久しぶりに彼に会うために、私は朝早くから起きて素早く支度を始め、家から遠く離れた森の奥にある小さい湖までひたすら歩く。最近会えなかったから吃驚させてしまうかも。と逸る気持ちを抑えて、私は早歩きをして彼の住む湖まで向かった。

「ユクシー、来たよ」

湖に向かって小さくそう声を掛けると、1寸の間を開けて小さい鳴き声が辺りに響いた。良かった。ちゃんと応えてくれた。と思って私が湖から1歩下がると、メロンパンの様な小さくて黄色い頭が湖からそっと覗いた。

「お久しぶりですね、ナマエ」

瞳を閉じた小さな黄色い神様は湖から出てテレパシーを使って私にそう言うと、やがて長い時間をかけて、ゆっくりと自分の身体をヒトの姿へと変えた。人ならざるものがカタチだけヒトを真似るなんて、いつ見ても異様な光景だ。

その光景をじっと最後まで見届けると、私は「知人から美術館のチケット貰ったの。」 とヒトの姿を象った彼にそう口を開いた。

2枚あるから、あなたと一緒に行きたくて。と付け足すと、彼は機嫌よく微笑んでそれを二つ返事で「ええ、良いですよ」と了承してくれた。相変わらず何考えてるか分からない顔だ。得体の知れない、不気味な存在。