in JAYA
change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
オッサンを看病してからしばらく。あたしは外に出ていた。少し…いや、あの家の中に居たくなかったから。写真を見てからどうも、調子が悪い。あいつらの顔が浮かんで吐き気が治まらないんだ。 腹の中にでっかくて黒い、鉛みたいに重い何かが蠢いていて、これでよかったのかって聞いてくる。海から吹く潮風が傷んだ金色い髪をなびくかせていく。これさえも問い詰めてるように感じて苦しくて。
海面を覗けば情けなくて、まだ幼さが残る自分の顔が映った。引っ叩きたくなるくらいの情けない顔。近くの小石でもう一人のあたしを殴れば、規則的な波紋が広がって歪んだ。よかったよ、これで。どっちにしろあたしは死んでんだ、どうもこうもねぇよ。
「チンピラさん」
海に向かってぶーたれてるあたしに、ロビンが声を掛けてきた。顔を上げれば自分なんかよりもずっとずっと、大人びた顔立ちと目が合って苦しい。
「目を覚ましたみたいで皆中に入っちゃったけど」
「あんたがいるから皆じゃない」
「ふふ、確かにそうね」
大人びた彼女が余裕そうに話す。また海面に映った自分を見つけてもう一度小石をぶつけた。そんなあたしの行動に何も言わず、ロビンは隣に立った。
何、って、不機嫌な声で尋ねればいいえ、何もなんて返してきて。こいつこそ、家の中はいりゃいいのに何でここに居んだよ。人のこと言えねーっつーの。
………でも、だからだと思う。こんな何考えてるかわかんない奴だからこそ、あんなことを言ったんだと思う。
「あんたはさ、愛されたことある?」
返事はない。ただ、隣で遠く水平線を眺めてるだけだった。
「あたしはあるんだ、愛されてたこと。でも、それが当たり前だって思って好き勝手してたら離れてった」
「………そう、あなたって贅沢者なのね」
がつん、ごりごりごり。胸の中の黒いものが後頭部に当たって、そこを抉るように捻じ込まれていく。正直、痛かった。でもロビンが言うことも事実なわけで、その事実からの逃げ場がどこにもなくて、ぺしゃんこに潰れそう。
ずっと逃げてきた。けどもう逃げ場なんてないから、そうだよなって返すしかなかった。違うって、言えなかった。だって愛されてたのは本当だから。それが、親が愛するのは当たり前だと思って、嫌われないなんて高を括って好き勝手して、結局見捨てられて。それを全部あいつらのせいにして逃げてた。
不意にほろっと雫が滴って、視界が曇る。あぁ、なんて情けない顔。小石をぶつける気力さえ沸かなかった。
いつの間にかロビンは消えていて、代わりに家から倒れてたモンブランのオッサンとその他猿たちの姿が見えた。急いで目元を擦り何事もなかったように振舞う。
「……ん?なんだ嬢ちゃん、こんなとこに居やがったのか」
「目、覚ましたんだな。よかった」
「あぁお陰様でな。しかしまぁ、結構きいたぜ?お前さんの蹴り」
「そりゃドーモ」
オッサンは図々しく隣に座ってガハガハ大笑い中。もう一発殴んぞテメェ、どっかいけ。怪訝そうに顔を歪めれば、オッサンも急に真剣な顔になって煙草吸い始めるからもう調子狂う。
「慣れてんのか」
「え、何が?」
「喧嘩」
「あー、まぁ。さすがに銃持ち出すくらいのはしたことねぇけど」
喧嘩か。こっち来てから殴られたりはしたけど殴ったのは久々だったかも。ゾロやらサンジやら、クルーはよく殴るけどな。
しばらくの沈黙が続いたあと、わしゃりと髪が音を立ててオッサンの大きな手に撫でられた。
「大事にしてやれよ、仲間を」
続けて、空島に行く説明すっからお前も来いと言って家付近にあるテーブルへ歩んでいった。
「………するに決まってんだろ」
意図は読めなかったけど、当たり前だ。………あたしの居場所はココしかねぇんだから。もう、あんなヘマはしない。じゃないと、また、
そよそよと、潮風が頬を撫でた。涙の筋が少しだけ、浮き上がった気がした。
22.愛とか、大切とか
(小僧、この嬢ちゃんを大切にな)
海面を覗けば情けなくて、まだ幼さが残る自分の顔が映った。引っ叩きたくなるくらいの情けない顔。近くの小石でもう一人のあたしを殴れば、規則的な波紋が広がって歪んだ。よかったよ、これで。どっちにしろあたしは死んでんだ、どうもこうもねぇよ。
「チンピラさん」
海に向かってぶーたれてるあたしに、ロビンが声を掛けてきた。顔を上げれば自分なんかよりもずっとずっと、大人びた顔立ちと目が合って苦しい。
「目を覚ましたみたいで皆中に入っちゃったけど」
「あんたがいるから皆じゃない」
「ふふ、確かにそうね」
大人びた彼女が余裕そうに話す。また海面に映った自分を見つけてもう一度小石をぶつけた。そんなあたしの行動に何も言わず、ロビンは隣に立った。
何、って、不機嫌な声で尋ねればいいえ、何もなんて返してきて。こいつこそ、家の中はいりゃいいのに何でここに居んだよ。人のこと言えねーっつーの。
………でも、だからだと思う。こんな何考えてるかわかんない奴だからこそ、あんなことを言ったんだと思う。
「あんたはさ、愛されたことある?」
返事はない。ただ、隣で遠く水平線を眺めてるだけだった。
「あたしはあるんだ、愛されてたこと。でも、それが当たり前だって思って好き勝手してたら離れてった」
「………そう、あなたって贅沢者なのね」
がつん、ごりごりごり。胸の中の黒いものが後頭部に当たって、そこを抉るように捻じ込まれていく。正直、痛かった。でもロビンが言うことも事実なわけで、その事実からの逃げ場がどこにもなくて、ぺしゃんこに潰れそう。
ずっと逃げてきた。けどもう逃げ場なんてないから、そうだよなって返すしかなかった。違うって、言えなかった。だって愛されてたのは本当だから。それが、親が愛するのは当たり前だと思って、嫌われないなんて高を括って好き勝手して、結局見捨てられて。それを全部あいつらのせいにして逃げてた。
不意にほろっと雫が滴って、視界が曇る。あぁ、なんて情けない顔。小石をぶつける気力さえ沸かなかった。
いつの間にかロビンは消えていて、代わりに家から倒れてたモンブランのオッサンとその他猿たちの姿が見えた。急いで目元を擦り何事もなかったように振舞う。
「……ん?なんだ嬢ちゃん、こんなとこに居やがったのか」
「目、覚ましたんだな。よかった」
「あぁお陰様でな。しかしまぁ、結構きいたぜ?お前さんの蹴り」
「そりゃドーモ」
オッサンは図々しく隣に座ってガハガハ大笑い中。もう一発殴んぞテメェ、どっかいけ。怪訝そうに顔を歪めれば、オッサンも急に真剣な顔になって煙草吸い始めるからもう調子狂う。
「慣れてんのか」
「え、何が?」
「喧嘩」
「あー、まぁ。さすがに銃持ち出すくらいのはしたことねぇけど」
喧嘩か。こっち来てから殴られたりはしたけど殴ったのは久々だったかも。ゾロやらサンジやら、クルーはよく殴るけどな。
しばらくの沈黙が続いたあと、わしゃりと髪が音を立ててオッサンの大きな手に撫でられた。
「大事にしてやれよ、仲間を」
続けて、空島に行く説明すっからお前も来いと言って家付近にあるテーブルへ歩んでいった。
「………するに決まってんだろ」
意図は読めなかったけど、当たり前だ。………あたしの居場所はココしかねぇんだから。もう、あんなヘマはしない。じゃないと、また、
そよそよと、潮風が頬を撫でた。涙の筋が少しだけ、浮き上がった気がした。
22.愛とか、大切とか
(小僧、この嬢ちゃんを大切にな)