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恭しく掌にキスが降ってくる。
「…王子?」
「この行為の意味…解りますか?」
「……懇願…」
「その通りでございます」
「あたしに何を求めているの…?」
「…、」
「王子」
「愛してください…」
「え…」
「僕は…貴女しか見えないでございます。愛してるのでございます」
「王子…困るよ…」
「…、僕は…本気でございますよ」
それでも埋められないのが身分差。
愛して欲しい心と、愛されてはいけないという葛藤。
「…王子」
「やめてください…」
「え?」
「…僕を王子と呼ばないで」
「…………」
「できれば、つよしと呼んでください…」
「…つよし、」
「ああ…お嬢さん、僕は…僕はやはり…貴女を愛しています」
「あたしだって…」
「え…っ」
「あたしだって!つよしの事好き…でも…」
「お嬢さん…」
こんなにも愛しいのに、触れる事が恐いなんて。
そこまでこの世界で階級が大きく作用するとは思えないが、なんとなく壁を感じてしまう。
越えられない壁を越える、それとも、
「…つよし、あたしは、どうしたら良いと思う…?」
「お嬢さん…僕は…今は何も言えません」
「…そうだよね、ごめん」
「謝らないで……僕、悲しくなっちゃうのでございます…」
「うん…」
「お嬢さん、」
「なあに?」
「もしも僕が、王子でなかったら…っ!」
「そ、そういう事言っちゃ駄目!」
抱きしめて言葉を遮った。
なんだ、触れたってなにも悪いことは起こっていないじゃないか。
調子づいて彼を見上げた。
「お嬢さんっ…苦し…でございます…」
「あっごめん」
ぱっと手を離す。
無意識に力を強めてただろうか?と、恐る恐る向き直ると、真っ赤になった王子と目が合う。
「そんなに苦しかった?」
「とても…その、心臓が…」
なんてことだ、向こうからは触れてくるのにこっちが触れた途端にこれ。
こんなの反則なのでは。
「つよし、好き」
「ぼ…僕もとても、好きです」
「嬉しい…もっと言って?」
「なっ、」
身分なんて目に見えない壁、いとも簡単に壊すことができたなんて。
こんなのに気づけないなんて、なんて恋とは視野を狭くするのだろうか。
「もっと好きって言ってほしいの」
「なんて可愛らしい、お嬢さん!愛していますよ!」
「!…へへ、あたしも愛してる!」
『当たって砕けろ』
(想いではなく壁が砕けるの)
おわり
*過去作の薄暗い作品を手直ししたやつ