06
主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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「あ、春平君様。」
そういえばと思い、呼び掛ける。
これは言っておいたほうがいいかもしれない。
「…? どうしたのだ?」
「今日私達が会ったこと、他の方には言わないほうがいいかもしれません。」
例え、やましい事が無くても言わないでおくべきだ。
「言わぬほうがよいのか?」
「はい。例え何も無くとも、誤解をあたえてしまう可能性があります。春平君様の大切な方に不安を抱かせてしまうような事があってはいけません。」
誤解を招いたが最後、私の命は……
だめだ、それはだめだ。
「そ、それもそうだな。この事は他の者には言わぬ。」
「はい、くれぐれも御用心を。…それでは春平君様、失礼いたします。」
私は軽く頭を下げ、扉へ向かおうとした。
「…沙苗、楽しかったぞ。また会おう。」
後ろからそう声がかかる。
「…」
私は振り返って、何も言わずに笑って礼をした。
そして再び扉の方へと歩みを進める。
次に会うかどうか、わからない。
けれど、仮に会えたとするならば…
その時は、あまり良くない状況だと思う。
…ただ、今は、頭の片隅に追いやろう。
・・
春平君の元から去って少し、養父の元に着いた。
「父上、お待たせしました。」
「ん?ああ、お疲れ様。…大丈夫だったかい?」
養父は不安そうにこちらを見る。
「はは…なんとか。けど、楽しかったですよ。」
楽しかったのは事実。好きな話ができるのはとても良いと思った。
「そうか…ははっ、楽しめたのか。それを聞いて安心したよ。」
私の言葉に、養父は穏やかに笑った。
「うん。よかった。…では、そんな君に申し訳ないが、この後王騎将軍、廉頗将軍に宴に呼ばれてね。君も勿論参加だ、準備をしたら向かおう。」
今日はもう終わりだ、そう思ったのに…
「…はい。」
宴という言葉が重い。そして、怖い。
王騎将軍と廉頗将軍。その想像もできぬ組み合わせは、恐怖を煽るには十分だった。
「…肩の力を抜きなさい。君なら大丈夫だ。」
大丈夫、なのだろうか。
趙国三大天、廉頗将軍…
「……」
これから会うのだと意識したら、言葉が出なかった。
・・・
「私が先に入る。君は私の後に続きなさい。」
「…」
コクリと頷き、養父の背中を見つめる。
扉がゆっくりと開けられ、強い光と、そして…
ガシャンッ バキッ
「このブタダヌキ!」
「ええい、五月蝿いわ!」
バリンッ
「ガハハハハ!面白いのォ!」
「……あの、父上…」
「…こういうものなのだ。」
かなりの大騒ぎだ。
録嗚未軍長と大男が掴み合い、机に並べられた食事も構わず暴れ…その周りに居る人間はそこまでいかずとも、しかし、騒いでいた。
「ガハハハ!…ん? おお、やっと来たか陵安!」
少しして、私達の存在に気づいたのか、奥にいた大柄の男性が養父の名を呼んだ。
遠目からでもわかるオーラが、彼こそが廉頗将軍であると語っている。
「遅かったですねェ、陵安。そして…沙苗。」
廉頗将軍の隣に居る王騎将軍が、こちらを見る。
それに合わせて、廉頗将軍もこちらを射抜く様に見つめた。
「はは。お許し下さい、将軍。」
「…も、申し訳ありません。」
頭を深々と下げる。
騒がしかった筈の宴の場が静まった。
そして、次々に視線が突き刺さる。
ここが、伝説とも呼べる人達が集まる空間。
頭を上げて前を見据える。
「ほぅ…うぬが沙苗か。」
「は、はい。」
養父の前にそっと出て廉頗将軍の目を見た。
落ち着けと、深く呼吸をして自分に言い聞かせる。
「…こちらへ来い、陵安、沙苗。飲むぞ。」
「は。…行こう、沙苗。」
「…はい、父上。」
もう、どうにもならない。
それに…
それに、私は変わらなければならない。今、ここで怯えている場合ではないのだ。
多くの兵の間を通り抜ける。突き刺さる視線に怯むことなくただ歩く。
途中、王騎将軍の方をちらりと伺えば、私の視線に気付いたのか、口元に弧を描いてこちらを見た。
…うん、きっと大丈夫。
独りじゃない。
王騎将軍のお陰で少し自信がついた。
今の私には度胸がある。
自分を信じよう。
…大将軍の座する前に来た。
「…ふむ、中々に良い目をしておるではないか。」
廉頗将軍はそう言ってニヤリと笑った。
そういえばと思い、呼び掛ける。
これは言っておいたほうがいいかもしれない。
「…? どうしたのだ?」
「今日私達が会ったこと、他の方には言わないほうがいいかもしれません。」
例え、やましい事が無くても言わないでおくべきだ。
「言わぬほうがよいのか?」
「はい。例え何も無くとも、誤解をあたえてしまう可能性があります。春平君様の大切な方に不安を抱かせてしまうような事があってはいけません。」
誤解を招いたが最後、私の命は……
だめだ、それはだめだ。
「そ、それもそうだな。この事は他の者には言わぬ。」
「はい、くれぐれも御用心を。…それでは春平君様、失礼いたします。」
私は軽く頭を下げ、扉へ向かおうとした。
「…沙苗、楽しかったぞ。また会おう。」
後ろからそう声がかかる。
「…」
私は振り返って、何も言わずに笑って礼をした。
そして再び扉の方へと歩みを進める。
次に会うかどうか、わからない。
けれど、仮に会えたとするならば…
その時は、あまり良くない状況だと思う。
…ただ、今は、頭の片隅に追いやろう。
・・
春平君の元から去って少し、養父の元に着いた。
「父上、お待たせしました。」
「ん?ああ、お疲れ様。…大丈夫だったかい?」
養父は不安そうにこちらを見る。
「はは…なんとか。けど、楽しかったですよ。」
楽しかったのは事実。好きな話ができるのはとても良いと思った。
「そうか…ははっ、楽しめたのか。それを聞いて安心したよ。」
私の言葉に、養父は穏やかに笑った。
「うん。よかった。…では、そんな君に申し訳ないが、この後王騎将軍、廉頗将軍に宴に呼ばれてね。君も勿論参加だ、準備をしたら向かおう。」
今日はもう終わりだ、そう思ったのに…
「…はい。」
宴という言葉が重い。そして、怖い。
王騎将軍と廉頗将軍。その想像もできぬ組み合わせは、恐怖を煽るには十分だった。
「…肩の力を抜きなさい。君なら大丈夫だ。」
大丈夫、なのだろうか。
趙国三大天、廉頗将軍…
「……」
これから会うのだと意識したら、言葉が出なかった。
・・・
「私が先に入る。君は私の後に続きなさい。」
「…」
コクリと頷き、養父の背中を見つめる。
扉がゆっくりと開けられ、強い光と、そして…
ガシャンッ バキッ
「このブタダヌキ!」
「ええい、五月蝿いわ!」
バリンッ
「ガハハハハ!面白いのォ!」
「……あの、父上…」
「…こういうものなのだ。」
かなりの大騒ぎだ。
録嗚未軍長と大男が掴み合い、机に並べられた食事も構わず暴れ…その周りに居る人間はそこまでいかずとも、しかし、騒いでいた。
「ガハハハ!…ん? おお、やっと来たか陵安!」
少しして、私達の存在に気づいたのか、奥にいた大柄の男性が養父の名を呼んだ。
遠目からでもわかるオーラが、彼こそが廉頗将軍であると語っている。
「遅かったですねェ、陵安。そして…沙苗。」
廉頗将軍の隣に居る王騎将軍が、こちらを見る。
それに合わせて、廉頗将軍もこちらを射抜く様に見つめた。
「はは。お許し下さい、将軍。」
「…も、申し訳ありません。」
頭を深々と下げる。
騒がしかった筈の宴の場が静まった。
そして、次々に視線が突き刺さる。
ここが、伝説とも呼べる人達が集まる空間。
頭を上げて前を見据える。
「ほぅ…うぬが沙苗か。」
「は、はい。」
養父の前にそっと出て廉頗将軍の目を見た。
落ち着けと、深く呼吸をして自分に言い聞かせる。
「…こちらへ来い、陵安、沙苗。飲むぞ。」
「は。…行こう、沙苗。」
「…はい、父上。」
もう、どうにもならない。
それに…
それに、私は変わらなければならない。今、ここで怯えている場合ではないのだ。
多くの兵の間を通り抜ける。突き刺さる視線に怯むことなくただ歩く。
途中、王騎将軍の方をちらりと伺えば、私の視線に気付いたのか、口元に弧を描いてこちらを見た。
…うん、きっと大丈夫。
独りじゃない。
王騎将軍のお陰で少し自信がついた。
今の私には度胸がある。
自分を信じよう。
…大将軍の座する前に来た。
「…ふむ、中々に良い目をしておるではないか。」
廉頗将軍はそう言ってニヤリと笑った。