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ヤンデレ後輩に頼るしかない話

「なんて家だよ…」
功の家はまるで迷路の様に広く、何故か一階の全ての窓には鉄格子がハマっている。
「とりあえず…服だな。」
べちゃ…
「……いや、まずは…足を洗うか…」
功の精液が足を伝う。不快感が半端ない。もう数発、殴れば良かった。
そう考えながら扉を開けると、たまたま風呂場の扉を引き当てた。
入ると、それは広い屋敷に見合った大きな風呂場だった。浴槽も大きい。
(功は確かに金持ちだったけど…いちいち違和感を感じる家だな。)
一人暮らしでこの広い家に住んでいるのか。
もし同居人がいるなら、そちらにも気をつけないといけない。
二子川は神経が刻一刻とすり減るのを感じながら、手早く足を水で流した。
「よし、次こそ服…」
「にこちゃーん?」
(功⁈)
蛇口を止めたところで、功の声がした。
こちらを呼んでいる。
「ごめんねーにこちゃ〜ん!びっくりしちゃったかな…」
(びっくりどころじゃない!クソ野郎!)
二子川はギリギリと奥歯を噛み締める。もう何発かぶん殴りたいが、このままでまずい。
浴室の窓を覗くが、ここもやっぱり鉄格子付きだ。本当に変な家だ。
「にこちゃーん、仲直りしよ〜よ」
どんどん功の声が近づいてくる。
「にこちゃ〜ん?ふふ、にこちゃん、俺の精子垂らしながら歩いてるの?かっわいい〜!」
どうやら功のものが垂れていたらしい。
功は迷いなくこちらへ向かう。
(…や、やるか!)
二子川は脱衣所に出ると、功を迎え撃つべく風呂場にあったブラシ片手に構えた。
「…っ!」
その時、また身体にズキズキとした痛みが走る。
段々と痛みは強くなり、立っていられなくなる。堪らずどさりとその場に倒れ、意識が遠のいで行った。

———
また犬に戻っている。
規則性が分からない。

「にこちゃん、目が覚めた?」
気がつくと、功の膝の上に頭を乗せて寝ていた。
功に犬の姿をしているが二子川本人だとバレなくて良かったという気持ちと、また戻ってしまったという残念な気持ちが半々でしょんぼりだ。
そんな中、功がまた耳を触ってくるのが不快で身を竦めると首元に違和感があった。
「…」
また首輪が付けられている。
ため息をついて再び項垂れた。
「ふふふ、にこちゃん疲れちゃったかな?」
(お前のせいでな。)
くすくすと笑いながら、功は二子川の頭を撫でる。
撫で方がやけに粘っこくて気持ち悪い。
愛しい恋人への劣情を抱いて、堪らず触れる様な。
何となく功の自身、二子川の頭を置いている所が硬いようで気になる。
いやただ、ファスナー箇所だから硬いだけかも知れない。先程の事があるから過敏になってしまう。
「……にこちゃん、どうやって首輪外したの?」
頭を撫でていた功がポツリともらした。
「シャワーも浴びて…」
「…」
するすると功の手が首輪にかかる。
「まるで本当の人間みたいだね?」
急に首輪を引かれ、無理矢理に目線を合わせられる。
見上げた先の功はもう笑っていなかった。探る様に目を細めて、こちらをじっと見ている。
二子川の瞳孔が開き、動揺を隠したいのに瞳が揺れてしまう。
「…にこ先輩なの?」
「…」
こちらの一挙一動をも見逃さない様になのか、功は能面の様に無表情のまま続けた。
「にこ先輩、本当に先輩なら、『わん』って鳴いて。」
「…」
(…鳴いた方が…良いのか?)
病院をモニターしていたりと、今の功は何かしらの権力なり財力なり持っていそうだ。
(力には…なってくれるかも知れない。)
正直、心が揺らいだ。
「にこ先輩?」
(…でもダメだ。功の求める関係に…俺はなれないよ。)
二子川はふっと、功から目線を外した。
「……ふーん。」
そんな二子川を見て、功は口角を上げる。
(…な、何が?どういう「ふーん」?バレたのか?)
落ち込むかと思ったのに。二子川の予想に反して功は不敵に笑っていた。
肉球が汗でじっとりとする。
「分かった♡」
「…」
クスクスと不気味に笑い、功は犬二子川の鼻先にキスを落とした。
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