06
主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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・・
ガタガタと振動がくる。
趙国行の目的が一致した私達は、邸から出て目的地へと進んだ。
私は養父と共に馬車に乗って移動しているが、その間にも盗賊の件を全て白状させられる。
「町の者達の中で、夜明け前に将軍の兵が動くのを見たという話を聞いたんだ。…その兵の中に君の姿があったという事もね。だから町の者は君が関わったことで解決したんだと言っている。」
…驚いた。
情報源は町の人達。しかも目撃証言まである。
…広まるのが早い上、他国にまで及ぶとは…噂というのは厄介だ。
「す、すみません…迷惑ばかりかけてしまって……」
揺れる馬車の中、俯きながら謝罪する。
本当は謝罪だけでは足りないほど、迷惑をかけているけれど、今はそれしかできない。
「…君は、無茶をするからね。いつも心配なんだ。…けれど、迷惑だとは思っていない。君が来て、妻の笑顔が増えた。君が何か解決してくれば、喜び顔のお客がやって来る。君は、私と妻にはもったいないくらい立派で…大事な娘だ。」
「え、あ……ありがとう、ございます。」
嬉し恥ずかし。少し俯いてニヤついてしまった。
しかし、喜んだのもつかの間、養父は私の表情を突き崩すかのように言った。
「…ただ、君は自分の事考えるべきだ。今回君は、趙国の大物といってもいいような存在と会う。この事がさらに広まる可能性が無いとも限らない。…呂丞相も背後で動いたという事は、少なからず君に興味を抱いるのだと捉えなさい。」
「…はい。」
ああ、そうだ。
話を聞く限り、私はもう呂不韋丞相という存在を回避することは難しいということ。
…けれど、きっと大丈夫。
頼り過ぎる訳ではないが、今の私には味方がいる。
顔を上げ、まっすぐに養父を見つめる。
「…そうか。…では、趙国に着くまで休みなさい。」
私の気持ちが伝わったのか、養父は一度目を瞬かせると満足したように言った。
・・・
「…さい。…きなさい。沙苗、起きなさい。」
「ん、は、はい…」
私は随分眠っていたようで、養父の呼び掛けによって目が覚めた。
寝ぼけ眼をこすり、緩やかな動きで姿勢を正す。
「もう趙国だ。早速だが、春平君殿の使者が来ている。行こう。」
その言葉を聞いて一気に意識が覚醒した。
警戒心と緊張感とが混ぜ合わさり、気持ちが悪い。
馬車から降りて、新鮮な冷たい空気を肺いっぱいに吸い込み冷静さを呼び戻す。
…何が来るかわからないが、何が来ても対応できるように頑張らなければ。
使者の後を追って歩みを開始した。
・・
「こちらです。どうぞお入りください。」
目的地に到着したものの、部屋の扉は既に開いており、入るよう促された。
「し、失礼します…」
小声でそう言い、入室する。
「おお!よく参ったな、陵安。」
「はは、お招きいただき感謝します。」
入ってすぐ、見目麗しい青年が養父に挨拶した。養父もその美青年に挨拶を返し、頭を下げる。
恐らくこの美青年が春平君だろう。
「…して陵安よ、そなたの娘とはそこの者の事か?」
美青年、春平君は養父の方を見たあと、私に視線を向けた。
さすが、寵愛を受けている存在なだけあって視線一つだけでも一瞬ドキリとする。
「はい。さあ沙苗、ご挨拶を。」
「は、はい。お初にお目にかかります、陵安の娘、沙苗と申します。」
そう紹介をすると、少し深めに頭を下げる。
「そなたの噂は聞いているぞ。沙苗、そなたの話が聞きたい。…陵安、良いな?」
突然名前を呼ばれたことに驚きつつも、子どものようにニコニコと笑って言った彼を咎める気はない。
「は、はあ、構いませんが。」
「そうか…!感謝するぞ、陵安。」
その言葉を聞き、養父は少し引き攣った笑顔で軽く頭を下げる。
養父の立場も複雑なものだ。
「いえいえ、ははは……沙苗、くれぐれも粗相のないように。」
「はい。では父上、後ほど…」
できれば行かないでほしかった…けど、仕方ない…
きっと、春平君は大丈夫…
そう思いつつ、最悪の事態も考える。
もし、春平君の機嫌を損ねるようなことがあれば…趙国との関係悪化は考えられる。
しかし、機嫌を損ねず…寧ろ気にいられる事になっても、太子から目をつけられる可能性は高く…
どちらにせよ、油断できない。
そう考えている間に養父は部屋から出てしまったのか既に居らず、中には私と、目を輝かせた春平君だけが残っていた。
ガタガタと振動がくる。
趙国行の目的が一致した私達は、邸から出て目的地へと進んだ。
私は養父と共に馬車に乗って移動しているが、その間にも盗賊の件を全て白状させられる。
「町の者達の中で、夜明け前に将軍の兵が動くのを見たという話を聞いたんだ。…その兵の中に君の姿があったという事もね。だから町の者は君が関わったことで解決したんだと言っている。」
…驚いた。
情報源は町の人達。しかも目撃証言まである。
…広まるのが早い上、他国にまで及ぶとは…噂というのは厄介だ。
「す、すみません…迷惑ばかりかけてしまって……」
揺れる馬車の中、俯きながら謝罪する。
本当は謝罪だけでは足りないほど、迷惑をかけているけれど、今はそれしかできない。
「…君は、無茶をするからね。いつも心配なんだ。…けれど、迷惑だとは思っていない。君が来て、妻の笑顔が増えた。君が何か解決してくれば、喜び顔のお客がやって来る。君は、私と妻にはもったいないくらい立派で…大事な娘だ。」
「え、あ……ありがとう、ございます。」
嬉し恥ずかし。少し俯いてニヤついてしまった。
しかし、喜んだのもつかの間、養父は私の表情を突き崩すかのように言った。
「…ただ、君は自分の事考えるべきだ。今回君は、趙国の大物といってもいいような存在と会う。この事がさらに広まる可能性が無いとも限らない。…呂丞相も背後で動いたという事は、少なからず君に興味を抱いるのだと捉えなさい。」
「…はい。」
ああ、そうだ。
話を聞く限り、私はもう呂不韋丞相という存在を回避することは難しいということ。
…けれど、きっと大丈夫。
頼り過ぎる訳ではないが、今の私には味方がいる。
顔を上げ、まっすぐに養父を見つめる。
「…そうか。…では、趙国に着くまで休みなさい。」
私の気持ちが伝わったのか、養父は一度目を瞬かせると満足したように言った。
・・・
「…さい。…きなさい。沙苗、起きなさい。」
「ん、は、はい…」
私は随分眠っていたようで、養父の呼び掛けによって目が覚めた。
寝ぼけ眼をこすり、緩やかな動きで姿勢を正す。
「もう趙国だ。早速だが、春平君殿の使者が来ている。行こう。」
その言葉を聞いて一気に意識が覚醒した。
警戒心と緊張感とが混ぜ合わさり、気持ちが悪い。
馬車から降りて、新鮮な冷たい空気を肺いっぱいに吸い込み冷静さを呼び戻す。
…何が来るかわからないが、何が来ても対応できるように頑張らなければ。
使者の後を追って歩みを開始した。
・・
「こちらです。どうぞお入りください。」
目的地に到着したものの、部屋の扉は既に開いており、入るよう促された。
「し、失礼します…」
小声でそう言い、入室する。
「おお!よく参ったな、陵安。」
「はは、お招きいただき感謝します。」
入ってすぐ、見目麗しい青年が養父に挨拶した。養父もその美青年に挨拶を返し、頭を下げる。
恐らくこの美青年が春平君だろう。
「…して陵安よ、そなたの娘とはそこの者の事か?」
美青年、春平君は養父の方を見たあと、私に視線を向けた。
さすが、寵愛を受けている存在なだけあって視線一つだけでも一瞬ドキリとする。
「はい。さあ沙苗、ご挨拶を。」
「は、はい。お初にお目にかかります、陵安の娘、沙苗と申します。」
そう紹介をすると、少し深めに頭を下げる。
「そなたの噂は聞いているぞ。沙苗、そなたの話が聞きたい。…陵安、良いな?」
突然名前を呼ばれたことに驚きつつも、子どものようにニコニコと笑って言った彼を咎める気はない。
「は、はあ、構いませんが。」
「そうか…!感謝するぞ、陵安。」
その言葉を聞き、養父は少し引き攣った笑顔で軽く頭を下げる。
養父の立場も複雑なものだ。
「いえいえ、ははは……沙苗、くれぐれも粗相のないように。」
「はい。では父上、後ほど…」
できれば行かないでほしかった…けど、仕方ない…
きっと、春平君は大丈夫…
そう思いつつ、最悪の事態も考える。
もし、春平君の機嫌を損ねるようなことがあれば…趙国との関係悪化は考えられる。
しかし、機嫌を損ねず…寧ろ気にいられる事になっても、太子から目をつけられる可能性は高く…
どちらにせよ、油断できない。
そう考えている間に養父は部屋から出てしまったのか既に居らず、中には私と、目を輝かせた春平君だけが残っていた。