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夜の森は新鮮だ。暫くの間夜は船の上で過ごしてたからなァ、走り抜ける森から聞こえる虫の声に気を引かれそうになるけどダメだ。出航まではあと3時間ってナミが言ってた。3時間以内にベラミーをぶっ飛ばして、ルイを連れて帰らねぇと空島に行けなくなっちまう。ルイとの初めての冒険が出来なくなっちまう。
もっと、もっと早く。もっと早く足を動かせ。あいつらに頼まれたんだ。ルイを頼まれたんだ。難しい事はわかんねぇけど今自分が怒ってんのはわかる。金塊の話をする嬉しそうなオッサンの顔。やっと見つけたって嬉しそうに話すオッサンの顔。まだ仲間になって少ねぇけど、ルイの空島を楽しみにしている顔。なにより、仲間になる前の、あの夜のあいつの笑顔が浮かぶ。くそ、くそ、俺たちがもっと早く変な鳥を捕まえて戻っていれば。あの中の誰か一人でもルイと一緒に待っていれば。
「ほんとに…すまん…おれ達がついていながら情けねェ…!」
不意におっさんの言葉が頭をよぎる。ちげぇよオッサン、オッサン達はなんも悪くねぇよ。悪いのは全部、ベラミーなんだ。ルイを守ってくれてありがとな。オッサンの金塊もルイも、ぜってェ取り戻してくるからよ。オッサン達は休んでてくれ。ぜってェベラミーをぶっ飛ばしてくっから。
「あんにゃろォオオ~~~~~~っ!!!!」
ふつふつと湧き上がる怒りを原動力に走る足を速めた。
あれから少しして昼間のジャヤに着いた。着いたのはいいけどよォ、肝心のベラミーはどこだ?どこの酒屋からも声が聞こえて全く見当がつかねぇよ。
辺りを見回してみるとここらへんで一番高い屋根を発見。あそこ登れば少しは見当つくんじゃねぇか?いつもはナミにぴょんぴょん飛び跳ねんなって言われてるけど今回ばかりは思いっきり飛ばせてもらう。足に軽く力を込めて地面から屋根へ足を着く。…けど、どっこにもみあたらねぇぞ?ベラミーっぽい奴は外に居ねぇみたいだしよ、やっぱ酒屋にいんのか?
よし、と軽く息を吐き出して、次いで思い切り吸い込み腹の底から叫ぶ。
「べラミィ~~~~~~~~!!!どこだァアア~~~~~~~~!!!」
外にいる奴らはびっくりして俺の方を見る。けど、関係ねぇ。これで出てこなかったらもう一回呼んでやる。俺たちは早く空島に行かなきゃなんねぇんだ。ルイが楽しみにしてるんだ。だから早くルイを連れて帰って、一緒に空島に行くんだ。
もう一度息を吸い込んでアイツの名前を呼ぼうとしたとき、ベラミーが酒屋から出てきた。昼間と同じ笑みを浮かべて俺を見上げるその手には、ルイの髪が無造作に鷲掴まれていて。
全身の血が沸騰しているようだった。オッサンからある程度、ルイがリンチされていたって聞いてた。けど、俺の想像をはるかに超えたって言うのか?そんな感じだ。なんとかして俺を見上げるルイは顔中血まみれで、着ている服も血が滲んでいてどこから出血してんのかわかんねぇ。痛いよな、ルイ。俺もそんなに血ィ出てたらぜってぇ痛ェもん。
「ルイとオッサンの金塊、返せよ」
俺は怒ってんだ。友達のオッサンたちの金塊を盗って、大切な俺の仲間をこんなに傷つけて、めちゃくちゃ怒ってんだ。怒りを含んだ声で告げるとアイツは笑いながらルイをその場に捨てて俺の前へ飛び乗ってきた。ルイの小さなうめき声のあと、俺を呼ぶ声と嗚咽がこんがらがった。
「返すも何も…アレと女は俺が海賊として奪ったんだ。海賊のお前にとやかく言われる筋合いはねェハズだ」
「あるさ」
ルイを見れば、地面に這いつくばっているにも関わらず俺を一生懸命に見上げていて。、頬を流れる血に混じって大粒の雫が流れているのがここからでもわかった。アイツが泣いているところを見るのはこれで2回目だ。俺はルイから目を離さないでベラミーに言う。
「オッサン達は大事な友達で、ルイは大切な俺の仲間だ!!だから俺が奪い返すんだ!!!」
「ハハッハハ!聞くがお前…戦闘は出来るのか!?パンチの打ち方を知ってんのか!!?ハハハハ!!てめェみてェな腰抜けに何ができる!!!」
「腰抜け”じゃな”い”!!!!」
ルイが起き上がっていた。といっても膝をついていたけど、顔中べたべたに濡らして潰れた声で吠えている。そんなルイの腕をベラミーの仲間の髪なげェ奴が掴んで引きずろうとしていて。でもルイはお構いなしだ。
「ル”フィはお前な”ん”かと違う!!お前の”方が、お前の”方が腰抜けだろ”ーが!!」
「…サーキース、そいつ黙らせとけ」
ベラミーがそう言うと髪なげェ奴はルイの髪を鷲掴んで地面に叩きつけた。俺のこめかみは一層強張り、もう一度目の前のベラミーに視線を戻して告げる。
「ルイは俺の仲間だ。お前なんかにはやらねェ」
「ハッ、やらねェもなにも、あの女は俺たちの仲間になるんだぜ?お前を片付けた後、じっくり焼印をいれてやってなァ!」
「クルーに信頼してもらえねェ船長なんて、船長じゃねェ」
「そうかよ……もう二度とその生意気な口がきけねェ様にしてやるっ!!」
そういうと、ベラミーは足をバネにして上に飛んだ。その拍子に俺が乗っていた屋根は崩れて地面に向かっている。あんにゃろう、わざわざもの壊しやがって、ルイに破片とか当たっちまったらどうすんだよ!!
とっさにバランスをとって浮くような感じに耐えるけど、空中のベラミーはすーぐ俺の方に向かって、
スナイプ
「”スプリング狙撃”!!!」
攻撃を仕掛けてきた。すぐに地面に避けると避けた個所の奴らは捌けていった。もう一度ベラミーに向き直るけど、アイツはすばしっこく壁やら床やらを蹴って移動している。
ホッパー
「”スプリング跳人”!!!」
すぐに俺を殴りに来るわけじゃなくて、ずっと派手な音を立てて壁と床を蹴り俺の様子を見てる。その間にもベラミーの口は閉じずに俺の耳へ声を滑らせてきて。
「友達だって!?ハハッハハハ!!そういやあのジジイや大猿共も…おめェらと同類だな、400年前の先祖のホラを信じ続ける生粋のバカ一族だ!そいつらを守ろうとしたその女はもっとバカだな、弱ェくせに出しゃばってきてよォ!!」
その言葉にルイを見る。地面にでこを押し付けて、悔しそうに口を噛みしめてる。
ちげェよルイ、お前は弱くねェ。お前は俺たちの大切な仲間だ。強ェ仲間だ。俺の仲間に弱い奴なんて一人も居ねェ。俺の仲間だって胸張って笑えよ、ルイ。
「パンチの打ち方を知ってるかって…?」
「あばよ!!!!」
周りの声に押されるようにして飛び回っていたベラミーが俺に向かってくる。
オッサンの傷、マシラ、ショウジョウの傷。それから、ルイの傷と血にまみれた泣き顔。全部全部思い出して拳を握り締めた。俺とベラミーがぶつかる瞬間、握った拳を振りかぶって
________ドンッ!!!___
ベラミーをぶん殴った。
メリメリと床に沈んでいくそいつを放って、こいつらがいた酒屋に入って金塊を担ぐ。その間にアイツの仲間がギャーギャー騒いでるけど知ったこっちゃねェ。金塊を担いだ後に髪なげぇ奴に抑えられているルイの方へ。
「オイ…!!!オイてめェ待てよ、まだ俺がいるだろう!!?さァかかって来い!!俺たちが夢追いのバカに負けるわけ、」
「ルイ、離せよ」
「ヒッ…………!?」
ごちゃごちゃうるせェ奴は気にしねェ、まずはルイが先だ。髪なげぇ奴を退かしてチョッパーに言われた通り、なるべく動かさないでゆっくり上を向かせる。どうすっかなァ、後ろには金塊担いでっしコイツ1人で歩けねぇよなァ。
「るふぃ、ごめん、弱くて、」
俺の服に縋るよう握り締めながら、多分悔しいんだろう、震える声で小さく、本当に小さくそう言った。コイツ、ベラミーに言われたこと気にしてんのか?バカだなァ、
「ありがとな、オッサン達のこと守ってくれて。来んの遅くなって悪ィ、行こうぜ空島!」
ベラミーを倒したってのにまーだ泣きべそかいてるルイにそういえば、べたべたな顔のままそいつは困ったような、嬉しいような、眉毛を下げてよくわからない笑顔を作った。
その後は前にルイを抱え、後ろに金塊を担いで全力ダッシュ。3時間で戻るっつったからには遅くてもぴったりに戻んねェとナミに何されるかわかんねェからな!しっかし、なるべく動かさねェ様に運ぶってどうやんだ?めちゃくちゃ走らねェと間に合わねェし、そうしたらすんげェ揺れるしどう考えても無理じゃねェかな…………?ルイは寝てっから揺れても大丈夫だろ!うちには優秀な船医もいるし何とかしてくれるか!!
そうとなれば猛ダッシュだ!早くルイと空島行くぞ!!
「何やってんのよっ!!!あいつったらもーーー!!!」
ルフィがクリケットさんの金塊と仲間であるルイを取り返しに行って約束の3時間と46分。そう、46分オーバー。朝には戻るって何だったの!?空島行こうって言ったのはあんたなんじゃないの!?こちとら船の修理終わってルイを迎え入れるための医療用意だって万全なんだからね!?主にチョッパーが!!こんだけ遅れといてルイのこと考えず運んで来たら承知しないんだから!!!
「おーーーーーい!!」
「お」
やぁっと来た!!あんた今何時だと思ってんのよ!!
そう詰め寄ろうとした私の口は開かなかった。だって、ルフィの、アイツが抱えてるルイの体が血まみれだったから。私たちの方に背中を向けてるけどそれでもわかる血の量。言葉を失うと同時に口元を覆って、この現実を受け入れたくなかった。だってあんな、雑巾みたいなルイに何を言ったらいいのかわからない。
「これ見ろ!!!ヘラクレス~~~~!!!」
彼女を連れ戻しに行った本人は何事もなかったかのようにあり得ない遅刻理由を述べてるけど、そんな呑気に聞けるはずがない。ルフィを怒る気にもなれない。ルフィ以外は私と同じ考えなようで、
「ン何呑気にそんな虫探してんだクソゴム!!!!第一にルイちゃんの安全を確保しやがれこの野郎!!!さっさとこっちにルイちゃん渡せ!!おいチョッパー、すぐに医務室に運ぶから治療してくれ!」
「お、おう!」
「俺も手伝うぜ!」
真っ先に動いてくれたのはサンジくん。次にウソップが動いてくれた。サンジくんはすぐさまルフィの腕からルイを奪って丁寧に運んでいく。その時顔が見えたけど、酷い。これまたルフィ以外私たち全員が息を呑んで彼女の顔を凝視した。血でべたべたになった顔。顔だけじゃなくて服の至るとことから血が滲んでいる。だから酷いのは顔だけじゃないんだわ、きっと。
…………こんなになるまで、こんなになるまでこの子はクリケットさんたちのために身体を張ってたのね…こんなの女の子が負う傷じゃない、こんな傷を負ったらきっと死んじゃう。
「………チョッパー、早くルイを治してあげて」
「当たり前だ!」
震える声でチョッパーに告げれば、3人はそそくさと船に上がっていった。それに続くようにゾロやロビンも上がって行き、私もそれに続く。
縄はしごの軋みが嫌に大きく聞こえた。
26.彼女の想い
(どうしてこんなに身体張っちゃうのよ、バカルイ)
もっと、もっと早く。もっと早く足を動かせ。あいつらに頼まれたんだ。ルイを頼まれたんだ。難しい事はわかんねぇけど今自分が怒ってんのはわかる。金塊の話をする嬉しそうなオッサンの顔。やっと見つけたって嬉しそうに話すオッサンの顔。まだ仲間になって少ねぇけど、ルイの空島を楽しみにしている顔。なにより、仲間になる前の、あの夜のあいつの笑顔が浮かぶ。くそ、くそ、俺たちがもっと早く変な鳥を捕まえて戻っていれば。あの中の誰か一人でもルイと一緒に待っていれば。
「ほんとに…すまん…おれ達がついていながら情けねェ…!」
不意におっさんの言葉が頭をよぎる。ちげぇよオッサン、オッサン達はなんも悪くねぇよ。悪いのは全部、ベラミーなんだ。ルイを守ってくれてありがとな。オッサンの金塊もルイも、ぜってェ取り戻してくるからよ。オッサン達は休んでてくれ。ぜってェベラミーをぶっ飛ばしてくっから。
「あんにゃろォオオ~~~~~~っ!!!!」
ふつふつと湧き上がる怒りを原動力に走る足を速めた。
あれから少しして昼間のジャヤに着いた。着いたのはいいけどよォ、肝心のベラミーはどこだ?どこの酒屋からも声が聞こえて全く見当がつかねぇよ。
辺りを見回してみるとここらへんで一番高い屋根を発見。あそこ登れば少しは見当つくんじゃねぇか?いつもはナミにぴょんぴょん飛び跳ねんなって言われてるけど今回ばかりは思いっきり飛ばせてもらう。足に軽く力を込めて地面から屋根へ足を着く。…けど、どっこにもみあたらねぇぞ?ベラミーっぽい奴は外に居ねぇみたいだしよ、やっぱ酒屋にいんのか?
よし、と軽く息を吐き出して、次いで思い切り吸い込み腹の底から叫ぶ。
「べラミィ~~~~~~~~!!!どこだァアア~~~~~~~~!!!」
外にいる奴らはびっくりして俺の方を見る。けど、関係ねぇ。これで出てこなかったらもう一回呼んでやる。俺たちは早く空島に行かなきゃなんねぇんだ。ルイが楽しみにしてるんだ。だから早くルイを連れて帰って、一緒に空島に行くんだ。
もう一度息を吸い込んでアイツの名前を呼ぼうとしたとき、ベラミーが酒屋から出てきた。昼間と同じ笑みを浮かべて俺を見上げるその手には、ルイの髪が無造作に鷲掴まれていて。
全身の血が沸騰しているようだった。オッサンからある程度、ルイがリンチされていたって聞いてた。けど、俺の想像をはるかに超えたって言うのか?そんな感じだ。なんとかして俺を見上げるルイは顔中血まみれで、着ている服も血が滲んでいてどこから出血してんのかわかんねぇ。痛いよな、ルイ。俺もそんなに血ィ出てたらぜってぇ痛ェもん。
「ルイとオッサンの金塊、返せよ」
俺は怒ってんだ。友達のオッサンたちの金塊を盗って、大切な俺の仲間をこんなに傷つけて、めちゃくちゃ怒ってんだ。怒りを含んだ声で告げるとアイツは笑いながらルイをその場に捨てて俺の前へ飛び乗ってきた。ルイの小さなうめき声のあと、俺を呼ぶ声と嗚咽がこんがらがった。
「返すも何も…アレと女は俺が海賊として奪ったんだ。海賊のお前にとやかく言われる筋合いはねェハズだ」
「あるさ」
ルイを見れば、地面に這いつくばっているにも関わらず俺を一生懸命に見上げていて。、頬を流れる血に混じって大粒の雫が流れているのがここからでもわかった。アイツが泣いているところを見るのはこれで2回目だ。俺はルイから目を離さないでベラミーに言う。
「オッサン達は大事な友達で、ルイは大切な俺の仲間だ!!だから俺が奪い返すんだ!!!」
「ハハッハハ!聞くがお前…戦闘は出来るのか!?パンチの打ち方を知ってんのか!!?ハハハハ!!てめェみてェな腰抜けに何ができる!!!」
「腰抜け”じゃな”い”!!!!」
ルイが起き上がっていた。といっても膝をついていたけど、顔中べたべたに濡らして潰れた声で吠えている。そんなルイの腕をベラミーの仲間の髪なげェ奴が掴んで引きずろうとしていて。でもルイはお構いなしだ。
「ル”フィはお前な”ん”かと違う!!お前の”方が、お前の”方が腰抜けだろ”ーが!!」
「…サーキース、そいつ黙らせとけ」
ベラミーがそう言うと髪なげェ奴はルイの髪を鷲掴んで地面に叩きつけた。俺のこめかみは一層強張り、もう一度目の前のベラミーに視線を戻して告げる。
「ルイは俺の仲間だ。お前なんかにはやらねェ」
「ハッ、やらねェもなにも、あの女は俺たちの仲間になるんだぜ?お前を片付けた後、じっくり焼印をいれてやってなァ!」
「クルーに信頼してもらえねェ船長なんて、船長じゃねェ」
「そうかよ……もう二度とその生意気な口がきけねェ様にしてやるっ!!」
そういうと、ベラミーは足をバネにして上に飛んだ。その拍子に俺が乗っていた屋根は崩れて地面に向かっている。あんにゃろう、わざわざもの壊しやがって、ルイに破片とか当たっちまったらどうすんだよ!!
とっさにバランスをとって浮くような感じに耐えるけど、空中のベラミーはすーぐ俺の方に向かって、
スナイプ
「”スプリング狙撃”!!!」
攻撃を仕掛けてきた。すぐに地面に避けると避けた個所の奴らは捌けていった。もう一度ベラミーに向き直るけど、アイツはすばしっこく壁やら床やらを蹴って移動している。
ホッパー
「”スプリング跳人”!!!」
すぐに俺を殴りに来るわけじゃなくて、ずっと派手な音を立てて壁と床を蹴り俺の様子を見てる。その間にもベラミーの口は閉じずに俺の耳へ声を滑らせてきて。
「友達だって!?ハハッハハハ!!そういやあのジジイや大猿共も…おめェらと同類だな、400年前の先祖のホラを信じ続ける生粋のバカ一族だ!そいつらを守ろうとしたその女はもっとバカだな、弱ェくせに出しゃばってきてよォ!!」
その言葉にルイを見る。地面にでこを押し付けて、悔しそうに口を噛みしめてる。
ちげェよルイ、お前は弱くねェ。お前は俺たちの大切な仲間だ。強ェ仲間だ。俺の仲間に弱い奴なんて一人も居ねェ。俺の仲間だって胸張って笑えよ、ルイ。
「パンチの打ち方を知ってるかって…?」
「あばよ!!!!」
周りの声に押されるようにして飛び回っていたベラミーが俺に向かってくる。
オッサンの傷、マシラ、ショウジョウの傷。それから、ルイの傷と血にまみれた泣き顔。全部全部思い出して拳を握り締めた。俺とベラミーがぶつかる瞬間、握った拳を振りかぶって
________ドンッ!!!___
ベラミーをぶん殴った。
メリメリと床に沈んでいくそいつを放って、こいつらがいた酒屋に入って金塊を担ぐ。その間にアイツの仲間がギャーギャー騒いでるけど知ったこっちゃねェ。金塊を担いだ後に髪なげぇ奴に抑えられているルイの方へ。
「オイ…!!!オイてめェ待てよ、まだ俺がいるだろう!!?さァかかって来い!!俺たちが夢追いのバカに負けるわけ、」
「ルイ、離せよ」
「ヒッ…………!?」
ごちゃごちゃうるせェ奴は気にしねェ、まずはルイが先だ。髪なげぇ奴を退かしてチョッパーに言われた通り、なるべく動かさないでゆっくり上を向かせる。どうすっかなァ、後ろには金塊担いでっしコイツ1人で歩けねぇよなァ。
「るふぃ、ごめん、弱くて、」
俺の服に縋るよう握り締めながら、多分悔しいんだろう、震える声で小さく、本当に小さくそう言った。コイツ、ベラミーに言われたこと気にしてんのか?バカだなァ、
「ありがとな、オッサン達のこと守ってくれて。来んの遅くなって悪ィ、行こうぜ空島!」
ベラミーを倒したってのにまーだ泣きべそかいてるルイにそういえば、べたべたな顔のままそいつは困ったような、嬉しいような、眉毛を下げてよくわからない笑顔を作った。
その後は前にルイを抱え、後ろに金塊を担いで全力ダッシュ。3時間で戻るっつったからには遅くてもぴったりに戻んねェとナミに何されるかわかんねェからな!しっかし、なるべく動かさねェ様に運ぶってどうやんだ?めちゃくちゃ走らねェと間に合わねェし、そうしたらすんげェ揺れるしどう考えても無理じゃねェかな…………?ルイは寝てっから揺れても大丈夫だろ!うちには優秀な船医もいるし何とかしてくれるか!!
そうとなれば猛ダッシュだ!早くルイと空島行くぞ!!
「何やってんのよっ!!!あいつったらもーーー!!!」
ルフィがクリケットさんの金塊と仲間であるルイを取り返しに行って約束の3時間と46分。そう、46分オーバー。朝には戻るって何だったの!?空島行こうって言ったのはあんたなんじゃないの!?こちとら船の修理終わってルイを迎え入れるための医療用意だって万全なんだからね!?主にチョッパーが!!こんだけ遅れといてルイのこと考えず運んで来たら承知しないんだから!!!
「おーーーーーい!!」
「お」
やぁっと来た!!あんた今何時だと思ってんのよ!!
そう詰め寄ろうとした私の口は開かなかった。だって、ルフィの、アイツが抱えてるルイの体が血まみれだったから。私たちの方に背中を向けてるけどそれでもわかる血の量。言葉を失うと同時に口元を覆って、この現実を受け入れたくなかった。だってあんな、雑巾みたいなルイに何を言ったらいいのかわからない。
「これ見ろ!!!ヘラクレス~~~~!!!」
彼女を連れ戻しに行った本人は何事もなかったかのようにあり得ない遅刻理由を述べてるけど、そんな呑気に聞けるはずがない。ルフィを怒る気にもなれない。ルフィ以外は私と同じ考えなようで、
「ン何呑気にそんな虫探してんだクソゴム!!!!第一にルイちゃんの安全を確保しやがれこの野郎!!!さっさとこっちにルイちゃん渡せ!!おいチョッパー、すぐに医務室に運ぶから治療してくれ!」
「お、おう!」
「俺も手伝うぜ!」
真っ先に動いてくれたのはサンジくん。次にウソップが動いてくれた。サンジくんはすぐさまルフィの腕からルイを奪って丁寧に運んでいく。その時顔が見えたけど、酷い。これまたルフィ以外私たち全員が息を呑んで彼女の顔を凝視した。血でべたべたになった顔。顔だけじゃなくて服の至るとことから血が滲んでいる。だから酷いのは顔だけじゃないんだわ、きっと。
…………こんなになるまで、こんなになるまでこの子はクリケットさんたちのために身体を張ってたのね…こんなの女の子が負う傷じゃない、こんな傷を負ったらきっと死んじゃう。
「………チョッパー、早くルイを治してあげて」
「当たり前だ!」
震える声でチョッパーに告げれば、3人はそそくさと船に上がっていった。それに続くようにゾロやロビンも上がって行き、私もそれに続く。
縄はしごの軋みが嫌に大きく聞こえた。
26.彼女の想い
(どうしてこんなに身体張っちゃうのよ、バカルイ)