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くわんと揺れる。頭も、身体も。ふわふわと浮かぶ。なんだか生暖かい。あたし死んだ?でもルフィがベラミーをぶっ飛ばしたのは覚えてる。それで、あたしに船着くまで寝てろって、空島行くときに起こしてやるからって言ってたのも覚えてる。だからこれは夢だ。死んでない。
よくあるよね、あ、これ夢かって思うやつ。今がその状態。でもおかしい。だって目の前にあたしの両親がいる。2人があたしを冷たい目で見つめてる。でも何で、前まではこの目が大嫌いだったはずなのに今は何とも思わない。
不思議に思って居れば何かが肩に当たって。振り返れば太陽みたいな笑顔でルフィが手を伸ばしていた。
「行こうぜ、ルイ!」
あ、あたしこの声、この言葉に弱い。こいつは、こいつらはあたしを必要としてくれてる。それだけでさっきの2人何てどうでもよくなる。前の世界じゃあたしの居場所はなかった。今はここが、こいつらの傍があたしの居場所。
ゆっくりと重たい瞼を開ければこの世界で初めて目覚めた時の光景と、なんだか騒がしい、悪く言えばうるさい外の声。寝てる間にルフィが運んでくれたんだな、よく寝た気がする。ボコられたってのもあるけどほら、あたしこの世界に来てから初めてのオールじゃん?だから身体持たなかったんだよ、そういうことにしとこ。ボコられてぐっすり寝てましたとか恥じゃんね、恥。
とりあえず身体を起こすと顔に違和感があって、なんだかすっきりしている感じ。酒屋にいた時はぼこぼこに腫れあがって浮腫んでる感覚があったのに、今は何にもない。皆無。顔の痛みもないし頭が痛いなんてことも、手足が動かないなんてこともない。次いでよく見れば身体中包帯でぐるぐる巻きで、いかに自分が酷い状態だったかがよく知れる。…こりゃ、この部屋から出てクルーの前出てったらサンジになんていわれるかめっちゃ簡単に想像できるわ。
出ていきたくねぇなあ~~!でも顔出さねぇとアイツら過保護(特にサンジ)だしなぁ~~…!幸いにも身体の痛みはないし顔も人前に出せるくらい回復してる。だから普通に甲板に出てってもいいんだけど…………。
…………ん?ちょっと待て。さっきからあえて触れなかったど、なんかあたしの身体、異様に壁によってねぇか?あたしの身体だけじゃない、この部屋のモノすべてが壁際によってる。異様すぎんだろ、この光景。恐る恐るベッドから抜け出してみる。え、なんかこの船自体が傾いてない?なんでこんなのことになんだよ、船が傾くなんて下るか上るかしてる時だけだろ……
あたしはサンジとナミ、あとその他もろもろに詰め寄られるのを覚悟で医務室の扉を開けた。
あの時と同じ、初めてこの世界に来た時とおんなじ潮風がぶわり、身体を撫でた。…………が、ひとつ違うことが。風の量があの時と比にならねぇくらいやばい。つかずっと風が吹いてる。莫大な量の風で髪も身体も撫でられて。いや、風なんてどうでもいい。一番やばいのはこの、目の前の光景。
「な、な、なんじゃこりゃあーーっ!!?」
ありきたりな悲鳴を上げるほどやばい光景が目の前に広がっていた。本当にやばい。どのくらいやばいかって言うと、ルフィが少食になるくらい、ゾロが筋トレをやめるくらい、サンジの料理がまずくなるくらいやばい。だって、なんかでっかい真っ白い飛沫を上げる柱の上を、羽が生えてるメリー号が飛んでいるから。飛沫は私が立っているところにまで飛んできていて、船はほぼ垂直に柱の上を飛んでるから立ってるのでさえやっとだわ。なんだこれはなんだこの状況は、寝起きの頭じゃ追い付かない事態に手すりを掴んで重力に必死に耐えることしか出来ない。
「おールイ!起きたのか!」
「いやそれどころじゃねぇだろ、」
「ルイっちゅわ~ん!!お目覚めなんだね!!」
「いやだから、」
「ルイ!!!お前はもう無茶ばっかしやがって!!行く先ずっとあんな怪我してたら身体がもたね、ッギャーーー!!落ちるぅ!!!」
必死に耐えている途中、ルフィ、サンジ、チョッパーの順に言葉をかけてきてキレそう。今目覚めたばっかでこんな状況とか信じらんない。なんで柱登ってんだよなんで船が飛んでんだよ。ルフィはルフィで今もいつもみたいに無邪気に笑ってっし、サンジのキモさも通常運転、チョッパーは相変わらずうっせぇし。この情報量捌ききれねぇって!!!
次々に声を掛けられて苛立ちのあまり声を失うあたしは、途端大きく揺れた船に後れを取ってバランスを崩した。さっきより垂直度が増した船はバランスを崩した身体を容赦なく先程の医務室の壁へ叩きつけようとしていて。浮遊感に襲われる感覚に、次にやってくる衝撃に耐えるため固く双眸を閉じた時。
「っぎゃ!!」
何か壁とは違う、壁より柔らかいものが背中に当たった。何かと目を向ければ、壁から何本もの手が生えていて交差しあたしが落ちるのを助けていてくれた。でもぶっちゃけ言うと気持ちわりぃ気もする。
「チンピラさん、大丈夫かしら?」
医務室を覗き込むようにしてロビンが顔を出したから、多分これはロビンの悪魔の実とかいう力なんだろう。甲板に戻ろうとするも結構落ちてしまったのでこれまたロビンが生やした手に助けられて上に引っ張ってもらう。なんだかなぁ、こんな実を食べた奴に素手で立ち向かってったんかあたしは。馬鹿にも程があるわ。ボコられたのもまぁ、不服だけど納得いく。実を食べた奴にも負けないくらい強くなんなきゃ。
よし、と改めて決心するあたしを他所にロビンはなんと、なんと。
あたしの身体を投げ飛ばした。
「はっ、!?」
「ふふ、私より剣士さんの方が頼もしいと思うから」
だからって投げ飛ばすか普通!?今船は飛んでんだぞ!?宙に浮いてんだぞ!?まずは甲板にあたしを下ろすだろ普通!!!急に投げ飛ばしてんじゃねぇ!人間空中では無力なんだぞこの野郎!!!
しかし抗う術もなくゾロの方に投げ飛ばされると綺麗に飛んでいく。もしかしたらロビンは投げるのが得意なのかもしれない、とか呑気に考えていると、その男はあろうことか首根っこを掴んでキャッチしてきやがった。
「ぐえっ!」
案の定締まる首に素直に漏れるうめき声。コイツ、容赦なく落ちているあたしの首根っこ掴みやがった…!!なんの躊躇もなく、冷静に。こいつはほんと、あたしのパンツ見てきたり胸揉んできたりケツ堪能しやがったり無理矢理酒飲ませて(自業自得)きやがったり…何回あたしのこと不快にさせたら気が済むんだよ。
文句言ってやろうと口を開こうとしたとき、ゾロはあたしの腹部に腕を回して持ち直した。あたしの背中がゾロの方を向いている状態。なんだこいつ、何がしたいんだ。
「病み上がりが騒ぐんじゃねぇよ」
「あ!?進んで騒いでるわけじゃねぇよマリモっこり!!」
「てんめ、誰がキャッチしてやったと思って…!!」
なんかおかしい。いつもならあたしの言葉にもっと突っかかって来るのに今は途中でやめやがった。首を捻って見上げればなんかバツの悪そうな顔してるし。おかしい、絶対こんなゾロはおかしい。訝し気に見つめるあたしを床に降ろして、そいつは目を合わせずに、
「昨夜は悪かったな」
謝罪を述べた。こいつも自分で謝るのはガラじゃねぇって思ってんだろうな、絶対目が合わねぇもん。なに、酒飲めないの煽ったの謝ってんのか?まぁお前が悪いよ、あたしを煽りやがって。
「お前に謝るなんて選択肢あったんだな、許してやるよ」
「何様だてめェは」
ゾロが謝れると知った新発見は置いといて。今この状況で謝れるお前の神経がすげぇよ。だってもうほら、目の前に超でけぇ雲が。今思い出したけど、これオッサンが話してた積帝雲ってやつではないだろうか。んで、この柱は”突き上げる海流”(ノックアップストリーム)なのではないだろうか。つかこれも今冷静に考えることじゃねぇよな。
オッサンが言ってたことじゃこの雲の中に空島があるっぽいけど、雲って蒸気で乗れるはずないんじゃねぇのか?あたしの世界では絶対乗れないけどこっちでは乗れんのか?
どうせ蒸気だしこのスピードだけど何とか息出来んだろ。という思考は見事に打ち砕かれて、雲に突入した途端口からものすんごい水圧の水が大量に入ってきた。
「ぐぼがっ!?がぼっ!」
なんか今日こんな声しか出してない気がする。起きたばっかでこんなひどい状況に陥るとかベラミーたちにリンチされたときみたい。水圧凄すぎて口閉じらんねぇし水はめちゃくちゃ飲んじゃうし最悪すぎる。初めての冒険最悪の気分で行くとか最悪だわ。
横にいたゾロは口を開けたままのあたしに対してビビったのか一度ビクッ、と身体を震わせてから直ぐに口をそのでかい手で覆ってきた。そのおかげで何とかこれ以上の水の侵入を防げたけど、息が持たない。率直に言ってめちゃくちゃ苦しい。目の前のゾロは焦ってる顔してるし溺死とか一番嫌な死に方、
「っぶは、はぁ!」
「ケホ!!…ハァ、ハァ…!!」
「ゴホ!!!…グハ………ハァ、ハァ…」
こっちの世界に来る前、水に沈められて殺されかけた時を思い出しながら意識が遠のきかけているとき、急に視界が明るくなって空気が肺に流れ込んでくる。我慢できずに手摺に駆け寄り、さっきまで通ってきた雲、でも多分船が浮いてるから海、なのか?とりあえずその中にゲロと一緒に体内に入った水を吐き出す。
まさか雲なのに中が水になってるなんて思ってなかった。それはあたしだけじゃなくて皆もそうらしくて、一生懸命空気を吸い込んでいる。全身がびちょびちょ、血が滲んだままの制服も身体中の包帯も水を吸ってずいぶん重くなってる。あーもう、海ん中入るとか聞いてねぇし…
「おい!!!おいみんな見てみろよ!!!船の外っ!!!」
ゲロと水を吐くことに集中していたので周りを見る余裕がなかった、だからルフィの声に顔を上げれば、
そこは、一面真っ白な雲が覆いつくしていた。
言葉が出なかった。こんなに綺麗な場所があるなんて初めて知った。前の世界はうるさくて、汚くて、血で汚れていた。こんなに綺麗な場所を初めて見た。息を呑むほどに綺麗な場所。
「ルイ、始まるぞ!」
振り返る麦わら帽子。満面の笑みを浮かべる。つられてあたしも口元が緩んだ。
「うん、」
27.冒険開始
(ついに、始まる)
よくあるよね、あ、これ夢かって思うやつ。今がその状態。でもおかしい。だって目の前にあたしの両親がいる。2人があたしを冷たい目で見つめてる。でも何で、前まではこの目が大嫌いだったはずなのに今は何とも思わない。
不思議に思って居れば何かが肩に当たって。振り返れば太陽みたいな笑顔でルフィが手を伸ばしていた。
「行こうぜ、ルイ!」
あ、あたしこの声、この言葉に弱い。こいつは、こいつらはあたしを必要としてくれてる。それだけでさっきの2人何てどうでもよくなる。前の世界じゃあたしの居場所はなかった。今はここが、こいつらの傍があたしの居場所。
ゆっくりと重たい瞼を開ければこの世界で初めて目覚めた時の光景と、なんだか騒がしい、悪く言えばうるさい外の声。寝てる間にルフィが運んでくれたんだな、よく寝た気がする。ボコられたってのもあるけどほら、あたしこの世界に来てから初めてのオールじゃん?だから身体持たなかったんだよ、そういうことにしとこ。ボコられてぐっすり寝てましたとか恥じゃんね、恥。
とりあえず身体を起こすと顔に違和感があって、なんだかすっきりしている感じ。酒屋にいた時はぼこぼこに腫れあがって浮腫んでる感覚があったのに、今は何にもない。皆無。顔の痛みもないし頭が痛いなんてことも、手足が動かないなんてこともない。次いでよく見れば身体中包帯でぐるぐる巻きで、いかに自分が酷い状態だったかがよく知れる。…こりゃ、この部屋から出てクルーの前出てったらサンジになんていわれるかめっちゃ簡単に想像できるわ。
出ていきたくねぇなあ~~!でも顔出さねぇとアイツら過保護(特にサンジ)だしなぁ~~…!幸いにも身体の痛みはないし顔も人前に出せるくらい回復してる。だから普通に甲板に出てってもいいんだけど…………。
…………ん?ちょっと待て。さっきからあえて触れなかったど、なんかあたしの身体、異様に壁によってねぇか?あたしの身体だけじゃない、この部屋のモノすべてが壁際によってる。異様すぎんだろ、この光景。恐る恐るベッドから抜け出してみる。え、なんかこの船自体が傾いてない?なんでこんなのことになんだよ、船が傾くなんて下るか上るかしてる時だけだろ……
あたしはサンジとナミ、あとその他もろもろに詰め寄られるのを覚悟で医務室の扉を開けた。
あの時と同じ、初めてこの世界に来た時とおんなじ潮風がぶわり、身体を撫でた。…………が、ひとつ違うことが。風の量があの時と比にならねぇくらいやばい。つかずっと風が吹いてる。莫大な量の風で髪も身体も撫でられて。いや、風なんてどうでもいい。一番やばいのはこの、目の前の光景。
「な、な、なんじゃこりゃあーーっ!!?」
ありきたりな悲鳴を上げるほどやばい光景が目の前に広がっていた。本当にやばい。どのくらいやばいかって言うと、ルフィが少食になるくらい、ゾロが筋トレをやめるくらい、サンジの料理がまずくなるくらいやばい。だって、なんかでっかい真っ白い飛沫を上げる柱の上を、羽が生えてるメリー号が飛んでいるから。飛沫は私が立っているところにまで飛んできていて、船はほぼ垂直に柱の上を飛んでるから立ってるのでさえやっとだわ。なんだこれはなんだこの状況は、寝起きの頭じゃ追い付かない事態に手すりを掴んで重力に必死に耐えることしか出来ない。
「おールイ!起きたのか!」
「いやそれどころじゃねぇだろ、」
「ルイっちゅわ~ん!!お目覚めなんだね!!」
「いやだから、」
「ルイ!!!お前はもう無茶ばっかしやがって!!行く先ずっとあんな怪我してたら身体がもたね、ッギャーーー!!落ちるぅ!!!」
必死に耐えている途中、ルフィ、サンジ、チョッパーの順に言葉をかけてきてキレそう。今目覚めたばっかでこんな状況とか信じらんない。なんで柱登ってんだよなんで船が飛んでんだよ。ルフィはルフィで今もいつもみたいに無邪気に笑ってっし、サンジのキモさも通常運転、チョッパーは相変わらずうっせぇし。この情報量捌ききれねぇって!!!
次々に声を掛けられて苛立ちのあまり声を失うあたしは、途端大きく揺れた船に後れを取ってバランスを崩した。さっきより垂直度が増した船はバランスを崩した身体を容赦なく先程の医務室の壁へ叩きつけようとしていて。浮遊感に襲われる感覚に、次にやってくる衝撃に耐えるため固く双眸を閉じた時。
「っぎゃ!!」
何か壁とは違う、壁より柔らかいものが背中に当たった。何かと目を向ければ、壁から何本もの手が生えていて交差しあたしが落ちるのを助けていてくれた。でもぶっちゃけ言うと気持ちわりぃ気もする。
「チンピラさん、大丈夫かしら?」
医務室を覗き込むようにしてロビンが顔を出したから、多分これはロビンの悪魔の実とかいう力なんだろう。甲板に戻ろうとするも結構落ちてしまったのでこれまたロビンが生やした手に助けられて上に引っ張ってもらう。なんだかなぁ、こんな実を食べた奴に素手で立ち向かってったんかあたしは。馬鹿にも程があるわ。ボコられたのもまぁ、不服だけど納得いく。実を食べた奴にも負けないくらい強くなんなきゃ。
よし、と改めて決心するあたしを他所にロビンはなんと、なんと。
あたしの身体を投げ飛ばした。
「はっ、!?」
「ふふ、私より剣士さんの方が頼もしいと思うから」
だからって投げ飛ばすか普通!?今船は飛んでんだぞ!?宙に浮いてんだぞ!?まずは甲板にあたしを下ろすだろ普通!!!急に投げ飛ばしてんじゃねぇ!人間空中では無力なんだぞこの野郎!!!
しかし抗う術もなくゾロの方に投げ飛ばされると綺麗に飛んでいく。もしかしたらロビンは投げるのが得意なのかもしれない、とか呑気に考えていると、その男はあろうことか首根っこを掴んでキャッチしてきやがった。
「ぐえっ!」
案の定締まる首に素直に漏れるうめき声。コイツ、容赦なく落ちているあたしの首根っこ掴みやがった…!!なんの躊躇もなく、冷静に。こいつはほんと、あたしのパンツ見てきたり胸揉んできたりケツ堪能しやがったり無理矢理酒飲ませて(自業自得)きやがったり…何回あたしのこと不快にさせたら気が済むんだよ。
文句言ってやろうと口を開こうとしたとき、ゾロはあたしの腹部に腕を回して持ち直した。あたしの背中がゾロの方を向いている状態。なんだこいつ、何がしたいんだ。
「病み上がりが騒ぐんじゃねぇよ」
「あ!?進んで騒いでるわけじゃねぇよマリモっこり!!」
「てんめ、誰がキャッチしてやったと思って…!!」
なんかおかしい。いつもならあたしの言葉にもっと突っかかって来るのに今は途中でやめやがった。首を捻って見上げればなんかバツの悪そうな顔してるし。おかしい、絶対こんなゾロはおかしい。訝し気に見つめるあたしを床に降ろして、そいつは目を合わせずに、
「昨夜は悪かったな」
謝罪を述べた。こいつも自分で謝るのはガラじゃねぇって思ってんだろうな、絶対目が合わねぇもん。なに、酒飲めないの煽ったの謝ってんのか?まぁお前が悪いよ、あたしを煽りやがって。
「お前に謝るなんて選択肢あったんだな、許してやるよ」
「何様だてめェは」
ゾロが謝れると知った新発見は置いといて。今この状況で謝れるお前の神経がすげぇよ。だってもうほら、目の前に超でけぇ雲が。今思い出したけど、これオッサンが話してた積帝雲ってやつではないだろうか。んで、この柱は”突き上げる海流”(ノックアップストリーム)なのではないだろうか。つかこれも今冷静に考えることじゃねぇよな。
オッサンが言ってたことじゃこの雲の中に空島があるっぽいけど、雲って蒸気で乗れるはずないんじゃねぇのか?あたしの世界では絶対乗れないけどこっちでは乗れんのか?
どうせ蒸気だしこのスピードだけど何とか息出来んだろ。という思考は見事に打ち砕かれて、雲に突入した途端口からものすんごい水圧の水が大量に入ってきた。
「ぐぼがっ!?がぼっ!」
なんか今日こんな声しか出してない気がする。起きたばっかでこんなひどい状況に陥るとかベラミーたちにリンチされたときみたい。水圧凄すぎて口閉じらんねぇし水はめちゃくちゃ飲んじゃうし最悪すぎる。初めての冒険最悪の気分で行くとか最悪だわ。
横にいたゾロは口を開けたままのあたしに対してビビったのか一度ビクッ、と身体を震わせてから直ぐに口をそのでかい手で覆ってきた。そのおかげで何とかこれ以上の水の侵入を防げたけど、息が持たない。率直に言ってめちゃくちゃ苦しい。目の前のゾロは焦ってる顔してるし溺死とか一番嫌な死に方、
「っぶは、はぁ!」
「ケホ!!…ハァ、ハァ…!!」
「ゴホ!!!…グハ………ハァ、ハァ…」
こっちの世界に来る前、水に沈められて殺されかけた時を思い出しながら意識が遠のきかけているとき、急に視界が明るくなって空気が肺に流れ込んでくる。我慢できずに手摺に駆け寄り、さっきまで通ってきた雲、でも多分船が浮いてるから海、なのか?とりあえずその中にゲロと一緒に体内に入った水を吐き出す。
まさか雲なのに中が水になってるなんて思ってなかった。それはあたしだけじゃなくて皆もそうらしくて、一生懸命空気を吸い込んでいる。全身がびちょびちょ、血が滲んだままの制服も身体中の包帯も水を吸ってずいぶん重くなってる。あーもう、海ん中入るとか聞いてねぇし…
「おい!!!おいみんな見てみろよ!!!船の外っ!!!」
ゲロと水を吐くことに集中していたので周りを見る余裕がなかった、だからルフィの声に顔を上げれば、
そこは、一面真っ白な雲が覆いつくしていた。
言葉が出なかった。こんなに綺麗な場所があるなんて初めて知った。前の世界はうるさくて、汚くて、血で汚れていた。こんなに綺麗な場所を初めて見た。息を呑むほどに綺麗な場所。
「ルイ、始まるぞ!」
振り返る麦わら帽子。満面の笑みを浮かべる。つられてあたしも口元が緩んだ。
「うん、」
27.冒険開始
(ついに、始まる)