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主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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・・・
「…突然こんなところにいたんだ、驚いただろう?」
男性は、声の通り穏やかな顔つきで、纏う雰囲気も棘がなく柔らかだった。
「あ、いや、その…」
何と言ったらいいのか、この後何かがあるかもしれないという恐怖がある。優しいふりをして実は…といったように。
私の心境を知っているのかいないのか、男性は表情を変えることなく私の向かいにゆったりと腰をおろした。
「私も驚いたんだ。君が、私の邸の近くに…倒れていたものだからね。」
「倒れて、いた…?私は、倒れていたんですか?」
「あ、ああ。最初はどこかの宮女が逃げ出してきたのかと思ったんだ。でも、それにしては不自然な点が多い。変わった荷物もあったね。…何か理由があるんだろう、念の為邸に連れてきたんだよ。」
「いや、あの、ドラマに憧れてこういったセットにしてあるんですよね。あはは、ほんと、古代に生きてるみたい。あ、実は撮影してる、とかですか?」
「…"どらま"……"せっと"…?なんだい、その言葉は?"こだいにいきてる"とは…?」
どうして、どうしてそんなに何もわからないって顔して……まるで私がおかしい事を言ってるみたいじゃないか。
汗が、出てくる。鼓動も速くなってきた…
「い、今は…21世紀ですよね…?ここは…ここは、その、私が倒れていたのを助けてくださって…中国のどこなのかわかりませんけど、どこかのお邸なんですよね?」
「…」
自分でそう言って、ハッとなった。中国ならば、何故、日本語が通じ、相手も流暢な日本語を話しているのか。…色々と、おかしい点がある。
「…君は…記憶を失っているのかい?ここは、君の言う"ちゅうごく"?などではないよ。秦国だ。若き王、嬴政様が治める国じゃないか。」
しんこく………えいせい…秦国、嬴政?いやいや、待って、今秦国に居て、若い頃の始皇帝が存在すると?
…ははっ、自分は、寝てる間に時代を遡ったと…?
「…秦、国。」
「…記憶が、無いんだね。何か、酷い目にあったんだろう。」
そうじゃ、ない。ないけど、
…仮に、ここが秦国だったとして…何故私がここに来る必要がある…?
--混乱と恐怖に襲われる中、話は進んでいく。
「名前は覚えているかい?」
「…沙苗、です。」
自分でも、何を信じていいのかわからない。
理解したくないのだろうか。
ああ、汗が止まらない。血の気が引くのがよくわかる。
…悪い夢なら覚めて欲しい。
強く握った手に痛みが走る。嫌というほど、夢じゃないというのがわかった。
「出自を聞きたいところだが、先程の様子では、君は名前ぐらいしか覚えていないだろう…」
男性は困った顔をする。
「…」
なんと言っていいのだろう…
本当の事を話したところできっと信じてもらえない。それは、誰でも思う。
…最低な手段だと思う。記憶喪失をのフリをするなんて。けど、今は…
「…記憶が無いなら、仕方がないね。」
名前しかわからないなんて、おかしな話だと思う。
この人は、とても優しい。そう思った。
「…倒れていたところを、助けて頂いたというのに…何も返せず、申し訳ありません。」
「いいんだ。……実は、私には子が居なくてね。妻も、子を授かる事を願っていたんだがね、どにうも駄目なようで…」
男性は、少し目を伏せて語り始めた。
「妻も、幾度も嘆いた。」
「…」
「私が君に、我が家の子になってほしい、そう言ったら困るかい…」
男性は、そっとこちらを向く。その瞳には、いくつもの悲しみが垣間見えるようだった。
…正直、信じていいのかわからない。でも、これからどうすればいいのかもわからない。
今は、この目を信じようと思う。
「その、私のような得体のしれない者でもよければ…」
男性は、驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに柔らかいものへと変わる。
「大丈夫だよ。私はこんな頼りない感じだが、商人をやっていてね、人を見る目だけはあるんだ。…こんな言い方はいけないね。けれども、信じてほしい。君は私が、いいや、私達が守ろう。大事な娘だからね。」
ああ、この人はとても良い人なんだろうな…
「よろしく、お願いします。」
深く頭を下げる。
「私は陵安(りょうあん)という。ようこそ、沙苗。」
私に、もう一つの家族ができた。
「…突然こんなところにいたんだ、驚いただろう?」
男性は、声の通り穏やかな顔つきで、纏う雰囲気も棘がなく柔らかだった。
「あ、いや、その…」
何と言ったらいいのか、この後何かがあるかもしれないという恐怖がある。優しいふりをして実は…といったように。
私の心境を知っているのかいないのか、男性は表情を変えることなく私の向かいにゆったりと腰をおろした。
「私も驚いたんだ。君が、私の邸の近くに…倒れていたものだからね。」
「倒れて、いた…?私は、倒れていたんですか?」
「あ、ああ。最初はどこかの宮女が逃げ出してきたのかと思ったんだ。でも、それにしては不自然な点が多い。変わった荷物もあったね。…何か理由があるんだろう、念の為邸に連れてきたんだよ。」
「いや、あの、ドラマに憧れてこういったセットにしてあるんですよね。あはは、ほんと、古代に生きてるみたい。あ、実は撮影してる、とかですか?」
「…"どらま"……"せっと"…?なんだい、その言葉は?"こだいにいきてる"とは…?」
どうして、どうしてそんなに何もわからないって顔して……まるで私がおかしい事を言ってるみたいじゃないか。
汗が、出てくる。鼓動も速くなってきた…
「い、今は…21世紀ですよね…?ここは…ここは、その、私が倒れていたのを助けてくださって…中国のどこなのかわかりませんけど、どこかのお邸なんですよね?」
「…」
自分でそう言って、ハッとなった。中国ならば、何故、日本語が通じ、相手も流暢な日本語を話しているのか。…色々と、おかしい点がある。
「…君は…記憶を失っているのかい?ここは、君の言う"ちゅうごく"?などではないよ。秦国だ。若き王、嬴政様が治める国じゃないか。」
しんこく………えいせい…秦国、嬴政?いやいや、待って、今秦国に居て、若い頃の始皇帝が存在すると?
…ははっ、自分は、寝てる間に時代を遡ったと…?
「…秦、国。」
「…記憶が、無いんだね。何か、酷い目にあったんだろう。」
そうじゃ、ない。ないけど、
…仮に、ここが秦国だったとして…何故私がここに来る必要がある…?
--混乱と恐怖に襲われる中、話は進んでいく。
「名前は覚えているかい?」
「…沙苗、です。」
自分でも、何を信じていいのかわからない。
理解したくないのだろうか。
ああ、汗が止まらない。血の気が引くのがよくわかる。
…悪い夢なら覚めて欲しい。
強く握った手に痛みが走る。嫌というほど、夢じゃないというのがわかった。
「出自を聞きたいところだが、先程の様子では、君は名前ぐらいしか覚えていないだろう…」
男性は困った顔をする。
「…」
なんと言っていいのだろう…
本当の事を話したところできっと信じてもらえない。それは、誰でも思う。
…最低な手段だと思う。記憶喪失をのフリをするなんて。けど、今は…
「…記憶が無いなら、仕方がないね。」
名前しかわからないなんて、おかしな話だと思う。
この人は、とても優しい。そう思った。
「…倒れていたところを、助けて頂いたというのに…何も返せず、申し訳ありません。」
「いいんだ。……実は、私には子が居なくてね。妻も、子を授かる事を願っていたんだがね、どにうも駄目なようで…」
男性は、少し目を伏せて語り始めた。
「妻も、幾度も嘆いた。」
「…」
「私が君に、我が家の子になってほしい、そう言ったら困るかい…」
男性は、そっとこちらを向く。その瞳には、いくつもの悲しみが垣間見えるようだった。
…正直、信じていいのかわからない。でも、これからどうすればいいのかもわからない。
今は、この目を信じようと思う。
「その、私のような得体のしれない者でもよければ…」
男性は、驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに柔らかいものへと変わる。
「大丈夫だよ。私はこんな頼りない感じだが、商人をやっていてね、人を見る目だけはあるんだ。…こんな言い方はいけないね。けれども、信じてほしい。君は私が、いいや、私達が守ろう。大事な娘だからね。」
ああ、この人はとても良い人なんだろうな…
「よろしく、お願いします。」
深く頭を下げる。
「私は陵安(りょうあん)という。ようこそ、沙苗。」
私に、もう一つの家族ができた。