Prologue
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勘当されてリンチされ、目覚めたらこの天界のベッドで手当てされていたあたしはココの住人と思しき金髪キモ男に手を引かれて寝ていた部屋の扉の外側へ出た。
___瞬間、ぶわ、と膨らんだ風が身体を撫でた。
眩しい、それが最初に思った事。眩しくてキラキラしてて、反射して目が痛いくらいだ。綺麗だと、思った。
しかし目が慣れれば目の前に広がるのが海だと分かって。一面真っ青なソレに、過去にもう一度死にそうになったことを思い出す。綺麗だけど、簡単に人を殺めることができる、海。あの時の感覚が気管を締め上げて、クッと、呼吸が浅くなる。
そんな些細な異変に気付いた金髪キモ男はあたしの背中を支えた。
「大丈夫かい?顔色が悪いようだが……」
「っ、……触んな」
添えられる手が嫌で身をよじって逃げた。手すりに頼り、目を閉じて深呼吸する。深く息を吸って、大丈夫、ココは水の中じゃない。大丈夫、大丈夫……
「おめぇ、目ェ覚めたのか!!」
「……あ?」
次から次へ、人が休んでるっつーのに……渋々顔を上げて反応しようとしたら。
ビュンっと腕が伸びてきて手摺を掴んだ。思考が追い付く前に、腕が伸びてきた速さと同じくらいに、人の体が向かってきた。
______ごっちん!
鈍い音が頭に響き、痛みと共に後ろへしりもちをついた。
「っっいってぇ!!!」
「あ、わりーわりー。勢いつけすぎた」
額の痛みに耐えつつ、顔を上にあげる。あたしを吹き飛ばし、なおかつデコにたんこぶを作った奴は手摺にしゃがみ込み、麦わら帽子をかぶって悪びれもなく笑っていた。
「てめぇ、ふざけん「おいルフィこのクソ野郎!」
文句をぶつけようとしたとき、隣にいた金髪が目の前の男につかみかかった。
え、なに、こいつら同じ住人じゃねぇの。金髪が一方的に怒ってんだろうけど、住人同士の喧嘩はご法度とかねぇんだ。
「ルフィ、こいつまだ目の上の傷塞がってねぇからそんな衝撃与えたら……!」
さっきあたしを置き去りにした青っ鼻、チョッパーだったっけ。そいつがトテトテと足音を鳴らしながら近寄ってきた。
「そうなのか。お前、怪我大丈夫か?」
「……まぁ、なんとか…」
きっと痛みは額の方が強かったから、気づかなったんだ。……傷が開いていたことに。ドバ、と勢いよく開いた傷から血が流れだしガーゼに滲んでいくのが分かった。吸いきれなかった分は頬を伝って木造の床に落ちた。
「ああああ!!ほらぁぁ!!」
「チョッパー、早く手当てを!!」
「お、おう!こっちだ!」
「なんだおめぇら、こんくらいで騒がしいやつだなぁ」
「「お前がやったんだろ!!」」
慌てるチョッパーに、怒り狂う金髪。そしてあたしの治療を促す女の声。ここ、この3人以外に住人いんのか、大所帯だな。最後のチョッパーと金髪のハモりが具合完璧だった。
小さな蹄に手を引かれ、もう一度先程の部屋に戻される。あ、全然気にしてなかったけどこの部屋医務室か何か?ベッドに腰を下ろし、チョッパーは机に向かってなんか用意してる。血が落ちると悪いから、掌で落ちる雫を受け止めてると、見ていた夢を思い出した。あんな奴らに泣いたのか、あたし。悔しくて、奥歯を軋ませた。
「ガーゼ、取るぞ」
「え、あ、うん」
俯いて考えにふけっていたら声を掛けられ、顔を上げる。優しい手つきでたっぷり血のしみ込んだガーゼを取る。綿みたいなもので流れる血液をふき取るけど、一向に止まってくれないから苦戦してる。
「ごめんな、うちの船長が」
不意にチョッパーの口から紡がれた言葉。’船長’って、そういった。あたしが生きていた世界ではそんな言葉日常的に使わないし、まともに学校言ってた頃に教科書でしか見たことない。だから、疑問をぶつけることにした。
「船長?」
「おう!驚くかもしれないけど、ココは海賊船なんだ!」
「ふぅん……」
さして驚きはしなかった。信じなくてもここにいるってことはそれが現実ってことだし、デコの痛みが未だに消えないってことは、そういうことだろう。現実逃避したってもう帰る場所もないわけだし。
「あら、驚かないのね」
開いている片目で扉に立つ人影を見やる。オレンジの髪に凄い胸がでかい、女。声からしてあたしをここに連れてくよう指示した奴だろう。扉にもたれているため、開いている隙間から金髪と麦わらがこちらの様子を伺っている。
あの麦わら、見てんならこっち来て謝罪の一つくらいしてけよ。お前のせいでこっちはデコ腫れて傷も開いてんだよ。この傷はあたしが悪ぃんだけど。
「そこの船医、チョッパーが言う通りココは海賊船なの。で、さっきあんたに頭突きかましたのが船長のルフィ」
「おい俺は自分で自己紹介するぞ!」
「うっさいわね、そんなこといいから謝んなさい!……で、私は航海士のナミ。あんたは?」
なんだ、人の名前聞くときは自分からていう礼儀わきまえてんじゃん、少し意外。あたしが生きてた頃は上の奴に無礼働いたら絞められてたもんな。
「ルイ。聞きたいことがあんだけど、あたしなんでココにいんの?」
「それはこっちが聞きたいくらい。あんたね、空から落ちて来たのよ、船と一緒にね」
「そうだぞ!ルフィが受け止めてくれたけど、お前、酷い怪我だったんだ。鼻血も出てたし」
チョッパーがナミに続いて情報を提供してくれた。……鼻血。っつーことは気を失った直後にここに来たってことか。でも、空からってのはあたしもわかんない。まぁでも、海に落っこちなかっただけ幸いか。サンキュー、麦わらサン。
「それで、ここからが本題なんだけど……なんで空から落ちてきたの?」
その時、ひんやりとした空気が流れた。目の前の航海士、ナミの目はあたしを疑っていた。いつの間にか血は止まっていて、元通り新しいガーゼが貼られている。ピリッとした雰囲気が肌に刺さりヒリヒリする。でもこんな雰囲気にされてもあたしだってわからない。
あたしを知らないこいつらと、あたしを受け付けないこの世界はあの夢のような、冷たい目で見ているような気がした。
03.初めまして、海賊さん
(あたしはもう、行く場所なんてない)
___瞬間、ぶわ、と膨らんだ風が身体を撫でた。
眩しい、それが最初に思った事。眩しくてキラキラしてて、反射して目が痛いくらいだ。綺麗だと、思った。
しかし目が慣れれば目の前に広がるのが海だと分かって。一面真っ青なソレに、過去にもう一度死にそうになったことを思い出す。綺麗だけど、簡単に人を殺めることができる、海。あの時の感覚が気管を締め上げて、クッと、呼吸が浅くなる。
そんな些細な異変に気付いた金髪キモ男はあたしの背中を支えた。
「大丈夫かい?顔色が悪いようだが……」
「っ、……触んな」
添えられる手が嫌で身をよじって逃げた。手すりに頼り、目を閉じて深呼吸する。深く息を吸って、大丈夫、ココは水の中じゃない。大丈夫、大丈夫……
「おめぇ、目ェ覚めたのか!!」
「……あ?」
次から次へ、人が休んでるっつーのに……渋々顔を上げて反応しようとしたら。
ビュンっと腕が伸びてきて手摺を掴んだ。思考が追い付く前に、腕が伸びてきた速さと同じくらいに、人の体が向かってきた。
______ごっちん!
鈍い音が頭に響き、痛みと共に後ろへしりもちをついた。
「っっいってぇ!!!」
「あ、わりーわりー。勢いつけすぎた」
額の痛みに耐えつつ、顔を上にあげる。あたしを吹き飛ばし、なおかつデコにたんこぶを作った奴は手摺にしゃがみ込み、麦わら帽子をかぶって悪びれもなく笑っていた。
「てめぇ、ふざけん「おいルフィこのクソ野郎!」
文句をぶつけようとしたとき、隣にいた金髪が目の前の男につかみかかった。
え、なに、こいつら同じ住人じゃねぇの。金髪が一方的に怒ってんだろうけど、住人同士の喧嘩はご法度とかねぇんだ。
「ルフィ、こいつまだ目の上の傷塞がってねぇからそんな衝撃与えたら……!」
さっきあたしを置き去りにした青っ鼻、チョッパーだったっけ。そいつがトテトテと足音を鳴らしながら近寄ってきた。
「そうなのか。お前、怪我大丈夫か?」
「……まぁ、なんとか…」
きっと痛みは額の方が強かったから、気づかなったんだ。……傷が開いていたことに。ドバ、と勢いよく開いた傷から血が流れだしガーゼに滲んでいくのが分かった。吸いきれなかった分は頬を伝って木造の床に落ちた。
「ああああ!!ほらぁぁ!!」
「チョッパー、早く手当てを!!」
「お、おう!こっちだ!」
「なんだおめぇら、こんくらいで騒がしいやつだなぁ」
「「お前がやったんだろ!!」」
慌てるチョッパーに、怒り狂う金髪。そしてあたしの治療を促す女の声。ここ、この3人以外に住人いんのか、大所帯だな。最後のチョッパーと金髪のハモりが具合完璧だった。
小さな蹄に手を引かれ、もう一度先程の部屋に戻される。あ、全然気にしてなかったけどこの部屋医務室か何か?ベッドに腰を下ろし、チョッパーは机に向かってなんか用意してる。血が落ちると悪いから、掌で落ちる雫を受け止めてると、見ていた夢を思い出した。あんな奴らに泣いたのか、あたし。悔しくて、奥歯を軋ませた。
「ガーゼ、取るぞ」
「え、あ、うん」
俯いて考えにふけっていたら声を掛けられ、顔を上げる。優しい手つきでたっぷり血のしみ込んだガーゼを取る。綿みたいなもので流れる血液をふき取るけど、一向に止まってくれないから苦戦してる。
「ごめんな、うちの船長が」
不意にチョッパーの口から紡がれた言葉。’船長’って、そういった。あたしが生きていた世界ではそんな言葉日常的に使わないし、まともに学校言ってた頃に教科書でしか見たことない。だから、疑問をぶつけることにした。
「船長?」
「おう!驚くかもしれないけど、ココは海賊船なんだ!」
「ふぅん……」
さして驚きはしなかった。信じなくてもここにいるってことはそれが現実ってことだし、デコの痛みが未だに消えないってことは、そういうことだろう。現実逃避したってもう帰る場所もないわけだし。
「あら、驚かないのね」
開いている片目で扉に立つ人影を見やる。オレンジの髪に凄い胸がでかい、女。声からしてあたしをここに連れてくよう指示した奴だろう。扉にもたれているため、開いている隙間から金髪と麦わらがこちらの様子を伺っている。
あの麦わら、見てんならこっち来て謝罪の一つくらいしてけよ。お前のせいでこっちはデコ腫れて傷も開いてんだよ。この傷はあたしが悪ぃんだけど。
「そこの船医、チョッパーが言う通りココは海賊船なの。で、さっきあんたに頭突きかましたのが船長のルフィ」
「おい俺は自分で自己紹介するぞ!」
「うっさいわね、そんなこといいから謝んなさい!……で、私は航海士のナミ。あんたは?」
なんだ、人の名前聞くときは自分からていう礼儀わきまえてんじゃん、少し意外。あたしが生きてた頃は上の奴に無礼働いたら絞められてたもんな。
「ルイ。聞きたいことがあんだけど、あたしなんでココにいんの?」
「それはこっちが聞きたいくらい。あんたね、空から落ちて来たのよ、船と一緒にね」
「そうだぞ!ルフィが受け止めてくれたけど、お前、酷い怪我だったんだ。鼻血も出てたし」
チョッパーがナミに続いて情報を提供してくれた。……鼻血。っつーことは気を失った直後にここに来たってことか。でも、空からってのはあたしもわかんない。まぁでも、海に落っこちなかっただけ幸いか。サンキュー、麦わらサン。
「それで、ここからが本題なんだけど……なんで空から落ちてきたの?」
その時、ひんやりとした空気が流れた。目の前の航海士、ナミの目はあたしを疑っていた。いつの間にか血は止まっていて、元通り新しいガーゼが貼られている。ピリッとした雰囲気が肌に刺さりヒリヒリする。でもこんな雰囲気にされてもあたしだってわからない。
あたしを知らないこいつらと、あたしを受け付けないこの世界はあの夢のような、冷たい目で見ているような気がした。
03.初めまして、海賊さん
(あたしはもう、行く場所なんてない)