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無自覚アブノーマル

カチャッ
「…ん?」
何処からかドアが開く音がして、本田は目を覚ました。
「悪い、起こしたか。」
「黒崎さん…?」
黒崎が玄関から入ってくるところだった。
片手に何か待っている。
「悪いが勝手にシャワーを借りたぞ。お前も髪がワックスでパリパリだったぞ。早く入れよ。あと、一応もう朝になっていたからこれ。」
リビングに入ってくると、何かをテーブルの上に置いた。
「パンと、コーヒー。」
どうやら先に起きてパン屋に買いに行ってくれたらしい。
コーヒーと焼き立てパンの良い香りが部屋に広がる。
「…あ…りがとうございます…。」
「うん。じゃ、俺はこれで」
「ま、待ってください!折角買ってきてくれたんですし、一緒に食べませんか?」
「…まぁ、そうだな。昨日がああで今日そのまま帰るのも、か…。でも俺、朝から血糖値上がると頭が痛くなるから、プロテインとかあるか?」
「…じじいか何なのか分からない生態ですね…」
気まずさを紛らわそうと半笑いで返した本田のコメントに、黒崎は鋭い視線を返す。
本田はうっと黙り、口を閉じた。
とりあえず本田は風呂に入り、黒崎にはプロテインを本田はパンとコーヒーを食べる事になった。
「今朝は身体大丈夫か?」
「はい。」
「黒崎さんも大丈夫ですか?朝早いですね?」
「うん。朝はやる事多いからな。」
「はは、モーニングルーティン、一時間とかかかる人ですか?」
(あ、まずい。軽口が過ぎたか?)
黒崎が黙りこちらを見つめるので、本田も黙ってコーヒーを飲んだ。
黒崎は目つきが鋭い分、ただ見つめられるだけでたじろいでしまう。
「…本田はタフだな。」
「え?」
「あんな後に割と普通だなと思って。」
「あぁ…はい…。昨日は、すみませんでした…。」
黒崎がこちらをじっと見つめて言うので、昨日の事が一気にフラッシュバックしてくる。
顔が赤くなり、俯いてしまった。
「ふっ」
笑われましたね。
黒崎がふっと笑う声がした。
頬が熱くなり、視線が泳ぐ。
「こちらもすまなかった。」
「…その事なんですが」
本田は意を決して本題に入った。
「黒崎さん、その…黒崎さんとの、すっっごく良かったです!」
「…そうか。」
恥を凌いで顔を上げると、本田の言葉に目を丸くした黒崎がいた。
その顔を見ると、少しだけ緊張が和らぐ。
イケメン鳩が豆鉄砲を喰らったような顔だ。おかしい。
「だから、その…」
(こんな優良物件、逃す手はない…っ!)
本田がワタワタと話を続けるのを、黒崎も何故かドギマギとして聞く。
「その…」
もう一言が、恥ずかしくて言えない。
心音がバクバクと煩くて、周囲の音がかき消される。
「こ」
「こ⁈」
本田の言葉に、黒崎が驚きの声をあげる。
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