
私は「これからどうするのよ……」とその場にしゃがみこんでもう一度考えた。誰か答えをください。消えてしまった私の火を、誰かもう一度灯してよ。
そうやってウジウジと砂浜にしゃがみこんでいると、頭上から「どうかしたのか」と男性の声が聞こえてきた。思わず顔を上げてその人の顔を見てみると、長い睫毛に縁取られた力強い瞳が目に入ってきた。
「……やるべき事が分からなくなったんです」
見知らぬ人でもいい。とにかく誰かに相談したくて、その男性に私は悩みを全て打ち明けた。この人とは初対面なのに、何故か口からはスラスラと言葉が出てきた。
「……俺ならお前をもう一度灯してやれると言ったら、お前はどうする?」と、私の話を一通り聞き終えた彼は私にそっと問いかける。
「…一緒に旅をするという事ですか」
「ああ。理解が早くて何よりだ。俺はホウオウ。名前だけなら聞いた事があるだろ。…この俺が、お前の旅にまた彩りを与えてやる」
私の上着のポケットに虹色に光る羽根をそっと入れて、彼は私をじっと見つめた。その真っ直ぐで力強い瞳に射抜かれて声を発せずにいると、後ろにいたマリルリが「きゅう!」と鳴いた。その声に急かされるように、私は迷いながらも口を開く。
「私に幸運を、運んで頂けるなら…」
私は上着のポケットから虹色の羽根を取り出して、そっと光る部分を撫でながら言った。それを見て、ホウオウは満足そうに微笑んだ。
1/1ページ