白竜は可惜夜に誓う
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それから1ヶ月。あの日の夜から、ナマエは私達に毎日紅茶を持ってくるようになった。茶葉は固定ではなく、日によってアールグレイやらアッサムやらダージリンなどに変動している為、どうやらキッチンに置いてある茶葉をその日の気分で選んでいるらしい。ナマエ曰く「初めて見る物ばかりだから、色々な種類の紅茶を淹れてみたい」とのことだった。向上心が高くて大変よろしい。ナマエが城にやってきてからというもの、私に父性のようなものが芽生えてきている気がするのは気のせいだろうか。この旨をこの前英雄に相談したら、また意地の悪い冗談を投げかけられそうだ。なので絶対に言わないと決めた。
「どうしたレシラム、そんな風に呆然として」
「…あぁ。いや、何でもない」
今現在、私は英雄と共に執務室で溜まった仕事を片付けている。なるべく一日で全ての仕事を終わらせる様にしているのだが、一晩であっという間に新しい仕事が舞い降りてくるのである。不思議なことに。これではイタチごっこ状態だが、国を統治している以上業務に追われるのは仕方がない事なのだろう。王として、英雄として、私達の責任は重大なのだ。
しかしこの書類の山、この数時間の中で私達がどれだけ書類を片付けようとも、その努力に反比例して全く減っているように見えないのは私だけだろうか。もう何十枚といった書類を完成させた様な気がするのだが、一向に書類が減ってゆく気配が見えない。嗚呼、頭が痛くなってきた。
「ナマエの紅茶が飲みたいな、濃いめのやつ」
「英雄、まずはこの仕事を終わらせねばなるまい」
それと、もう一つ大事な知らせがあった。ナマエの淹れた紅茶を飲むようになってからというもの、英雄が城に面倒事を持ち込む事がぐんと減ったのである。原理は不明だが、英雄曰く「心の中が静かで、他の事に目移りすることが無くなった気がする」らしい。以前まで英雄を外に出せば、ほぼ必ず何かしらの面倒事を城に持って帰って来ていたので、私や護衛の者達はいつも懸念が拭えなかったのだが、最近はそれも薄れてきた。面倒事が無くなることによって英雄の周りの者(主に私)の精神状態が安定する為、これは非常に良いことである。
激務の息抜きと称してそんな考え事をしていると、不意に後ろの扉が小さくノックされた。まだ城の門番や護衛が交代する時間でもないので、恐らくナマエだろう。身体を机に向けたまま首だけを軽く捻り、扉に向かって「入れ」と短く投げかければ、すぐに扉が開いてナマエがおずおずと入ってきた。来た当初より髪や肌の艶も良くなり、健康的な見た目になった。非常に良いことである。まあそれはさておき、こんな時に一体何の要件だろうか。私達の仕事中はなるべく執務室に近づかないようにと言いつけていた筈なのだが。
「どうしたナマエ。急用か」
「忙しい時にごめんなさい。も、門番の方に、お客様が来たからお二人を呼んできてほしいって言われて…」
「…客?そんな予定は無かった筈だが…英雄、誰か招待したか?」
「いや、してない筈だが…」
突然のことに鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をする私達。この城に客が来ることは全く無いとは言い切れないが、かと言ってそう頻繁に来るわけでもない。それに、来るなら事前に何かしらの方法で連絡を寄越してから来る者が殆どだ。…余程の無礼者でない限りは。
取り敢えずここで悠長に不思議がっていても何も解決しない為、私達は一先ず門まで向かう事にした。厄介な客でなければ良いのだが。
「どうしたレシラム、そんな風に呆然として」
「…あぁ。いや、何でもない」
今現在、私は英雄と共に執務室で溜まった仕事を片付けている。なるべく一日で全ての仕事を終わらせる様にしているのだが、一晩であっという間に新しい仕事が舞い降りてくるのである。不思議なことに。これではイタチごっこ状態だが、国を統治している以上業務に追われるのは仕方がない事なのだろう。王として、英雄として、私達の責任は重大なのだ。
しかしこの書類の山、この数時間の中で私達がどれだけ書類を片付けようとも、その努力に反比例して全く減っているように見えないのは私だけだろうか。もう何十枚といった書類を完成させた様な気がするのだが、一向に書類が減ってゆく気配が見えない。嗚呼、頭が痛くなってきた。
「ナマエの紅茶が飲みたいな、濃いめのやつ」
「英雄、まずはこの仕事を終わらせねばなるまい」
それと、もう一つ大事な知らせがあった。ナマエの淹れた紅茶を飲むようになってからというもの、英雄が城に面倒事を持ち込む事がぐんと減ったのである。原理は不明だが、英雄曰く「心の中が静かで、他の事に目移りすることが無くなった気がする」らしい。以前まで英雄を外に出せば、ほぼ必ず何かしらの面倒事を城に持って帰って来ていたので、私や護衛の者達はいつも懸念が拭えなかったのだが、最近はそれも薄れてきた。面倒事が無くなることによって英雄の周りの者(主に私)の精神状態が安定する為、これは非常に良いことである。
激務の息抜きと称してそんな考え事をしていると、不意に後ろの扉が小さくノックされた。まだ城の門番や護衛が交代する時間でもないので、恐らくナマエだろう。身体を机に向けたまま首だけを軽く捻り、扉に向かって「入れ」と短く投げかければ、すぐに扉が開いてナマエがおずおずと入ってきた。来た当初より髪や肌の艶も良くなり、健康的な見た目になった。非常に良いことである。まあそれはさておき、こんな時に一体何の要件だろうか。私達の仕事中はなるべく執務室に近づかないようにと言いつけていた筈なのだが。
「どうしたナマエ。急用か」
「忙しい時にごめんなさい。も、門番の方に、お客様が来たからお二人を呼んできてほしいって言われて…」
「…客?そんな予定は無かった筈だが…英雄、誰か招待したか?」
「いや、してない筈だが…」
突然のことに鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をする私達。この城に客が来ることは全く無いとは言い切れないが、かと言ってそう頻繁に来るわけでもない。それに、来るなら事前に何かしらの方法で連絡を寄越してから来る者が殆どだ。…余程の無礼者でない限りは。
取り敢えずここで悠長に不思議がっていても何も解決しない為、私達は一先ず門まで向かう事にした。厄介な客でなければ良いのだが。