カロスの棚
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付き合ってない。
でも両思い。
おまけページあり。
ーーーーーーー
「お前、まだ居るのかよ?」
と、グリーズが呆れた声を投げる頃。
すっかりミアレの夜は更けていた。
「いい加減帰んないと眠れなくなるぞ?」
そう言いながら、グリーズが私の向かいの席に座り頬杖をつく。仕事中に座って良いの?と言いたいけれど、お客はいつの間にかもう、私一人しか居なかった。
「分かってるわよ、これを飲んだらもう帰るわ。」
テーブルの上には飲みかけの珈琲が入ったコップが一つ。あと数口飲めば終わりの量が、冷めてぽつんと鎮座している。
「そんなに美味いのかよ?冷めた珈琲が。」
「えぇ、冷めても美味しいわよ。」
素直な感想を口にして、私は残った液体を飲み干した。
口に広がる苦味を楽しむ。
グリーズは「ふーん」と軽く聞き流し、私が飲み切るのを確認すると、待ってましたと言わんばかりにコップを奪って立ち上がった。
「おーし!じゃあこれで閉店。おーい、グリ!キッチンの締めは終わった?」
キッチンカーへと振り返り、グリーズは車内にいるグリに話し掛ける。そこには既に作業を終えて車から降り、手持ちのリザードンをボールに戻すグリが居た。
「もう既に終わらせていますよ。」
にこやかに告げるグリ。
私が居たんじゃ帰れなかったのに、嫌な顔一つもせずいてくれる。甘えてしまった事に少し申し訳なく私は立ち上がり荷物の鞄を手にすると、急にグリーズに腕を引き寄せられた。
「ん、じゃ残りは私がやるからさ。リリィを家まで送ってやんなよ。」
「っ!」
1人では帰さない。
と言う様に、腕をきつくホールドされた。
私は驚きのあまり目を見開き、硬直する。
「ちょ、グリーズ、だっ大丈夫よ!1人で帰れるわ!」
慌てて彼女を見ると、私の耳元に顔を寄せるグリーズ。
「うるさい、グリと近付けるチャンスだぞ?この機会を逃すなよ。」
小声でされる耳打ちに、思わずドキリと胸が高鳴る。
確かにこんなチャンスは無い。
でも、あまりにも突然過ぎて私は断られるのでは?と彼の方を見ると、笑顔を崩さず近付いてきた。
「良いですよ、女性お一人の夜道は危険ですからね。」
「へ?…あ、そ…そう…。」
拍子抜けした声を出してしまい、私はグリーズに背中を押されて「じゃあな」と笑顔で手を振り見送られる。
それを振り返りながら手を振って、私とグリは並んで帰りの夜道を歩き出した。
「御免なさい、遅くまでいて。」
「良いんですよ、大事なお客様なんですから。」
他愛ない会話。
でも、グリの中の私はやっぱりお客様。
数年もの時間を掛けて。
徐々に距離を縮めて。
やっと“マスター”から“グリ”と言う名前を知ったのに。
「そのお客様を家まで送るのも、営業の一環なの?」
チラリ、と彼の横顔を見る。
目線がどこを向いているのか分からないけど、口元の笑みだけは変わらない。
「……そう、思って頂いても構いません。」
出来心で聞いた質問だった。
けれど、小さな間のあとに返ってきた言葉が、ずしりと胸にのしかかる。
そうよね、分かりきってたわ。と、表情には出さず私は目線を前へと戻した。
短い沈黙と、二人の靴音が周囲に響く。
「ですが…、」
彼の声が、言いかけて止まった。
それが隣からではなくて、いつの間にか背後から聞こえ、私は足を止めて反射的に振り返る。
振り返った先、グリは私を真っ直ぐと見ていた。
いつもは糸のように細められているその目が、今は真っ直ぐこちらを見ている。思わず、その琥珀色の瞳が綺麗だと、思った瞬間ーー。
「女性だからと言って、誰でも必ず送るわけではありません。」
「送るのは…貴方だけですよ、リリィ。」
思っても見なかったその言葉を聞いて、私は理解が出来なかった。
「ぇ………待って、ねぇ、あの…それって……」
“貴方だけ”
その言葉が胸を、思考を、ざわめかせ、上手く言葉を発せられない。
(今までそんな素振り、無かったのに…。)
素直に受け取るのなら、それは私への好意の言葉となる。
だけど。
「ねぇやめてよ!私…勘違いしちゃうわ…」
受け入れるべきか、正直…迷った。
昔からいつも一緒に居るグリーズ程じゃないけれど。
何よりグリを見てきたから。グリだけを、見てきたから。
「…勘違い、してくれても良いんですよ。」
そう言いながら貼り付けた笑顔の裏に、何かがある気がして。
「嫌よ、私……隠し事してる人って、苦手なの。」
思わず私は半歩だけ後退りをした。
口をついた言葉に一度だけグリから目線を逸らし、改めて戻すと返事は無いが明らかに驚いた顔をしている。
「……否定、しないのね。」
何も言わない彼が、それを肯定だと言わしめる。
自分が今、どんな顔をしているのか分からない。
ただ彼は、何か言おうと必死になってるのだけは理解が出来た。理解出来たと同時に、彼の口が開かれる。
「リリィ、おれはーーっ!」
言葉を最後まで放つ前に、私は彼の口を遮った。
人差し指を突き出して、彼の唇に押し当てる。
その先の言葉を、まだ聞きたくなくて。
「言わないで………グリ。」
その言葉はまだ早いでしょ?と、私は眉尻を下げ笑みを浮かべた。目線の先で、彼の琥珀色の目が揺らぐ。
それが弁解なのか、告白なのか。
そんなことは、もうどうでもよかった。
動揺に満ちたその瞳に、私の胸の奥がじんわりと満たされた。
「無理に言わなくて良いの、私。」
「中途半端な気持ちでくれる言葉なんか、欲しくない。」
そう言ってゆっくりと指を彼の唇から離し、私は俯き地面を見詰めた。
「………リリィ?」
頭上から、心配するようなグリの声がしたけど、顔を上げる気にはなれなくて、私はそのまま立ち尽くす。
「ねぇ、グリ。何も言わずに……聞いてくれる?」
静かに告げると、視界の端でグリの手がピクリと小さく動き、そして沈黙が流れた。
「……私、ね。グリが…何か隠してるの、知ってるの。」
目線の先。彼の開かれた手が握り拳を作り、力が入る。
今にも何かを言いたげな手だったけれど、私はそれを無視して続けた。
「何をしているのか…とか、詳しくは知らないけれど…」
「何か……大事な事をしようとしてるのは、気付いてる。」
「だから…」
そこで間を置き、私は俯いた顔を上げ彼を見た。
少しだけ、切ない表情を浮かべた彼の顔が見える。
「だから、それが終わるまでは言わないで。」
「気持ちだけ、今は受け取っておくから。」
「…………。」
グリは、何も言わなかった。
「…お休みなさい、グリ。」
「また明日。」
別れ際に、私は笑顔を向ける。
ちゃんと会いに行くとの約束を交えた言葉も最後に添えて。
そして私は、グリを置いて走り出した。
幸い、マンションはもうすぐ先でほぼ目の前。
狭いエントランスを抜け、階段を駆け上がる。
鍵を取り出し、乱暴に扉を開けて部屋に飛び込んだ。
部屋の扉を閉めた瞬間、私は少し息を切らせながらその場にしゃがみこんだ。
「何やってるのよ、私の馬鹿…。」
独り言の様に呟き、ふと私は指に目線を落とした。
指先が、熱を持っているのか少し熱い。
それと同時に思い出す、先程までの出来事が脳裏を過ぎる。
(さっき触れた唇の感触が、消えてくれない。)
想像以上に柔らかかった。と、鮮明に思い出し頬が一気に熱くなる。
「あぁ……もう…っ。」
顔が熱くて仕方なくて、私はうずくまり壁に背中を押しつける。
そして膝を抱えたまま、そっと指先を握りしめた。
——あと数センチだけ。
その距離が、今はどうしようもなく遠かった。
ーーーーーーーー
おまけのページ
その後。
ヌーヴォカフェにて。
最後の片付けもほとんど終わり、キッチンカーの横でグリーズが腕を組んで待っていた。
やがて通りの奥から、見慣れた男が戻ってくる。
「おかえり。」
「ただいま戻りました。」
いつも通り穏やかな声。
だがグリーズは、じっとグリの顔を見つめた。
「……で?」
グリーズの問い掛けに、グリが無言のまま小さく首を傾げる。
「だから、“で?”だよ。」
短い沈黙。
やがてグリーズは、にやりと口の端を吊り上げた。
「告白。したんだろ?」
その言葉に、グリは少しだけグリーズから顔を逸らす。
「……いいえ。」
「はぁ!?」
思わずグリーズ声が裏返った。
「ちょっ!お前、絶好のチャンスだったろ!?私がわざわざ二人きりにしてやったのにっ!」
「ええ、そうですね。」
あっさり頷くグリに、グリーズは思わず頭を抱えた。
「じゃあなんで言わねぇんだよ!」
グリは少し考えるように黙り込み、やがていつもの柔らかな笑みを浮かべる。
「……ですが。」
「気付いては、もらえたと思います。」
グリーズはその言葉に一瞬絶句して黙り、それからやれやれと深いため息を吐いた。
「はぁ〜……めんどくせぇ男。」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。」
即答しグリーズは肩をすくめる。
「クレアなんてとっくにお前のこと好きだってのに、お前ら二人して遠回りばっかしやがって。」
グリは否定もしない。ただ静かに微笑んでいる。
「んで?次はどうすんの。」
グリーズがそう聞くと、グリは少しだけ夜空を見上げた。
「どうしましょうかね。」
「は?」
「縮めるべき距離が、まだありますから。」
数秒の沈黙。
やがてグリーズは、盛大に頭を抱えた。
「お前ってば!ほんっっっと面倒くさいな!!」
大声を出すグリーズのその横で、グリは静かに微笑む。
そして、そっと唇に触れ思い出す。
彼女の熱を感じて。
でも両思い。
おまけページあり。
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「お前、まだ居るのかよ?」
と、グリーズが呆れた声を投げる頃。
すっかりミアレの夜は更けていた。
「いい加減帰んないと眠れなくなるぞ?」
そう言いながら、グリーズが私の向かいの席に座り頬杖をつく。仕事中に座って良いの?と言いたいけれど、お客はいつの間にかもう、私一人しか居なかった。
「分かってるわよ、これを飲んだらもう帰るわ。」
テーブルの上には飲みかけの珈琲が入ったコップが一つ。あと数口飲めば終わりの量が、冷めてぽつんと鎮座している。
「そんなに美味いのかよ?冷めた珈琲が。」
「えぇ、冷めても美味しいわよ。」
素直な感想を口にして、私は残った液体を飲み干した。
口に広がる苦味を楽しむ。
グリーズは「ふーん」と軽く聞き流し、私が飲み切るのを確認すると、待ってましたと言わんばかりにコップを奪って立ち上がった。
「おーし!じゃあこれで閉店。おーい、グリ!キッチンの締めは終わった?」
キッチンカーへと振り返り、グリーズは車内にいるグリに話し掛ける。そこには既に作業を終えて車から降り、手持ちのリザードンをボールに戻すグリが居た。
「もう既に終わらせていますよ。」
にこやかに告げるグリ。
私が居たんじゃ帰れなかったのに、嫌な顔一つもせずいてくれる。甘えてしまった事に少し申し訳なく私は立ち上がり荷物の鞄を手にすると、急にグリーズに腕を引き寄せられた。
「ん、じゃ残りは私がやるからさ。リリィを家まで送ってやんなよ。」
「っ!」
1人では帰さない。
と言う様に、腕をきつくホールドされた。
私は驚きのあまり目を見開き、硬直する。
「ちょ、グリーズ、だっ大丈夫よ!1人で帰れるわ!」
慌てて彼女を見ると、私の耳元に顔を寄せるグリーズ。
「うるさい、グリと近付けるチャンスだぞ?この機会を逃すなよ。」
小声でされる耳打ちに、思わずドキリと胸が高鳴る。
確かにこんなチャンスは無い。
でも、あまりにも突然過ぎて私は断られるのでは?と彼の方を見ると、笑顔を崩さず近付いてきた。
「良いですよ、女性お一人の夜道は危険ですからね。」
「へ?…あ、そ…そう…。」
拍子抜けした声を出してしまい、私はグリーズに背中を押されて「じゃあな」と笑顔で手を振り見送られる。
それを振り返りながら手を振って、私とグリは並んで帰りの夜道を歩き出した。
「御免なさい、遅くまでいて。」
「良いんですよ、大事なお客様なんですから。」
他愛ない会話。
でも、グリの中の私はやっぱりお客様。
数年もの時間を掛けて。
徐々に距離を縮めて。
やっと“マスター”から“グリ”と言う名前を知ったのに。
「そのお客様を家まで送るのも、営業の一環なの?」
チラリ、と彼の横顔を見る。
目線がどこを向いているのか分からないけど、口元の笑みだけは変わらない。
「……そう、思って頂いても構いません。」
出来心で聞いた質問だった。
けれど、小さな間のあとに返ってきた言葉が、ずしりと胸にのしかかる。
そうよね、分かりきってたわ。と、表情には出さず私は目線を前へと戻した。
短い沈黙と、二人の靴音が周囲に響く。
「ですが…、」
彼の声が、言いかけて止まった。
それが隣からではなくて、いつの間にか背後から聞こえ、私は足を止めて反射的に振り返る。
振り返った先、グリは私を真っ直ぐと見ていた。
いつもは糸のように細められているその目が、今は真っ直ぐこちらを見ている。思わず、その琥珀色の瞳が綺麗だと、思った瞬間ーー。
「女性だからと言って、誰でも必ず送るわけではありません。」
「送るのは…貴方だけですよ、リリィ。」
思っても見なかったその言葉を聞いて、私は理解が出来なかった。
「ぇ………待って、ねぇ、あの…それって……」
“貴方だけ”
その言葉が胸を、思考を、ざわめかせ、上手く言葉を発せられない。
(今までそんな素振り、無かったのに…。)
素直に受け取るのなら、それは私への好意の言葉となる。
だけど。
「ねぇやめてよ!私…勘違いしちゃうわ…」
受け入れるべきか、正直…迷った。
昔からいつも一緒に居るグリーズ程じゃないけれど。
何よりグリを見てきたから。グリだけを、見てきたから。
「…勘違い、してくれても良いんですよ。」
そう言いながら貼り付けた笑顔の裏に、何かがある気がして。
「嫌よ、私……隠し事してる人って、苦手なの。」
思わず私は半歩だけ後退りをした。
口をついた言葉に一度だけグリから目線を逸らし、改めて戻すと返事は無いが明らかに驚いた顔をしている。
「……否定、しないのね。」
何も言わない彼が、それを肯定だと言わしめる。
自分が今、どんな顔をしているのか分からない。
ただ彼は、何か言おうと必死になってるのだけは理解が出来た。理解出来たと同時に、彼の口が開かれる。
「リリィ、おれはーーっ!」
言葉を最後まで放つ前に、私は彼の口を遮った。
人差し指を突き出して、彼の唇に押し当てる。
その先の言葉を、まだ聞きたくなくて。
「言わないで………グリ。」
その言葉はまだ早いでしょ?と、私は眉尻を下げ笑みを浮かべた。目線の先で、彼の琥珀色の目が揺らぐ。
それが弁解なのか、告白なのか。
そんなことは、もうどうでもよかった。
動揺に満ちたその瞳に、私の胸の奥がじんわりと満たされた。
「無理に言わなくて良いの、私。」
「中途半端な気持ちでくれる言葉なんか、欲しくない。」
そう言ってゆっくりと指を彼の唇から離し、私は俯き地面を見詰めた。
「………リリィ?」
頭上から、心配するようなグリの声がしたけど、顔を上げる気にはなれなくて、私はそのまま立ち尽くす。
「ねぇ、グリ。何も言わずに……聞いてくれる?」
静かに告げると、視界の端でグリの手がピクリと小さく動き、そして沈黙が流れた。
「……私、ね。グリが…何か隠してるの、知ってるの。」
目線の先。彼の開かれた手が握り拳を作り、力が入る。
今にも何かを言いたげな手だったけれど、私はそれを無視して続けた。
「何をしているのか…とか、詳しくは知らないけれど…」
「何か……大事な事をしようとしてるのは、気付いてる。」
「だから…」
そこで間を置き、私は俯いた顔を上げ彼を見た。
少しだけ、切ない表情を浮かべた彼の顔が見える。
「だから、それが終わるまでは言わないで。」
「気持ちだけ、今は受け取っておくから。」
「…………。」
グリは、何も言わなかった。
「…お休みなさい、グリ。」
「また明日。」
別れ際に、私は笑顔を向ける。
ちゃんと会いに行くとの約束を交えた言葉も最後に添えて。
そして私は、グリを置いて走り出した。
幸い、マンションはもうすぐ先でほぼ目の前。
狭いエントランスを抜け、階段を駆け上がる。
鍵を取り出し、乱暴に扉を開けて部屋に飛び込んだ。
部屋の扉を閉めた瞬間、私は少し息を切らせながらその場にしゃがみこんだ。
「何やってるのよ、私の馬鹿…。」
独り言の様に呟き、ふと私は指に目線を落とした。
指先が、熱を持っているのか少し熱い。
それと同時に思い出す、先程までの出来事が脳裏を過ぎる。
(さっき触れた唇の感触が、消えてくれない。)
想像以上に柔らかかった。と、鮮明に思い出し頬が一気に熱くなる。
「あぁ……もう…っ。」
顔が熱くて仕方なくて、私はうずくまり壁に背中を押しつける。
そして膝を抱えたまま、そっと指先を握りしめた。
——あと数センチだけ。
その距離が、今はどうしようもなく遠かった。
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おまけのページ
その後。
ヌーヴォカフェにて。
最後の片付けもほとんど終わり、キッチンカーの横でグリーズが腕を組んで待っていた。
やがて通りの奥から、見慣れた男が戻ってくる。
「おかえり。」
「ただいま戻りました。」
いつも通り穏やかな声。
だがグリーズは、じっとグリの顔を見つめた。
「……で?」
グリーズの問い掛けに、グリが無言のまま小さく首を傾げる。
「だから、“で?”だよ。」
短い沈黙。
やがてグリーズは、にやりと口の端を吊り上げた。
「告白。したんだろ?」
その言葉に、グリは少しだけグリーズから顔を逸らす。
「……いいえ。」
「はぁ!?」
思わずグリーズ声が裏返った。
「ちょっ!お前、絶好のチャンスだったろ!?私がわざわざ二人きりにしてやったのにっ!」
「ええ、そうですね。」
あっさり頷くグリに、グリーズは思わず頭を抱えた。
「じゃあなんで言わねぇんだよ!」
グリは少し考えるように黙り込み、やがていつもの柔らかな笑みを浮かべる。
「……ですが。」
「気付いては、もらえたと思います。」
グリーズはその言葉に一瞬絶句して黙り、それからやれやれと深いため息を吐いた。
「はぁ〜……めんどくせぇ男。」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。」
即答しグリーズは肩をすくめる。
「クレアなんてとっくにお前のこと好きだってのに、お前ら二人して遠回りばっかしやがって。」
グリは否定もしない。ただ静かに微笑んでいる。
「んで?次はどうすんの。」
グリーズがそう聞くと、グリは少しだけ夜空を見上げた。
「どうしましょうかね。」
「は?」
「縮めるべき距離が、まだありますから。」
数秒の沈黙。
やがてグリーズは、盛大に頭を抱えた。
「お前ってば!ほんっっっと面倒くさいな!!」
大声を出すグリーズのその横で、グリは静かに微笑む。
そして、そっと唇に触れ思い出す。
彼女の熱を感じて。
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