Prologue
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「名前はルイ。ココに来た経緯は知らねぇけど、来る前は喧嘩しててリンチにあってた。助けてくれたのは礼を言う、この借りは必ず返す。この船がどこ行こうが勝手だけど次の島で降りるわ。それまでにきっちり返すから」
治療を一通り終えたあたしはダイニングらしき場所に連れて行かれた。そこにはこの船に乗っている全員が集まっていたらしく、あたしは尋問とまではいかないけど、ココに来る前のことを話していた。
落ちてきたあたしを拾って、怪我の手当てまでしてくれたんだ。こいつらに作った借りはでかすぎる。どう返すかはまだ考え中だけど相当な事しねぇとあたしの気が済まねぇ。
「借りだなんて、なんだかチンピラみたいね」
「ロビンからかわない。……あんたが降りるっていうなら止めないけど、次の島まで5日くらいかかるわ」
「上等、雑用は任せて。あと喧嘩」
次の島まであと5日。聞いた話によればこの世界は海賊がわんさかいる世界なんだと。そして海賊を捕まえる海軍っつー奴もいるんだと。頭が追い付かないような状況だけど変に冷静なあたしは何も驚くことはなかった。へぇ、という感想で終わり。
結局元の世界に戻ってもココにいてもあたしが一人なのは変わりないんだから、だろうな。何処に居たって居場所がないんだから。
「なんでだよ、お前空島の奴なんだろ?だったら一緒に冒険しよう!」
「いや、あたしその、空島っていうところから来てないし」
「そうだルフィ、こんな野蛮そうな女、仲間になんて俺が嫌だ!」
「あ”ぁ?」
「ひぃぃっ!!」
話がまとまりそうな時にこの海賊の船長、ルフィはあたしがこれから行く目的地、’空島’っていうところから来たんだと思っててずっと仲間になれってうるさい。でもその勧誘を止めるのが長鼻の狙撃手、ウソップ。あたしの言葉遣いと服装からただならぬ野蛮さを感じたんだとか。間違っちゃいないがなんかムカつく。
とりあえずあたしが次の島、’ジャヤ’ってとこで降りるのは確定した。ルフィとウソップがうるさいのは放っておいて、もう一人厄介なのが。
「なぁナミ、ルイはまだ傷が癒えてないんだ。だからあんまり無理はさせないで欲しい」
「私がとやかく言うことじゃないし、あの子に直接言いなさいよ」
そう、この船医チョッパーだ。あたしの傷の手当てをしてくれて、夢を見ていた時にうなされていたのを知っているから妙に優しいんだ。どっかの長鼻みたいに怖がりもせず、あたしに塗り薬の話をしてくれる。一日2回塗り直しなんだと、めんどくさい。
ナミに話している姿をみて、嫌な予感はしたけど逃げる暇もなく的中。
「ルイ、傷が開くくらいの無理はしちゃだめだぞ」
「あー、……うん、わかった」
「ほんとにわかってるか?」
「うん、ほんとほんと」
チョッパーは心配性らしく、ずっとこの話ばかり。分かったといっても何も聞きやしない。あたしってそんなに信用ないんですかね、チョッパーさん。
適当にあしらって席を立つ。なにやらいい匂いがするけどあの金髪キモ男はこの船のコックでサンジって言うんだと。キモイのは女全員にらしいから本当にキモイ。男に女として扱われた経験が無いからなおさら鳥肌が止まらん。
このダイニングから出ようとしたとき、サンジに呼び止められた。
「ルイちゃん、もうすぐ歓迎用のメシができるが、」
「少し出る。気にすんな」
この雰囲気が、和気あいあいとした空気に身体が耐えられなくなった。まだ微かに残る親との記憶がぐるぐると脳みそを掻きまわす。波の揺れに任せてダイニングを出る。どこか、どこか人にばれない場所へ。なんて言ってもこの船はあいつらの船なんだからそんな場所ないけど、とにかく、身を隠したい。無我夢中で足を動かしてついた場所は高く、海を見渡せる見張り台だった。すっかり暗くなった海は、ずっと見つめているとすべてを吸い込まれてしまいそうな、くらいくらい海。手摺に手を付け、少しだけ身を乗り出してみる。
……ガラじゃ、ないのに。こんなしんみりしちゃってさ。あっちにもこっちにもあたしの居場所がないのがどうしようもなく悔しくて、悲しくて、寂しい。漆黒の海。このまま飛び込んで死んでしまえばこんな気持ちもなくなんだろうな。
「……ビビってんじゃねぇよ…」
ルフィに頭突きされたときみたいに息が苦しくなった。吐くことしかできなくて、吸うと、水が器官を塞いでしまいそうで。後ずさって、へたれこむ。足に力が入らない。海を見たくない。何にも、見たくない。あたしがいらないってことも、親に捨てられたってことも、こんな場所にいることも。
「……っくそ、……っ」
頬を伝う温かい雫を感じたくなくて、膝を抱えて身を丸める。
04.暗く揺らめく海底は
(すべてを呑み込んでしまいそうで)
治療を一通り終えたあたしはダイニングらしき場所に連れて行かれた。そこにはこの船に乗っている全員が集まっていたらしく、あたしは尋問とまではいかないけど、ココに来る前のことを話していた。
落ちてきたあたしを拾って、怪我の手当てまでしてくれたんだ。こいつらに作った借りはでかすぎる。どう返すかはまだ考え中だけど相当な事しねぇとあたしの気が済まねぇ。
「借りだなんて、なんだかチンピラみたいね」
「ロビンからかわない。……あんたが降りるっていうなら止めないけど、次の島まで5日くらいかかるわ」
「上等、雑用は任せて。あと喧嘩」
次の島まであと5日。聞いた話によればこの世界は海賊がわんさかいる世界なんだと。そして海賊を捕まえる海軍っつー奴もいるんだと。頭が追い付かないような状況だけど変に冷静なあたしは何も驚くことはなかった。へぇ、という感想で終わり。
結局元の世界に戻ってもココにいてもあたしが一人なのは変わりないんだから、だろうな。何処に居たって居場所がないんだから。
「なんでだよ、お前空島の奴なんだろ?だったら一緒に冒険しよう!」
「いや、あたしその、空島っていうところから来てないし」
「そうだルフィ、こんな野蛮そうな女、仲間になんて俺が嫌だ!」
「あ”ぁ?」
「ひぃぃっ!!」
話がまとまりそうな時にこの海賊の船長、ルフィはあたしがこれから行く目的地、’空島’っていうところから来たんだと思っててずっと仲間になれってうるさい。でもその勧誘を止めるのが長鼻の狙撃手、ウソップ。あたしの言葉遣いと服装からただならぬ野蛮さを感じたんだとか。間違っちゃいないがなんかムカつく。
とりあえずあたしが次の島、’ジャヤ’ってとこで降りるのは確定した。ルフィとウソップがうるさいのは放っておいて、もう一人厄介なのが。
「なぁナミ、ルイはまだ傷が癒えてないんだ。だからあんまり無理はさせないで欲しい」
「私がとやかく言うことじゃないし、あの子に直接言いなさいよ」
そう、この船医チョッパーだ。あたしの傷の手当てをしてくれて、夢を見ていた時にうなされていたのを知っているから妙に優しいんだ。どっかの長鼻みたいに怖がりもせず、あたしに塗り薬の話をしてくれる。一日2回塗り直しなんだと、めんどくさい。
ナミに話している姿をみて、嫌な予感はしたけど逃げる暇もなく的中。
「ルイ、傷が開くくらいの無理はしちゃだめだぞ」
「あー、……うん、わかった」
「ほんとにわかってるか?」
「うん、ほんとほんと」
チョッパーは心配性らしく、ずっとこの話ばかり。分かったといっても何も聞きやしない。あたしってそんなに信用ないんですかね、チョッパーさん。
適当にあしらって席を立つ。なにやらいい匂いがするけどあの金髪キモ男はこの船のコックでサンジって言うんだと。キモイのは女全員にらしいから本当にキモイ。男に女として扱われた経験が無いからなおさら鳥肌が止まらん。
このダイニングから出ようとしたとき、サンジに呼び止められた。
「ルイちゃん、もうすぐ歓迎用のメシができるが、」
「少し出る。気にすんな」
この雰囲気が、和気あいあいとした空気に身体が耐えられなくなった。まだ微かに残る親との記憶がぐるぐると脳みそを掻きまわす。波の揺れに任せてダイニングを出る。どこか、どこか人にばれない場所へ。なんて言ってもこの船はあいつらの船なんだからそんな場所ないけど、とにかく、身を隠したい。無我夢中で足を動かしてついた場所は高く、海を見渡せる見張り台だった。すっかり暗くなった海は、ずっと見つめているとすべてを吸い込まれてしまいそうな、くらいくらい海。手摺に手を付け、少しだけ身を乗り出してみる。
……ガラじゃ、ないのに。こんなしんみりしちゃってさ。あっちにもこっちにもあたしの居場所がないのがどうしようもなく悔しくて、悲しくて、寂しい。漆黒の海。このまま飛び込んで死んでしまえばこんな気持ちもなくなんだろうな。
「……ビビってんじゃねぇよ…」
ルフィに頭突きされたときみたいに息が苦しくなった。吐くことしかできなくて、吸うと、水が器官を塞いでしまいそうで。後ずさって、へたれこむ。足に力が入らない。海を見たくない。何にも、見たくない。あたしがいらないってことも、親に捨てられたってことも、こんな場所にいることも。
「……っくそ、……っ」
頬を伝う温かい雫を感じたくなくて、膝を抱えて身を丸める。
04.暗く揺らめく海底は
(すべてを呑み込んでしまいそうで)