このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

のばらとモブ

運動神経は、悪くないはずだった。けれど、体育の授業中に、盛大に転けた。しかも、変に足をもつれさせたせいで、足をひねってしまった。
一瞬、なにが起こったのかわからなかった。ただ、足の痛みがついてきていた。
転んだとわかったとき、まわりから笑い声がきこえた。カッと顔が赤くなるのを感じた。
「大丈夫か!?」
そのなか、フリオニールは、真っ先に俺のそばに駆け寄った。しゃがみ込んで、傷の様子を見ている。
フリオニールだけは、笑うことはなく、心配そうな表情をしている。その顔を見て、安心する。
フリオニールのとっさの行動に、われにかえったクラスメイトたちは、体育教師を呼んでいる。
「擦り傷は浅そうだが、消毒が必要だ。急いで保健室へ行こう。立てそうか?」
恥ずかしい話だが、ひねった足で保健室まで行けそうになかった。痛みが徐々に深くなっているのを感じる。
「その、転けたときに足をひねってしまったみたいなんだ」
「わかった、失礼する」
クラスメイトたちが見ているのをよそに、フリオニールは俺を抱き上げた。男をとても簡単に、抱き上げたのだった。
「先生、歩けないようなので、俺が保健室へ連れていきます」
ちょうど現れた体育教師に手早く伝えると、フリオニールは小走りでグラウンドを駆けていく。
いくら俺の体重が平均より低いといっても、女子よりは断然重い。男を抱えて走るのは相当な筋力がいるはずだ。フリオニールは元々体格は良いが、そんな技を成せるほどのものだとは、おもいもよらなかった。顔が赤くなっていくのを、感じた。羞恥からか、はたまた、別の感情か、きっと、そのどちらともだと、俺はおもった。
1/4ページ