第二十三話 暗く、深く、広い世界

 カフェボストークの二階で、悠里はメルクリウスに頭を下げた。
「ありがとう、メルクリウス。」
「オレに出来ることは、この位しかない。」
 メルクリウスが弱く笑むと、悠里は首を横に振った。
「いや、十分過ぎる情報だ。」
「曙光研究所に行くんですね、ユーリィさん。」
 虎徹が希望を見つけたような、強気の表情で確認する。瑠璃も同調して声を上げた。
「私も一緒に行きます!」
「オレも! ……。」
 声を上げた後、表情を曇らせた歩を見て、悠里は少し思うように黙ってから虎徹、瑠璃に声をかけた。
「……本当にすまないが…お前達に任せてもいいか。」
「え!?」
 虎徹と瑠璃が驚きを見せると、悠里ははっきりと言った。
「気にかかることがある。オレはここに残らなければならない。」
「そうですか…。」
 虎徹が戸惑いつつも頷くと、朔も口を開いた。
「…オレも行きたいです。何の役にも立たないかもしれないけど…。」
「何言ってんだ。一番ベルカを取り戻したいお前が行かなくてどうすんだ。」
 虎徹が言い切ると朔は一瞬驚き、目を見開いた。唇を結び、虎徹に頭を下げた。
「…ありがとうございます。」
 嵐と燐は、彼らとメルクリウスを見比べていた。気づいたメルクリウスが声をかけた。
「V、1B。お前達も行くといい。彼らの力になってくれ。」
 メルクリウスの言葉に、嵐と燐の表情は輝いた。
「メルクリウス…!」
「ありがとう、メルクリウス。」
 虎徹が皆を見回し、確認した。
「長丁場になるだろうな。準備に今夜一晩使おう。山ん中だから最低限準備はしろよ。」
「うん!」
「解りました。」
 皆が虎徹に向かって頷く中、悠里は歩を呼ぶ。
「プシンカ。」
「…はい。」
 少し弱い声を発した歩に、悠里は真摯な声で聞かせた。
「行く時は、ちゃんとウゴリョークに声を掛けてから行け。…気をつけて行って来い。」
「…はい。」
 歩は弱い声のまま、ゆっくりと頷いた。

 どこかの廃倉庫で、エンタープライズとディスカバリーは立ち上がった。
「ジェミニとエンデバーも行ったし、オレ達も行くか。」
「そーだな。」
 気絶している鼎を負ったエンタープライズとディスカバリーが倉庫を出て歩き出すと、外で見張りをしていた元アポロの人間達が付いて来た。
 気づいたエンタープライズは振り返り、疑問符を浮かべた。
「何故付いてくる?」
「…え?」
「な、何でって、オレ達…。」
 元アポロの彼らが大いに戸惑うと、エンタープライズは言葉を投げた。
「お前達にもう用はない。後はお前達は解散だ。」
 彼らはさらに戸惑い、どよめいた。
「か、解散…!?」
「お、オレ達はジェミニと…!」
「…面倒臭いな。」
 エンタープライスは眉間にしわを寄せると、片手で自分のスマートフォンを操作し始めた。まもなくスマートフォンからジェミニの声がした。
『…何? エンタープライズ。』
「ジェミニ!!」
「こいつらが、オレ達は用済みだとか何とか言いやがって…!」
 彼らが必死でスマートフォンに向かって訴えると、ジェミニはあっさりと返した。
『うん、その通りだよ。君達はもういい。邪魔だから付いて来ないで。』
「…!! 騙しやがったのか!!」
「お前ら、オレ達の味方だって…!」
 いきり立つ彼らにひるむ様子もなく、ジェミニは言う。
『味方だとは言ったよ。君達の言い分は解る。でもそれだけだ。オレは君達の無駄な破壊行動の手伝いするとは一言も言ってないから。』
「な…!」
『それにねえ、世間から弾かれて路頭に迷ってたのを拾い上げて、ずっと守ってくれた人間を容赦無く殴りつける…はっきり言って、そんな恩知らずをそばに置いておきたくないんだ。』
 ジェミニが嗤いを含んだ声で言い切ると、彼らは顔を真っ赤にして叫んだ。
「…ふざけんなあ!!」
「図星指されてキレるのって、みっともないから止めない?」
 ディスカバリーが攻撃的に笑むと、周囲に強風が起こった。
 次の瞬間、元アポロの彼らの体はズタズタに切り裂かれた。ぱっくり開いた傷口から血が流れ、皆倒れた。
「うあ、ああ…!」
「痛えよおっ…!」
 痛みに蹲る彼らに、ジェミニは最後の言葉を投げた。
『というわけで、後は君達で好きにやりなよ。』
 通信が途絶える。血の海に背を向け、エンタープライズとディスカバリーは歩いて行った。

「困ったもんだよね…。」
 0と1の世界でジェミニが嗤いながら呟くと、ジェミニのそばにあった大きな繭が壊れ始めた。
 気づいたジェミニは、歓喜の声を上げた。
「あぁ!!」
 大きな繭が消えると、強張った表情をしたライカが現れた。
「やっと会えた! ライカ姉さん!!」
 ジェミニがライカに触れようとすると、ライカは思い切りジェミニの頬を張った。
「どうして!! どうして君は、こんな酷いことばかり…!!」
 ライカの必死の叫びに、ジェミニは平然と返した。
「どうしてって、オレ達がまた一緒にいるためだよ。オレはあの時言った。みんなとずっと一緒にいるって。」
「あの時とはもう違う!! お父様はいないし、僕はもう…!!」
 ライカが頭を振ると、ジェミニは口角を吊り上げた。
「そう。もう違う。父さんが作った神舟が姉さんの彼氏、友達、みんなを酷い目に合わせたんだから。」
 ジェミニに言い放たれた言葉に、ライカが目を見開く。瞳が震え、体も震える。ライカは力無く、その場にへたり込んだ。
 ジェミニは口角を吊り上げたまま、ライカのそばにしゃがみ、囁いた。
「ジョウガ姉様のところへ行こう。三人でまた一緒に暮らす。オレ達にはそれしか無いんだ。」
「…無理だよ…。」
 ライカが弱々しい声を発すると、ジェミニは言った。
「その無理を可能にするために、オレは今まで色々やってきたんだ。」

 その夜。笄堂家の屋敷。
 歩はある部屋の前にいた。部屋のドアは固く閉ざされており、物音一つ聞こえてこない。
 歩はドアの向こうに届くように、声をかけた。
「…メグ。」
 部屋の主である恵の声は返ってこなかった。歩は続けて話した。
「…ライカさんとベルカさんがいるところが解ったんだ。オレ、二人を助けに行ってくるよ。」
 中にいるはずの恵は、何も返さない。歩は少し逡巡した後、懸命に言葉にした。
「…メグ。…メグの苦しいこと、解ってやれなくてごめん。オレにはボストークのみんなも大事だけど、メグも大事なのに…ごめんな。」
 歩は後ろ髪を引かれるように、ドアからゆっくりと離れた。

 歩の声が聞こえなくなり、部屋の外から聞こえる足音が遠くなっていく。
 暗い部屋の中に独りでいた恵は、ベッドの上で小さくうずくまった。

 家の自室にいた結緒のスマートフォンが鳴った。
「メール?」
 結緒が音に気づき、スマートフォンの画面を確認する。間も無くメール画面が開かれ、短い文章が表示された。

「差出人:片桐朔
 明日、鼎を助けに行ってくる。
 話をたくさん聞いてくれて、本当にありがとう。
 鼎を助けるために、頑張ってみる。」

「…そっか。」
 結緒は安心したように笑むと、メールに返信した。

「差出人:中畑結緒
 どこ行くのか解らないけど、気をつけて行ってきてな。頑張れ。」

 携帯電話に届いた結緒からの短いメールを読み、朔は小さく笑みを見せた。
「中畑…。うん。」
「朔?」
 茶の間に入って来た朔の祖父が、朔の様子を見て疑問符を浮かべる。朔は顔を上げ、祖父に真っ直ぐに伝えた。
「じっちゃん。明日オレ、鼎を助けに行ってくるよ。ちょっと遠くに行くから、遅くなるかもしれないけど、行ってくる。」
 祖父は一瞬驚いたように目を見開いたが、眼差しを緩め、言葉をかけた。
「…そうか。頑張れ。」
「…うん。」
 朔は強く頷いてみせた。

 瑠璃の家。
 一連の事情を話した虎徹と瑠璃を前に、瑠璃の姉である玻璃(はり)は穏やかに頷いた。
「そう…鼎君を助けに行くんだ。」
「はい。」
「うん。」
「…ふふ。」
 虎徹と瑠璃が頷くと、玻璃は小さく笑った。瑠璃はその様子に首を傾げる。
「お姉ちゃん?」
「前は瑠璃は虎徹君のことしか信じていなかったし、虎徹君も瑠璃のことでいっぱいいっぱいだった。それが他の友達のことも考えられるようになったんだなあって、嬉しかったの。」
 目を細めて綺麗に笑む玻璃に、虎徹はよく解らないというように生返事をした。
「はあ…。」
「うん。そうなれたの、私も不思議。」
 瑠璃が嬉しそうに頷くのを見ると、玻璃もまた嬉しそうに笑い、立ち上がった。
「少し遠いところに行くって言ってたわね。おにぎり作ってあげようね。何人くらい行くの?」
「あ、ありがとうございます、玻璃さん!」
「お姉ちゃん、ありがとう。」
 虎徹は慌てて玻璃に頭を下げ、瑠璃は満面の笑みを見せた。

 0と1が全てを構築するネット世界。
 ジェミニは瞼を伏せ、一人で物思いに耽っていた。

「…ここは…?」
 上の姉であるジョウガによって、神舟の中から弾き出されたジェミニが我に返る。周りを見回すと、あらゆる物が0と1で造られている場所にいた。
「姉さんは…? ライカ姉さん…。」
 ジェミニは不安で泣きそうになりながら、更に周りを見回す。ライカの姿はどこにも見えなかった。
「探さなきゃ…姉さんを…。」
 右も左も解らない世界を、ジェミニは頼りなげに動き始めた。

 ネットを通じてリアルタイムで会話をしている部屋を、ジェミニは見つけた。どこかにあるチャットルームだった。
「ここで、聞けないかな…。」
 ジェミニは意を決してチャットルームに入り、問うた。

「誰か、オレの姉さんを知りませんか…?」
「ていうかお前何?」
「関係ないなら、話に割り込んでくんなよ」

 チャットの参加者から冷ややかな対応を受け、ジェミニは怖くなり、黙ってそのチャットルームから離れた。

 また別のチャットルームで、ジェミニが同じことを参加者に問うと、逆に問われた。

「姉さんって…何か解ることあるの?」
「えっと…オレと似た顔で…」
「似た顔って言われても…」
「薄い髪の色で、顔立ちは中性的で…あと、背中に羽がある…」

 ジェミニからのたどたどしい情報を読み、参加者達は一様に不審の言葉を向けた。

「何それ」
「ヤバい奴だって、そいつ」
「オレ落ちます」
「私も。また今度ー」

 ジェミニはリアルタイムで話をしている場所を見つけては入り込み、姉の手がかりを聞いて回った。
 その度に冷たい対応をされたり、不審の目を向けられ続けた。

「誰か、オレの姉さんを知りませんか…?」

 ある時、ジェミニが部屋に入って言った途端、反応が返ってきた。

「うわ、例のチャット荒らしだ」
「あらし…?」

 ジェミニが戸惑っていると、参加者達は次々に発言してきた。

「例のチャット荒らしって、最近よく聞く奴?」
「そうそう。突然来て、関係ないこと口走るおかしい奴」
「うわ、オレ初めて見た」
「ちょっと、迷惑なんで帰ってもらえます?」

 ジェミニは目に涙を溜めながら、ネットの世界を彷徨っていた。
「関係ない…関係あるところって言われても…。」
 そうしている内に、ジェミニはまたあるチャットルームに行き着いた。
「ここは…?」

 ジェミニがチャットルームに入ると、挨拶がされた。

「あ、初めての人だ、こんにちはー」
「…誰か、オレの姉さんを知りませんか…?」

 ジェミニが恐る恐る発言すると僅かの間の後、反応が返ってきた。

「色々、女の人の情報載ってるところなら知ってるけど。」
「え、どこですか!」

 ジェミニが食いつくと、反応をした人間はあるURLを提示してきた。

「ここだよ」
「あ…! ありがとうございます!!」

 ジェミニはすぐさま、教えられたURLにアクセスした。
「…え…!?」
 そのURL先を見たジェミニの顔は蒼白になった。
 そこは真っ暗な背景に、たくさんの女性の画像が載っているサイトだった。
「え…え!?」
 中には裸の画像や流血沙汰、場所によっては死んでいると思われる画像も載っている。
「ね、姉さん、姉さん…!」
 ジェミニは泣きそうになりながら、姉が酷い目にあっていないかと必死で探した。
 そのサイトにはコメント欄もあった。コメント欄には様々なコメントが載っていたが、一様に伺えるのは、皆裸や流血沙汰の画像を楽しんでいるということだった。

 たくさんの画像の中には、姉の姿はなかった。
「…姉さん、載ってなかった…。」
 姉がいなかったことにホッとしながらも、心は嵐のように揺れている。
 ジェミニは情報を貰ったチャットルームを訪れた。入ろうと見ると、数人が発言していた。

「あいつやっぱりヤバい荒らしだったよな、ころっと騙された感じで」
「ああ、あの『おねえちゃんしりませんか〜』って奴な」
「何も知らないバカって怖いよな〜」
「そうそう」

 発言を見て、ジェミニは悟った。

 ああ、そうか…。こいつらはオレを嗤うために、あの場所を教えたんだ…。

 発言を見るジェミニの眼差しは、昏い光を宿していた。

 それからジェミニは、広大なネット世界をあちこち関係なく渡り歩き、様々な情報をかき集め始めた。
 ネット上でのルール、プログラミング、ウイルスの作り方、ハッキングの仕方…様々な情報を仕入れていった。
 また、あらゆる情報が飛び交う掲示板や、俗に裏サイトと言われる、一般の人々があまり見ることのないサイトも頻繁に覗いた。

「こんな動画…取り締まって消す方も大変だろうなあ。」
 ある時ジェミニが見ていたのは、無抵抗の人間を殺す動画だった。ジェミニは何を思うでもなく、無感動に動画を見やっていた。

 オレはあの時まで、母さんと家族の身に起こったことが最悪で、これより下は無いものだと思っていたけど、世界は広い。どこまでも暗く、深く、広い。
 母さんが殺されたのはまだマシなやり方で、実際はもっと酷い殺し方もあるということ。そうして人が殺される様を見て、喜ぶ人間がいるということ。
 そして…世界に対して無知な人間程、他人に傷つけられやすいことを知った。

 ジェミニがネット世界を渡っていた時、見覚えのある背中を遠くに見た。作り物の翼を負った、女性の背中だった。
「あれは…!」
 ジェミニの表情が輝く。ジェミニは真っ直ぐにその背中に向かった。
「…ライカ姉さん…!」
 ジェミニは背中に向かって声を掛ける。その背中の主、ライカは気づかない。
 ジェミニは不思議に思い、目を凝らしてよく見る。少し離れたところにいるライカはチャットが出来るツールを使い、何者かと話をしている。楽しそうに笑いながら。

「ありがとう、ユーリィ。」

 ライカと話す何者かの名が見えた。ジェミニの瞳に宿る昏い光が、燃えるように揺れた。

 ライカ姉さんはオレに気づく様子もなく、回線の向こうにいる誰かと、本当に楽しそうに話をしていた。
 …オレがもたもたしている間に、姉さんを奪われた。

 ネット世界を行きながら、ジェミニは思考した。

 姉さんを取り戻す。
 でも、相手は回線の向こうにいる人間。
 その気になれば、ネット上にしかいられないオレがどうしようが、姉さんにアクセスして来るだろう。
 どうすればいい。どうすればあいつから、姉さんを永久に取り戻せる…?

 思考しながら、ジェミニはある掲示板にたどり着く。そこにあった書き込みが、ジェミニの脳を捉えた。

「誰かオレと死んでください。オレを殺してくれるのでも構いません。」

 とある自殺者募集の裏掲示板。
 そこにあった書き込みの一つに何かを感じて、オレは気まぐれに書き込みの主と話をした。
 一言目にそいつが言ったのは。

「…一緒に死んでくれるんですか?」

 こいつは相当参ってるなと思った。相当痛めつけられてきたんだろう。
 オレは返した。

「…辛かったね」
「本当に辛い思いしたんだね。本気で死にたいと思う位まで…」

 そいつは何も返してこなかった。オレは続けて発言した。

「オレはとても寂しいんだ」
「大切な人が悪い奴に捕まって、オレはどうすることも出来ない。取り返そうにも、悪い奴が邪魔をするんだ。オレは独りぼっちにされたんだ」
「君、死ぬ前に、オレと友達になって」
「オレと友達になってよ」

 今となっては、何故そんなことを言う気になったのか解らないけど…オレが発言し終わってしばらく経った頃、反応が返ってきた。

「…オレは赤い稲光に打たれてから、悪魔になったんです。」

 ネットの情報で知っていた。画像や動画でも見た。
 赤い稲妻。父さんが作り、オレ達姉弟が協力した神舟が世界中に降らせたもの。
 打たれたものは死ぬか、人生狂わされていること。
 回線の向こうにいる、心が弱り切り、何も見えなくなった人間。
 …使えそうだと思った。

「いじめられている能力者を、君なら救えるんじゃないかな。優しい君なら」
「オレは何も出来ない悪魔で…」
「何も出来ないこと無いじゃない。…ネットが使えるっていうのは、それだけで武器だよ」

 オレは彼…メルクリウスを励まして、姉さんを取り戻すための軍隊…アポロを作った。

 メルクリウスは思っていた以上に優しい奴で、軍隊達のことでたまには逆らわれることもあったけど、基本的にオレには忠実だった。
 でも甘ちゃんのメルクリウスに頼っても、オレの「目的」は達成できないと解っていた。オレはメルクリウスを焚きつけながら、新しい力が転がり込んで来るのを狙っていた。
 今やメルクリウスも新しい力も、用済みになった。帰る準備がようやく整った。
 やっと、やっとオレ達三人、また…。

 着信音が鳴り、ジェミニの思考が現実に引き戻された。
 チャットが出来るアプリから、ジェミニに向かって発言が送られてきた。

「ジェミニ、起きてる?」
「エンデバーどうしたの? そっちは夜だよね」
「眠れないから、お話したかっただけ。起こした?」
「いいよ。起きてたからね」
「起きてたの?」
「ちょっと、昔を思い出してたんだ」
「昔?」
「そう、昔だよ」

 ジェミニは少し思うように眼差しを伏せ、また発言をエンデバーに送った。

「…エンデバー、ここまで付いてきてくれてありがとう。もう少し、力になってくれると嬉しいな」
「うん。私、ジェミニの力になるよ」
「…ありがとう。そろそろおやすみ、エンデバー」
「おやすみなさい、ジェミニ」

 ジェミニは通信を切ると、すぐ横を見た。ライカが目に涙を溜めて眠っていた。
 ジェミニはライカの寝顔を見ながら、柔らかい声で呟く。
「…ライカ姉さん。ジョウガ姉様と、また三人で会えるね。」

 翌朝のカフェボストーク。
「準備いいか、みんな。」
 虎徹が皆を見回すと朔、瑠璃、歩、嵐、燐は頷いてみせる。悠里は皆に声をかけた。
「くれぐれも気をつけてくれ、みんな。ヴェテロク、みんなを頼む。」
「はい!」
 見送りに来ていたメルクリウスは、皆の顔を見て一瞬表情を強張らせた。気づいたアトラスが声をかける。
「メル?」
「…いや。V、1B、気をつけて。」
 メルクリウスが首を横に振り、ぎこちなく嵐と燐に声をかけると、二人は強く頷いた。
「解った。」
「燐、気をつける。」
「じゃあ行くぞ!」
「おう!」
 気合を入れ、六人はカフェボストークのドアを開けた。

To Be Continued
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