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18/8/23

もう、数えきれないほど、朝をむかえた。異世界の神から召喚されてきたジタンたちは、神望むまま、戦い続けた。
途中で、すこしずつ、仲間は殺された。
過酷としかいえない戦いに、ジタンは辟易していた。終わらせたいとも、おもっていた。
敵を探していると、見知った後ろ姿が見えた。ひさしぶりに仲間に出会った。すこしジタンは嬉しくなって、無防備に、彼の側へ走った。
「スコール!」
ゆっくりと、顔がジタンに向けられる。赤い目が、動いた。
見つめられて、ジタンは、一瞬、たじろいだ。歩み寄る足が止まる。
「泣いてるのか」
スコールは無言で首を横に振った。変におもい、近寄る。いやな臭いがした。
「なにがあったんだ?」
「死んだ」
ジタンは心臓をどくり、と鳴らす。嫌な予感がした。さっきから臭うものの正体を、想像してしまう。
「あいつ、死んだ」
「だ、れが」
「ジタン、俺、なにも思い出せないんだ。何十年も戦いすぎたんだ。これはG.F.のせいだ。記憶が、曖昧なんだ。でも、あいつの息はなかった」
普段無口なスコールは、取り乱して言葉をでたらめに繋いだ。ジタンはスコールの言葉の半分も理解できなかった。けれど、誰かが死んだのは明白だった。
「スコール、落ち着け。誰が死んだのか見てくるから、待ってろよ」
震えるスコールの肩をたたくと、ジタンはあたりの臭いを嗅いだ。恐る恐る、臭いをたどっていく。林のほうへ向かっていくと、草むらのなかに、死体が転がっていた。ひどく損傷していた。片足がなかった。思わず目を逸らしたくなったが、顔を見てみる。それは、よく知る人物だった。ジタンは出てきそうになる涙をこらえる。
死んだ者に、祈りを捧げて、その場を去った。
戻ると、スコールは、俯いてブツブツとなにか言っている。
「大丈夫か、スコール」
心配になって、顔を覗き込む。それは、もう、普段の彼ではなくなっていた。
戦いすぎたのだと、おもった。何年も何年も、同じことの繰り返し。体も心も消耗しきっている。異常にならざるを得ない状況だった。
スコールは、なにかに力をわけてもらっていて、その代償に記憶をあげているのだと、おもった。だから、スコールの発言通り、あんなに仲の良かったやつのことを忘れてしまったのだろう。次は、自分が忘れられるのだろうか、とジタンはおもった。おもって、合点がいった。
「スコール」
まだ、スコールはなにかを言っている。
「スコール」
返事はない。独り言を言っている。
「俺のこと忘れないでくれよ」
赤い目が、ジタンを捉える。ああ、とおもった。
「やっぱり、お前だったんだな」
涙が流れた。その瞬間、ジタンの腹に剣が突き刺さった。
仲間の殺され方はどれも同じだった。バッツの死体も、完全に無防備な状態だった。敵と戦っているときに殺されたものではない。となると、仲間が仲間を殺した、それ以外なかった。最後のひとりになった、スコールはどうなるんだろう。そうおもうと、切なくなった。
痛みで、どうにかなりそうになりながらも、ジタンは自分の武器をとる。最後の力を振り絞り、スコールの首をめがけた。
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