白竜は可惜夜に誓う
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...さて。風呂場にまた戻ってきたので、英雄から受け取った(というより怒りに任せてぶん取った)服をそのままナマエに着せ、髪も乾かして保湿もしてやり、身支度を全て整えてやる。この様に少し手間を掛けてやるだけで、さっきまで汚れていた浮浪者の娘とは思えない程、見違える様にナマエは綺麗になった。まあ細かく言えば、少々残っている髪の傷みと、健康的とは言えないくらいに細すぎる体型がまだ気掛かりではあるが。まあそれも、今日からこの城に住まわせ、時間の経過を待てば全て解決するだろう。
今回は来た時のようにナマエを抱き上げて移動するのではなく、今度は手と手を繋ぎ合わせて英雄の部屋まで向かう事にした。綺麗に身体を整えてやった今、もう床が汚れる心配もない。だからと言ってナマエが私の歩幅に合わせるのは無理があるし、私がナマエの歩幅に合わせていては英雄の部屋に辿り着くのが冗談抜きで明日の朝になってしまう。という訳で、苦肉の策でこうする事にしたという訳だ。それにしても小さな手だな。
「そういえばナマエよ。お前、歳は―…」
そう質問を投げかけようとした途端、私は先程名前を聞こうとした時を思い出してハッとした。自分の名前が分からないのならば、もしかすると年齢も分からないのが普通なのでは?と。そう思い直し、私は静かに口を噤んだ。どうにも幼子の扱いは不慣れで仕方がない。しかもそれが、元浮浪者の訳あり孤児なら尚更だ。と、私はまた己を恥じた。これで本日三度目だ。
そうして、「…すまない、何でもない」とだけ告げてまた歩き出すと、ナマエが私の様子を見て言葉の内容を察したのか、私を見上げながら恐る恐る口を開いた。
「…大丈夫です。でも、ごめんなさい。詳しくは分からないんです...ずっと、一人で生きてきたので」
「...そうか。すまない、野暮な事を聞いたな」
そうして、またもや流れだす沈黙。私もあまり言葉数が多い性分ではないし、ナマエだってきっとそうなのだろう。それに、これ以上失言を繰り返すよりは黙って歩いていた方が余程賢い選択だ。とひたすら廊下を進んでいると、珍しく私の隣から、か細いソプラノボイスが聞こえてきた。その小さな声を聞き漏らすことが無いように、しっかり耳を傾ける。
「あの、私は、お二人を何とお呼びすれば…?」
「…そうだな、私の事はレシラムと呼んでくれて構わない。敬称の有無はお前の判断に任せる。だが英雄──あの男──に対しては…出来れば敬称を付けて「英雄様」と呼んだ方が良いだろうな」
「…分かり、ました。」
私の言葉に短い返事を返し、精一杯頷いてみせたナマエ。その行動が一々いじらしくて、まるで本当の子猫のようだと思った。英雄に話したら、きっと腹を抱えて笑われてしまうのだろうが。記憶の中にいる英雄の顔が私に向かって意地の悪い笑みを浮かべたような気がして、私は大げさに頭を振った。そんな私の仕草を、ナマエが不思議そうに丸い瞳で凝視している。そんな目で見ないでくれ。
「…レシラムさま、」
「どうした」
「…レシラムさまは、英雄さまと、このお城で、一緒に住んでるんですよね?その…兄弟、なんですか?」
キョウダイ、きょうだい、兄弟。ナマエから発されたその言葉を理解するのに、思わぬ時間がかかってしまった。私とあの男が、兄弟、だと。
…勘弁してくれ。あんな手の掛かる弟(もしくは兄)が居てたまるか!胃に穴空くどころか内蔵全部ズタボロになるわ!…おっと失礼。口調が乱れた。まあ落ち着け、ナマエには何の非もない。これはどうやって認識を訂正するべきか。
「兄弟では…無いな。まず私は人間では無い。そうだな…対等な主従関係、とでも言おうか。英雄となる存在が居なければ、私の存在意義は無くなる。逆に私が居なければ、英雄は力を全て失う。だから英雄が私を従え、私が英雄に力を、知識を与える。そんな関係だ」
「な、成程…」
幼子に対して少々難しい話だっただろうかと思ったが、ナマエは何とか私の言葉を頭に入れ、その概要を理解してくれたらしい。出自によらず、中々賢いようだ。あの英雄と違って大人しくて素直な性格だし、手がかからなそうで何より。私の胃に穴が空くことは無さそうだ。
そんな事を考えながら歩いていると、やっと英雄の部屋に辿り着いた様だ。他の部屋よりも装飾の多い一際煌びやかな扉が、いつも通りに私達を出迎えている。見ているだけで喧しい。横に目を向けてみると、ナマエもその派手さに少し辟易していたので、気持ちは痛いほど分かるぞと心のなかで頷いておいた。
「…失礼するぞ、英雄」
先程とは違い、今度はしっかりと扉を三回ノックしてから部屋に入る。中では英雄が紅茶を飲みながら、机の上に積み上げられた書類の山を黙々と整理していた。その隣の机には、書き上がった様子の書類がまた例に習って山の様に積み上げられている。相変わらずの多忙ぶりだ。私にナマエの世話を押し付けておいて自分だけ呑気に遊んでいたらどうしてやろうかと思ったが、その心配が無いようで一安心。この仕事ぶりと性格がもう少し比例していれば、此方としても何も案ずることはないのだが。
「おぉ、随分綺麗になったな。流石じゃないかレシラム」
「…聞き分けの良い娘だったからな。それで、わざわざまたこの部屋に呼びつけてどうしたんだ」
「どうしたも何も、ナマエの部屋とこれからについてだ。決めておかないと困るだろう」
「…嗚呼、成程」
この城は知っての通り住人が私と英雄しか居ない為、部屋なら余りに余っている。外に何人かの門番や護衛はいるが、基本交替勤務制なので支障はない。ナマエの部屋も、その空き部屋の何処かにすれば問題ないだろう。だが念の為、私か英雄の近くの部屋にしたほうが良いのではと提案すると、英雄は確かにそうだなと言って頷いた。その隣ではナマエも、安心した様子で佇んでいる。
「ならレシラムの隣の部屋にするか」
「承知した。後で私が案内しよう」
「それは助かるな。ならば明日は、夢主の服や日用品を──」
「あ、あの…っ」
トントン拍子で話を進めていると、不意にナマエが声を上げた。その声に気付いた英雄と私がピタリと話を止めてナマエの声に耳を傾けると、やがておずおずと彼女は口を開いた。
「わ、わたし、お部屋なんて頂けると思ってなくて…その、お料理とかお掃除とか、そういった雑用を命じられると思ってて…その、違うんですか…?」
首を傾げながら、私達にそう問いかけるナマエ。その隣では、ナマエのそんな言葉を聞いた英雄が目を点にして、心底不思議そうな様子で呆けている。何ともシュールな光景だなと思ったが、何とか笑みを堪えた。これは笑ったら駄目な場面だ。
恐らくナマエは、この城に家族としてではなく、使用人として拾われたと思い込んでいるのだろう。此方に使用人を迎えるという考えが無い所為で今まで伝え忘れていたが、ナマエの立場になって考えてみれば、浮浪者だった自分がいきなり権力のある者に拾われ、あれよあれよと身支度を整えられて、確かにそう思い込むのも無理はない。完全に此方の伝え忘れである。何とも可愛らしい勘違いじゃないか。まずはその誤解を解いてやらねば。
「…ナマエよ」
「は、はい…」
「私達はお前を使用人としてではなく、家族として迎え入れたのだ」
「えっ…え?でも、どうして…」
困惑した様子で頭上に疑問符を浮かべるナマエ。確かに彼女の視点に立ってみると、いきなり拾われて身綺麗にされて家族として迎え入れられるなんて、全く意味が分からないだろう。だがしかしナマエを拾ってきたのは私ではなく英雄なので、私も詳しい理由まではわからない。当初、「見捨てるのも忍びない」だとか「お前のいい暇つぶしにもなると思って」など言っていたが、これだけでは要領を得ない。ここは一から説明してもらおうと英雄の方に目を向けると、いつの間に意識を戻したのか、待ってましたと言わんばかりに英雄が口を開いた。
「そもそも、家族になるのに理由が必要なのか?」
「え…?」
「そうだな、少し言い方を変えよう。血が繋がっていても平気で子供を捨てる親もいれば、血の繋がりがなくとも「放って置けない」という感情だけでその子供を拾う大人も居る。つまり、たまたま外に出ていた男が、たまたま居合わせた孤児を憐れんで城に迎え入れた。それだけの話だ」
いや、それただ衝動的に動いて勝手に拾ってきただけで、詳しい理由なんて何処にもないじゃないか。何良いこと言った気になってるんだこの男。と思ったが、ナマエが真剣な面持ちでその話に耳を傾けていたので黙っておいた。つまり英雄が言いたいのは”捨てる神あれば拾う神あり”ということだろう。
確かに拾われてきた時のナマエの様子は酷いものだった。あのまま放っておいたら確実に近い内に野垂れ死んで居ただろう。そう考えてみたら拾って来たことは理に適っているような…?疲れすぎてうまく頭が働かないが、そういう事なのだろうと無理やり己を納得させる事にした。一々疑問に思っていては冗談抜きで脳味噌がいくらあっても足りない。
「......じゃあ、私は、レシラムさまと英雄さまの家族として、この城に居てもいいって事ですか...?」
「無論だ。いやむしろ居てくれ。男二人では華が無さすぎてつまらないしレシラムは手厳しいし...」
「厳しいのはお前が下らん事ばかりやらかすからだ。それよりも案ずるな、ナマエ。今日からこの城がお前の居場所だ」
ナマエに向かって膝を付き、安心させるようにそう告げる。今度は演技ではなく、本当に、心からの気持ちを込めて。そんな私からの想いが伝わったのか、ナマエも安心したように微笑んだ。どうやら理解して貰えたらしい。本当に聞き分けのいい娘だ。
そうして今日、晴れて私たちは家族になった。
今回は来た時のようにナマエを抱き上げて移動するのではなく、今度は手と手を繋ぎ合わせて英雄の部屋まで向かう事にした。綺麗に身体を整えてやった今、もう床が汚れる心配もない。だからと言ってナマエが私の歩幅に合わせるのは無理があるし、私がナマエの歩幅に合わせていては英雄の部屋に辿り着くのが冗談抜きで明日の朝になってしまう。という訳で、苦肉の策でこうする事にしたという訳だ。それにしても小さな手だな。
「そういえばナマエよ。お前、歳は―…」
そう質問を投げかけようとした途端、私は先程名前を聞こうとした時を思い出してハッとした。自分の名前が分からないのならば、もしかすると年齢も分からないのが普通なのでは?と。そう思い直し、私は静かに口を噤んだ。どうにも幼子の扱いは不慣れで仕方がない。しかもそれが、元浮浪者の訳あり孤児なら尚更だ。と、私はまた己を恥じた。これで本日三度目だ。
そうして、「…すまない、何でもない」とだけ告げてまた歩き出すと、ナマエが私の様子を見て言葉の内容を察したのか、私を見上げながら恐る恐る口を開いた。
「…大丈夫です。でも、ごめんなさい。詳しくは分からないんです...ずっと、一人で生きてきたので」
「...そうか。すまない、野暮な事を聞いたな」
そうして、またもや流れだす沈黙。私もあまり言葉数が多い性分ではないし、ナマエだってきっとそうなのだろう。それに、これ以上失言を繰り返すよりは黙って歩いていた方が余程賢い選択だ。とひたすら廊下を進んでいると、珍しく私の隣から、か細いソプラノボイスが聞こえてきた。その小さな声を聞き漏らすことが無いように、しっかり耳を傾ける。
「あの、私は、お二人を何とお呼びすれば…?」
「…そうだな、私の事はレシラムと呼んでくれて構わない。敬称の有無はお前の判断に任せる。だが英雄──あの男──に対しては…出来れば敬称を付けて「英雄様」と呼んだ方が良いだろうな」
「…分かり、ました。」
私の言葉に短い返事を返し、精一杯頷いてみせたナマエ。その行動が一々いじらしくて、まるで本当の子猫のようだと思った。英雄に話したら、きっと腹を抱えて笑われてしまうのだろうが。記憶の中にいる英雄の顔が私に向かって意地の悪い笑みを浮かべたような気がして、私は大げさに頭を振った。そんな私の仕草を、ナマエが不思議そうに丸い瞳で凝視している。そんな目で見ないでくれ。
「…レシラムさま、」
「どうした」
「…レシラムさまは、英雄さまと、このお城で、一緒に住んでるんですよね?その…兄弟、なんですか?」
キョウダイ、きょうだい、兄弟。ナマエから発されたその言葉を理解するのに、思わぬ時間がかかってしまった。私とあの男が、兄弟、だと。
…勘弁してくれ。あんな手の掛かる弟(もしくは兄)が居てたまるか!胃に穴空くどころか内蔵全部ズタボロになるわ!…おっと失礼。口調が乱れた。まあ落ち着け、ナマエには何の非もない。これはどうやって認識を訂正するべきか。
「兄弟では…無いな。まず私は人間では無い。そうだな…対等な主従関係、とでも言おうか。英雄となる存在が居なければ、私の存在意義は無くなる。逆に私が居なければ、英雄は力を全て失う。だから英雄が私を従え、私が英雄に力を、知識を与える。そんな関係だ」
「な、成程…」
幼子に対して少々難しい話だっただろうかと思ったが、ナマエは何とか私の言葉を頭に入れ、その概要を理解してくれたらしい。出自によらず、中々賢いようだ。あの英雄と違って大人しくて素直な性格だし、手がかからなそうで何より。私の胃に穴が空くことは無さそうだ。
そんな事を考えながら歩いていると、やっと英雄の部屋に辿り着いた様だ。他の部屋よりも装飾の多い一際煌びやかな扉が、いつも通りに私達を出迎えている。見ているだけで喧しい。横に目を向けてみると、ナマエもその派手さに少し辟易していたので、気持ちは痛いほど分かるぞと心のなかで頷いておいた。
「…失礼するぞ、英雄」
先程とは違い、今度はしっかりと扉を三回ノックしてから部屋に入る。中では英雄が紅茶を飲みながら、机の上に積み上げられた書類の山を黙々と整理していた。その隣の机には、書き上がった様子の書類がまた例に習って山の様に積み上げられている。相変わらずの多忙ぶりだ。私にナマエの世話を押し付けておいて自分だけ呑気に遊んでいたらどうしてやろうかと思ったが、その心配が無いようで一安心。この仕事ぶりと性格がもう少し比例していれば、此方としても何も案ずることはないのだが。
「おぉ、随分綺麗になったな。流石じゃないかレシラム」
「…聞き分けの良い娘だったからな。それで、わざわざまたこの部屋に呼びつけてどうしたんだ」
「どうしたも何も、ナマエの部屋とこれからについてだ。決めておかないと困るだろう」
「…嗚呼、成程」
この城は知っての通り住人が私と英雄しか居ない為、部屋なら余りに余っている。外に何人かの門番や護衛はいるが、基本交替勤務制なので支障はない。ナマエの部屋も、その空き部屋の何処かにすれば問題ないだろう。だが念の為、私か英雄の近くの部屋にしたほうが良いのではと提案すると、英雄は確かにそうだなと言って頷いた。その隣ではナマエも、安心した様子で佇んでいる。
「ならレシラムの隣の部屋にするか」
「承知した。後で私が案内しよう」
「それは助かるな。ならば明日は、夢主の服や日用品を──」
「あ、あの…っ」
トントン拍子で話を進めていると、不意にナマエが声を上げた。その声に気付いた英雄と私がピタリと話を止めてナマエの声に耳を傾けると、やがておずおずと彼女は口を開いた。
「わ、わたし、お部屋なんて頂けると思ってなくて…その、お料理とかお掃除とか、そういった雑用を命じられると思ってて…その、違うんですか…?」
首を傾げながら、私達にそう問いかけるナマエ。その隣では、ナマエのそんな言葉を聞いた英雄が目を点にして、心底不思議そうな様子で呆けている。何ともシュールな光景だなと思ったが、何とか笑みを堪えた。これは笑ったら駄目な場面だ。
恐らくナマエは、この城に家族としてではなく、使用人として拾われたと思い込んでいるのだろう。此方に使用人を迎えるという考えが無い所為で今まで伝え忘れていたが、ナマエの立場になって考えてみれば、浮浪者だった自分がいきなり権力のある者に拾われ、あれよあれよと身支度を整えられて、確かにそう思い込むのも無理はない。完全に此方の伝え忘れである。何とも可愛らしい勘違いじゃないか。まずはその誤解を解いてやらねば。
「…ナマエよ」
「は、はい…」
「私達はお前を使用人としてではなく、家族として迎え入れたのだ」
「えっ…え?でも、どうして…」
困惑した様子で頭上に疑問符を浮かべるナマエ。確かに彼女の視点に立ってみると、いきなり拾われて身綺麗にされて家族として迎え入れられるなんて、全く意味が分からないだろう。だがしかしナマエを拾ってきたのは私ではなく英雄なので、私も詳しい理由まではわからない。当初、「見捨てるのも忍びない」だとか「お前のいい暇つぶしにもなると思って」など言っていたが、これだけでは要領を得ない。ここは一から説明してもらおうと英雄の方に目を向けると、いつの間に意識を戻したのか、待ってましたと言わんばかりに英雄が口を開いた。
「そもそも、家族になるのに理由が必要なのか?」
「え…?」
「そうだな、少し言い方を変えよう。血が繋がっていても平気で子供を捨てる親もいれば、血の繋がりがなくとも「放って置けない」という感情だけでその子供を拾う大人も居る。つまり、たまたま外に出ていた男が、たまたま居合わせた孤児を憐れんで城に迎え入れた。それだけの話だ」
いや、それただ衝動的に動いて勝手に拾ってきただけで、詳しい理由なんて何処にもないじゃないか。何良いこと言った気になってるんだこの男。と思ったが、ナマエが真剣な面持ちでその話に耳を傾けていたので黙っておいた。つまり英雄が言いたいのは”捨てる神あれば拾う神あり”ということだろう。
確かに拾われてきた時のナマエの様子は酷いものだった。あのまま放っておいたら確実に近い内に野垂れ死んで居ただろう。そう考えてみたら拾って来たことは理に適っているような…?疲れすぎてうまく頭が働かないが、そういう事なのだろうと無理やり己を納得させる事にした。一々疑問に思っていては冗談抜きで脳味噌がいくらあっても足りない。
「......じゃあ、私は、レシラムさまと英雄さまの家族として、この城に居てもいいって事ですか...?」
「無論だ。いやむしろ居てくれ。男二人では華が無さすぎてつまらないしレシラムは手厳しいし...」
「厳しいのはお前が下らん事ばかりやらかすからだ。それよりも案ずるな、ナマエ。今日からこの城がお前の居場所だ」
ナマエに向かって膝を付き、安心させるようにそう告げる。今度は演技ではなく、本当に、心からの気持ちを込めて。そんな私からの想いが伝わったのか、ナマエも安心したように微笑んだ。どうやら理解して貰えたらしい。本当に聞き分けのいい娘だ。
そうして今日、晴れて私たちは家族になった。