「なんて呼べば良い?」
チェンゲ
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恋は衝動とはよく言ったものだ。
本当に突然、突き落とされたような衝撃と、有り得ない鼓動。
何にそんなに焚き付けられてしまったか、しかし無意識で追ってしまうのは彼の鋭い目だった。
彼女は完全に恋に落ちていた。
「こんにちは、竜馬さん」
「あ?なんだまたお前か」
たまたまに会えると必ず声を掛けた。
食事処でもベースキャンプでも宇宙戦艦内でも必ずである。
ここはご都合主義な世界線だ、と言ってしまえばそれまでだが。
とにかく顔を合わせる機会は作れるのだった。
そして私は彼の居る宇宙なら何処へでも着いて行ける、そんなヒロイン力を持っているようである。なんて都合のいい。
「よく会いますね」
「本当にな。後を付けてんのか?」
「そうだって言ったらどうしましょ?」
「…どうもしねぇよ」
「つれないお人…」
「うるせ」
「でもそんな所も好き…」
「は?」
火のついたこの恋はもう止められないし止めたくない。
この身だけが焦げてしまう前に共に燃え上がってくれたら良いのに、と火蓋を切り落とした。
「私は竜馬さんを深く知らないけれど、それでも貴方が好きなのです」
「なんだよ…そうやって俺を惑わせて何かする気か?」
「どうするかと言われると…ふむ、セックスでもしますか」
「はァ!?」
これは些かというかかなり急である。実はテンパっている。
ジャブをかますつもりが完全にストレート。しかも打つ方向が最悪ときたものだ。
「ダメですか?」
「そういう問題じゃねえだろ」
「ですよねー」
「そもそも俺もお前をよく知らねえし」
「奇遇ですね」
「…だが、この際だから1つ聞かせてもらおうか」
「お、何でしょうか?」
「名前名乗れよ」
「あっ」
名乗りもしてない相手からの告白で、よくいきなり殴り掛かって来なかったな、と思う。
「あの、お嬢と申します」
「お嬢。おう、覚えとくな」
「それであの、さっきの件ですが」
「あー…まあ、いいっちゃいいけどよ」
「えっ!?」
「なんの驚きだよ」
「いや怒られるとばっかり思ってたんで」
「そりゃちっとは怒りてえけど」
「うぅ」
「でも好きだなんて言われんの、悪くもねえから」
そんな都合いい話があるだろうか?
って言う時は
「そんな都合いい話あります?」
「は?」
そのまま聞いてしまえばいい。
「だって竜馬さん、血の気が多いような気が」
「おい」
「あっ違うんです、そんな所も素敵ですよ」
「お前俺のどこまで知ってんだよ…」
「えーと…いつもハンサムな方と男前な方の2人一緒に行動してるし、彼女はいなそうだなって」
「おいおい、一言多くねえか」
「すっ、すいません」
「まあそうだな、アイツらには俺に惚の字の女が褒めてたって教えてやるか」
歳より若く見える笑顔が眩しい。
気の置けない仲間がいるからこそ彼は魅力的なのだ。
話は戻るが先程のストレートが許されたのが気になる。
「…で、その、セックスでもしますか?」
「またそれか」
「だってさっきうっかり零しちゃったんですもん、拾っとかないと」
「うーん…まあ、良いかもな」
「えっ」
「だからなんで驚くんだよ」
「怒られなかったから…?」
「怒りゃしねえって」
さっきちょっと怒るって言ってた気がするがそこはまあ、置いておいて良さそうだ。
「私の方からこんな事言うのどうかと思うんですがね」
「なんだ?」
「名前も知らない相手から性交に誘われて、それを受けちゃうのどうかと思いますよ」
「本当にどうかと思うよ」
「…じゃあ、何故」
「何となくだがな、別に嫌じゃねえんだよ」
「そ、れは…本当だとしたら、すごく、嬉しいです」
柄にもなく乙女なリアクションをしてしまった。
急展開に動揺するも今の言葉を深く噛み締める。
「なんならもっと好きになってくれて良いんですよ」
「貪欲かよ」
「だってぇ…」
「ま、でも何だ。お嬢のその、俺を見る時に目がギラギラしてるのが中々良い」
「ギラギラしてましたか?」
「開口一番セックスでもするかとか言ってくるぐらいだしな」
「それはちょっと誤爆でもあったんですがね」
自分から言うより相手から言われる方が恥ずかしい事に気がついた。
しかしここまでセックスというワードに食いついてくれるのを考えると、彼も所謂健全な男子であるということか、全く最高である。
「なにニヤケてんだ?」
「んふふ、いえ、好きが止まらなくなりそうです」
「止めんじゃねえぞ、俺わりと待ってやってたんだからな」
「え?」
「しまっ…あー、クソ、何でもねぇ忘れろ」
「いやいやなんですかそれ、詳しく、詳しくお願いします」
バツが悪そうに頭を搔く彼の視界に無理やり入り込み距離を詰める。
目を合わせるとそっぽを向かれるのを何度か繰り返した後に観念したようにぽつりぽつりと話し始めてくれた。
「…隼人と弁慶がよ、よく会う脈アリっぽい娘相手に俺からとっついたらビビって逃げられちまうとか言うから」
「それは…つまり?」
「……告られる前に逃げられたら嫌だったから、ちっとみっともねえけど名前とか聞くの待ってた」
「なんですと…」
「悪ぃかよ」
「いや、なんと言いますか」
よもやこの好意がバレていたこととか、突然に気づいてしまった彼の可愛らしい部分とか、色々と処理が追いつかないが兎に角。
「こんな都合いい話あります?」
「それさっきも聞いたな」
語彙力がどっか行ってしまったようだ。
「両想いだったってことですか」
「まあ、そうなるか」
「私の事よく知らないのに?」
「さっきちょっと知れたけどな、そう見えてすけべな所とか」
「んん…否定できません」
「正直揶揄われてんのかと思って焦った」
「申し訳ない…」
「良いっての」
でもあそこでジャブ止まりだったらここまで色々聞けなかったかとも思うと、そんなに悪い発言でもなかったのでは…と自己肯定感を高めた。
「でもストレートついでにまだ伝えたい事があります」
「あ?」
「私未経験なんで、セックスどうこう誘っておいて何なんですが優しくしてくださいね」
「おま、マジかよ」
「処女だとやりにくくて嫌ですか?」
「俺もそういう経験無…じゃなくて、仕方ねえなぁ」
「あと」
「まだなんかあんのか?」
「竜馬さん大好きです、これからよろしくお願いしますね」
「んな…、お嬢っ」
突然抱き締められてほんのり苦しいのと、彼の香りに頭がクラクラする。
「りょーまさん…?」
「ったく、お前が変な事ばっかり言うから俺まで変になっちまうだろうが」
「変でしたかね」
「ああ、勘弁してくれ」
「んむ…」
背中や下腹部に手錠と鎖の硬さを感じたが何か違和感がある。
「あ、勃起してます?」
「!!?」
「竜馬さんも中々すけべぇなのですね」
「ストレートなのは構わないが言い方くらい考えろ?」
「まあまあ、私で勃ててくれて嬉しいですよ」
「…ったく、そりゃあ好きな相手になら勃つくらいするっての」
「すっ」
「お?聞こえなかったか?」
好き、に過剰反応してしまったのがバレたのか意地悪そうに笑みを浮かべる彼。
「今夜は寝られると思うなよ」
「…ナナメ45度くらいのストレートですね」
「中々直角だったろうが」
「それなら夜通し抱き潰すくらい言ってくださいよ」
「お前手加減しろって言ってなかったか?」
「初めてですからね」
「どうされてぇってんだよ」
「うーん…痛くても泣いてもいいんで愛をこめてがっつり抱いてください」
「…後悔すんなよな」
そして夜の長さを再認識してしまうのは、ここからほんの数時間後の話だったという。
『ナナメ45度のストレート』
END
2021/07/14
本当に突然、突き落とされたような衝撃と、有り得ない鼓動。
何にそんなに焚き付けられてしまったか、しかし無意識で追ってしまうのは彼の鋭い目だった。
彼女は完全に恋に落ちていた。
「こんにちは、竜馬さん」
「あ?なんだまたお前か」
たまたまに会えると必ず声を掛けた。
食事処でもベースキャンプでも宇宙戦艦内でも必ずである。
ここはご都合主義な世界線だ、と言ってしまえばそれまでだが。
とにかく顔を合わせる機会は作れるのだった。
そして私は彼の居る宇宙なら何処へでも着いて行ける、そんなヒロイン力を持っているようである。なんて都合のいい。
「よく会いますね」
「本当にな。後を付けてんのか?」
「そうだって言ったらどうしましょ?」
「…どうもしねぇよ」
「つれないお人…」
「うるせ」
「でもそんな所も好き…」
「は?」
火のついたこの恋はもう止められないし止めたくない。
この身だけが焦げてしまう前に共に燃え上がってくれたら良いのに、と火蓋を切り落とした。
「私は竜馬さんを深く知らないけれど、それでも貴方が好きなのです」
「なんだよ…そうやって俺を惑わせて何かする気か?」
「どうするかと言われると…ふむ、セックスでもしますか」
「はァ!?」
これは些かというかかなり急である。実はテンパっている。
ジャブをかますつもりが完全にストレート。しかも打つ方向が最悪ときたものだ。
「ダメですか?」
「そういう問題じゃねえだろ」
「ですよねー」
「そもそも俺もお前をよく知らねえし」
「奇遇ですね」
「…だが、この際だから1つ聞かせてもらおうか」
「お、何でしょうか?」
「名前名乗れよ」
「あっ」
名乗りもしてない相手からの告白で、よくいきなり殴り掛かって来なかったな、と思う。
「あの、お嬢と申します」
「お嬢。おう、覚えとくな」
「それであの、さっきの件ですが」
「あー…まあ、いいっちゃいいけどよ」
「えっ!?」
「なんの驚きだよ」
「いや怒られるとばっかり思ってたんで」
「そりゃちっとは怒りてえけど」
「うぅ」
「でも好きだなんて言われんの、悪くもねえから」
そんな都合いい話があるだろうか?
って言う時は
「そんな都合いい話あります?」
「は?」
そのまま聞いてしまえばいい。
「だって竜馬さん、血の気が多いような気が」
「おい」
「あっ違うんです、そんな所も素敵ですよ」
「お前俺のどこまで知ってんだよ…」
「えーと…いつもハンサムな方と男前な方の2人一緒に行動してるし、彼女はいなそうだなって」
「おいおい、一言多くねえか」
「すっ、すいません」
「まあそうだな、アイツらには俺に惚の字の女が褒めてたって教えてやるか」
歳より若く見える笑顔が眩しい。
気の置けない仲間がいるからこそ彼は魅力的なのだ。
話は戻るが先程のストレートが許されたのが気になる。
「…で、その、セックスでもしますか?」
「またそれか」
「だってさっきうっかり零しちゃったんですもん、拾っとかないと」
「うーん…まあ、良いかもな」
「えっ」
「だからなんで驚くんだよ」
「怒られなかったから…?」
「怒りゃしねえって」
さっきちょっと怒るって言ってた気がするがそこはまあ、置いておいて良さそうだ。
「私の方からこんな事言うのどうかと思うんですがね」
「なんだ?」
「名前も知らない相手から性交に誘われて、それを受けちゃうのどうかと思いますよ」
「本当にどうかと思うよ」
「…じゃあ、何故」
「何となくだがな、別に嫌じゃねえんだよ」
「そ、れは…本当だとしたら、すごく、嬉しいです」
柄にもなく乙女なリアクションをしてしまった。
急展開に動揺するも今の言葉を深く噛み締める。
「なんならもっと好きになってくれて良いんですよ」
「貪欲かよ」
「だってぇ…」
「ま、でも何だ。お嬢のその、俺を見る時に目がギラギラしてるのが中々良い」
「ギラギラしてましたか?」
「開口一番セックスでもするかとか言ってくるぐらいだしな」
「それはちょっと誤爆でもあったんですがね」
自分から言うより相手から言われる方が恥ずかしい事に気がついた。
しかしここまでセックスというワードに食いついてくれるのを考えると、彼も所謂健全な男子であるということか、全く最高である。
「なにニヤケてんだ?」
「んふふ、いえ、好きが止まらなくなりそうです」
「止めんじゃねえぞ、俺わりと待ってやってたんだからな」
「え?」
「しまっ…あー、クソ、何でもねぇ忘れろ」
「いやいやなんですかそれ、詳しく、詳しくお願いします」
バツが悪そうに頭を搔く彼の視界に無理やり入り込み距離を詰める。
目を合わせるとそっぽを向かれるのを何度か繰り返した後に観念したようにぽつりぽつりと話し始めてくれた。
「…隼人と弁慶がよ、よく会う脈アリっぽい娘相手に俺からとっついたらビビって逃げられちまうとか言うから」
「それは…つまり?」
「……告られる前に逃げられたら嫌だったから、ちっとみっともねえけど名前とか聞くの待ってた」
「なんですと…」
「悪ぃかよ」
「いや、なんと言いますか」
よもやこの好意がバレていたこととか、突然に気づいてしまった彼の可愛らしい部分とか、色々と処理が追いつかないが兎に角。
「こんな都合いい話あります?」
「それさっきも聞いたな」
語彙力がどっか行ってしまったようだ。
「両想いだったってことですか」
「まあ、そうなるか」
「私の事よく知らないのに?」
「さっきちょっと知れたけどな、そう見えてすけべな所とか」
「んん…否定できません」
「正直揶揄われてんのかと思って焦った」
「申し訳ない…」
「良いっての」
でもあそこでジャブ止まりだったらここまで色々聞けなかったかとも思うと、そんなに悪い発言でもなかったのでは…と自己肯定感を高めた。
「でもストレートついでにまだ伝えたい事があります」
「あ?」
「私未経験なんで、セックスどうこう誘っておいて何なんですが優しくしてくださいね」
「おま、マジかよ」
「処女だとやりにくくて嫌ですか?」
「俺もそういう経験無…じゃなくて、仕方ねえなぁ」
「あと」
「まだなんかあんのか?」
「竜馬さん大好きです、これからよろしくお願いしますね」
「んな…、お嬢っ」
突然抱き締められてほんのり苦しいのと、彼の香りに頭がクラクラする。
「りょーまさん…?」
「ったく、お前が変な事ばっかり言うから俺まで変になっちまうだろうが」
「変でしたかね」
「ああ、勘弁してくれ」
「んむ…」
背中や下腹部に手錠と鎖の硬さを感じたが何か違和感がある。
「あ、勃起してます?」
「!!?」
「竜馬さんも中々すけべぇなのですね」
「ストレートなのは構わないが言い方くらい考えろ?」
「まあまあ、私で勃ててくれて嬉しいですよ」
「…ったく、そりゃあ好きな相手になら勃つくらいするっての」
「すっ」
「お?聞こえなかったか?」
好き、に過剰反応してしまったのがバレたのか意地悪そうに笑みを浮かべる彼。
「今夜は寝られると思うなよ」
「…ナナメ45度くらいのストレートですね」
「中々直角だったろうが」
「それなら夜通し抱き潰すくらい言ってくださいよ」
「お前手加減しろって言ってなかったか?」
「初めてですからね」
「どうされてぇってんだよ」
「うーん…痛くても泣いてもいいんで愛をこめてがっつり抱いてください」
「…後悔すんなよな」
そして夜の長さを再認識してしまうのは、ここからほんの数時間後の話だったという。
『ナナメ45度のストレート』
END
2021/07/14