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「う~わ~いいなココ!!見ろよ店が浮いてるぞ」
にぎやかな繁華街にどでかいルフィの声が響いた。
アッパーヤード
あたし達は今、ここから唯一”神の島”につながっているミルキーロードに乗るべくエンジェル島のラブリー通りという場所に来ている。さっきの海岸と違って、ここは人がたくさん行きかっている。見た目はコニスやコニス父と同じよくわからない触角が生えていて服装も似ているものを着ている。原住民族だったら当たり前か。
でも居心地が悪い理由があって。それはすれ違う人…いや、すれ違ってない人もあたし達をちらちら見て、完全に避けるようにして歩いている。そのおかげでぶつからずに済むけど、居心地は最悪。うえ。
「……なんか…完全に避けられてねェか?俺たち」
「…あァ、もう知れ渡っちまってんだろうよ犯罪者として」
「なんかムカつくから殴っていい?」
「ばっか冗談もほどほどにしろルイ!!お前といると心臓が何個あっても足りねェ!!!」
「強気なルイちゃんも素敵だァっ!!」
ウソップが周りの人間のよそよそしい様子に疑問を述べれば、先ほど犯罪者にされたことを思い浮かべながら返すサンジ。あたしの世界でも犯罪者は罪の重さに関わらず避けられていたからもちろん、仕方ねぇことなのは分かるけど、ナミたちが連れていかれてあたしは頭に来てる。そこにこの仕打ちはどうしたってイライラが募るだけで。もちろんそんなことはしないが気持ちは殴りたいので素直に言葉にしてみた。ら、変態が引っ掛かった。
ウソップはウソップであたしがすぐキレるもんだから、飛び出さないようにすぐ横に待機して歩いている。人が避けてこんなに道が広いんだし離れてあるきゃいいのによ。
「あっはっは、気分いいな!町のまん中がら空きだ」
我らが船長は呑気で人がいなくなった道を楽しそうに歩いている。露店にある用途の分からない商品を物欲しそうに見たりつついたりしている。
おいあいつのほうが目離したらダメだろ、あたしよりダメだろ。
そんなこんなでルフィがあちこちを見て回るから目的の船着き場まではちょっと時間がかかっていると思う。
「ルフィ、早くナミたち助けに行かなきゃいけねぇんだから油売ってんじゃねぇよ」
「助ける?大丈夫さ、ゾロも一緒に捕まってんだからよ」
「マリモだけじゃん、信用できない」
よそ見ばっかりするルフィに呆れて声を掛ければまた呑気な返事をするゴム男。マリモがいるっていうけどでも、マリモだけじゃ全員を守れないだろ。はやく、一刻も早くあいつらのもとへ行きたい。最後に聞いたナミとチョッパーの悲痛な先日がまだ残ってる。
「おいルフィ、ルイちゃんの怪我だってチョッパーがいないと診てもらえねェんだ。さっさと向かうぞ」
「む、それもそうだな。にしても派手に怪我したなァルイ!」
「今かよ。勲章と言え」
「威張れることじゃねぇだろ」
なっはっは、と包帯ぐるぐる巻きのあたしを見直してルフィは笑う。でもこの傷は猿のおっさんたちを守った勲章だと思ってるからそう返せば、横から長っ鼻のツッコミが。うるせぇの意を込めて睨みを聞かせれば目を合わせないようにそっぽを向きやがった。
しかし、確かにサンジの言う通りであって。あたしがすぐ飛び掛かろうとするばかりにロビンに巻いてもらった包帯はもう結構寄れてしまっている。雲の海には浸かってないから濡れてはいないけど、この先の試練とやらで傷が開きかねない。こんなことならチョッパーに薬もらっとくんだったなぁ。
「お?通りのまん中になんかある」
ふと、ルフィのそんな声で顔を上げれば円柱状のガラスに包まれている変な埴輪のようなものがあった。近づけば土で出来ているみたいだけど、見慣れない形をしている。私たちの背より遥に大きい土人形だ。
「へんなかお、なんじゃこりゃ。オットセイかな」
「オットセイはこんな気持ち悪くない」
「…だたの変なドロ人形にしか見えねェが、きっと宗教的な像だろ」
アート
「ばかめ、これは芸術さ!!俺にはわかる」
ルフィに続いてあたし、サンジ、ウソップが口々に感想を述べるが実際のところ、この像の存在理由は察することが難しい。前の世界でも、モアイ像とか地藏とか大仏とか像を置いてあることはあったけど、置いてある理由は結局分からず終いで死んじまったな。
「それは”ヴァース”。空に住む人々の永遠の”憧れ”そのものです」
像を囲んで覗き込むあたし達に、船着き場への道を先導してくれていたコニスが声を掛ける。
憧れ、そう彼女は言った。ここは空島だからここに来てから踏みしめたのは思えば雲だけだった。この像は土で出来てて。っていう事は土が、憧れってことなのか?
「え!?おめェらこんなんに憧れてんのか?どうかしてるな」
「ばか船長」
「バカって言ったかルイ!俺はバカじゃねェ!」
「フフッ…いいんですルイさん。青海の人達には理解し難いものですね…きっと」
ずっと思ってたけどノンデリルフィの言葉にすかさず悪態をついてやった。まぁこいつに空気読めとか気を遣えなんて言う方がおかしいんだけど。それでもコニスの顔が少し、ほんの少し切なそうで、それを見逃せなかっただけ。
「あ…こっちです船着き場は…」
「ええ!?もう町出るのか!?
「出るも何も目的はココじゃねェだろ!!」
そんな切なそうな表情を一変、コニスはもう少しを近づいた船着き場へと案内を続けてくれた。相変わらず行きかう人はあたし達を避けて、道はいやに広く開けていた。
___エンジェル島、船着き場__
「おお~~~~~!!船がある、ある!!」
コニスが言った通り、船着き場まではそんなに掛からなかった。相変わらず人が多くて賑わっている様子だけど避けられている。
船着き場はいろんな大きさや装飾の船が並んでいた。さすがにメリー号のように大きな船はないけどそれでもしっかりとした造りの船がたくさん。
「うわっ!!見ろよルイ、このゴンドラ!!カッコい~~な~~~!!これ借りよう!!」
「なんでお前が決めるんだよ、コニスが用意してくれてるって言ってんだろ」
「でもよ~~~!後ろんとこ見てみろ、これもウェイバーみたいに勝手に進むやつだぞ」
「ウェイバーだったら操縦できねぇじゃん」
”センスねぇんだから”と付け加えるが、ルフィはそれはもう新型ロボットを見つけた小学生のような目ででかいゴンドラを見つめていてあたしの悪口には一切気づいていない様子だった。
「あ、みなさんの船はこっちです」
ドデカゴンドラを見つめていると、コニスがあたし達の乗る船へ案内してくれた。そして案内された先に待っていた船はというと。
「”カラス丸”です」
…雲の海に浮かんでいるカラス、だった。
嫌なわけではない、けど、どうしてもさっき見たドデカゴンドラと比べてしまうのは人間だから仕方ない、と思いたい。誰だって期待しすぎるとちょっと反応遅くなるだろ、あれ。すぐには反応できなかったけど、あたしは全然この船嫌じゃねぇからな、4人で乗るにはちょっと小さいと思っただけ、それだけだから。
聞くと、ちょっと前までウェイバーに乗れなかったコニスが使ってたもので、ぜひ使ってくれとのこと。もちろん文無し船なし犯罪者の三拍子揃ってるあたし達にとって、ここまで連れてきてくれてそれに無償で船を貸し出してくれるコニスには頭が上がらないし、そんな贅沢をいうつもりもない。これでナミ達を助けに行けるんだから願ったり叶ったりだ。
「いや…俺はコレよりアッチがいい…!!」
「このクソ恩知らずがァ!!!謝れ!!!コニスちゃんに心から謝れ!!!この人間のクズが!!!」
贅沢を言うもの、約一名いたわ。そんですぐサンジの蹴りが顔面にめり込んでるわ。ノンデリが過ぎるだろうが船長よ。何度も蹴りたくなる気持ちさすがに分かるわ。
あたしも遠慮なく人間のクズを見る目でルフィを見つめることにした。
ノンデリに酷すぎるノンデリ発言を食らったのに、コニスは一瞬落ち込んだのちミルキーロードへの道のりを説明してくれた。
アッパーヤード
「出口は2番ゲートです。”神の島”へつながる巨大なミルキーロードへ出られるので……そこを通るだけです…」
丁寧に説明してくれたからルフィでも忘れないことだろうと思った、けど。最後になるにつれてコニスの歯切れがだんだんと悪くなる。もしかして後からルフィのノンデリ発言が効いてきたのか?
それによく見るとコニスの体は少し震えてるように見える。何か例えようのない嫌な予感がする。
あたしはすぐにコニスへ駆け寄って隣に立つ。
「コニス、」
「ルイさん…ど、どうかされましたか?」
「体、震えてる」
そういって彼女の肩にそっと触れれば、ぎくっ、と効果音が付きそうなほどコニスの体が強張った。おかしい、嫌な予感は的中してしまったようだ。
その瞬間、あたし達を遠巻きに見ていた住人達もざわつき始めて雲行きが怪しすぎる。
「そう……見えますか……?」
「うん、何かに怖がってるみてぇ」
コニスのこの怯えよう、どうしてだかわからないけどさっきのあの顔、ウソがばれてしまったみたいな顔。それがどうしても引っ掛かってしまって。何か別のものから脅されてるような、そんな雰囲気を感じ取った。
じ、とコニスの顔を見つめれば彼女は気まずそうに眼を伏せた。
「コニスちゃんあ~~~~~っ!!俺たちの事心配してくれてんだろォ~、いじらしいなァ~~~~~♡も~~~~~!!」
あたしとは全く真逆に受け取ったらしいクソ金髪がくねくね気持ち悪い動きをしながら近づいてきた。でも無視してコニスの顔をじっと見つめる。そしてクソ金髪の後頭部をウソップが殴っている。いいぞウソップもっとやれ。
「でもよ…おめェらこそ大丈夫か?町の奴らなんてあからさまに俺たちを避けてるくらいなのに、お前なんか船まで貸してくれるし…道案内もしてくれて………これじゃ俺たちと共犯になっちまうんじゃねェか?」
ウソップの言う通りだ。あたし達はこの国では第2級犯罪者となっていて、死刑より重い罪となっているんだ。そんな犯罪者にコニスは道案内、ましてや船も貸してくれていて。今考えると何もかもがうまく行き過ぎている、と、感じる。親切すぎると。
コニスの顔を再度見つめなおせば、顔色が悪く真っ青な色をしていた。無意識に彼女の手を握っていて、彼女は驚いたようにあたしを見た。やっと目があった。
「…コニス」
「ルイさん……私……!!違いますよ………」
コニスの目が、あたしの目をしっかりと見つめて、ごめんなさいって言ってるみたいで。自然と彼女の手を握る力が強くなった。大丈夫、あたしはあんたを絶対助けたい、助けたいんだって思いを込めて見つめ返す。
コニスが口を開いた途端、周りの住人がより一層ざわつき始めた。これはもう、こいつらも関わってるんだ。ここに居る奴らみんな、全部コニスに擦り付けて、知ってたくせに全部、全部。
「変ですよね……「試練」のルート丁寧に説明したり……ここへ自ら案内したり……まるでここへあなた達を誘導したみたい……」
「あなた!!おやめなさい!!バカな事口にするもんじゃない!!!」
ぽつり、ぽつりとコニスが今まで取っていた行動を振り返るように話し始めた。その瞬間、住人の1人が静止するよう声を荒らげ始める。耳障りだ、コニスの声が、想いがきこえねぇじゃねぇか。
コニスの震えはより一層酷いものになっていて、握ったてから微かに伝わるほどになっている。
絶対に離すもんかと、彼女の背負ってるものを分けて欲しいと願いながら握っていた手は、コニスが地面に膝をついたことでするりと、力なく細い指は落ちていった。
「逃げてくれませんか…?」
するりと落ちた手と同じ、力なく、やっとの思い出振り絞った声が鼓膜にぶつかった。
「ごめんなさい!!!“超特急エビ”呼んだの、私なんですよね…!!!!」
「犯罪者を確認したら裁きの地へ誘導しないと、私達殺されてしまうから!!!」
声を荒げながらぽろぽろと涙を零す様子に、腹の底で何かが煮立っていくのを感じた。いや、あたし達が犯罪者となってしまったことが悪いのかもしれない。
けど。どれだけ苦しかったんだろう。あたし達を騙していると自覚しながら裁きの地へ誘導しなければいけなかったコニスの気持ちは、どれだけしんどかっただろうか。
「___これが”国民の義務”なんですよね……!!!」
「んなバカな……!!!」
「ごめんなさい!!!おかしいですよね……!?……何もかも…!!!」
でも、だけど、
「バカあんた…こうしなきゃ仕方なかったんだろ…!!?」
あたしの振り絞った問いかけにコニスは力なく頷く。騙されたって、誘導されたってどうでもいい。あたし達の仲間を助けに行く目的は変わらないんだから。だから、だからあんたがこうでもしなきゃ殺されるってんなら喜んで騙された。こうしなきゃあんたは殺されてしまうんだから、だからどうして、それを、
あたし
「「「「なんで俺たちに言うんだ!!!!」」」」
「え…?」
「あんたが狙われんだぞ!!!」
座り込んだコニスの肩を掴んで怒鳴りながら揺さぶる。このままではコニスが狙われて殺されちまう。どこか逃げる場所は、と辺りを見回せば「ダメだもう…」「手遅れだ!!!」と声を荒げてあたし達から遠ざかる姿が見える。
「その子に近寄ってはいけない!!!”裁き”が来るぞ!!!」
「裁き…!?」
一人の住人の声がいやに鮮明に届いた。裁きと、そう言った。裁き、裁き。その裁きがコニスを殺すってのか、冗談じゃねぇ。
構わず辺りを見回そうとすれば、ビリビリ、という音とともに辺りが明るくなった。いや、あたしとコニスの頭上が光に包まれ始めていた。
あたしは咄嗟にコニスの頭を抱えるように抱き締めた。あたしなんかの小さい体じゃこいつは守れない。否、こんなでかい雷にはどんな巨大な男だってタダじゃすまない。
だけど。あたし達の身を案じて、黙ってればいいものを全部話して、自分は危ないくせにあたし達に逃げてなんて言ったこいつを投げ出して逃げるなんて出来なかった。こうなってしまったのはあたし達の責任でもあるのに、こいつは、コニスは一人で背負いやがって、
_______ズンッ…!!!!___
「!!なんだこりゃあ…」
「何が起こった!!?」
「ルイ!!!!コニス~~~~!!!」
どでかい雷があたし達を襲い、その威力は雲の地面を抉り突き抜けるほど。辺りにあった家や店も吹き飛んでいて。
ゴッド
「無駄だ……全能なる”神・エネル”はすべてを見ているんだ…」
「2人共無事である!!」
座り込んだ住民がぼやいた後すぐ、老人の声が響き渡った。
「ああっ!!!”変なおっさん”!!!」
ウソップの声にルフィとサンジもそちらへ目を向ける。あたしとコニスは雷に打たれる瞬間、さっき会った変なおっさん…空の騎士とその騎士が乗るキモイ鳥…ピエールに助けてもらっていた。
正直、おっさんが居なかったらあたしもコニスも丸焦げで殺されてただろうから助かった。それはもう本当に。
「ウ~~~~ム我輩”空の騎士”!!これはサービスだぞ」
「よかった…ルイちゃん、コニスちゃん…」
地上からこちらを見上げるサンジの顔はひどく安堵しているようだった。これは不可抗力だよな、怒られたりしないよな。コニスが危なかったら誰でも庇うと思うんだ、だってあたしが一番近かったし。これで降りた後文句言われたらあたしも文句言おう。
上から呑気に眺めていると、あろうことかおっさんはあたしを、あたしだけをそのまま上空から下へ投げた。
「ぎゃっ!!!」
「っと、」
まさかおっさんが投げると夢にも思ってなかったから、叫びながら衝撃を覚悟していた。ら、ぼす、と形容しがたい音とともに覚悟していた衝撃とはずいぶん程遠い感覚に体が包まれた。
そっと顔を上げると、太陽を背にしてきらきらと光る金髪があたしをしっかりとキャッチしていた。それもいわゆるお姫様抱っこで。
「おいさっさと降ろせ」
「……………」
なかなか降ろさない金髪にさらに噛みついてやろうとするけど、あいつがすごく切なそうな目で見てきたから出来なかった。あたしを受け止めた腕に力を込めて、抱き寄せて、聞こえるか聞こえないくらいの音で安堵の息を吐いていた。
うーーーん、なんか、ここまで心配させてたんだと思うとなんか悪きもするな。どうでもいいと思ってたけど、あたしが死んだらこいつも死んじまうんじゃねえの、そんくらいの勢いの心配なんだけど。
「この娘は我輩に預けよ。みすみすエネルに狙わせはせぬ」
おっさんはというと、あまりの衝撃に気を失っているコニスを抱えたままそう言った。エネル、という名前。そいつがコニスやここの奴らが怯える原因ってことか。
ゴッド
「おぬしらはこの国の本心を知った…”神”の力もな。これよりいかに動く」
この国は、あいつらが言うエネルに牛耳られている。神と呼ばせているくらいなんだから、相当の力があるんだろう。コニスが真実を話してくれた瞬間降り注いだ雷が根拠だ。この世界に盗聴器なんてものはあるのだろうか、それがなければあんなに的確に、そして瞬間的にコニスは狙えないはずだと思う。さっきのあれだけでかなり強いことは分かった、雷からも逃げられなかったし。
でも、だからと言ってあたし達が足を止める理由にはならない。
「国は俺たちに関係ねェよ。”神の島”に仲間がいるんだ!!!」
「そうか……幸運あれ」
うちの船長の意向はあたし達全員の意向だ。おっさんは順番に顔を見て、納得したようにコニスを抱えたまま飛び去って行った。
エネルからの攻撃をうまいこと回避できたけど、これでへこたれるほどメンタルは弱くない。ましてやナミ達があんな力の奴の元へ連れてかれたなら余計に早く行きたい気持ちが強くなるってもん。
「……いつまで抱えてんだよ」
「おっとすまねェ、軽すぎて忘れてたよ」
「離せ」
気づけばまだサンジの腕に抱えられたままで、降ろせと身じろぎすれば簡単に腕は離れていった。さっさと離れちまおう、と距離を取ろうとしたところ。
腕を引かれて、体勢の整っていなかった身体は簡単によろめく。よろめいた身体の行先はサンジの胸の中で。うぶ、と肩口に勢いよく飛び込んでしまった。
「無事でよかった」
この距離でしか聞こえない、この距離だから聞こえた声に、柄にもなく動揺して。あたしが突き飛ばすより先に離れていったから上げた手は空を切ってどうしようもなくなっちゃった。
何が起こったのか整理できないあたしはただただ、雷のせいで開いたでかい穴の前で突っ立っていて。
「ルイ、船にのれ。行くぞ!」
「あ、うん、行く」
ルフィの声が聞こえるまで、サンジの体温と心臓の音と、タバコの匂いが離れてくれなかった。ずっと煙たい何かが纏わりついているみたい。
アッパーヤード
「さぁ行くか!!!”神の島”!!!」
コニスが用意してくれた船、カラス丸に乗り込み船長の掛け声で発進していく。この船は何が悪いって、小さくて狭い。4人乗りには向いてないのかと改めて思った。
あたしはとりあえず、ビビッて泣き喚くウソップの隣をキープし、サンジとは対角線になるよう距離を保った。いつまたあんなことされるかわかんねぇから、自衛。
警戒心から監視を続けていると、ばち、と視線が合った。あいつはまた、さっきみたいな目であたしを見て口元を緩ませた。
「……キメェ!!!」
「ギャー!!急になんだよルイ、でけぇ声出すなよ!!!」
耐え切れず大声を出して気を紛らわせる。鼻先に付いたタバコの匂いはまだ消えなくて、袖で拭った。
33.いざ出陣
(……心臓がいくつあっても足りねェなァ…)
にぎやかな繁華街にどでかいルフィの声が響いた。
アッパーヤード
あたし達は今、ここから唯一”神の島”につながっているミルキーロードに乗るべくエンジェル島のラブリー通りという場所に来ている。さっきの海岸と違って、ここは人がたくさん行きかっている。見た目はコニスやコニス父と同じよくわからない触角が生えていて服装も似ているものを着ている。原住民族だったら当たり前か。
でも居心地が悪い理由があって。それはすれ違う人…いや、すれ違ってない人もあたし達をちらちら見て、完全に避けるようにして歩いている。そのおかげでぶつからずに済むけど、居心地は最悪。うえ。
「……なんか…完全に避けられてねェか?俺たち」
「…あァ、もう知れ渡っちまってんだろうよ犯罪者として」
「なんかムカつくから殴っていい?」
「ばっか冗談もほどほどにしろルイ!!お前といると心臓が何個あっても足りねェ!!!」
「強気なルイちゃんも素敵だァっ!!」
ウソップが周りの人間のよそよそしい様子に疑問を述べれば、先ほど犯罪者にされたことを思い浮かべながら返すサンジ。あたしの世界でも犯罪者は罪の重さに関わらず避けられていたからもちろん、仕方ねぇことなのは分かるけど、ナミたちが連れていかれてあたしは頭に来てる。そこにこの仕打ちはどうしたってイライラが募るだけで。もちろんそんなことはしないが気持ちは殴りたいので素直に言葉にしてみた。ら、変態が引っ掛かった。
ウソップはウソップであたしがすぐキレるもんだから、飛び出さないようにすぐ横に待機して歩いている。人が避けてこんなに道が広いんだし離れてあるきゃいいのによ。
「あっはっは、気分いいな!町のまん中がら空きだ」
我らが船長は呑気で人がいなくなった道を楽しそうに歩いている。露店にある用途の分からない商品を物欲しそうに見たりつついたりしている。
おいあいつのほうが目離したらダメだろ、あたしよりダメだろ。
そんなこんなでルフィがあちこちを見て回るから目的の船着き場まではちょっと時間がかかっていると思う。
「ルフィ、早くナミたち助けに行かなきゃいけねぇんだから油売ってんじゃねぇよ」
「助ける?大丈夫さ、ゾロも一緒に捕まってんだからよ」
「マリモだけじゃん、信用できない」
よそ見ばっかりするルフィに呆れて声を掛ければまた呑気な返事をするゴム男。マリモがいるっていうけどでも、マリモだけじゃ全員を守れないだろ。はやく、一刻も早くあいつらのもとへ行きたい。最後に聞いたナミとチョッパーの悲痛な先日がまだ残ってる。
「おいルフィ、ルイちゃんの怪我だってチョッパーがいないと診てもらえねェんだ。さっさと向かうぞ」
「む、それもそうだな。にしても派手に怪我したなァルイ!」
「今かよ。勲章と言え」
「威張れることじゃねぇだろ」
なっはっは、と包帯ぐるぐる巻きのあたしを見直してルフィは笑う。でもこの傷は猿のおっさんたちを守った勲章だと思ってるからそう返せば、横から長っ鼻のツッコミが。うるせぇの意を込めて睨みを聞かせれば目を合わせないようにそっぽを向きやがった。
しかし、確かにサンジの言う通りであって。あたしがすぐ飛び掛かろうとするばかりにロビンに巻いてもらった包帯はもう結構寄れてしまっている。雲の海には浸かってないから濡れてはいないけど、この先の試練とやらで傷が開きかねない。こんなことならチョッパーに薬もらっとくんだったなぁ。
「お?通りのまん中になんかある」
ふと、ルフィのそんな声で顔を上げれば円柱状のガラスに包まれている変な埴輪のようなものがあった。近づけば土で出来ているみたいだけど、見慣れない形をしている。私たちの背より遥に大きい土人形だ。
「へんなかお、なんじゃこりゃ。オットセイかな」
「オットセイはこんな気持ち悪くない」
「…だたの変なドロ人形にしか見えねェが、きっと宗教的な像だろ」
アート
「ばかめ、これは芸術さ!!俺にはわかる」
ルフィに続いてあたし、サンジ、ウソップが口々に感想を述べるが実際のところ、この像の存在理由は察することが難しい。前の世界でも、モアイ像とか地藏とか大仏とか像を置いてあることはあったけど、置いてある理由は結局分からず終いで死んじまったな。
「それは”ヴァース”。空に住む人々の永遠の”憧れ”そのものです」
像を囲んで覗き込むあたし達に、船着き場への道を先導してくれていたコニスが声を掛ける。
憧れ、そう彼女は言った。ここは空島だからここに来てから踏みしめたのは思えば雲だけだった。この像は土で出来てて。っていう事は土が、憧れってことなのか?
「え!?おめェらこんなんに憧れてんのか?どうかしてるな」
「ばか船長」
「バカって言ったかルイ!俺はバカじゃねェ!」
「フフッ…いいんですルイさん。青海の人達には理解し難いものですね…きっと」
ずっと思ってたけどノンデリルフィの言葉にすかさず悪態をついてやった。まぁこいつに空気読めとか気を遣えなんて言う方がおかしいんだけど。それでもコニスの顔が少し、ほんの少し切なそうで、それを見逃せなかっただけ。
「あ…こっちです船着き場は…」
「ええ!?もう町出るのか!?
「出るも何も目的はココじゃねェだろ!!」
そんな切なそうな表情を一変、コニスはもう少しを近づいた船着き場へと案内を続けてくれた。相変わらず行きかう人はあたし達を避けて、道はいやに広く開けていた。
___エンジェル島、船着き場__
「おお~~~~~!!船がある、ある!!」
コニスが言った通り、船着き場まではそんなに掛からなかった。相変わらず人が多くて賑わっている様子だけど避けられている。
船着き場はいろんな大きさや装飾の船が並んでいた。さすがにメリー号のように大きな船はないけどそれでもしっかりとした造りの船がたくさん。
「うわっ!!見ろよルイ、このゴンドラ!!カッコい~~な~~~!!これ借りよう!!」
「なんでお前が決めるんだよ、コニスが用意してくれてるって言ってんだろ」
「でもよ~~~!後ろんとこ見てみろ、これもウェイバーみたいに勝手に進むやつだぞ」
「ウェイバーだったら操縦できねぇじゃん」
”センスねぇんだから”と付け加えるが、ルフィはそれはもう新型ロボットを見つけた小学生のような目ででかいゴンドラを見つめていてあたしの悪口には一切気づいていない様子だった。
「あ、みなさんの船はこっちです」
ドデカゴンドラを見つめていると、コニスがあたし達の乗る船へ案内してくれた。そして案内された先に待っていた船はというと。
「”カラス丸”です」
…雲の海に浮かんでいるカラス、だった。
嫌なわけではない、けど、どうしてもさっき見たドデカゴンドラと比べてしまうのは人間だから仕方ない、と思いたい。誰だって期待しすぎるとちょっと反応遅くなるだろ、あれ。すぐには反応できなかったけど、あたしは全然この船嫌じゃねぇからな、4人で乗るにはちょっと小さいと思っただけ、それだけだから。
聞くと、ちょっと前までウェイバーに乗れなかったコニスが使ってたもので、ぜひ使ってくれとのこと。もちろん文無し船なし犯罪者の三拍子揃ってるあたし達にとって、ここまで連れてきてくれてそれに無償で船を貸し出してくれるコニスには頭が上がらないし、そんな贅沢をいうつもりもない。これでナミ達を助けに行けるんだから願ったり叶ったりだ。
「いや…俺はコレよりアッチがいい…!!」
「このクソ恩知らずがァ!!!謝れ!!!コニスちゃんに心から謝れ!!!この人間のクズが!!!」
贅沢を言うもの、約一名いたわ。そんですぐサンジの蹴りが顔面にめり込んでるわ。ノンデリが過ぎるだろうが船長よ。何度も蹴りたくなる気持ちさすがに分かるわ。
あたしも遠慮なく人間のクズを見る目でルフィを見つめることにした。
ノンデリに酷すぎるノンデリ発言を食らったのに、コニスは一瞬落ち込んだのちミルキーロードへの道のりを説明してくれた。
アッパーヤード
「出口は2番ゲートです。”神の島”へつながる巨大なミルキーロードへ出られるので……そこを通るだけです…」
丁寧に説明してくれたからルフィでも忘れないことだろうと思った、けど。最後になるにつれてコニスの歯切れがだんだんと悪くなる。もしかして後からルフィのノンデリ発言が効いてきたのか?
それによく見るとコニスの体は少し震えてるように見える。何か例えようのない嫌な予感がする。
あたしはすぐにコニスへ駆け寄って隣に立つ。
「コニス、」
「ルイさん…ど、どうかされましたか?」
「体、震えてる」
そういって彼女の肩にそっと触れれば、ぎくっ、と効果音が付きそうなほどコニスの体が強張った。おかしい、嫌な予感は的中してしまったようだ。
その瞬間、あたし達を遠巻きに見ていた住人達もざわつき始めて雲行きが怪しすぎる。
「そう……見えますか……?」
「うん、何かに怖がってるみてぇ」
コニスのこの怯えよう、どうしてだかわからないけどさっきのあの顔、ウソがばれてしまったみたいな顔。それがどうしても引っ掛かってしまって。何か別のものから脅されてるような、そんな雰囲気を感じ取った。
じ、とコニスの顔を見つめれば彼女は気まずそうに眼を伏せた。
「コニスちゃんあ~~~~~っ!!俺たちの事心配してくれてんだろォ~、いじらしいなァ~~~~~♡も~~~~~!!」
あたしとは全く真逆に受け取ったらしいクソ金髪がくねくね気持ち悪い動きをしながら近づいてきた。でも無視してコニスの顔をじっと見つめる。そしてクソ金髪の後頭部をウソップが殴っている。いいぞウソップもっとやれ。
「でもよ…おめェらこそ大丈夫か?町の奴らなんてあからさまに俺たちを避けてるくらいなのに、お前なんか船まで貸してくれるし…道案内もしてくれて………これじゃ俺たちと共犯になっちまうんじゃねェか?」
ウソップの言う通りだ。あたし達はこの国では第2級犯罪者となっていて、死刑より重い罪となっているんだ。そんな犯罪者にコニスは道案内、ましてや船も貸してくれていて。今考えると何もかもがうまく行き過ぎている、と、感じる。親切すぎると。
コニスの顔を再度見つめなおせば、顔色が悪く真っ青な色をしていた。無意識に彼女の手を握っていて、彼女は驚いたようにあたしを見た。やっと目があった。
「…コニス」
「ルイさん……私……!!違いますよ………」
コニスの目が、あたしの目をしっかりと見つめて、ごめんなさいって言ってるみたいで。自然と彼女の手を握る力が強くなった。大丈夫、あたしはあんたを絶対助けたい、助けたいんだって思いを込めて見つめ返す。
コニスが口を開いた途端、周りの住人がより一層ざわつき始めた。これはもう、こいつらも関わってるんだ。ここに居る奴らみんな、全部コニスに擦り付けて、知ってたくせに全部、全部。
「変ですよね……「試練」のルート丁寧に説明したり……ここへ自ら案内したり……まるでここへあなた達を誘導したみたい……」
「あなた!!おやめなさい!!バカな事口にするもんじゃない!!!」
ぽつり、ぽつりとコニスが今まで取っていた行動を振り返るように話し始めた。その瞬間、住人の1人が静止するよう声を荒らげ始める。耳障りだ、コニスの声が、想いがきこえねぇじゃねぇか。
コニスの震えはより一層酷いものになっていて、握ったてから微かに伝わるほどになっている。
絶対に離すもんかと、彼女の背負ってるものを分けて欲しいと願いながら握っていた手は、コニスが地面に膝をついたことでするりと、力なく細い指は落ちていった。
「逃げてくれませんか…?」
するりと落ちた手と同じ、力なく、やっとの思い出振り絞った声が鼓膜にぶつかった。
「ごめんなさい!!!“超特急エビ”呼んだの、私なんですよね…!!!!」
「犯罪者を確認したら裁きの地へ誘導しないと、私達殺されてしまうから!!!」
声を荒げながらぽろぽろと涙を零す様子に、腹の底で何かが煮立っていくのを感じた。いや、あたし達が犯罪者となってしまったことが悪いのかもしれない。
けど。どれだけ苦しかったんだろう。あたし達を騙していると自覚しながら裁きの地へ誘導しなければいけなかったコニスの気持ちは、どれだけしんどかっただろうか。
「___これが”国民の義務”なんですよね……!!!」
「んなバカな……!!!」
「ごめんなさい!!!おかしいですよね……!?……何もかも…!!!」
でも、だけど、
「バカあんた…こうしなきゃ仕方なかったんだろ…!!?」
あたしの振り絞った問いかけにコニスは力なく頷く。騙されたって、誘導されたってどうでもいい。あたし達の仲間を助けに行く目的は変わらないんだから。だから、だからあんたがこうでもしなきゃ殺されるってんなら喜んで騙された。こうしなきゃあんたは殺されてしまうんだから、だからどうして、それを、
あたし
「「「「なんで俺たちに言うんだ!!!!」」」」
「え…?」
「あんたが狙われんだぞ!!!」
座り込んだコニスの肩を掴んで怒鳴りながら揺さぶる。このままではコニスが狙われて殺されちまう。どこか逃げる場所は、と辺りを見回せば「ダメだもう…」「手遅れだ!!!」と声を荒げてあたし達から遠ざかる姿が見える。
「その子に近寄ってはいけない!!!”裁き”が来るぞ!!!」
「裁き…!?」
一人の住人の声がいやに鮮明に届いた。裁きと、そう言った。裁き、裁き。その裁きがコニスを殺すってのか、冗談じゃねぇ。
構わず辺りを見回そうとすれば、ビリビリ、という音とともに辺りが明るくなった。いや、あたしとコニスの頭上が光に包まれ始めていた。
あたしは咄嗟にコニスの頭を抱えるように抱き締めた。あたしなんかの小さい体じゃこいつは守れない。否、こんなでかい雷にはどんな巨大な男だってタダじゃすまない。
だけど。あたし達の身を案じて、黙ってればいいものを全部話して、自分は危ないくせにあたし達に逃げてなんて言ったこいつを投げ出して逃げるなんて出来なかった。こうなってしまったのはあたし達の責任でもあるのに、こいつは、コニスは一人で背負いやがって、
_______ズンッ…!!!!___
「!!なんだこりゃあ…」
「何が起こった!!?」
「ルイ!!!!コニス~~~~!!!」
どでかい雷があたし達を襲い、その威力は雲の地面を抉り突き抜けるほど。辺りにあった家や店も吹き飛んでいて。
ゴッド
「無駄だ……全能なる”神・エネル”はすべてを見ているんだ…」
「2人共無事である!!」
座り込んだ住民がぼやいた後すぐ、老人の声が響き渡った。
「ああっ!!!”変なおっさん”!!!」
ウソップの声にルフィとサンジもそちらへ目を向ける。あたしとコニスは雷に打たれる瞬間、さっき会った変なおっさん…空の騎士とその騎士が乗るキモイ鳥…ピエールに助けてもらっていた。
正直、おっさんが居なかったらあたしもコニスも丸焦げで殺されてただろうから助かった。それはもう本当に。
「ウ~~~~ム我輩”空の騎士”!!これはサービスだぞ」
「よかった…ルイちゃん、コニスちゃん…」
地上からこちらを見上げるサンジの顔はひどく安堵しているようだった。これは不可抗力だよな、怒られたりしないよな。コニスが危なかったら誰でも庇うと思うんだ、だってあたしが一番近かったし。これで降りた後文句言われたらあたしも文句言おう。
上から呑気に眺めていると、あろうことかおっさんはあたしを、あたしだけをそのまま上空から下へ投げた。
「ぎゃっ!!!」
「っと、」
まさかおっさんが投げると夢にも思ってなかったから、叫びながら衝撃を覚悟していた。ら、ぼす、と形容しがたい音とともに覚悟していた衝撃とはずいぶん程遠い感覚に体が包まれた。
そっと顔を上げると、太陽を背にしてきらきらと光る金髪があたしをしっかりとキャッチしていた。それもいわゆるお姫様抱っこで。
「おいさっさと降ろせ」
「……………」
なかなか降ろさない金髪にさらに噛みついてやろうとするけど、あいつがすごく切なそうな目で見てきたから出来なかった。あたしを受け止めた腕に力を込めて、抱き寄せて、聞こえるか聞こえないくらいの音で安堵の息を吐いていた。
うーーーん、なんか、ここまで心配させてたんだと思うとなんか悪きもするな。どうでもいいと思ってたけど、あたしが死んだらこいつも死んじまうんじゃねえの、そんくらいの勢いの心配なんだけど。
「この娘は我輩に預けよ。みすみすエネルに狙わせはせぬ」
おっさんはというと、あまりの衝撃に気を失っているコニスを抱えたままそう言った。エネル、という名前。そいつがコニスやここの奴らが怯える原因ってことか。
ゴッド
「おぬしらはこの国の本心を知った…”神”の力もな。これよりいかに動く」
この国は、あいつらが言うエネルに牛耳られている。神と呼ばせているくらいなんだから、相当の力があるんだろう。コニスが真実を話してくれた瞬間降り注いだ雷が根拠だ。この世界に盗聴器なんてものはあるのだろうか、それがなければあんなに的確に、そして瞬間的にコニスは狙えないはずだと思う。さっきのあれだけでかなり強いことは分かった、雷からも逃げられなかったし。
でも、だからと言ってあたし達が足を止める理由にはならない。
「国は俺たちに関係ねェよ。”神の島”に仲間がいるんだ!!!」
「そうか……幸運あれ」
うちの船長の意向はあたし達全員の意向だ。おっさんは順番に顔を見て、納得したようにコニスを抱えたまま飛び去って行った。
エネルからの攻撃をうまいこと回避できたけど、これでへこたれるほどメンタルは弱くない。ましてやナミ達があんな力の奴の元へ連れてかれたなら余計に早く行きたい気持ちが強くなるってもん。
「……いつまで抱えてんだよ」
「おっとすまねェ、軽すぎて忘れてたよ」
「離せ」
気づけばまだサンジの腕に抱えられたままで、降ろせと身じろぎすれば簡単に腕は離れていった。さっさと離れちまおう、と距離を取ろうとしたところ。
腕を引かれて、体勢の整っていなかった身体は簡単によろめく。よろめいた身体の行先はサンジの胸の中で。うぶ、と肩口に勢いよく飛び込んでしまった。
「無事でよかった」
この距離でしか聞こえない、この距離だから聞こえた声に、柄にもなく動揺して。あたしが突き飛ばすより先に離れていったから上げた手は空を切ってどうしようもなくなっちゃった。
何が起こったのか整理できないあたしはただただ、雷のせいで開いたでかい穴の前で突っ立っていて。
「ルイ、船にのれ。行くぞ!」
「あ、うん、行く」
ルフィの声が聞こえるまで、サンジの体温と心臓の音と、タバコの匂いが離れてくれなかった。ずっと煙たい何かが纏わりついているみたい。
アッパーヤード
「さぁ行くか!!!”神の島”!!!」
コニスが用意してくれた船、カラス丸に乗り込み船長の掛け声で発進していく。この船は何が悪いって、小さくて狭い。4人乗りには向いてないのかと改めて思った。
あたしはとりあえず、ビビッて泣き喚くウソップの隣をキープし、サンジとは対角線になるよう距離を保った。いつまたあんなことされるかわかんねぇから、自衛。
警戒心から監視を続けていると、ばち、と視線が合った。あいつはまた、さっきみたいな目であたしを見て口元を緩ませた。
「……キメェ!!!」
「ギャー!!急になんだよルイ、でけぇ声出すなよ!!!」
耐え切れず大声を出して気を紛らわせる。鼻先に付いたタバコの匂いはまだ消えなくて、袖で拭った。
33.いざ出陣
(……心臓がいくつあっても足りねェなァ…)
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