創作小話

『お酒と煙草はハタチになってから』

「ーーなんて近道は言うんだよ!ズルいよね?」
「や、妥当…かと」

ばん!オーバーアクション気味に赤いヘルメットの彼、マルモトはテーブルを両手で叩く。
動じずに、諭すように呆れたような声を出すのはガスマスクの彼、斑多。

「確かにオレたちまだティーンだけどさァ」
「同い年だっけ、16?」
「17になったっけ、忘れちゃった」
「まだまだ子供だ」
「それは…そうなんだけど」
「…憧れるよな」
「そう!それなんだよ!」

いわゆる大人の世界に憧れを抱いているらしい。

好き嫌いしないどころか何でも口に入れてしまうマルモトゆえに、大人なパートナーである近道から何かと注意されるのは分かるようだが。

「…あれこれ規制されるほど子供じゃない、よね?オレたちだって」
「マルモト…」
「呆れないでよォ」
「いや、言い分は分かる」
「斑多くん…!」
「…分かるが、反発することに抵抗がある」
「うあーイイコなんだぁ」
「そう、かな」

恥ずかしそうに下を向く斑多に、調子づいて追い打ちをかけようと擦り寄るマルモト。
顔を覗き込むとかっちりと目が合い、斑多は慌てて飛び退く。

「照れ屋さァん」
「う…イタズラっ子…」
「んなぁ、斑多くんも子供扱いするう?」
「ちがっ…もう、イジワル言っちゃやだよ」
「ンッフフ、かーわいいんだ」
「マルモトもね」
「…即答ズルくない?」
「本音だしなぁ」

やられっぱなしじゃない所を見せられて一安心である。

「てかこの話前にもしたっけ!?つまんなくない?」
「マルモトが楽しそうだから楽しいよ」
「斑多くんイイコ過ぎる!」
「そうかな」
「もうちょいワルイコでもいいと思う!」
「悪い子って…例えば?」
「たとえば…シェアする前提のアイスをひとりでたくさん食べちゃうとか」
「!…えぐい、ちょいワルの域越えてない?」
「そうかも…独り占めは良くない」
「…マルモトもなんだかんだ良い子だよな」
「ほんとう?エヘヘ…褒められちゃった」

マルモトが嬉しそうに顔に手を当てて上体をゆらゆら振る。
年相応よりやや幼く見えて可愛い。

近道がやや過保護になるのも頷ける気がする。

ひとしきりボディーランゲージを終えた彼がふと思い出したように呟く。

「はーぁ、早く大人になりたいな」
「…もうちょっとゆっくりでいいよ」
「ええ?どーして?」
「それは…んー、内緒!」

今の君も好きだから、もっとずっとこんな会話してたいんだ、なんてちょっと恥ずかしくて言えない斑多であった。


*熟れるにはまだ早い

青いままでも甘いから

end
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