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華川、自覚の瞬間

「いって…」
「あ、ごめん………」
「チッ…」
「…」

ぶつかってきたのはそっちだろ。
俺は自分を睨み付け去っていく山田の後ろ姿を、内心蹴り飛ばしたい衝動に駆られていた。
山田は人によって態度は変えるし、研修中も無駄に煩いグループで騒いでいた。正直あまり好きではない。
それが同じ部署に配属されて、自分へのあたりがやたら強い。
毎日がストレスだ。

「はー」

しかし幸い今日は金曜日で、セフレが来る日だ。
ストレス解消して土日を迎えよう。

————
「んっぁ…っ♡」
「…」

んー、なんだかなぁ。
セフレと行為中、やけに冷静な自分がいた。
なんだかスッキリしないし、モヤモヤする。
セフレの媚びた声が部屋に響いて、違和感は更に強まる。

「……ねー」
「んっ?なに♡?」

丁度バックだから、顔は見えない。
俺はある思いつきを実践してみよう思っていた。

「ちょっと、ハードめにしていい?」
「あは?ハード?いいよー♡」

俺はにこりと静かに笑った。
ゲイだけど、俺の見かけだと相手に困らない。
やり過ぎてこいつに逃げられても困らないしな。

パンッ

「…、うぁっ⁈」

相手の返事を皮切りに、俺は打って変わって強い律動に切り替える。
相手が思わず驚きの声を上げた。

「…ぁっ、ちょっ、ま…ぁ♡」

相手の言葉を無視して、ガツガツと打ちつける。

「待つわけないだろ。」
「んぁっっ♡‼︎」

仕置きとばかりにぎゅっと相手の自身を握る。
急所を掴まれて、相手がびっくりと跳ねた。
連動してぎゅっと穴が締まる。

「俺より先にいくなよ。我慢して。」
「んんっっ!♡」

無理な要求をして、ぐちゅぐちゅと相手の亀頭を刺激する。
”あいつ”にもこうしてやりたい。

「ぁっ♡、あ、あ、む、むりーっっ!♡」
「ふっ、無理なら絞めててあげるよ。」
「…ぁっ、♡」

指先で輪っかを作り、射精を堰き止める。
その一方で、前立腺を押し潰すように腰を動かした。

「んっ♡」

相手がぶるぶる震える。

「あっ、…♡やっ、前っ、…っ前でいきたい♡っ!」

そうそう。
こう言う感じだな。無理を強要して、ねじ伏せたい。
震える背中を見て、舌舐めずりしてしまう。
そう言えば、背中が似ているな。
思えば最近では、”あいつ”と似ている奴ばかりを選んでやっているな。

「んっぁ、…っあ、あ〜〜っ!」
「なに?中イキした?」
「んっ♡…あっ、ごめ…っっ」

でもなぁ、きっと本物は絶対にこんな媚びた声は出さない。
出してもきっと嫌々なんだろうな。
まぁ、今は仕方ないか。

「俺の許可なくいって、本当にダメな奴だね。罰が必要かな。」
「え♡…ぁ♡…」

相手の射精を堰き止めていた手を離し、今度はぐりぐりと先だけ刺激する。

「ん、んんっ〜〜っ!」

するとあっけなくいったようだ。
手に生暖かいものが垂れる。
これで滑りが更に良くなったな。
俺はなおも続ける。

「え?ちょ、…っ今僕いっ…っ⁉︎」
「何言ってるの?君がいきたいとか言うから、いかせてあげてるんでしょ?」
「う、うそっ、…ぁ、や、い゛、今はっっ、やめてって…っ‼︎」

相手も戸惑いの声をあげるが、無視して続けた。

「んん゛…っぁ゛」

震える背中を全身で押さえ込み、合わせて律動も強めで再開する。

「あー…きもちい…」

自分でも驚く。今迄にない位に興奮する。

君をこうやって追い詰めて、泣かせて、凌辱したい。

衝動のまま、俺はその背中に噛み付いた。

「ふっっっっ!やばっっ」

相手は程なくして潮を吹き、倒れ込む。
同時に俺も中で極めた。

「…はっ、」
「ハァッハァッ…」

五月蝿かった部屋が急にしずかになり、荒い息だけが響く。

「…ふ、ふふ」
「華川くん…」

妙な充足感に笑ってしまう。
そんな俺を見た相手が勘違いしてか、甘い声で俺の名前を呼んだ。

「キスさせてよ。山田」
「…………え?」
「あ」

しまった。と思った時にはもう遅い。
相手は惚けた顔からみるみる鬼の形相になり、怒鳴りちらして部屋を出て行った。

「はー、セフレじゃないのかよ。」

違ったらしい。
相手は本当に付き合っている気だったようだ。
そんなこと言われても、困るんだけど。

俺はぼやき、服を着ながらベランダに出た。

「…ふふ。」

自然と笑みが溢れる。
相手には悪いが、自分のやりたいことをが明白になり今は気分が良い。

「待っててね。山田。」

君を堕とす。
追い詰めて、最後は屈辱に顔を歪めながらも俺に媚びへつらう君にする。

夕陽がさすベランダで、俺は満足気な息を漏らした。
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