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ヤンデレ後輩に頼るしかない話

「功、にこちゃんいたよ〜。」
「本当?」
「…」
腰が痛い。
そう言う事だ。
功の相手をするのも疲れるので階段の下に隠れていたが、静流によって引き摺り出された。
「おつかれー」
睨んで見上げると、静流がこそりと呟きニヤリと笑う。
(功に聞いたな…)
腹が立つが、抵抗もろくに出来ずに二子川はソファに座る功の膝の上に連れて行かれる。
「しずくん、にこちゃんどうしたの?元気ないの?」
「いやー、まー、大丈夫じゃない?そんな簡単に根を上げてたら、これから先が務まらないし。」
「?」
ソファの後ろにあるダイニングテーブルに座る柚木が心配そうにこちらをチラチラ見ながらパンを齧る。
(本当にいい奴だな、柚木…。あれ?寧ろ、柚木を仲間にすると、色々上手くいくのではないか?利害もこの変人達から逃れるで一致するし、柚木なら俺と全くと同じ状況だし…)
「……!」
「うわっ!どうしたのにこちゃん⁈」
二子川が急に膝の上で立ち上がるので、功がのんでいたコーヒーが溢れる。
しかし二子川はそんな事には構っていられなかった。
「うわー、びっくりー、どうしたの?にこちゃん?」
「にこちゃん?」
静流と柚木も驚いた声を上げ、こちらに視線を向ける。
「…あ」
そして静流は二子川の視線の先を追って、その理由に気づいたらしい。
驚いた顔で、小さく声を漏らした。
「柚木くん、その腕時計、いつもつけてるよね?」
「え?あ、…あぁ、うん。付けてるよ?」
柚木が付けている腕時計は、二子川の背を押して事故に遭わせた犯人のものと同じだった。
「でもこの前、仕事中に会った時は付けてなかったよね?」
「仕事中は、動物の毛が絡まるから、付けないんだ。ほら、えと、これ…大事なものだし、毎日付けてる…。」
「ふーん、毎日、か…。」
柚木の言い方は何処か引っかかる。
静流も気になったようで、考えるような素振りを見せる。
「…」
気づけば功もじっと、柚木の顔を見つめていた。
「…えと、ごめんね、しずくん。俺、これからまたバイトだから…、そらそろ…」
「…ん。分かった。車出すよ。」
結局、皆の視線から逃げるように柚木は部屋を後にした。
後に残された二子川は、功の膝の上でぼんやりと呆けてしまった。
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