カロスの棚
お客様のお名前。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スキンシップを特訓するお話。
甘からギャグ寄り。
ーーーーーーーー
ミアレの夜。
ホテルの一室から、妙に真剣なやり取りが聞こえていた。
「……リリィさん、それでは前に進めませんよ?」
「でも…あの、…そのぉ……」
「ほら、頑張って下さい。大丈夫ですから」
「うぅ……む、…無理ですっ…!…やっぱり私、出来ませんっ!」
切羽詰まったような声と、それを淡々と励ます落ち着いた声。
まるで試験でも受けているかのような緊張感だ。
「スキンシップの特訓をすると言ったのは、リリィさんでしょう?」
ベッドの端に並んで座る二人。
Fは片手を差し出したまま、穏やかな笑みで待っている。
対してリリィは、スカートの裾をぎゅっと握り締めたまま、一歩も踏み出せずにいた。
「……恋人同士なのですから、もう少し慣れていただかないと」
困ったように、けれどどこか楽しげにそう言って、彼は肩をすくめた。
しばらく、重たい沈黙だけが二人の間に落ちる。
差し出した彼の手と、スカートの裾を握り締めたままの彼女の手。その距離は、たった数センチなのに、どうしても埋まらない。
どうしたものか、とFは内心で小さく溜息をついた。
自分から触れることに抵抗はない。
けれど、リリィの方から一歩も踏み出してこないのが、少しだけ――ほんの少しだけ、不安だった。
「……すみません」
ぽつりと、彼女が声を落とす。
「せっかく……恋人同士になれたのに……私、こんなことも出来なくて……」
ぎゅっとスカートを握り締める指先が震えている。
その様子に、Fは胸の奥がちくりと痛んだ。
「謝る必要はありませんよ。リリィさん」
穏やかな声でそう言いながら、彼は少しだけ身を乗り出した。
「では、方法を変えましょう。私から触れます。まずは、それに慣れて下さい」
「……え……?」
「難しいことではありませんよ。リリィさんは、何もしなくて大丈夫です」
そう言って、彼は少しだけ声を和らげた。
「私がゆっくりやりますから」
彼女は戸惑いながらも、小さく頷く。
安心するように、自分に言い聞かせるみたいに。
それを確認し、Fはゆっくりと手を伸ばす。
まずは、彼女が握り締めていたその手に、そっと触れた。逃げられないように、けれど驚かせないように。
「……ひゃ……っ」
小さく息を吸い込み、肩が跳ねる。
指先が触れただけなのに、まるで感電したみたいに固まっている。
「大丈夫ですよ。力は抜いて下さい」
声を掛けながら、彼は指を絡めるようにして、彼女の手を包んだ。掌に伝わる体温が、想像以上に熱い。
次に、手首へ。
細い手首をそっとなぞると、彼女の背筋がぴんと伸びる。
「そんなに強張らなくても、大丈夫ですよ」
「む、無理ですよ、そんなの……っ」
震える声が、可笑しいほど愛らしい。
そのまま腕へ、肩へと、ゆっくり、ゆっくりと触れていく。
そのたびに、リリィの呼吸は浅くなり、頬はみるみる赤く染まっていった。
やがて、彼の指先が彼女の頬に触れたとき。
彼女は泣きそうな顔で俯いていた。
「……よくできました」
そう言って、彼はそっと顎に触れて顔を上げさせる。
真っ赤な顔。目も潤んでいて、まるで限界まで我慢しているみたいだった。
「っ……はい……」
消え入りそうな声で、リリィは小さく頷いた。
その仕草を見て、思わず満足げに微笑んでしまう自分がいる。
(順調です。実に、驚くほど。)
Fはひとつ息を整えながら、ふと抑えきれない衝動を覚えた。
理性では「やめておくべきだ」と理解している。
それでも――彼女の反応が、あまりにも愛らしくて。
「では、このまま――」
彼はゆっくりと顔を近づける。
逃げ道を塞ぐように、けれど触れない距離で止める。
吐息が絡み、視線がほどけない。
彼女の瞳が揺れ、唇がわずかに開いた。
「……キスしても?」
「…………っ!」
一瞬、時間が止まった。
リリィの目が、世界が止まったみたいに見開かれる。
視線は彼に縫い止められたまま、瞬きすら忘れて固まっていた。
「っ〜〜〜〜!」
数拍遅れて、言葉の意味が追いついたらしい。
膝の上で握りしめた指先が、遅れて震え出す。
やがて、耐えきれないみたいに視線を膝へ落とした。
「……む、む……むっ、」
凍りついていた思考が、ようやく動き出す。
胸いっぱいに空気を詰め込み、
「むっ、むりっ!……無理ですっ!!もうっ!」
限界に達したみたいに叫び、次の瞬間、勢いよく立ち上がると、足元をもつれさせながらそのままドアへ駆け出した。
「ご、ごめんなさいっ!!」
大声で精一杯の謝罪の一言を残し、ガチャンッ!と力任せに扉が閉まり、廊下を駆けていく足音が遠ざかっていく。
部屋に残されたのは、静寂と、自分ひとり。
Fはしばらくその場に座ったまま動けず、やがて額に手を当てた。
「……いけませんね。やりすぎました」
小さく息を吐き、苦笑する。
――困ったものです。
思っていた以上に、可愛らしい反応でした。
「……」
Fは、しばらくその場で瞬きをした。
ソファに腰を下ろし、軽く息を吐く。
(……刺激が強すぎましたね)
やり過ぎた、という自覚はある。だが――
「可愛らしい反応でしたが」
口元に、どうしても笑みが浮かんでしまう。
逃げるように飛び出していった彼女の姿を思い出すたび、胸の奥がくすぐったくなる。
恋愛経験ゼロの初心さは、予想以上に破壊力があった。
(……しかし)
天井を見上げて溜息をつく。
(あの調子では、キス以上の行為に慣れていただくまで、相当な時間がかかりそうですね)
決して不満というほどではない。
だが、恋人になれたのに、触れ合う距離がまだ遠いという事実は、少しだけ――少しだけ寂しい。
「……探しに行きましょう」
そう呟いて立ち上がり、部屋のドアに手をかける。
(次は、もう少し順序を踏むべきでしたね)
真面目に反省しながら、しかしどこか楽しげに、Fは廊下へ出た。
逃げた恋人を迎えに行くために。
甘からギャグ寄り。
ーーーーーーーー
ミアレの夜。
ホテルの一室から、妙に真剣なやり取りが聞こえていた。
「……リリィさん、それでは前に進めませんよ?」
「でも…あの、…そのぉ……」
「ほら、頑張って下さい。大丈夫ですから」
「うぅ……む、…無理ですっ…!…やっぱり私、出来ませんっ!」
切羽詰まったような声と、それを淡々と励ます落ち着いた声。
まるで試験でも受けているかのような緊張感だ。
「スキンシップの特訓をすると言ったのは、リリィさんでしょう?」
ベッドの端に並んで座る二人。
Fは片手を差し出したまま、穏やかな笑みで待っている。
対してリリィは、スカートの裾をぎゅっと握り締めたまま、一歩も踏み出せずにいた。
「……恋人同士なのですから、もう少し慣れていただかないと」
困ったように、けれどどこか楽しげにそう言って、彼は肩をすくめた。
しばらく、重たい沈黙だけが二人の間に落ちる。
差し出した彼の手と、スカートの裾を握り締めたままの彼女の手。その距離は、たった数センチなのに、どうしても埋まらない。
どうしたものか、とFは内心で小さく溜息をついた。
自分から触れることに抵抗はない。
けれど、リリィの方から一歩も踏み出してこないのが、少しだけ――ほんの少しだけ、不安だった。
「……すみません」
ぽつりと、彼女が声を落とす。
「せっかく……恋人同士になれたのに……私、こんなことも出来なくて……」
ぎゅっとスカートを握り締める指先が震えている。
その様子に、Fは胸の奥がちくりと痛んだ。
「謝る必要はありませんよ。リリィさん」
穏やかな声でそう言いながら、彼は少しだけ身を乗り出した。
「では、方法を変えましょう。私から触れます。まずは、それに慣れて下さい」
「……え……?」
「難しいことではありませんよ。リリィさんは、何もしなくて大丈夫です」
そう言って、彼は少しだけ声を和らげた。
「私がゆっくりやりますから」
彼女は戸惑いながらも、小さく頷く。
安心するように、自分に言い聞かせるみたいに。
それを確認し、Fはゆっくりと手を伸ばす。
まずは、彼女が握り締めていたその手に、そっと触れた。逃げられないように、けれど驚かせないように。
「……ひゃ……っ」
小さく息を吸い込み、肩が跳ねる。
指先が触れただけなのに、まるで感電したみたいに固まっている。
「大丈夫ですよ。力は抜いて下さい」
声を掛けながら、彼は指を絡めるようにして、彼女の手を包んだ。掌に伝わる体温が、想像以上に熱い。
次に、手首へ。
細い手首をそっとなぞると、彼女の背筋がぴんと伸びる。
「そんなに強張らなくても、大丈夫ですよ」
「む、無理ですよ、そんなの……っ」
震える声が、可笑しいほど愛らしい。
そのまま腕へ、肩へと、ゆっくり、ゆっくりと触れていく。
そのたびに、リリィの呼吸は浅くなり、頬はみるみる赤く染まっていった。
やがて、彼の指先が彼女の頬に触れたとき。
彼女は泣きそうな顔で俯いていた。
「……よくできました」
そう言って、彼はそっと顎に触れて顔を上げさせる。
真っ赤な顔。目も潤んでいて、まるで限界まで我慢しているみたいだった。
「っ……はい……」
消え入りそうな声で、リリィは小さく頷いた。
その仕草を見て、思わず満足げに微笑んでしまう自分がいる。
(順調です。実に、驚くほど。)
Fはひとつ息を整えながら、ふと抑えきれない衝動を覚えた。
理性では「やめておくべきだ」と理解している。
それでも――彼女の反応が、あまりにも愛らしくて。
「では、このまま――」
彼はゆっくりと顔を近づける。
逃げ道を塞ぐように、けれど触れない距離で止める。
吐息が絡み、視線がほどけない。
彼女の瞳が揺れ、唇がわずかに開いた。
「……キスしても?」
「…………っ!」
一瞬、時間が止まった。
リリィの目が、世界が止まったみたいに見開かれる。
視線は彼に縫い止められたまま、瞬きすら忘れて固まっていた。
「っ〜〜〜〜!」
数拍遅れて、言葉の意味が追いついたらしい。
膝の上で握りしめた指先が、遅れて震え出す。
やがて、耐えきれないみたいに視線を膝へ落とした。
「……む、む……むっ、」
凍りついていた思考が、ようやく動き出す。
胸いっぱいに空気を詰め込み、
「むっ、むりっ!……無理ですっ!!もうっ!」
限界に達したみたいに叫び、次の瞬間、勢いよく立ち上がると、足元をもつれさせながらそのままドアへ駆け出した。
「ご、ごめんなさいっ!!」
大声で精一杯の謝罪の一言を残し、ガチャンッ!と力任せに扉が閉まり、廊下を駆けていく足音が遠ざかっていく。
部屋に残されたのは、静寂と、自分ひとり。
Fはしばらくその場に座ったまま動けず、やがて額に手を当てた。
「……いけませんね。やりすぎました」
小さく息を吐き、苦笑する。
――困ったものです。
思っていた以上に、可愛らしい反応でした。
「……」
Fは、しばらくその場で瞬きをした。
ソファに腰を下ろし、軽く息を吐く。
(……刺激が強すぎましたね)
やり過ぎた、という自覚はある。だが――
「可愛らしい反応でしたが」
口元に、どうしても笑みが浮かんでしまう。
逃げるように飛び出していった彼女の姿を思い出すたび、胸の奥がくすぐったくなる。
恋愛経験ゼロの初心さは、予想以上に破壊力があった。
(……しかし)
天井を見上げて溜息をつく。
(あの調子では、キス以上の行為に慣れていただくまで、相当な時間がかかりそうですね)
決して不満というほどではない。
だが、恋人になれたのに、触れ合う距離がまだ遠いという事実は、少しだけ――少しだけ寂しい。
「……探しに行きましょう」
そう呟いて立ち上がり、部屋のドアに手をかける。
(次は、もう少し順序を踏むべきでしたね)
真面目に反省しながら、しかしどこか楽しげに、Fは廊下へ出た。
逃げた恋人を迎えに行くために。
5/5ページ