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謎の兵隊が浜辺に来て弓を打ってきて、そんなこんなで今。浜辺には船長と剣士とコックがノした兵隊の残骸が転がっている。その兵隊をノしたおかげであたし達にはさらに罪状が重ねられ、もっと酷い罰を受けることになった。らしい。第5級犯罪者から第2級犯罪者にランクアップした。それについて作戦会議…をするべく船に乗っていた組は一旦浜辺に降りて話し合うことに。
「私達ハメられたんだわ!!あのおばあさん言ってたじゃない、「通っていい」って、それで通ったら「不法入国」!?詐欺よ!こんなの!!!」
「でも、言われてたとしても力づくで入ってたんじゃねぇの?ルフィは言い出したら止まんないし」
「おだまり!!」
「まァルイの言うことはもっともだけどな」
「あんたもおだまり!!」
あたしとウソップの言葉は虚しくもノックアウト、現実を見たくないナミの前では何も響かない事学習したわ。
それに、空島に来たばっかなのにこんな直ぐ帰るとかなんも面白くねぇ。なんせここはあたしの初めての冒険の場所なんだ、わざわざ命かけてきた意味なくなる。…ってい言っても目の前の女にはなんも響かないのはわかり切ってるんだけど。
「とにかく大変な事になりました…第2級犯罪者となってしまわれては、私達はお力には…」
「まあでもいいじゃねェか別に、追われるのには慣れてんだしよ」
コニス父がそう言った事で今まで空島の説明をしてくれていたコニスとコニス父の力を借りれなくなった。のに、うちの船長はそんなのなんとも思ってないみたい。因みにあたしは追われえるの慣れてないからな。
それにしてもあたしら第5級犯罪者で死刑だったのに、第2級犯罪者になってなんか変わんのか。死刑より酷い罰ってなんだ、あったら教えて欲しい。
「あら、どうしたのチンピラさん」
「んや、死刑よりやばい罰ってなんだろって思ってさ」
「意外とあるんじゃないかしら。すぐに死ねないって苦しいことだと思うけれど」
「………拷問?」
「ふふ、さぁ何かしらね」
ロビンってたまにすげぇむごいこと言うよな。わかんないこと何でも教えてくれそうだけど、余計な不安まで煽られそう。水責めとかされんのかな、考えたら寒気するわ。
あたしが一人で拷問に怯えてる最中、どうやらナミはこの島を出ることに決めたらしい。あたしは初めての冒険を中断する羽目になってしまって不服だが。
とはいえ自称下っ端のあたしが我らが航海士様に口出しできるわけもなく。口を出したが最後、あの女はあたしのこの小さい小さい頭にどでかい拳骨を食らわせていくことは明確だから、渋々うなづくことにした。
「でもそうだ、そういや俺たち、この空島へ来る事に必死で下へ帰る事なんて全然考えてなかった」
「……」
「たしかに!」
ウソップのその一言に対して、あたしの大声があたりに響き渡った。確かに、なんてこの一言に限る。
上り方はおっさんたちの助けもあって何とかこなせたけど、ここからの降り方は全く分からない。
口に出したことによって帰れないかもしれないという焦りが生まれたウソップは、コニスへ安全に帰れる道があるのかを問いただしている。
「今となってはもう…安全とは言えませんが…」
今はもう第2級犯罪者にランクアップしてしまったあたしたちに、コニスは少しだけ気まずそうに言葉を紡ぎ始めた。
なんでも、あたしたちがいた青海へ下る道はあるにはあるらしい。
クラウド・エンド
そのためには一度下層の白海に下りて遥か東にある、”雲の果て”と呼ばれる場所へ行かなければいけないらしい。
この島には聞きなれない言葉が多いな、と感心する。この世界事態があたしがいた世界とは全くの別物だから知らないことだらけだけど。
「ですけど…やっぱり逃げる事でさえお勧めはできません…空の海とはいえ広大ですし…」
「なんだよ、どういう事だよ!!?」
「あの兵隊たちからは逃げられないってことじゃねぇの」
「そう、ルイの言う通り。でもそれを言うならこの国のどこ居ても同じことよ。とにかくここに居ちゃ2人にも迷惑もかけるし、居場所がバレてる!船を出しましょう」
ナミはこの2人を巻き込まないようすぐに船を出すことに決めたらしい。くるりと船のほうへ向きを変えると近くにいたあたしの向きも変えて、背中をぐいぐい押しながら船へと歩み始めた。いや、正しくいうならあたしは歩ませられている。
「あたしに拒否権はないのか」
「当たり前。誰の側にもつかないならルイには私側についてもらうわよ」
「同じ船なのに派閥あんの怖いって」
多分だけど、あたしは楽しそうなほうにすぐなびく節があるから誰にもなびかないように先に外堀を埋めてきてるんだと思う。でもぶっちゃけ、初めての冒険がここで終わりなのは嫌すぎるから、誰の側かって言えばルフィ側になるのかも。
「あ!!そうだおっさん、さっきのメシ一品残らず全部持ってっていいか?」
「ええ、勿論どうぞ」
「やったサンジ、弁当箱!!!!」
「抜け目ねェなァ」
「おいルイ!一緒に弁当詰めに行くぞ!」
ナミにこのまま連行されてしまうところに鶴の一声ならぬ、船長の一声。「だめよ、だめよ!」と断固拒否のナミがバカ力で背中を押してくるけど、ルフィはあたしのこのワクワクを完全に見切ってるんだと思う。
ひょい、と体を縮こませてナミの手から逃れると、あたしに太陽みたいな笑顔を向ける船長へ一目散に駆けていき、そんなあたしもおんなじような笑顔になっていて。
「あのうまいやつ、全部持ってく!!!」
これから何が起きるかなんて、微塵も心配なんかしてないで。
「フフフ…追って…!?……くだらん…神や神官は動かざる山に同じ、聖地にて裁かれる愚者を待つのみだ……」
アッパーヤード
「お前たちは導かれるのだ……禁断の聖地、”神の島”へ!!!」
弁当を詰めるためにあたしとルフィ、サンジと船の修理のために備品を分けてもらうため残ったウソップの計4人でコニスの家へ再度訪問した。
ウソップは釘やら空島の素材やらを持ってきた麻袋に入れている。ここに来る前に猿軍団に壊された船をあたしも直したっけな。たくさん冒険してきた船だからいろんなところを直してあってツギハギだらけだった。ここの海賊団はお金もないみたいだから、もらえるところでもらっておかないと修理も満足にできないらしい。もちろん、これからも世話になる船だからあたしもできる限りの手伝いはするつもりだけど。
ウソップの会話に耳を傾けながらも、あたしとルフィはサンジが弁当を詰める様を見ていた。器用に彩を考えて空豆一粒さえ考えて配置している。こんなに綺麗に詰められていく様を見ては、弁当を詰めるために来たあたしたちは見ていることしかできない。しかもサンジは手伝ってないあたしたちに何にも言わないし、盛り付け方にコックの血が騒ぐんだろうな、多分。
「ルイさんルイさん、ちょっといいですか?」
「あたし?」
ボケっときれいに丁寧に詰められていく食材を眺めていれば、いつの間にか隣にコニスが。コニスの身長はルフィと同じくらいだから、あたしよりももちろん高い。というか、この世界の女はみんなでかい。でも多分あたしがこの世界ではちびすぎるんだなと理解した。
コニスはというと、あたしに付いてくるよう言って自分の部屋へと案内した。きちんと整頓されていてきれいな部屋。その部屋の一角にある衣装箪笥を開け、中から彼女が着ている服と似通ったトップスを一枚引っ張り出した。
「ずっとそのお姿では冷えるかと思いまして。サイズは…大丈夫そうですね」
船に服が…って言いたいところだけど、あたし自身の服はなくて結局ナミの服を借りることになるからここは甘んじて受け取ることにした。
あたしの体に服を合わせてサイズを確認しているコニスはどこかとても楽しそう。サイズは身長がある分、小さくて入らないってことはない。
コニスから服を受け取れば、ゆっくり着替えるよう告げて彼女は一度部屋から出ていったので、そのまま水着の上から被ってみる。ノースリーブだからそんなに動きにくいってことはなく、空島の素材が地上と何か違うかわからないけど素肌に触れてもごわごわしなくて着心地がいい。
部屋にあった姿見を拝借してくるくると身だしなみを確認して暫く。かちゃりと音を立ててコニスが戻ってきた。
「サンキューコニス、この服着心地がいい」
「よかったです!…ふふ」
「…?なんだよ」
「いえ、ごめんなさい…私、一人っ子でしたので妹がいたらこんな感じなのかなって…」
妹。あたしにだって聞きなれない言葉で反応ができなかった。……確かに、服のおさがりをもらったりなんてこと兄弟姉妹がいないと出来ないことだとは、思う。思えばこの水着だってナミの手作りで…う、なんかとんでもなくむず痒くなってきた。
「…あたしが妹なのかよ」
「あ、ごめんなさい!!ルイさん、笑ったお顔がとっても可愛らしかったから」
「ばか、嬉しくねーっての!」
むず痒くなっていたところにコニスの無意識の褒めを食らってオーバーキル。ノースリーブから出ている腕になんだかさぶいぼが立っている気がして腕を抱え込む。
コニスもそうだがうちの輩どもは簡単に人を褒めるから困る。いいことか何だか知らないけど、あたしは慣れてないからやめてくれ。
「見てみろ、あいつら何か騒いでる!!」
コニスからありがたく服を貰い、あいつらがいるリビングへ戻る道中、ウソップの騒ぐ声がここまで聞こえた。あたしとコニスは顔を見合わせて、すぐに駆け出していた。
「なんだ、どうした!!」
「ルイちゃん!ナミさんが…!!」
「ナミ!?ナミがどうしたんだよ!!」
「Tシャツ着ちゃってるんだァホホホホ……!!!!」
「どこ見て何喋ってんだテメェはぁ!!!」
ルーペのようなもので船の様子を見ていたサンジ……いや、クソ金髪がとんでもねぇことを言い出したので駆けてきた勢いのままそのケツに向かって膝蹴りをかましてやった。しっかりモロに直撃したくせにふらつきもしない様子にさらにムカついたが。
「ああ!!船が動き出した!!!なんだあいつら、どこ行くんだ!!?おお!?後ろ向きで走ってんじゃねェか、すげェな!」
「は!?どういうことだよ!!」
ルフィの感嘆の声にサンジをほっぽってバルコニーの柵へ身を乗り出す。肉眼じゃ分かりづらいけど、浜辺の近くにいたはずの船はなぜか沖の方まで進んでいた。
まさかあの帰りたいナミがあたし達を置いて帰るなんて考えるはずがないのはこの短い期間でも分かりきっている。
「ちょっと待って!!!何これ、何なの!!?」
「アァアアアアアア!!!」
この距離でもナミ、それからチョッパーの悲鳴が鮮明に聞こえる。悲鳴が聞こえるってことは船に乗ってるやつらの意思で動かしてるわけではないってことだ。誰かが無理やり、船を動かしているんだ。
「あれは……!!!”白々海名物”、”超特急エビ”!!!!」
コニスの父親がそう声を上げ、船よりも何倍もでかいエビ…いや、ほぼロブスターが船を持ち上げて超高速で海を泳いでいた。エビだから後ろ向きで泳いでんのか……てこれはどうでもよくて!!!
「ナミ!!!チョッパー!!!!!」
「ばかルイ!!!!危ねェだろうが!!」
「ッ離せウソップ!!!連れてかれちまう!!!」
「だからってこっから飛んでも間に合わねェって!それにお前、自分の体見てから無茶しろっての!!」
「まだ間に合う…!!!!」
「間に合ったとしても!!!海ン中に空魚がいる!!!」
柵に足をかけて船めがけて飛び降りようとしたあたしを後ろからウソップが羽交い絞めにする。さっきの兵隊の時と似た状況だが、さっきよりもあたしを行かせんとする腕は力が強くて。振りほどこうともがく間にもエビは船をさらに遠くに運んでいて。
行っちゃう、行ってしまう。あたしの、あたしの大事な、
「ルフィ~~~!!!」
「ウソップ……!!!」
「サンジ君!!!……ルイーーーっ!!!!!」
遠くなっていく船からあたしたちの名前を呼ぶ声が聞こえる。あたしは何もできずに船はついに、見えなくなってしまった。
船が見えなくなった海はさっきのように静かで、穏やかなさざ波が漂っていた。それはもう、憎らしいほどに。
「ナミ…、みんな…」
ようやく動きを止めたあたしを、ウソップはずるずると柵から遠ざけるように連れていく。
ぐ、と無意識に唇を嚙みしめていた。あたしはいつも、いつもそうだ。大事なものを守れなくて、守りたいくせに弱くて守れなくて、それで今もこうやって目の前で、あたしの大事な、大事な仲間が、家族が。
悔しくて悔しくて、今のこの状況も自分の愚かさも全部悔しくてどんどん噛みしめる力は強くなっていく。船が消えた先をずっと見つめて。
「ンな顔すんな、ルイ!」
「ルフィ、」
「船にはゾロもロビンも居るんだ。絶対、大丈夫だ」
俯きかけた頭をポン、と温かくてごつごつの手が触れた。顔をあげたらまた、太陽が笑っていて。絶対大丈夫だって気持ちにしてくれて。
「……ん、」
不思議と唇を噛みしめる力は抜けていた。そして改めて、うちの船長はすごい奴だと確信したのだ。
さっきまでとんでもない焦りに襲われていたのに、この一言であたしの中の焦りは綺麗に取り除かれていた。
それでも、あたしの仲間が攫われたことは事実で、助けに行かない選択肢はない。焦りは消えたが助ける事には変わりない。でも、
「「「「どこ行ったんだ?」」」」
あたしと残された男どもの声がきれいに重なった。あたしたちの声の行く先はあのエビの名前を知っていたコニス父。コニス父はここの住人だから、あのエビの行方を知っているかもしれない、と思った。
「…超特急エビは神の使い、運ぶ物はいつでも”神”への供え物」
妙に神妙な面持ちと声音に、何か嫌な汗が背中を伝った。
アッパーヤード
「ならば行先は「神の島」の北東____「生け贄の祭壇」です」
「生け贄!!?ナミさんとロビンちゃんとその他が生け贄にされるのか!!?神の奴の!!?」
コニス父の言葉にサンジがすぐさま噛みつくように声を荒げる。緩んでいたあたしの拳も、ぎゅっとすぐに爪が食い込んだ。
生け贄の祭壇、生け贄。あたしの世界でも生け贄なんて言葉が指す意味は一つだけ。きっとこの世界でもそうなのだ。
「ルイ」
「…ンだよ長っ鼻」
「気持ちは分かるが先走るんじゃねェぞ」
「おっさんの返答次第になる」
また、今にも飛び出してしまいそうなあたしを見越して、ウソップが先に声をかけた。あたしの目はずっとコニス父を見つめていて、先に続く言葉を待っていた。
ルフィに声をかけてもらって、支えてもらって、あたしの頭は今までで一番冷静でいる自信がある。
あたしの目線に少し怯えた様子でコニス父は話し始めた。
「「生け贄」とは言うものの私はこれは聞き及んだまでの話なのですが、「天の裁き」において罪人の受ける罰は2つ。「生け贄」そして「試練」…そう聞いた事があります」
ゴッド
「___つまり、彼らは今”神”の手中にある、いわば「生け贄」という名の”人質”」
「___したがって今実際に裁かれているのはここにいるあなた方4人なのです!!!!」
長々と話をしてくれたコニス父は息も切らさず、さらにそのままの勢いで続けていく。
ウソップの持っていた古ぼけた地図を広げて説明されたのはこうだ。あたしたちの現在地は地図上の右下。ナミたちが連れてかれた場所は地図上の左上。ちょうどあたし達とは対角線となる場所ってわけ。
しかもこの生け贄の祭壇まで行く道は一つで、今いる島から出ているミルキーロード…雲の川を通らなければいけないらしい。
ダイアルせん
そしてそのまま”貝船”を使って神官とかいう奴らがいる森を横切らなきゃ行けないと。しかも祭壇がある島にはさっき言ったミルキーロードがいたるところに張り巡らされていて、始めから船で島に入り内部のミルキーロードを渡りきるほか方法はないみたいだ。
「至れり尽くせりだコリャ。とにかく仲間と船を返して欲しけりゃ正面から入ってきやがれと…」
「それが俺たちへの「試練」で「天の裁き」か…!!」
「まァでも、ナミが言ってた「神官」ってのブッ飛ばしたらいいんだろ?」
「連れてった分、あたしが倍殴ってやる」
順にサンジ、ウソップ、ルフィ、あたしが各々の思いを口に出す。ルフィは「なははは」なんて呑気に笑ってるけど、あたしはすぐにでも殴りに行きたい。目の前に神官がいるつもりでエアパンチをくり返しておこっと。
「いけません油断されては!!神官達4人の強さはおそらくあなた方の想像を超えるものです!」
呑気な様子に映るあたし達にコニス父は考えを改めるよう声をかける。この様子は神官の恐ろしさを知っているんだ。そして強さも。
そしてあたし達は自分がどれだけ楽観的なのか、まだ、理解できていなかった。
アッパーヤード ゴッド
「その上、何より”神の島”には、”神・エネル”がいらっしゃる」
32.天の裁き
(すぐに助けに行くからな)
「私達ハメられたんだわ!!あのおばあさん言ってたじゃない、「通っていい」って、それで通ったら「不法入国」!?詐欺よ!こんなの!!!」
「でも、言われてたとしても力づくで入ってたんじゃねぇの?ルフィは言い出したら止まんないし」
「おだまり!!」
「まァルイの言うことはもっともだけどな」
「あんたもおだまり!!」
あたしとウソップの言葉は虚しくもノックアウト、現実を見たくないナミの前では何も響かない事学習したわ。
それに、空島に来たばっかなのにこんな直ぐ帰るとかなんも面白くねぇ。なんせここはあたしの初めての冒険の場所なんだ、わざわざ命かけてきた意味なくなる。…ってい言っても目の前の女にはなんも響かないのはわかり切ってるんだけど。
「とにかく大変な事になりました…第2級犯罪者となってしまわれては、私達はお力には…」
「まあでもいいじゃねェか別に、追われるのには慣れてんだしよ」
コニス父がそう言った事で今まで空島の説明をしてくれていたコニスとコニス父の力を借りれなくなった。のに、うちの船長はそんなのなんとも思ってないみたい。因みにあたしは追われえるの慣れてないからな。
それにしてもあたしら第5級犯罪者で死刑だったのに、第2級犯罪者になってなんか変わんのか。死刑より酷い罰ってなんだ、あったら教えて欲しい。
「あら、どうしたのチンピラさん」
「んや、死刑よりやばい罰ってなんだろって思ってさ」
「意外とあるんじゃないかしら。すぐに死ねないって苦しいことだと思うけれど」
「………拷問?」
「ふふ、さぁ何かしらね」
ロビンってたまにすげぇむごいこと言うよな。わかんないこと何でも教えてくれそうだけど、余計な不安まで煽られそう。水責めとかされんのかな、考えたら寒気するわ。
あたしが一人で拷問に怯えてる最中、どうやらナミはこの島を出ることに決めたらしい。あたしは初めての冒険を中断する羽目になってしまって不服だが。
とはいえ自称下っ端のあたしが我らが航海士様に口出しできるわけもなく。口を出したが最後、あの女はあたしのこの小さい小さい頭にどでかい拳骨を食らわせていくことは明確だから、渋々うなづくことにした。
「でもそうだ、そういや俺たち、この空島へ来る事に必死で下へ帰る事なんて全然考えてなかった」
「……」
「たしかに!」
ウソップのその一言に対して、あたしの大声があたりに響き渡った。確かに、なんてこの一言に限る。
上り方はおっさんたちの助けもあって何とかこなせたけど、ここからの降り方は全く分からない。
口に出したことによって帰れないかもしれないという焦りが生まれたウソップは、コニスへ安全に帰れる道があるのかを問いただしている。
「今となってはもう…安全とは言えませんが…」
今はもう第2級犯罪者にランクアップしてしまったあたしたちに、コニスは少しだけ気まずそうに言葉を紡ぎ始めた。
なんでも、あたしたちがいた青海へ下る道はあるにはあるらしい。
クラウド・エンド
そのためには一度下層の白海に下りて遥か東にある、”雲の果て”と呼ばれる場所へ行かなければいけないらしい。
この島には聞きなれない言葉が多いな、と感心する。この世界事態があたしがいた世界とは全くの別物だから知らないことだらけだけど。
「ですけど…やっぱり逃げる事でさえお勧めはできません…空の海とはいえ広大ですし…」
「なんだよ、どういう事だよ!!?」
「あの兵隊たちからは逃げられないってことじゃねぇの」
「そう、ルイの言う通り。でもそれを言うならこの国のどこ居ても同じことよ。とにかくここに居ちゃ2人にも迷惑もかけるし、居場所がバレてる!船を出しましょう」
ナミはこの2人を巻き込まないようすぐに船を出すことに決めたらしい。くるりと船のほうへ向きを変えると近くにいたあたしの向きも変えて、背中をぐいぐい押しながら船へと歩み始めた。いや、正しくいうならあたしは歩ませられている。
「あたしに拒否権はないのか」
「当たり前。誰の側にもつかないならルイには私側についてもらうわよ」
「同じ船なのに派閥あんの怖いって」
多分だけど、あたしは楽しそうなほうにすぐなびく節があるから誰にもなびかないように先に外堀を埋めてきてるんだと思う。でもぶっちゃけ、初めての冒険がここで終わりなのは嫌すぎるから、誰の側かって言えばルフィ側になるのかも。
「あ!!そうだおっさん、さっきのメシ一品残らず全部持ってっていいか?」
「ええ、勿論どうぞ」
「やったサンジ、弁当箱!!!!」
「抜け目ねェなァ」
「おいルイ!一緒に弁当詰めに行くぞ!」
ナミにこのまま連行されてしまうところに鶴の一声ならぬ、船長の一声。「だめよ、だめよ!」と断固拒否のナミがバカ力で背中を押してくるけど、ルフィはあたしのこのワクワクを完全に見切ってるんだと思う。
ひょい、と体を縮こませてナミの手から逃れると、あたしに太陽みたいな笑顔を向ける船長へ一目散に駆けていき、そんなあたしもおんなじような笑顔になっていて。
「あのうまいやつ、全部持ってく!!!」
これから何が起きるかなんて、微塵も心配なんかしてないで。
「フフフ…追って…!?……くだらん…神や神官は動かざる山に同じ、聖地にて裁かれる愚者を待つのみだ……」
アッパーヤード
「お前たちは導かれるのだ……禁断の聖地、”神の島”へ!!!」
弁当を詰めるためにあたしとルフィ、サンジと船の修理のために備品を分けてもらうため残ったウソップの計4人でコニスの家へ再度訪問した。
ウソップは釘やら空島の素材やらを持ってきた麻袋に入れている。ここに来る前に猿軍団に壊された船をあたしも直したっけな。たくさん冒険してきた船だからいろんなところを直してあってツギハギだらけだった。ここの海賊団はお金もないみたいだから、もらえるところでもらっておかないと修理も満足にできないらしい。もちろん、これからも世話になる船だからあたしもできる限りの手伝いはするつもりだけど。
ウソップの会話に耳を傾けながらも、あたしとルフィはサンジが弁当を詰める様を見ていた。器用に彩を考えて空豆一粒さえ考えて配置している。こんなに綺麗に詰められていく様を見ては、弁当を詰めるために来たあたしたちは見ていることしかできない。しかもサンジは手伝ってないあたしたちに何にも言わないし、盛り付け方にコックの血が騒ぐんだろうな、多分。
「ルイさんルイさん、ちょっといいですか?」
「あたし?」
ボケっときれいに丁寧に詰められていく食材を眺めていれば、いつの間にか隣にコニスが。コニスの身長はルフィと同じくらいだから、あたしよりももちろん高い。というか、この世界の女はみんなでかい。でも多分あたしがこの世界ではちびすぎるんだなと理解した。
コニスはというと、あたしに付いてくるよう言って自分の部屋へと案内した。きちんと整頓されていてきれいな部屋。その部屋の一角にある衣装箪笥を開け、中から彼女が着ている服と似通ったトップスを一枚引っ張り出した。
「ずっとそのお姿では冷えるかと思いまして。サイズは…大丈夫そうですね」
船に服が…って言いたいところだけど、あたし自身の服はなくて結局ナミの服を借りることになるからここは甘んじて受け取ることにした。
あたしの体に服を合わせてサイズを確認しているコニスはどこかとても楽しそう。サイズは身長がある分、小さくて入らないってことはない。
コニスから服を受け取れば、ゆっくり着替えるよう告げて彼女は一度部屋から出ていったので、そのまま水着の上から被ってみる。ノースリーブだからそんなに動きにくいってことはなく、空島の素材が地上と何か違うかわからないけど素肌に触れてもごわごわしなくて着心地がいい。
部屋にあった姿見を拝借してくるくると身だしなみを確認して暫く。かちゃりと音を立ててコニスが戻ってきた。
「サンキューコニス、この服着心地がいい」
「よかったです!…ふふ」
「…?なんだよ」
「いえ、ごめんなさい…私、一人っ子でしたので妹がいたらこんな感じなのかなって…」
妹。あたしにだって聞きなれない言葉で反応ができなかった。……確かに、服のおさがりをもらったりなんてこと兄弟姉妹がいないと出来ないことだとは、思う。思えばこの水着だってナミの手作りで…う、なんかとんでもなくむず痒くなってきた。
「…あたしが妹なのかよ」
「あ、ごめんなさい!!ルイさん、笑ったお顔がとっても可愛らしかったから」
「ばか、嬉しくねーっての!」
むず痒くなっていたところにコニスの無意識の褒めを食らってオーバーキル。ノースリーブから出ている腕になんだかさぶいぼが立っている気がして腕を抱え込む。
コニスもそうだがうちの輩どもは簡単に人を褒めるから困る。いいことか何だか知らないけど、あたしは慣れてないからやめてくれ。
「見てみろ、あいつら何か騒いでる!!」
コニスからありがたく服を貰い、あいつらがいるリビングへ戻る道中、ウソップの騒ぐ声がここまで聞こえた。あたしとコニスは顔を見合わせて、すぐに駆け出していた。
「なんだ、どうした!!」
「ルイちゃん!ナミさんが…!!」
「ナミ!?ナミがどうしたんだよ!!」
「Tシャツ着ちゃってるんだァホホホホ……!!!!」
「どこ見て何喋ってんだテメェはぁ!!!」
ルーペのようなもので船の様子を見ていたサンジ……いや、クソ金髪がとんでもねぇことを言い出したので駆けてきた勢いのままそのケツに向かって膝蹴りをかましてやった。しっかりモロに直撃したくせにふらつきもしない様子にさらにムカついたが。
「ああ!!船が動き出した!!!なんだあいつら、どこ行くんだ!!?おお!?後ろ向きで走ってんじゃねェか、すげェな!」
「は!?どういうことだよ!!」
ルフィの感嘆の声にサンジをほっぽってバルコニーの柵へ身を乗り出す。肉眼じゃ分かりづらいけど、浜辺の近くにいたはずの船はなぜか沖の方まで進んでいた。
まさかあの帰りたいナミがあたし達を置いて帰るなんて考えるはずがないのはこの短い期間でも分かりきっている。
「ちょっと待って!!!何これ、何なの!!?」
「アァアアアアアア!!!」
この距離でもナミ、それからチョッパーの悲鳴が鮮明に聞こえる。悲鳴が聞こえるってことは船に乗ってるやつらの意思で動かしてるわけではないってことだ。誰かが無理やり、船を動かしているんだ。
「あれは……!!!”白々海名物”、”超特急エビ”!!!!」
コニスの父親がそう声を上げ、船よりも何倍もでかいエビ…いや、ほぼロブスターが船を持ち上げて超高速で海を泳いでいた。エビだから後ろ向きで泳いでんのか……てこれはどうでもよくて!!!
「ナミ!!!チョッパー!!!!!」
「ばかルイ!!!!危ねェだろうが!!」
「ッ離せウソップ!!!連れてかれちまう!!!」
「だからってこっから飛んでも間に合わねェって!それにお前、自分の体見てから無茶しろっての!!」
「まだ間に合う…!!!!」
「間に合ったとしても!!!海ン中に空魚がいる!!!」
柵に足をかけて船めがけて飛び降りようとしたあたしを後ろからウソップが羽交い絞めにする。さっきの兵隊の時と似た状況だが、さっきよりもあたしを行かせんとする腕は力が強くて。振りほどこうともがく間にもエビは船をさらに遠くに運んでいて。
行っちゃう、行ってしまう。あたしの、あたしの大事な、
「ルフィ~~~!!!」
「ウソップ……!!!」
「サンジ君!!!……ルイーーーっ!!!!!」
遠くなっていく船からあたしたちの名前を呼ぶ声が聞こえる。あたしは何もできずに船はついに、見えなくなってしまった。
船が見えなくなった海はさっきのように静かで、穏やかなさざ波が漂っていた。それはもう、憎らしいほどに。
「ナミ…、みんな…」
ようやく動きを止めたあたしを、ウソップはずるずると柵から遠ざけるように連れていく。
ぐ、と無意識に唇を嚙みしめていた。あたしはいつも、いつもそうだ。大事なものを守れなくて、守りたいくせに弱くて守れなくて、それで今もこうやって目の前で、あたしの大事な、大事な仲間が、家族が。
悔しくて悔しくて、今のこの状況も自分の愚かさも全部悔しくてどんどん噛みしめる力は強くなっていく。船が消えた先をずっと見つめて。
「ンな顔すんな、ルイ!」
「ルフィ、」
「船にはゾロもロビンも居るんだ。絶対、大丈夫だ」
俯きかけた頭をポン、と温かくてごつごつの手が触れた。顔をあげたらまた、太陽が笑っていて。絶対大丈夫だって気持ちにしてくれて。
「……ん、」
不思議と唇を噛みしめる力は抜けていた。そして改めて、うちの船長はすごい奴だと確信したのだ。
さっきまでとんでもない焦りに襲われていたのに、この一言であたしの中の焦りは綺麗に取り除かれていた。
それでも、あたしの仲間が攫われたことは事実で、助けに行かない選択肢はない。焦りは消えたが助ける事には変わりない。でも、
「「「「どこ行ったんだ?」」」」
あたしと残された男どもの声がきれいに重なった。あたしたちの声の行く先はあのエビの名前を知っていたコニス父。コニス父はここの住人だから、あのエビの行方を知っているかもしれない、と思った。
「…超特急エビは神の使い、運ぶ物はいつでも”神”への供え物」
妙に神妙な面持ちと声音に、何か嫌な汗が背中を伝った。
アッパーヤード
「ならば行先は「神の島」の北東____「生け贄の祭壇」です」
「生け贄!!?ナミさんとロビンちゃんとその他が生け贄にされるのか!!?神の奴の!!?」
コニス父の言葉にサンジがすぐさま噛みつくように声を荒げる。緩んでいたあたしの拳も、ぎゅっとすぐに爪が食い込んだ。
生け贄の祭壇、生け贄。あたしの世界でも生け贄なんて言葉が指す意味は一つだけ。きっとこの世界でもそうなのだ。
「ルイ」
「…ンだよ長っ鼻」
「気持ちは分かるが先走るんじゃねェぞ」
「おっさんの返答次第になる」
また、今にも飛び出してしまいそうなあたしを見越して、ウソップが先に声をかけた。あたしの目はずっとコニス父を見つめていて、先に続く言葉を待っていた。
ルフィに声をかけてもらって、支えてもらって、あたしの頭は今までで一番冷静でいる自信がある。
あたしの目線に少し怯えた様子でコニス父は話し始めた。
「「生け贄」とは言うものの私はこれは聞き及んだまでの話なのですが、「天の裁き」において罪人の受ける罰は2つ。「生け贄」そして「試練」…そう聞いた事があります」
ゴッド
「___つまり、彼らは今”神”の手中にある、いわば「生け贄」という名の”人質”」
「___したがって今実際に裁かれているのはここにいるあなた方4人なのです!!!!」
長々と話をしてくれたコニス父は息も切らさず、さらにそのままの勢いで続けていく。
ウソップの持っていた古ぼけた地図を広げて説明されたのはこうだ。あたしたちの現在地は地図上の右下。ナミたちが連れてかれた場所は地図上の左上。ちょうどあたし達とは対角線となる場所ってわけ。
しかもこの生け贄の祭壇まで行く道は一つで、今いる島から出ているミルキーロード…雲の川を通らなければいけないらしい。
ダイアルせん
そしてそのまま”貝船”を使って神官とかいう奴らがいる森を横切らなきゃ行けないと。しかも祭壇がある島にはさっき言ったミルキーロードがいたるところに張り巡らされていて、始めから船で島に入り内部のミルキーロードを渡りきるほか方法はないみたいだ。
「至れり尽くせりだコリャ。とにかく仲間と船を返して欲しけりゃ正面から入ってきやがれと…」
「それが俺たちへの「試練」で「天の裁き」か…!!」
「まァでも、ナミが言ってた「神官」ってのブッ飛ばしたらいいんだろ?」
「連れてった分、あたしが倍殴ってやる」
順にサンジ、ウソップ、ルフィ、あたしが各々の思いを口に出す。ルフィは「なははは」なんて呑気に笑ってるけど、あたしはすぐにでも殴りに行きたい。目の前に神官がいるつもりでエアパンチをくり返しておこっと。
「いけません油断されては!!神官達4人の強さはおそらくあなた方の想像を超えるものです!」
呑気な様子に映るあたし達にコニス父は考えを改めるよう声をかける。この様子は神官の恐ろしさを知っているんだ。そして強さも。
そしてあたし達は自分がどれだけ楽観的なのか、まだ、理解できていなかった。
アッパーヤード ゴッド
「その上、何より”神の島”には、”神・エネル”がいらっしゃる」
32.天の裁き
(すぐに助けに行くからな)
