Prologue
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意識が無くなった後、夢を見た。あたしがまだ、悪さをしてない頃の、まだ、親に愛されていた頃の。
「ルイ、お前はいい子だね」
「ルイ、あなたは優しい子でいなさい、大事な人を守れるように」
二人に囲まれている幼いあたしは言葉の意味なんて分からずに、ただただ嬉しくて笑顔でいる。
’大事な人を守れるように’。今まで生きてきた中で親に言われて守ったのは、これだけ。よくつるむ仲間の為に優しく、守れる為に強くあろうと思った。
こんなあたしでも、これだけは守ってんだよ。そんなこと知らなんだろうな、知ろうともしないんだろ。あ、なんだか悔しくなってきた。柄じゃないのに、目の前の光景が憎たらしくてあたしを追い出したこいつらが、あたしを愛してたなんて。酷く、憎たらしい。夢の中のはずなのに、手に落ちる雫の感覚が嫌にはっきりしていて。気づけば目の前の家族だった人たちが私に向いていた。
「お前にはがっかりだ」
「もう、あんたなんて娘じゃない」
二人の冷ややかな4つの目があたしを捉えて離さない。いつからか、夜遊びすることに注意をされなくなった。いつからか、名前を呼ばれなくなった。先程、あたしを追い出した時の、目だ。
「産まなきゃよかった」
そんな母親の言葉に、ツンと鼻がいたくなった。同時に腹の奥がぐつぐつと煮えかえるような熱さを覚えた。
「あたしだって、……っあたしだって、お前らの娘になんてなりたくなかった!!!」
______ハ、と、目が覚めた。
は、は、と呼吸は荒く全身にびっしょりと汗をかいている。あたりを見回すけど、今さっきまで話していた親だった人たちはいない。内心、ほ、と息をつく。ゆっくり上身を起こしてひとまず夢のことを忘れて今の状況を整理することにした。
……どこだよ、ここ。あたし知らない男どもにリンチされて死にそうになってたんだけど。なんで今、知らない部屋でベッドに寝かせられているんだろう。服は意識を失う前に来ていた制服のまま。少し泥がついていたからリンチにあったのは本当みたい。じゃあ、ココも夢ってこと?あー、ガチで死んだ的な?ろくな死に方しねぇと思ってたけどリンチで死ぬとかダサすぎ。脱力してたからってやられてばっかだったのは心残りかも。はーぁ、これからどうしよ。とりあえずココに寝かせてくれた人にお礼でもしに行くか。
ギシ、とベッドを軋ませながら立ち上がろうとしたとき、距離感覚が掴めないことに気づいた。片目がガーゼみたいなもので塞がれていた。あぁ、確か瞼切れたんだっけ。え、ご丁寧に手当てまでしてくれたんだ。いい人すぎじゃね?まぁ悪いけど見にくいから外させてもらいまーす。
「まだ取ったらダメだ!」
「あ?」
何、どっからか声した気がしたんだけど。暴行されすぎて幻聴聞こえるようになったんか。親ともどもあの男たち呪ってやろうか。
声に気にせず再度ガーゼを外そうと手を掛けると、
「だから!ダメだって言ってるだろ!」
出している足に何かが飛びついた。茶色い、何か。なんか帽子をかぶって、角が生えてて、茶色い毛が生えていて、青い鼻。なんだこの生き物。天界が飼ってるペットか何か?可愛いっちゃ可愛いけど、喋って二足歩行でって結構変な趣向なんだな。なんかおもろい。
「瞼は切れてないけど、眉毛のちょっと下がパックリ切れてて血がやばかったんだからな!縫うほどではないけど薬塗ってあるから塞がるまでガーゼは取るな!化膿するぞ!」
「はぁ……」
状況的にこの生き物が手当てしてくれたみたいだな。蹄のくせに器用だなこいつ。天界のペットだからできるのか。あとなんか怒り方が可愛い。ふわふわの毛並みを触りたくて手を伸ばした時、カチャリと軽い音を立てながら金髪の男が入ってきた。
「よぅチョッパー、お嬢さんの様子は…」
「あ、サンジ!今目覚めたんだ!」
…こいつ天界の住人?このペットこいつが飼ってんの?サラサラ金髪にぐるっと渦を描いた眉毛。少し煙草のにおいがするから、さっきまで吸ってたんだろう。喋るペットから目を離して入ってきた奴に顔を向ける、が。
「なんって綺麗な瞳なんだプリンセス…!神は俺たちを巡り合わせる為に存在していたんだな……」
「は?」
「俺、皆に知らせてくるよ」
「いや、ちょっと、」
ペット、さっき呼ばれてた名はチョッパーだったっけ。そのチョッパーはあたしとこの、ターンしながら近づいてきて今手を握っている金髪キモ男を残して部屋から出て行った。
何だこの地獄。目の前の金髪は未だになんかぶつぶつ言ってるし握った手は離さねぇし、もうキモイ。率直に言って、無理。こういう経験が無いに等しいあたしにとって本当に地獄としか思えない。
「あいつらに紹介するのは気が引けるが……少し歩けるかい、マドモアゼル」
妙な言葉遣いにぞわっと背中に鳥肌が立つ。今すぐにこの手を振りほどきたいけど、めちゃくちゃ優しく引いてくれるからなんか、可哀想とか思う。……それに、人と手を繋ぐなんて久振りすぎて、温いのが心地いい。とりあえず、今は大人しくついていく事にした。
02.in不思議な不思議な天界
(微かに香る潮のにおいに、心が揺れた)
「ルイ、お前はいい子だね」
「ルイ、あなたは優しい子でいなさい、大事な人を守れるように」
二人に囲まれている幼いあたしは言葉の意味なんて分からずに、ただただ嬉しくて笑顔でいる。
’大事な人を守れるように’。今まで生きてきた中で親に言われて守ったのは、これだけ。よくつるむ仲間の為に優しく、守れる為に強くあろうと思った。
こんなあたしでも、これだけは守ってんだよ。そんなこと知らなんだろうな、知ろうともしないんだろ。あ、なんだか悔しくなってきた。柄じゃないのに、目の前の光景が憎たらしくてあたしを追い出したこいつらが、あたしを愛してたなんて。酷く、憎たらしい。夢の中のはずなのに、手に落ちる雫の感覚が嫌にはっきりしていて。気づけば目の前の家族だった人たちが私に向いていた。
「お前にはがっかりだ」
「もう、あんたなんて娘じゃない」
二人の冷ややかな4つの目があたしを捉えて離さない。いつからか、夜遊びすることに注意をされなくなった。いつからか、名前を呼ばれなくなった。先程、あたしを追い出した時の、目だ。
「産まなきゃよかった」
そんな母親の言葉に、ツンと鼻がいたくなった。同時に腹の奥がぐつぐつと煮えかえるような熱さを覚えた。
「あたしだって、……っあたしだって、お前らの娘になんてなりたくなかった!!!」
______ハ、と、目が覚めた。
は、は、と呼吸は荒く全身にびっしょりと汗をかいている。あたりを見回すけど、今さっきまで話していた親だった人たちはいない。内心、ほ、と息をつく。ゆっくり上身を起こしてひとまず夢のことを忘れて今の状況を整理することにした。
……どこだよ、ここ。あたし知らない男どもにリンチされて死にそうになってたんだけど。なんで今、知らない部屋でベッドに寝かせられているんだろう。服は意識を失う前に来ていた制服のまま。少し泥がついていたからリンチにあったのは本当みたい。じゃあ、ココも夢ってこと?あー、ガチで死んだ的な?ろくな死に方しねぇと思ってたけどリンチで死ぬとかダサすぎ。脱力してたからってやられてばっかだったのは心残りかも。はーぁ、これからどうしよ。とりあえずココに寝かせてくれた人にお礼でもしに行くか。
ギシ、とベッドを軋ませながら立ち上がろうとしたとき、距離感覚が掴めないことに気づいた。片目がガーゼみたいなもので塞がれていた。あぁ、確か瞼切れたんだっけ。え、ご丁寧に手当てまでしてくれたんだ。いい人すぎじゃね?まぁ悪いけど見にくいから外させてもらいまーす。
「まだ取ったらダメだ!」
「あ?」
何、どっからか声した気がしたんだけど。暴行されすぎて幻聴聞こえるようになったんか。親ともどもあの男たち呪ってやろうか。
声に気にせず再度ガーゼを外そうと手を掛けると、
「だから!ダメだって言ってるだろ!」
出している足に何かが飛びついた。茶色い、何か。なんか帽子をかぶって、角が生えてて、茶色い毛が生えていて、青い鼻。なんだこの生き物。天界が飼ってるペットか何か?可愛いっちゃ可愛いけど、喋って二足歩行でって結構変な趣向なんだな。なんかおもろい。
「瞼は切れてないけど、眉毛のちょっと下がパックリ切れてて血がやばかったんだからな!縫うほどではないけど薬塗ってあるから塞がるまでガーゼは取るな!化膿するぞ!」
「はぁ……」
状況的にこの生き物が手当てしてくれたみたいだな。蹄のくせに器用だなこいつ。天界のペットだからできるのか。あとなんか怒り方が可愛い。ふわふわの毛並みを触りたくて手を伸ばした時、カチャリと軽い音を立てながら金髪の男が入ってきた。
「よぅチョッパー、お嬢さんの様子は…」
「あ、サンジ!今目覚めたんだ!」
…こいつ天界の住人?このペットこいつが飼ってんの?サラサラ金髪にぐるっと渦を描いた眉毛。少し煙草のにおいがするから、さっきまで吸ってたんだろう。喋るペットから目を離して入ってきた奴に顔を向ける、が。
「なんって綺麗な瞳なんだプリンセス…!神は俺たちを巡り合わせる為に存在していたんだな……」
「は?」
「俺、皆に知らせてくるよ」
「いや、ちょっと、」
ペット、さっき呼ばれてた名はチョッパーだったっけ。そのチョッパーはあたしとこの、ターンしながら近づいてきて今手を握っている金髪キモ男を残して部屋から出て行った。
何だこの地獄。目の前の金髪は未だになんかぶつぶつ言ってるし握った手は離さねぇし、もうキモイ。率直に言って、無理。こういう経験が無いに等しいあたしにとって本当に地獄としか思えない。
「あいつらに紹介するのは気が引けるが……少し歩けるかい、マドモアゼル」
妙な言葉遣いにぞわっと背中に鳥肌が立つ。今すぐにこの手を振りほどきたいけど、めちゃくちゃ優しく引いてくれるからなんか、可哀想とか思う。……それに、人と手を繋ぐなんて久振りすぎて、温いのが心地いい。とりあえず、今は大人しくついていく事にした。
02.in不思議な不思議な天界
(微かに香る潮のにおいに、心が揺れた)