08
主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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・・
「…ん~………あ、朝だ…」
薄っすらと光が差し込み、その眩しさで目を覚ました。
外はまだ静かで、少し早い目覚めだったのだろう。どんよりとした気持ちでは二度寝もできないので、私は諦めて起き上がる。
「…はぁ…」
昨日、衝撃的発言の数々のあとも宴は続き、廉頗将軍は王騎将軍と再び飲み始め、私は席を移し隅の方でちびちびとお酒を飲んでいた。
当初は隅で1人寂しく宴の終わりを迎えると思っていたものの、途中で録嗚未軍長がお酒を持って私の所に来てくれたので二人で話しながら時間を過ごせたので、録嗚未軍長には本当に感謝だ。
そして、宴が終わって疲れが一気に押し寄せた私は部屋に戻るなりベットに倒れ、そのまま意識を手放し今に至る。
「…早めに準備しようかな。」
刑を執行される前の囚人。今の私はそんな感じだ。
・・
「いいかい沙苗、くれぐれも粗相のないように。それから、将軍から離れて何処かへ行ったりしない事。あとは…」
「わかっています、父上。もう同じ事を5回も聞いています」
支度が終わり、覚悟を決めて廉頗将軍の元へ向かおうとする私を養父が心配してかれこれ5回も同じ事を言っている。…養父の方が緊張してる気が…
「そう言うが、私は本当に心配で…」
眉尻を下げて心配する姿にクスリと笑いがこみ上げる。
「…ふふっ…父上、落ち着いてください。廉頗様をお待たせしてはいけません。では、行ってまいります。…あ、秦に戻ったら母上と一緒に飲みましょう。」
「…ああ、そうだね。必ず。」
やっと落ち着いた養父がしっかりと頷いて答える。
すると、このやり取りをしている間にいつのまにか側で待機していた使者が困った様子で
「…では、沙苗様、宜しいでしょうか?廉頗将軍がお待ちです。」
と声をかけてきた。廉頗将軍から連れてくるよう頼まれてるんだろうな…使者に対して申し訳なく思う。
「すみません、すぐに向かいます。父上、また後ほど。」
養父の不安げな視線を受けつつも、私は背を向けて歩き始めた。
さて、気を引き締めて行こう。
・・
「やっと来たのォ、沙苗。ふんっ、陵安に引き止められた、といったところか。」
案内された場所に着くやいなや、(事情を察したのであろう)呆れ顔の廉頗将軍が目の前に現れてそう言った。
「廉頗様、遅くなってしまい申し訳ありません…!その、はい…本当に申し訳ありません…」
深々と頭を下げて謝罪する。
偉大なる人物を待たせたという事実に肝が冷えた。
これは、斬られてもおかしくは無い。
頭を下げたままの状態でいると、
「まったく…そうすぐに頭を下げるでないわ。咎めはせぬ。それより今は時間が惜しい。行くぞ沙苗。」
「え、あ、はいっ…!ありがとうござ……えっ!?」
頭を上げるやいなや、感謝の言葉を遮るかのように廉頗将軍は私の腕を掴み歩く。
歩幅が違うため付いていくのに必死になる。しかしすぐに廉頗将軍は歩みを止めた。
「…?」
目の前には巨大な馬。王騎将軍といい、廉頗将軍といい、乗る側が巨体なら馬も当然大きいわけだ。
私の腕を離して廉頗将軍は馬に跨る。
その様子を見届け、私はキョロキョロと辺りを見回し自分の乗る馬を探す。
…あれ、もしかして、無い…?
私は徒歩で行くって事かな…
「…何をしておる。」
馬上の廉頗将軍を見上げれば、怪訝な表情でこちらを見下ろしてくる。
「申し訳ありません…その、私の乗る馬を探しておりまして…」
「何を言っておる、うぬは…」
やはり私は徒歩…!?
そう思った時だった。
「…?」
突如視界に影がかかり、腕をグイッと掴まれる感触が。
「うっ、わぁぁっ!!」
体が、浮いた。
それと同時に視界がブレる。
ドスッ
鈍い音をたてながら馬上に。
…音が少し重く感じたのは気のせいにしよう。
「儂の馬に乗せるに決まっておるわ。この方が話しやすいであろう。」
「は、はい、そうですね…」
話しやすい…話しやすい、かぁ…
馬上に移動した今、自分は横向きに座っている状態。つまり、廉頗将軍に寄りかかっているような体勢だ。
廉頗将軍の着ている深衣(しんい…普段纏っている装束)の感触と体温が私の顔や体にダイレクトに伝わってくる。
…つまり、近い。
「では行くぞ。」
「っ、はい。」
大将軍のオーラ、遠くから対面した時とは違う圧。
ドクン、ドクンと、心臓が跳ねる。
距離が近い故の恥じらいか、恐怖からくる早鐘か。
ドスッ、ドスッっと馬の歩む音が聞こえ、それにあわせて小刻みに振動が来る。
「ククッ、緊張しておるのか。じゃが、俯くには勿体ないぞ?」
「はっ、申し訳ありません…!!」
バッと勢い良く顔を上げる。
「謝るな。顔を上げたのならば、呼吸を整え前を見よ。」
「え…」
廉頗将軍はこちらにチラリと視線を寄こしたあと、前を真っ直ぐと見据える。
自分もそれに倣って前見た。
「…わっ……」
思わず、目を見開く。
大将軍の馬に乗って見る世界。秦国でも見たような、人々が行き交う町。けれども、
「眩しいであろう。…長い歴史の中、多くの将や兵士が築き上げた景色じゃ。」
「…」
その眩しさに目を細める。何度も攻められ、何度も傷ついたであろう町の景色。趙国も秦国変わりない。
でも、趙国の歴史の一部を見てきた廉頗将軍と見る町の姿は深く深く私の記憶に刻まれるだろう。
「…廉頗様、町をもっと近くで見てもよろしいでしょうか…?」
最初の恐怖や緊張はどこへ行ったのかと思うほど、今はワクワクとしている。
しっかりと目を合わせて言った私に、廉頗将軍が一瞬驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに表情を戻し、ニヤリと口角を上げる。
何も言わなかったけれど、この表情が答えだろう。
「ありがとうございます。」
私は笑顔でそう言うと、そのまま前を向く。
…せっかく趙国へ来たのだから、少しでも何かを学ぼう。
「…ん~………あ、朝だ…」
薄っすらと光が差し込み、その眩しさで目を覚ました。
外はまだ静かで、少し早い目覚めだったのだろう。どんよりとした気持ちでは二度寝もできないので、私は諦めて起き上がる。
「…はぁ…」
昨日、衝撃的発言の数々のあとも宴は続き、廉頗将軍は王騎将軍と再び飲み始め、私は席を移し隅の方でちびちびとお酒を飲んでいた。
当初は隅で1人寂しく宴の終わりを迎えると思っていたものの、途中で録嗚未軍長がお酒を持って私の所に来てくれたので二人で話しながら時間を過ごせたので、録嗚未軍長には本当に感謝だ。
そして、宴が終わって疲れが一気に押し寄せた私は部屋に戻るなりベットに倒れ、そのまま意識を手放し今に至る。
「…早めに準備しようかな。」
刑を執行される前の囚人。今の私はそんな感じだ。
・・
「いいかい沙苗、くれぐれも粗相のないように。それから、将軍から離れて何処かへ行ったりしない事。あとは…」
「わかっています、父上。もう同じ事を5回も聞いています」
支度が終わり、覚悟を決めて廉頗将軍の元へ向かおうとする私を養父が心配してかれこれ5回も同じ事を言っている。…養父の方が緊張してる気が…
「そう言うが、私は本当に心配で…」
眉尻を下げて心配する姿にクスリと笑いがこみ上げる。
「…ふふっ…父上、落ち着いてください。廉頗様をお待たせしてはいけません。では、行ってまいります。…あ、秦に戻ったら母上と一緒に飲みましょう。」
「…ああ、そうだね。必ず。」
やっと落ち着いた養父がしっかりと頷いて答える。
すると、このやり取りをしている間にいつのまにか側で待機していた使者が困った様子で
「…では、沙苗様、宜しいでしょうか?廉頗将軍がお待ちです。」
と声をかけてきた。廉頗将軍から連れてくるよう頼まれてるんだろうな…使者に対して申し訳なく思う。
「すみません、すぐに向かいます。父上、また後ほど。」
養父の不安げな視線を受けつつも、私は背を向けて歩き始めた。
さて、気を引き締めて行こう。
・・
「やっと来たのォ、沙苗。ふんっ、陵安に引き止められた、といったところか。」
案内された場所に着くやいなや、(事情を察したのであろう)呆れ顔の廉頗将軍が目の前に現れてそう言った。
「廉頗様、遅くなってしまい申し訳ありません…!その、はい…本当に申し訳ありません…」
深々と頭を下げて謝罪する。
偉大なる人物を待たせたという事実に肝が冷えた。
これは、斬られてもおかしくは無い。
頭を下げたままの状態でいると、
「まったく…そうすぐに頭を下げるでないわ。咎めはせぬ。それより今は時間が惜しい。行くぞ沙苗。」
「え、あ、はいっ…!ありがとうござ……えっ!?」
頭を上げるやいなや、感謝の言葉を遮るかのように廉頗将軍は私の腕を掴み歩く。
歩幅が違うため付いていくのに必死になる。しかしすぐに廉頗将軍は歩みを止めた。
「…?」
目の前には巨大な馬。王騎将軍といい、廉頗将軍といい、乗る側が巨体なら馬も当然大きいわけだ。
私の腕を離して廉頗将軍は馬に跨る。
その様子を見届け、私はキョロキョロと辺りを見回し自分の乗る馬を探す。
…あれ、もしかして、無い…?
私は徒歩で行くって事かな…
「…何をしておる。」
馬上の廉頗将軍を見上げれば、怪訝な表情でこちらを見下ろしてくる。
「申し訳ありません…その、私の乗る馬を探しておりまして…」
「何を言っておる、うぬは…」
やはり私は徒歩…!?
そう思った時だった。
「…?」
突如視界に影がかかり、腕をグイッと掴まれる感触が。
「うっ、わぁぁっ!!」
体が、浮いた。
それと同時に視界がブレる。
ドスッ
鈍い音をたてながら馬上に。
…音が少し重く感じたのは気のせいにしよう。
「儂の馬に乗せるに決まっておるわ。この方が話しやすいであろう。」
「は、はい、そうですね…」
話しやすい…話しやすい、かぁ…
馬上に移動した今、自分は横向きに座っている状態。つまり、廉頗将軍に寄りかかっているような体勢だ。
廉頗将軍の着ている深衣(しんい…普段纏っている装束)の感触と体温が私の顔や体にダイレクトに伝わってくる。
…つまり、近い。
「では行くぞ。」
「っ、はい。」
大将軍のオーラ、遠くから対面した時とは違う圧。
ドクン、ドクンと、心臓が跳ねる。
距離が近い故の恥じらいか、恐怖からくる早鐘か。
ドスッ、ドスッっと馬の歩む音が聞こえ、それにあわせて小刻みに振動が来る。
「ククッ、緊張しておるのか。じゃが、俯くには勿体ないぞ?」
「はっ、申し訳ありません…!!」
バッと勢い良く顔を上げる。
「謝るな。顔を上げたのならば、呼吸を整え前を見よ。」
「え…」
廉頗将軍はこちらにチラリと視線を寄こしたあと、前を真っ直ぐと見据える。
自分もそれに倣って前見た。
「…わっ……」
思わず、目を見開く。
大将軍の馬に乗って見る世界。秦国でも見たような、人々が行き交う町。けれども、
「眩しいであろう。…長い歴史の中、多くの将や兵士が築き上げた景色じゃ。」
「…」
その眩しさに目を細める。何度も攻められ、何度も傷ついたであろう町の景色。趙国も秦国変わりない。
でも、趙国の歴史の一部を見てきた廉頗将軍と見る町の姿は深く深く私の記憶に刻まれるだろう。
「…廉頗様、町をもっと近くで見てもよろしいでしょうか…?」
最初の恐怖や緊張はどこへ行ったのかと思うほど、今はワクワクとしている。
しっかりと目を合わせて言った私に、廉頗将軍が一瞬驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに表情を戻し、ニヤリと口角を上げる。
何も言わなかったけれど、この表情が答えだろう。
「ありがとうございます。」
私は笑顔でそう言うと、そのまま前を向く。
…せっかく趙国へ来たのだから、少しでも何かを学ぼう。