03
主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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「事前に調べてもらったのですが、盗賊達は街からさほど遠くないこの森に拠点を置いているそうです。」
説明にあたって、地図と駒を用意してもらった。地図の中の大体の位置を指差し、続ける。
「この拠点は小高い場所にありますが、登ることも背後から狙うこともしません。…誘い出します。」
駒を数個持ち、地図に配置していく。
「まず軍を三部隊にわけて、その中のニ部隊を左右に伏せた後、残りの一部隊を使って最初に攻撃をしかけます。ニ部隊の配置は、盗賊の拠点から少し離れたこの地に。ここは道幅があまり広くなく、進めば行き止まりがあります。」
「では、一部隊は囮ということですか。」
「はい。一部隊……囮役の中央部隊は敗北を装って後退し、伏兵の場所まで盗賊を追撃するよう誘導してもらいます。そして、たどり着いたこの地点で左右の伏兵が攻撃、後退した兵も反転させて三方向から包囲して叩きます。敵を釣り出し、伏兵で襲いかかる、"釣り野伏し"という策です。」
最後の駒の配置を終えてひとまず息をつく。
「ンフフ、悪くは無いですよォ。ですが…」
王騎将軍は笑みを深めた。
「はい。上手くいくとは限らないです。囮部隊が誘い出せなかった場合は、伏兵のニ部隊が敵の側面に移動してもらう事になるでしょう。…この策は、囮役となる中央部隊の自然で且つ完璧な撤退が重要です。私が必要としている"戦の経験・軍の中での信頼・冷静な指揮官・武力"といった条件…全てが揃って成功という言葉が見えてきます。」
王騎将軍の目を力強く見つめる。
「ですが、王騎様の軍ならば失敗は無いという確信があります。…この戦いは必ず成功します。」
「コココココ、確信ですか。」
王騎将軍は少し目を細める。
値踏みしているような目は、少しの間私に留まると、すぐに別の方向に向けられた。
「…騰、聞いていたでしょう?この策を実行しますよ。」
「ハッ。」
「えっ…」
バッと声のする方向を向いた。
自然な様子で立っている人物を見て、驚きに口を開け、間抜けな顔を晒す。
そんな中でも話は進み、王騎将軍は今回の策の参加部隊を既に決めていたのか、指示を始めた。
「騰、あなたに中央部隊の指揮官を任せます。録嗚未を左軍、隆国を右軍に。今回の策の説明も頼みましたよ。」
素早い指示に、尊敬の念を向ける。
将軍ならば当然なのだろうか…
「ハッ。ではこれより準備を。」
指示を受けた騰副官は退室した。
戦人の常を見たように思いながら、しかし自分もおいて行かれまいと、言葉を発する。
「…王騎様、私もこの件、同行させてもらっても良いですか?…決して迷惑にならないように、自分の事は自分で責任を持ちます。」
自分には"見届ける"義務がある。
平和な世界で生き、過去の出来事として紙の中に書かれた多くの歴史を目にした。結局、紙面だけでは、戦いの本当の恐ろしさも、悲しさも、わからないのだ。
この戦ばかりの世にいても、どこか現実味が無い。
夢の中でも、紙の中でも無い筈の世界で、曖昧な感覚を持ったまま。この世界の人と過ごし、月日も経って、元の世界に戻れる事もなくこの世界にいる。
…だからこそ、この世界の現実を目にしなければならない。乱世に生きる者であるという自覚が今の自分に必要なのだ。
この件を見届けるのは、そういった意味合いでもあり、策を出したものとしての責任でもある。
「コココ、いいでしょう。私も今回は見届けるつもりですからねェ。共に戦況を見守ることにしましょう。」
王騎将軍は戦いには直接参加しないようだ。
今の国内の状況がそうせざるを得なくさせたのか、参加する必要がないと思ってのことか…考えられることは多くあれど、真意は見抜けない。
けれども、王騎将軍の余裕の表情を見れば、心配するような事はないとわかる。
偉大さとは、こういった所からも見て取れるんだろう。
…もし戦う力があったなら、こんな人についていきたいな。
思わず、心の中でタラレバを溢してしまうほどの"憧れ"を抱いた。
説明にあたって、地図と駒を用意してもらった。地図の中の大体の位置を指差し、続ける。
「この拠点は小高い場所にありますが、登ることも背後から狙うこともしません。…誘い出します。」
駒を数個持ち、地図に配置していく。
「まず軍を三部隊にわけて、その中のニ部隊を左右に伏せた後、残りの一部隊を使って最初に攻撃をしかけます。ニ部隊の配置は、盗賊の拠点から少し離れたこの地に。ここは道幅があまり広くなく、進めば行き止まりがあります。」
「では、一部隊は囮ということですか。」
「はい。一部隊……囮役の中央部隊は敗北を装って後退し、伏兵の場所まで盗賊を追撃するよう誘導してもらいます。そして、たどり着いたこの地点で左右の伏兵が攻撃、後退した兵も反転させて三方向から包囲して叩きます。敵を釣り出し、伏兵で襲いかかる、"釣り野伏し"という策です。」
最後の駒の配置を終えてひとまず息をつく。
「ンフフ、悪くは無いですよォ。ですが…」
王騎将軍は笑みを深めた。
「はい。上手くいくとは限らないです。囮部隊が誘い出せなかった場合は、伏兵のニ部隊が敵の側面に移動してもらう事になるでしょう。…この策は、囮役となる中央部隊の自然で且つ完璧な撤退が重要です。私が必要としている"戦の経験・軍の中での信頼・冷静な指揮官・武力"といった条件…全てが揃って成功という言葉が見えてきます。」
王騎将軍の目を力強く見つめる。
「ですが、王騎様の軍ならば失敗は無いという確信があります。…この戦いは必ず成功します。」
「コココココ、確信ですか。」
王騎将軍は少し目を細める。
値踏みしているような目は、少しの間私に留まると、すぐに別の方向に向けられた。
「…騰、聞いていたでしょう?この策を実行しますよ。」
「ハッ。」
「えっ…」
バッと声のする方向を向いた。
自然な様子で立っている人物を見て、驚きに口を開け、間抜けな顔を晒す。
そんな中でも話は進み、王騎将軍は今回の策の参加部隊を既に決めていたのか、指示を始めた。
「騰、あなたに中央部隊の指揮官を任せます。録嗚未を左軍、隆国を右軍に。今回の策の説明も頼みましたよ。」
素早い指示に、尊敬の念を向ける。
将軍ならば当然なのだろうか…
「ハッ。ではこれより準備を。」
指示を受けた騰副官は退室した。
戦人の常を見たように思いながら、しかし自分もおいて行かれまいと、言葉を発する。
「…王騎様、私もこの件、同行させてもらっても良いですか?…決して迷惑にならないように、自分の事は自分で責任を持ちます。」
自分には"見届ける"義務がある。
平和な世界で生き、過去の出来事として紙の中に書かれた多くの歴史を目にした。結局、紙面だけでは、戦いの本当の恐ろしさも、悲しさも、わからないのだ。
この戦ばかりの世にいても、どこか現実味が無い。
夢の中でも、紙の中でも無い筈の世界で、曖昧な感覚を持ったまま。この世界の人と過ごし、月日も経って、元の世界に戻れる事もなくこの世界にいる。
…だからこそ、この世界の現実を目にしなければならない。乱世に生きる者であるという自覚が今の自分に必要なのだ。
この件を見届けるのは、そういった意味合いでもあり、策を出したものとしての責任でもある。
「コココ、いいでしょう。私も今回は見届けるつもりですからねェ。共に戦況を見守ることにしましょう。」
王騎将軍は戦いには直接参加しないようだ。
今の国内の状況がそうせざるを得なくさせたのか、参加する必要がないと思ってのことか…考えられることは多くあれど、真意は見抜けない。
けれども、王騎将軍の余裕の表情を見れば、心配するような事はないとわかる。
偉大さとは、こういった所からも見て取れるんだろう。
…もし戦う力があったなら、こんな人についていきたいな。
思わず、心の中でタラレバを溢してしまうほどの"憧れ"を抱いた。