07
主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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・・
「…沙苗、うぬは春平君と会っていたそうだな。」
「は、はい。」
突然された質問に慌てて返事を返す。
「あ奴は阿呆であっただろう?」
「あ、阿呆…」
正直返答に困る。どう言ったら良いものか…
「あ、阿呆といいますか、その、純粋な方ではありましたね。」
「ふんっ、素直に阿呆だと言ってしまえば良いものを。」
いや、下手な発言は避けるべきだ。誰にどう聞かれているかわからない。
私の返答に不服な様子ではあるものの、すぐに"まあ良い"といった表情で言葉を続ける。
「…うぬは、あの阿呆を通して太子をどう見る?」
春平君を通して、現在の趙国太子"偃"という人物をどう見るか…
史実での人物像を知っている身としては、名君とも暴君とも言える微妙な印象がある。
しかし、この世界ではきっと後者…暴君なのだろう。
「…政治には、あまり興味が無い方なのだと。」
「ほぅ…何故、そう思った?」
目が、ギラリと光った気がした。
「は、はい。その、今回お会いした春平君様は政治的話には疎く…いえ、疎いというより、本当に"何も知らない"と言ったほうがいいでしょうか。まるで、そういった話には触れない環境で過ごしてきたかのようで……太子様はあえてその話を避けているのでは、と。」
この時代、政の話に関して多少は頭にある筈だ。
私の中には、寵愛する者と睦み合う際に交される話に、有能さを誇示する話題の一つとして政に関して触れる事が少しはあるというイメージがあった。
「いや、話は聞いていたが、あの阿呆が理解できていなかっただけやもしれぬだろう。」
廉頗将軍はすかさず言葉を挟む。
話をさらに掘り下げるつもりかもしれない…
「実際にお話しした限りでは、そうは感じませんでした。それと…噂を小耳に挟んだのですが、太子様はお身体があまりよろしくないとか。もし、それを気にされているのなら、政よりも太子様は、ご自身の身を……あ、そのっ、申し訳ございません!何と無礼な発言を…」
いくら返事を求められたとはいえ、今の発言は侮辱とも取れてしまう。
自身の失言に血の気が引いた。
「……ククッ、ガッハハハハ!!」
「っ!」
これは、まずい……?
「よく分かっておるではないか。」
「…え。」
…大丈夫、なようだ。
「あれは国より我が身。国の話に耳を傾けることなど全く無い。ありゃだめじゃ。今の王よりもっと酷くなるであろう。」
今の王"孝成王"は、廉頗将軍にとって暗君という部類に入ってしまうのだろう。
廉頗将軍の眼には今の趙国への失望感が見えた気がした。
「…」
「殿、報告が。」
私が言葉掛けに悩み黙ったタイミングで、長髪の美青年が現れる。
報告があるという事は、何か問題でも発生したのだろう。
「おお、姜燕か。何かあったか。」
「はい。…この場でお伝えしても?」
姜燕という美青年は報告をしようにも、私達の存在を気にし、内容を伝えられずにいる。
「あの、廉頗様。一度席を外しますね。」
邪魔になってはいけないと思い、そう言って立ち上がろうとすれば、
「まあ待て。行かずとも良い。」
廉頗将軍の一言で引き止められ、腰を下ろすこととなった。
「あの、私は聞かないほうが…」
「構わん。聞かれて都合が悪い事でもあるまい。姜燕、報告せい。」
報告する側の困惑する様子からして、聞かせていい内容でも無いと思う。
しかし、廉頗将軍の迷わぬ判断に、誰も文句など言えるはずはない。
「は。…宴の席に間者が。」
「…!?」
"間者"…
この様な賑やかな宴の場にすら間者が紛れ込むとは。"間者"という言葉を聞いて驚きが隠せず目を見開いた。
「ほほぅ…間者、か。太子の奴め、そこまで儂を追い出したいか。…姜燕よ、その間者とやらは今どうしておる。」
間者が、太子の配下と…
すぐに理解してしまう辺り、前も同じようなことがあったのだろう。
「宴の席をあとにしようとしていたので、広間を出たところで捕らえました。…この後はいかに?」
問われた廉頗将軍は、気だるそうに近くの卓に片肘つくと、表情を消した。
「何を聞いたのか全て吐かせよ。その後は、そうじゃのう…」
「…」
廉頗将軍は、考える素振りを見せるでもなく、ただ黙ってどこかを見つめる。
気づけば、つい先程までは賑わいを見せていた場は、再び静まり返っていた。
「…斬れ。」
…そっと放たれた筈の言葉が、よく響いた気がした。
「…沙苗、うぬは春平君と会っていたそうだな。」
「は、はい。」
突然された質問に慌てて返事を返す。
「あ奴は阿呆であっただろう?」
「あ、阿呆…」
正直返答に困る。どう言ったら良いものか…
「あ、阿呆といいますか、その、純粋な方ではありましたね。」
「ふんっ、素直に阿呆だと言ってしまえば良いものを。」
いや、下手な発言は避けるべきだ。誰にどう聞かれているかわからない。
私の返答に不服な様子ではあるものの、すぐに"まあ良い"といった表情で言葉を続ける。
「…うぬは、あの阿呆を通して太子をどう見る?」
春平君を通して、現在の趙国太子"偃"という人物をどう見るか…
史実での人物像を知っている身としては、名君とも暴君とも言える微妙な印象がある。
しかし、この世界ではきっと後者…暴君なのだろう。
「…政治には、あまり興味が無い方なのだと。」
「ほぅ…何故、そう思った?」
目が、ギラリと光った気がした。
「は、はい。その、今回お会いした春平君様は政治的話には疎く…いえ、疎いというより、本当に"何も知らない"と言ったほうがいいでしょうか。まるで、そういった話には触れない環境で過ごしてきたかのようで……太子様はあえてその話を避けているのでは、と。」
この時代、政の話に関して多少は頭にある筈だ。
私の中には、寵愛する者と睦み合う際に交される話に、有能さを誇示する話題の一つとして政に関して触れる事が少しはあるというイメージがあった。
「いや、話は聞いていたが、あの阿呆が理解できていなかっただけやもしれぬだろう。」
廉頗将軍はすかさず言葉を挟む。
話をさらに掘り下げるつもりかもしれない…
「実際にお話しした限りでは、そうは感じませんでした。それと…噂を小耳に挟んだのですが、太子様はお身体があまりよろしくないとか。もし、それを気にされているのなら、政よりも太子様は、ご自身の身を……あ、そのっ、申し訳ございません!何と無礼な発言を…」
いくら返事を求められたとはいえ、今の発言は侮辱とも取れてしまう。
自身の失言に血の気が引いた。
「……ククッ、ガッハハハハ!!」
「っ!」
これは、まずい……?
「よく分かっておるではないか。」
「…え。」
…大丈夫、なようだ。
「あれは国より我が身。国の話に耳を傾けることなど全く無い。ありゃだめじゃ。今の王よりもっと酷くなるであろう。」
今の王"孝成王"は、廉頗将軍にとって暗君という部類に入ってしまうのだろう。
廉頗将軍の眼には今の趙国への失望感が見えた気がした。
「…」
「殿、報告が。」
私が言葉掛けに悩み黙ったタイミングで、長髪の美青年が現れる。
報告があるという事は、何か問題でも発生したのだろう。
「おお、姜燕か。何かあったか。」
「はい。…この場でお伝えしても?」
姜燕という美青年は報告をしようにも、私達の存在を気にし、内容を伝えられずにいる。
「あの、廉頗様。一度席を外しますね。」
邪魔になってはいけないと思い、そう言って立ち上がろうとすれば、
「まあ待て。行かずとも良い。」
廉頗将軍の一言で引き止められ、腰を下ろすこととなった。
「あの、私は聞かないほうが…」
「構わん。聞かれて都合が悪い事でもあるまい。姜燕、報告せい。」
報告する側の困惑する様子からして、聞かせていい内容でも無いと思う。
しかし、廉頗将軍の迷わぬ判断に、誰も文句など言えるはずはない。
「は。…宴の席に間者が。」
「…!?」
"間者"…
この様な賑やかな宴の場にすら間者が紛れ込むとは。"間者"という言葉を聞いて驚きが隠せず目を見開いた。
「ほほぅ…間者、か。太子の奴め、そこまで儂を追い出したいか。…姜燕よ、その間者とやらは今どうしておる。」
間者が、太子の配下と…
すぐに理解してしまう辺り、前も同じようなことがあったのだろう。
「宴の席をあとにしようとしていたので、広間を出たところで捕らえました。…この後はいかに?」
問われた廉頗将軍は、気だるそうに近くの卓に片肘つくと、表情を消した。
「何を聞いたのか全て吐かせよ。その後は、そうじゃのう…」
「…」
廉頗将軍は、考える素振りを見せるでもなく、ただ黙ってどこかを見つめる。
気づけば、つい先程までは賑わいを見せていた場は、再び静まり返っていた。
「…斬れ。」
…そっと放たれた筈の言葉が、よく響いた気がした。