Prologue
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夜だから暗くないといけない国道沿いは、怪しい店やら信号やら車のライトやらでキラキラ眩しく輝いていた。そんな眠らない街と呼ばれるココをあたしは一人、小さいショルダーを肩にかけて歩いていた。
さっき、友達と遊び終わって家に帰ると親が玄関前に立っていた。曰く、「もう帰ってこなくていい」らしい。なんの同情か知らないけど、100万をこのショルダーに入れて渡された。はなっから追い出されることに異論がなかったあたしは素直にソレを受け取って、帰ったばかりの家に背を向け今に至る。
ぶぅんぶぅんと、エンジン音が耳に障る。今日は風が強い日らしく、極限まで折って短くした制服のスカートをこんな時間でもバタバタと揺らしていた。
行く当てのない足は勝手に動いて、どこかへ向かっている。その行方なんてどうでもいいから、踏みしめる度にコツン、コツンと軽快なステップを踏むコンクリートを見つめながら、足の行く先に従っていた。
そんな時、目の先に靴が映った。2、4、6。もっといる。反射で顔を上げれば、少しボコっと腫れあがった顔が靴の数に比例していた。
「よォ、こないだは世話になったな」
「……誰だよ」
正直、この顔に見覚えなんてなかった。本当のことを述べただけなのにこいつらの耳には相当な暴言に聞こえたんだろう。こめかみに青筋が入るのが見えた。
「てんめぇ…!」
途端、胸倉を掴まれ持ち上げられる。ココは、眠らない街。だからあたしが歩いていた道に人はちらほら行きかっている。けどココではこんな喧嘩日常茶飯事で止める人なんて一人としていない。目が合っても見て見ぬふりをされるだけ。
こんな街にあたしを産み落としたのが運の尽きだよ、クソ親ども。内心あたしを捨てた親に自業自得だと吐き捨て、引っ張られるがままにこの男どもに付いていく。行く先は…路地か。
ズシャ、とゴミを捨てるみたいに放り投げられ制服は泥だらけに。もう学校なんて行かないから別にいいんだけど。投げ捨てた男は間髪入れずにあたしのみぞおちへつま先を勢いよく沈ませる。
「ぅ、お”ぇっ……!」
夜飯を食べていない身体は反射で胃液を地面に撒き散らした。でも、暴行が止むことはない。
「何が’誰’だ、ア”ァ!?女だからって調子こいてんじゃねぇぞコラァ!!」
知らないものは知らないんだから、仕方ねぇだろうが馬鹿野郎。けれども昼夜問わず喧嘩という粗行を繰り返してきたこの身、恨まれてても可笑しくはないだろう。こいつらの顔の腫れ具合から見て最近沈めた奴らなんだろうけど、如何せん顔が思い出せない。思い出そうとしても次々に迫る足や手に思考が一度真っ白になってリセットされる。その繰り返しだ。
「っらぁ!!!」
一人の男のつま先が鼻を強打した。瞬間、激痛と共にぬるりと肌を滑る感覚。次に繰り出されたつま先は丁度目の上を蹴り上げ、スパッと肉を裂いた。視界がどす黒い赤で塗りつくされ、視界が霞む。やべぇ、これ、ガチで死ぬかもしんない。冗談抜きでそう思った。
最後に映した光景は、誰だか顔も認識できないくらいに迫った、踵だった。
01.生きる必要のない世界で
(あたしは死んでいく)
さっき、友達と遊び終わって家に帰ると親が玄関前に立っていた。曰く、「もう帰ってこなくていい」らしい。なんの同情か知らないけど、100万をこのショルダーに入れて渡された。はなっから追い出されることに異論がなかったあたしは素直にソレを受け取って、帰ったばかりの家に背を向け今に至る。
ぶぅんぶぅんと、エンジン音が耳に障る。今日は風が強い日らしく、極限まで折って短くした制服のスカートをこんな時間でもバタバタと揺らしていた。
行く当てのない足は勝手に動いて、どこかへ向かっている。その行方なんてどうでもいいから、踏みしめる度にコツン、コツンと軽快なステップを踏むコンクリートを見つめながら、足の行く先に従っていた。
そんな時、目の先に靴が映った。2、4、6。もっといる。反射で顔を上げれば、少しボコっと腫れあがった顔が靴の数に比例していた。
「よォ、こないだは世話になったな」
「……誰だよ」
正直、この顔に見覚えなんてなかった。本当のことを述べただけなのにこいつらの耳には相当な暴言に聞こえたんだろう。こめかみに青筋が入るのが見えた。
「てんめぇ…!」
途端、胸倉を掴まれ持ち上げられる。ココは、眠らない街。だからあたしが歩いていた道に人はちらほら行きかっている。けどココではこんな喧嘩日常茶飯事で止める人なんて一人としていない。目が合っても見て見ぬふりをされるだけ。
こんな街にあたしを産み落としたのが運の尽きだよ、クソ親ども。内心あたしを捨てた親に自業自得だと吐き捨て、引っ張られるがままにこの男どもに付いていく。行く先は…路地か。
ズシャ、とゴミを捨てるみたいに放り投げられ制服は泥だらけに。もう学校なんて行かないから別にいいんだけど。投げ捨てた男は間髪入れずにあたしのみぞおちへつま先を勢いよく沈ませる。
「ぅ、お”ぇっ……!」
夜飯を食べていない身体は反射で胃液を地面に撒き散らした。でも、暴行が止むことはない。
「何が’誰’だ、ア”ァ!?女だからって調子こいてんじゃねぇぞコラァ!!」
知らないものは知らないんだから、仕方ねぇだろうが馬鹿野郎。けれども昼夜問わず喧嘩という粗行を繰り返してきたこの身、恨まれてても可笑しくはないだろう。こいつらの顔の腫れ具合から見て最近沈めた奴らなんだろうけど、如何せん顔が思い出せない。思い出そうとしても次々に迫る足や手に思考が一度真っ白になってリセットされる。その繰り返しだ。
「っらぁ!!!」
一人の男のつま先が鼻を強打した。瞬間、激痛と共にぬるりと肌を滑る感覚。次に繰り出されたつま先は丁度目の上を蹴り上げ、スパッと肉を裂いた。視界がどす黒い赤で塗りつくされ、視界が霞む。やべぇ、これ、ガチで死ぬかもしんない。冗談抜きでそう思った。
最後に映した光景は、誰だか顔も認識できないくらいに迫った、踵だった。
01.生きる必要のない世界で
(あたしは死んでいく)