白竜は可惜夜に誓う
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英雄が城の外から子猫を拾ってきた。子猫、と言っても別に四足歩行で歩くわけでもないし、やかましくにゃーにゃー鳴くわけでもないし、柔らかな毛並みに覆われている訳でもない。...つまり、子猫というのはただの比喩だ。というか、本物の子猫のほうがまだマシである。
そんなことを頭の片隅でぼんやり思い浮かべながら、私は再度、眼の前で居心地悪そうに佇んでいる女を見やった。艶のない髪、栄養不足で痩せた体、光のない瞳、泥だらけの手足。身に纏っている元は服だったらしき襤褸も、お世辞にも清潔そうには見えない。さしずめ、親に捨てられた孤児だろう。教養もなさそうだし、使用人として雇うという望みも薄い。英雄はなぜこの様なみすぼらしい女を拾ってきたのだ?まさかそういう趣味か。
「誰だこの女は。…英雄、説明を求める」
「近くの森で捨てられていたから拾ってきた。見捨てるのも忍びないし、お前の良い暇つぶしにもなるかと思ってな。気付いたら連れて来てしまっていた」
そう言って女の髪をそっと撫でる英雄。そんな英雄の口ぶりに、軽く殺意を抱く私。気付いたら連れてきちゃってましたでは無いわ馬鹿。何が暇つぶしだこの馬鹿男。確かに城の管理や国の政治は全て英雄が担っているため、私達は英雄の後ろ盾となるだけで良い。寧ろ重労働させすぎていて頭も上がらないくらいだ。だけどその分こっちもこっちで英雄の食事用意したり、英雄がやらかしたときに尻拭いしたり、潰せる暇も無いくらいには忙しいんだぞ。面倒事なんてごめんだ。
なのに!
なぜ!
普段から超が付くほど忙しいお前が!
自分から面倒事を増やす!
だんだん頭が痛くなってきた私は、傍らにおいてあった椅子に身を預けて溜息を吐いた。この英雄、仕事は誰よりもできる癖に、外に出れば必ず何かしらの面倒事を拾ってくるのだ。今回のように外から人間を連れて来るなんてまだマシな方だ。酷い時には…いや、この話はよそう。これ以上頭痛のタネを増やしたくはない。取り敢えず脳天気な英雄はこの際もう放っておいて、女の方に話を聞くことにする。英雄よりアテになるかはさておき。
「…すまないな、私の主人が」
女に目線を合わせるために跪きながら、私は女に、心底申し訳なさそうに眉を下げてそう告げた。半分本心で、半分は女の警戒心を解くための演技だ。相手が弱者だからといって変に高圧的な態度を取った所で、物事は何も解決しない。そんな英雄がよく言っている言葉を頭で反芻させながら、私は女の返事を待った。身体を震わせ、瞳に怯えの感情を乗せて此方を見つめる様子は、本当に子猫かその類の獣に見えて仕方ない。だがしかしこの娘は人間だ。ポケモンではない。
「話せるか?落ち着かないなら何か温かい飲み物を、」
「だ、大丈夫です。……こういう場所に、慣れていないだけなので」
「おぉ、喋った。凄いじゃないかレシラム」
震える声でそう発した女。一先ず怖がられてはいないようで安心したが、確かに外の世界に住んでいた者がいきなり絢爛豪華な城の中に入っても落ち着かないだろう。そこは我々も配慮が足りていなかった。
しかし、我々は子供の扱いは全くの不慣れ。どうすれば良いのかと思考を右往左往させたとして、経験が無いとなれば降ってくる知識など無いに等しく、また頼れる存在も居ない。一体どうすれば良いのだーと途方に暮れながら、私はまた溜息を吐いた。
そんなことを頭の片隅でぼんやり思い浮かべながら、私は再度、眼の前で居心地悪そうに佇んでいる女を見やった。艶のない髪、栄養不足で痩せた体、光のない瞳、泥だらけの手足。身に纏っている元は服だったらしき襤褸も、お世辞にも清潔そうには見えない。さしずめ、親に捨てられた孤児だろう。教養もなさそうだし、使用人として雇うという望みも薄い。英雄はなぜこの様なみすぼらしい女を拾ってきたのだ?まさかそういう趣味か。
「誰だこの女は。…英雄、説明を求める」
「近くの森で捨てられていたから拾ってきた。見捨てるのも忍びないし、お前の良い暇つぶしにもなるかと思ってな。気付いたら連れて来てしまっていた」
そう言って女の髪をそっと撫でる英雄。そんな英雄の口ぶりに、軽く殺意を抱く私。気付いたら連れてきちゃってましたでは無いわ馬鹿。何が暇つぶしだこの馬鹿男。確かに城の管理や国の政治は全て英雄が担っているため、私達は英雄の後ろ盾となるだけで良い。寧ろ重労働させすぎていて頭も上がらないくらいだ。だけどその分こっちもこっちで英雄の食事用意したり、英雄がやらかしたときに尻拭いしたり、潰せる暇も無いくらいには忙しいんだぞ。面倒事なんてごめんだ。
なのに!
なぜ!
普段から超が付くほど忙しいお前が!
自分から面倒事を増やす!
だんだん頭が痛くなってきた私は、傍らにおいてあった椅子に身を預けて溜息を吐いた。この英雄、仕事は誰よりもできる癖に、外に出れば必ず何かしらの面倒事を拾ってくるのだ。今回のように外から人間を連れて来るなんてまだマシな方だ。酷い時には…いや、この話はよそう。これ以上頭痛のタネを増やしたくはない。取り敢えず脳天気な英雄はこの際もう放っておいて、女の方に話を聞くことにする。英雄よりアテになるかはさておき。
「…すまないな、私の主人が」
女に目線を合わせるために跪きながら、私は女に、心底申し訳なさそうに眉を下げてそう告げた。半分本心で、半分は女の警戒心を解くための演技だ。相手が弱者だからといって変に高圧的な態度を取った所で、物事は何も解決しない。そんな英雄がよく言っている言葉を頭で反芻させながら、私は女の返事を待った。身体を震わせ、瞳に怯えの感情を乗せて此方を見つめる様子は、本当に子猫かその類の獣に見えて仕方ない。だがしかしこの娘は人間だ。ポケモンではない。
「話せるか?落ち着かないなら何か温かい飲み物を、」
「だ、大丈夫です。……こういう場所に、慣れていないだけなので」
「おぉ、喋った。凄いじゃないかレシラム」
震える声でそう発した女。一先ず怖がられてはいないようで安心したが、確かに外の世界に住んでいた者がいきなり絢爛豪華な城の中に入っても落ち着かないだろう。そこは我々も配慮が足りていなかった。
しかし、我々は子供の扱いは全くの不慣れ。どうすれば良いのかと思考を右往左往させたとして、経験が無いとなれば降ってくる知識など無いに等しく、また頼れる存在も居ない。一体どうすれば良いのだーと途方に暮れながら、私はまた溜息を吐いた。