大きな力を持った伝説のポケモンと、無力な人間。その力関係の差は歴然で、到底私のような小娘はそんな大それた存在に何もかも叶うわけが無いのだ。

そんな事を頭で考えて理解していないと、今こうして彼に押し倒されている事が受け入れられないから。

「ねえ、どうしたのレジギガス。離れてよ。」

「なあナマエ、我の話を聞いてくれるか」

「何よ」

レジギガスは私を押し倒したまま、慎重に言葉を選ぶように一呼吸おいて、真っ直ぐに私の目を見つめてこう言った。

「我らの繋がりとは、一体何なのだ？」

「…ポケモンと、そのトレーナーじゃないの？」

「違う。我はその様な不確かな繋がりではなく、お前との明確な繋がりを求めているのだ。」

私のレジギガスは、時々こうして訳の分からないことを言う。私たちの関係だとか、繋がりだとか、正直私は先程も彼に述べたようにポケモンとトレーナーとしての主従的な関係としか思えていないし、そんな事を真剣に考えた事も無い。というか彼に押さえ付けられている腕がそろそろ潰れそうだ。繋がりだとかそんな事を聞いてくるより先に私をあなたの下から解放して欲しい。

「…明確な繋がりって何なのよ。」

「簡単だ。ふたりでひとつになってしまえばいいんだ。我の様な伝説と呼ばれしポケモンはタマゴを作れない。つまりお前と我の血を継いだ子孫と言う名の繋がりを作る事が不可能ならば、お前とひとつになってしまえばいいんだ」

待ってよ。ねえ、私の意見も聞いて。ふたりでひとつになるって何なの。どういう事なの。融合？食人？種族が違うと価値観もこんなに違うものだとは思いもしなかった。よく見ると彼の目がギラギラ光ってる。こわい。助けて誰か。伝説と謳われる存在の彼に少しでも乱暴されてしまえば、私の生命の灯火なんていとも容易く消えてしまう。

「ねえ、何するの…やめてよ、お願い…」

「これしか考えられないんだ。お前との繋がりを作る方法が。ひとつになって、ずっと我と一緒に生きよう。」

「やだ！こわいよ…ねえ…レジギガス…ってば…離…して…っ」

私の意識はそこでプツンと途切れた。最後に見た光景は、歓喜と狂気に満ちた表情をしながら私に手をかける彼の姿と、私の体から吹き出る真っ赤な血。そして、バキボキと砕ける骨の音。


これでひとつになれたね。

ごちそうさまでした。

心配しないで。きみの骨も、血肉も、臓器も、絶対に全て残さないから。