05
主人公のお名前を。無ければ「沙苗」に。
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「コココ。ただ、今のあなたにはそれを考えるだけの余裕はありませんねェ。あの戦いの後から悪い夢でも見るようになったのでしょう。」
ドキッとした。
何から何までお見通しというわけなのか。
「…あはは、困りました。何でもわかってしまうんですね。」
口元が引き攣る。
隠すほどでもないけれど、心配をかけさせてしまうのは申し訳無い。だからこそ言わないようにしていたのに…
「あなたがわかりやすいだけですよ。ンフフ、あれだけの度胸があっても、こういう所で遠慮するなんておかしな人ですねェ。」
「…何といいますか、自分で戦いというものに関わる決定をしましたし…。それに、夢は覚めますから。」
今は恐ろしさを残しても、きっと時が経てば少しは…
「覚めるものだと安心するのはよくありませんよォ。…あなたは、戦うということの本当の恐怖を知らなかった。あなたが生まれた場所には既に戦争もないのでしょうからねェ。」
全くその通りだ。戦争も何も、私の国には無い。既に終結を迎え、紙面でしか語られなくなっているから。
「本当に、初めてでした。恐怖を知り、重みを知り…夢にまで見るほどのものだとは…」
王騎将軍は私の言葉を聞き、口角を上げた。
「…仕方ありませんねェ。沙苗、私の目を見なさい。」
何だろう。少し下げていた視線を上げて、王騎将軍の目を見つめた。
迫力がある。
…けれどもそれだけではない。
「…」
「ンフフ、あなたなら乗り越えられるでしょうが、一つ。」
「……!」
息を飲み、目を見開く。
「あなたの前には、この王騎がいます。あなたの秘密を知る唯一の存在として、手を貸しましょう。迷った時は、私の後を己の足で追ってみせなさい。」
王騎将軍はつまり、私の秘密を知った上で味方になってくれると、そう言ってくれたのか。
都合のよい解釈かもしれない。けれど、その言葉は希望だった。
…少し憑き物が落ちたような気がして、自然と涙が溢れた。
「コココココ、まだまだ未熟ですねェ。」
「す、すみませんっ…」
拭えども拭えども、溢れる涙は止まることを知らない。
拭っている途中、一瞬見えた王騎将軍の目が優しげに見えて、また涙が溢れた。
この世界に来て、話して良い事と悪い事、それらを必死で判断してきた。
私がこの世界の人間ではないと、そう言ってしまえば生きづらくなるのはわかっている。
だからこそ、誰にも言えないという孤独を抱え、苦しかった。
「…っ、ありがとう、ございます…」
この日、それ以上の事を話すことはなく終わりとなり、私は食事をとって眠りについた。
悪夢は、見なかった。
・・・
翌朝、起きてから少し散歩でもと思い邸内を歩いていると、前方から使用人が走って私の元までやってきた。
「沙苗様!」
「あの、どうしたんですか…?」
とてもデジャブを感じる。
使用人が走って来たら、何かが起きる。
「陵安様がお越しになられました!そのっ、とてもお急ぎの様子でして…」
使用人はそう言うと、困った顔でこちらを見つめてきた。
…急ぎで…?
何か、事件でも……
「わかりました、すぐに向かいます。」
私は走って養父の元へと向かった。
・・
「っお待たせしました!…ち、父上っ、な、何かあったんですか…!」
ぜぇはぁと息を切らして養父の元へにつくと、相手は驚きで目を見開いていた。
しかし、すぐに表情を戻し、困った様子で私に近寄った。
「沙苗、君は今回の盗賊の件に関わったね…いや、今は良いとしよう。沙苗、これからすぐに私の邸に戻って再び出る支度をして欲しいんだ。」
「…?はい、構いませんが…何かあったんですか?」
一瞬盗賊の件に触れられて焦ったけれど、それどころじゃない様子で話題を変えた養父。
邸に戻って再びどこかへ出るのは良いけれど、一体何があって、どこに向かうのだろうか。
養父に聞いてみると、今までに見たことがない程の顔の青さで答えた。
「趙国の王は知っているね?…その王の太子、偃(えん)様から寵愛を受ける春平君という方が、君の噂を聞いたようで……私と親交の深い商人を介して、是非会ってみたいと言ったそうなんだ…」
「つまり、趙国太子様の寵愛を受けた…春平君……えぇ?!私に…??え、待って下さい、そんな、無理です…!」
「…すまない…断ろうとしたんだが…」
養父は青い顔で謝った。
…ちょっと待って…そんなのは無理…
頭が追いつかない。
目が回ったような気がした。
ドキッとした。
何から何までお見通しというわけなのか。
「…あはは、困りました。何でもわかってしまうんですね。」
口元が引き攣る。
隠すほどでもないけれど、心配をかけさせてしまうのは申し訳無い。だからこそ言わないようにしていたのに…
「あなたがわかりやすいだけですよ。ンフフ、あれだけの度胸があっても、こういう所で遠慮するなんておかしな人ですねェ。」
「…何といいますか、自分で戦いというものに関わる決定をしましたし…。それに、夢は覚めますから。」
今は恐ろしさを残しても、きっと時が経てば少しは…
「覚めるものだと安心するのはよくありませんよォ。…あなたは、戦うということの本当の恐怖を知らなかった。あなたが生まれた場所には既に戦争もないのでしょうからねェ。」
全くその通りだ。戦争も何も、私の国には無い。既に終結を迎え、紙面でしか語られなくなっているから。
「本当に、初めてでした。恐怖を知り、重みを知り…夢にまで見るほどのものだとは…」
王騎将軍は私の言葉を聞き、口角を上げた。
「…仕方ありませんねェ。沙苗、私の目を見なさい。」
何だろう。少し下げていた視線を上げて、王騎将軍の目を見つめた。
迫力がある。
…けれどもそれだけではない。
「…」
「ンフフ、あなたなら乗り越えられるでしょうが、一つ。」
「……!」
息を飲み、目を見開く。
「あなたの前には、この王騎がいます。あなたの秘密を知る唯一の存在として、手を貸しましょう。迷った時は、私の後を己の足で追ってみせなさい。」
王騎将軍はつまり、私の秘密を知った上で味方になってくれると、そう言ってくれたのか。
都合のよい解釈かもしれない。けれど、その言葉は希望だった。
…少し憑き物が落ちたような気がして、自然と涙が溢れた。
「コココココ、まだまだ未熟ですねェ。」
「す、すみませんっ…」
拭えども拭えども、溢れる涙は止まることを知らない。
拭っている途中、一瞬見えた王騎将軍の目が優しげに見えて、また涙が溢れた。
この世界に来て、話して良い事と悪い事、それらを必死で判断してきた。
私がこの世界の人間ではないと、そう言ってしまえば生きづらくなるのはわかっている。
だからこそ、誰にも言えないという孤独を抱え、苦しかった。
「…っ、ありがとう、ございます…」
この日、それ以上の事を話すことはなく終わりとなり、私は食事をとって眠りについた。
悪夢は、見なかった。
・・・
翌朝、起きてから少し散歩でもと思い邸内を歩いていると、前方から使用人が走って私の元までやってきた。
「沙苗様!」
「あの、どうしたんですか…?」
とてもデジャブを感じる。
使用人が走って来たら、何かが起きる。
「陵安様がお越しになられました!そのっ、とてもお急ぎの様子でして…」
使用人はそう言うと、困った顔でこちらを見つめてきた。
…急ぎで…?
何か、事件でも……
「わかりました、すぐに向かいます。」
私は走って養父の元へと向かった。
・・
「っお待たせしました!…ち、父上っ、な、何かあったんですか…!」
ぜぇはぁと息を切らして養父の元へにつくと、相手は驚きで目を見開いていた。
しかし、すぐに表情を戻し、困った様子で私に近寄った。
「沙苗、君は今回の盗賊の件に関わったね…いや、今は良いとしよう。沙苗、これからすぐに私の邸に戻って再び出る支度をして欲しいんだ。」
「…?はい、構いませんが…何かあったんですか?」
一瞬盗賊の件に触れられて焦ったけれど、それどころじゃない様子で話題を変えた養父。
邸に戻って再びどこかへ出るのは良いけれど、一体何があって、どこに向かうのだろうか。
養父に聞いてみると、今までに見たことがない程の顔の青さで答えた。
「趙国の王は知っているね?…その王の太子、偃(えん)様から寵愛を受ける春平君という方が、君の噂を聞いたようで……私と親交の深い商人を介して、是非会ってみたいと言ったそうなんだ…」
「つまり、趙国太子様の寵愛を受けた…春平君……えぇ?!私に…??え、待って下さい、そんな、無理です…!」
「…すまない…断ろうとしたんだが…」
養父は青い顔で謝った。
…ちょっと待って…そんなのは無理…
頭が追いつかない。
目が回ったような気がした。