監獄兎

「カンシュクン、遊ぼ?」
「え、何いきなり」
「ボクさ、正直言って処刑無い日はヒマなの」
「遊ぼっていわれても…、何するつもりですか」
「敬語イヤ。キミとボクの仲じゃん?仲良くシてよォ」
「…同期なだけじゃん。それに、アンタのが年上だしさ」
「でも、トモダチでしょ?」
「恋人っす」
「…そうだっけネ?」
「また忘れてたの?何度目だよ…これで」
「分かんない」
「ったく…、処刑する度にこういう記憶飛ばしちゃうんじゃ、仕方が無いだろ?」
「エクスタシーってヤツだヨ。気持ちヨ過ぎて、頭真っ白きなっちゃうの」
「絶頂って、あの絶頂?」
「さすがに出しちゃったりはしないけどネ」
「そりゃそうだろ」


彼曰く、扉に浴びる返り血と、その生臭さが堪らないらしい。(何が良いんだかさっぱり分からん。)

先程遊びに誘われたが、これも処刑が無い日の恒例。

何をするかは気紛れな彼次第ってわけだ。

前回は大量の血糊を作ったが、味付けが良かったから二人で残さず食った。

その前は、普通にテレビゲームをした。

もっと前、いつだったか、女装させられた事もあった。


「で、今回は何すんの?」
「遊んでくれるの!」
「遊んであげなかった事は無いだろ」
「わぁ、嬉しい!カンシュクン大好き!」
「はいはい、」

この『大好き』の意味が、イマイチ掴めない。

恋人だから『恋愛感情』か。

はたまた、気持ちが高ぶった故の『無意識』か。

前者なら俺は、きっと彼を抱き締めて、『俺も大好きだ』と囁くだろう。

後者なら、恋人としての自覚をさせるために彼に『好き同士なら、何しても良いよな』と言って口付けをするだろう。

どちらに転がっても、俺がショケイスキーにする事は大差無い。

しかし、

「カンシュクン、ちゅー」
「今?」
「ねだってるんだから、早くシて!」
「…。」

彼にとっては単なる甘えなのかも知れないが、俺的にはキスをねだられるのが一番恥ずかしい。

自分からするより照れる。

けれども、応じなくて嫌われるのはもっと質が悪い。

「…じゃあ、目閉じてて」
「ン、」

ちゅ。

と、わざとリップ音を立ててキスを交わせば、彼の醸し出す甘い空気にあっさりと飲み込まれそうになる。

「フフ、カンシュクン顔赤いヨ?」
「だッ…誰のせいだと…」
「ボク!」
「……うん、正解」
「景品は?」
「じゃあ、もう一回キス追加するよ」
「やったぁ!」

今度は、先程よりも深く。

舌を絡めるのも慣れてきて、お互いに食らい合うように口付ける。

唇を離した時に、唾液が糸を引くのが好きだ。

「…ふあ、カンシュクン」
「ン、何?」
「もっと…」
「…ダメ、」
「え…なんでェ?」
「まだ昼前だし、俺午後は囚人共のシャワーの時間に行かなきゃいけないんだよ」
「…ヒドいヨ……」

泣きそうになる彼に驚きながら、なんとか優しい言葉を探す。

「俺だって、もっとキスしたいし、その先までシたいよ」
「…本当?」
「本当だよ、ショケイスキー、」
「っ…!やっと名前呼んでくれた!」
「え。…あぁ、そうだな」
「カンシュクン…、ボク、今ホントに嬉しい」
「じゃあ、もっと呼んであげようか?ショケイスキー、」
「アァ、もう…ゾクゾクしちゃう!」
「俺の事も呼んで?」
「カンシュ…クン」
「違う」
「カ…カンシュコフ…」
「そう、イイ子」
「…ねぇ、カンシュコフ、」
「ん?」
「何して遊ぶか、今決めたヨ」
「へぇ、何する?」




『○○ごっこ』


(え、襲い受けごっこ?)
(ボクがカンシュコフを襲うから、逆にボクを襲って欲しいノ)
(さっきシないって…)
(言ってない。むしろシたいって言ってたヨ!)
(……。)







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