ウサビ
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「………。」
会話が、無い。
「キレネンコさん…?」
「………。」
「何してるんですか?」
「…………ぅ゙」
「……?」
「ヴゥ゙!!」
「えぇぇっ!?」
無口、唸り声、暗転。
―これは、監獄生活中の話。
今作のヒロインお嬢と相棒のお姫は、仕事サボりの現行犯でで捕まってしまった。(というか捕まる基準厳しくない?と思う)
隣りの部屋には死刑囚と資本主義者が居るらしい。と噂を何度も聞いて
ちょっと興味があって、壁に小さな穴を開けてみたがこれが誤算だった。
穴が貫通した刹那、赤い囚人服の04番さんと目があってしまった。
そこから成り行きってやつでしょうかね
壁に兎ひとり通れるくらいの大きな穴が開けられてしまったのである。
これはもう謝罪案件なので怖々とそちらの部屋に入る事にした。
赤い囚人服の人は、何も言わずにまん丸の目でこちらを睨み付けてきた。
「は…初めまして」
「………」
「あたしはお嬢と申します」
「…………。」
「…あの…壁、すいません」
「…………。」
「聞いてます?」
「あ~、気を悪くしないでください。その人、凄く無口なんですよ」
「…あなたは?」
「僕はプーチンだよー」
「初めましてプーチンさん。あたしはお嬢です」
自室の相棒以外の会話は久しぶりで思わず花が咲く。話してる間に、お嬢は赤い囚人服を気にしたり、お姫はプーチンと仲良くなったりした様だ。
男女が2組居ればそりゃそうなるか、なんてね。
「04番さん、」
「………。」
「名前、教えてください」
「………。」
「赤さんって呼びますよ?」
「……………キレネンコ」
「え?」
「…キレネンコだ。」
「………!」
喋ってくれた事が嬉しくて、思わずキレネンコさんに抱き付いた。
そして視界が回った。
置かれている状況は、『キレネンコに押し倒されている』―――
ここで話は最初のシーンに戻る。
「ゔぅ゙じゃないですよ!何してるんですか?」
「………お嬢」
「…はい?」
「……。」
「?」
「………欲しい…」
「は い ぃ!?」
「お前が…」
「…っ!!」
耳元で囁かれて頭から火が出そうなくらいドキドキする。
一体何が起こってしまってるんだ、と考える暇も無い。
「…お前が、履いてる靴、」
「ん?」
「靴…見せろ。」
「・・・・・・。」
くつ、靴?
と反芻して答える前にもう半歩距離が詰まる。
「寄越せ…」
「は…っ!はい判りました!判りましたからそんなに顔近付けないでくださいっ!」
「……ゔ?」
「…照れます」
「…………。」
案外あっさり退いてくれて、彼はあたしの靴を脱がしにかかった。
女の子とはいえ監獄暮らしだから、足臭くないかな?とか思う。
脱がせた靴を真剣に眺めるキレネンコさんが何だか無性に可愛くて、頭を撫でてみた。
ちょっと嫌がられたのは多分気のせいじゃない。
「お前、」
「はい?今度はなんですか」
声かけられるだけで心拍数かなり上がる。
行動が読めなくてやや不安なのもある。
「靴。」
「はい?」
「趣味があうな。」
「……」
そんな風に囁かれたら照れるっていうのに。ああ、もう。
「あー、お嬢もしかしてネンコさんにラブ?」
「…っ!お姫!ちょっと黙れ!」
「プーチンさん、あれがお嬢の本性ですよ?」
「いかにもキレネンコさんと仲良くなりそうな感じだね?」
相棒がいるのをすっかり忘れていた。
そしてプーチンさんとやら、そんなぽやっとしたピュアなまなざしでこっち見ないで欲しい。
「ネンコさん、お嬢の事よろしくお願いしますよ!」
「ちっ!お姫ってば!」
「……お嬢」
「…はいっ?」
キレネンコさんに名指しで囁かれたら黙るしかなくて。
「宜しくな。」
「……………。」
こんな事言われると嬉しくて仕方なくて。
ああ。
監獄暮らしも悪くない。
って、思っちゃう自分が居て、
とりあえず当分は楽しくやってけそうだなって思う。
(そのうち告るのは誰が最初かな)
終
2009/10/02
加筆修正 2021/04/20