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ヤンデレ後輩に頼るしかない話

「…な、なんっ!」
功は怯む二子川を無視してかがみ込むとそのままキスをした。
学生時代の比ではない。歯列をそって舐め上げ、食べ尽くされそうな大人のキスだった。
「…ふっぁつ」
先程までの涙は何だったのか。
(え、な、なに?)
「面と向かって嫌いとか言われると、流石に腹立つし傷つくんですけど。はー…知ってた事だけど!」
「…」
「あんま苛々させないで下さいよ。」
功の二面性は知っていた。どこか一段高いところから他人をみる冷たい一面。
ただそれは今迄自分に向けられる事はなかった。
しかし今のこの冷たい声は、明らかにその一面だった。
「てかにこ先輩、俺に逆らえないですよ。だからさ、ほら。可愛いその足、さっさと開けって。最初だけは優しくしてやるから。」
今までの仮面をとぱっらった功は、口の端を歪ませて高圧的だった。
「お前、なに急に…」
「まー色々握ってんすけど、そうだな…にこ先輩のお父さんの面倒、今俺が見てるんですよ。」
「え…いや、おやじは」
(…おやじ…)
二子川の父親は病気だ。段々と忘れる、病気。
発症が早く、二子川は父親を支えるために高校時代からバイトずけだった。 
介護施設に入っているが、一年程度は二子川の預金引き落として賄えたはずだ。
「介護レベル上がって移転が必要でした。なのに、にこ先輩の預金もうすっからかんでしたから。」
「え。」
(まさか、ついに…)
病気の進行は止められない。
いつかはこうなると分かっていたが、犬になってしまった今は収入がない。
派遣の仕事も、掛け持ちのバイトも、無断欠勤中だ。
おまけに父親は、もう介護がないと生活がままならない。
「まぁ、俺にとっても、愛しい愛しい恋人のお父さんですし、手厚く面倒見るは全然苦じゃないですよ。寧ろ、何かしてあげれるの嬉しい位です。毎週会いに行って、話し相手にもなってますよ。お父さん、にこ先輩に似て良い方ですよね。毎度俺のこと忘れちゃうけど、それでも可愛い人です。あー、お義父さんと家族になるの楽しみ。」
「…何、勝手に」
(どこまで俺の生活を侵食しているんだ?)
底知れない、足元がぐらつく恐怖を感じる。
「あ?勝手じゃねーし。だってほら、にこ先輩は俺の恋人ですからね?てかもうそれ以上になりますしね。ね?そうでしょ?」
(何…言ってんだ…)
今迄見たことがない、目の据わった功が怖い。
二子川にとって功はただの後輩だった。男っぽくもなくて、常に自分が上の立場。
しかし今目の前にいるこの男は、もっと得体の知れないものだ。
「なりますよね?」
「…意味わかんねーし…」
功が更に高圧的に迫ってくる。
(大体、それ以上って、なんだよ…。)
「はぁー。そうですか。ただ、俺がにこ先輩の恋人じゃなくなったら、俺にとってにこ先輩のお父さんは恋人のお父さんからただの他人になりますね。」
「…」
「お父さん、今の状態で、一人で暮らしてけるかなー。」
言いたい事分かる。
功は脅しにかかっている。
「で、俺は、にこ先輩の、恋人、です。よね?」
「…」
「……はー、ま、別ににこ先輩の追い詰め方はまだありますよ。」
答えない二子川に更に腹を立てたらしい。
功の声は更に冷たくなった。
「その為に高校卒業後は色々準備してきたし。そうだな…にこ先輩は、俺の」
「うるさい…」
功がまた何か言うが、二子川がその声を遮った。
ぎ、ぎぎぎ
そして重たい扉が開くように、二子川はぎりぎりと足を開いた。
「…ふっ」
それを見て、功が勝ち誇った様に笑う。
「くそ野郎…っ!」
「ふふ、俺の恋人は口悪いなぁ〜。」
真っ赤な顔を歪ませ、差し出す様に開かれた二子川の体。
顔を僅かに腕で隠しながら睨む二子川を、功は軽口で流した。
先程よりは機嫌が良いらしく、嬉々として二子川へ手を伸ばす。
「ははは、後でお口も躾けましょうね〜。」
「…っ」
感触を楽しむように、功は二子川の尻を撫でた。
どくどくと恐怖で気が狂いそうだ。
(…ただ、ただ入れるだけ…さっきも、何やかんや入れられてたし…)
「感慨深いなぁ…」
功は二子川に再びキスを落とした。
(男だから、俺は何も失わないし…リスクもない)
ひたり、と功のものが押し当てられる。
「ふふふふ…怖い?」
「…ふっ」
ふるりと震えると、めざとく気づいた功が興奮気味に尋ねてくる。
「入れたら、写真撮りましょうね。あはっ、記念のハメ撮り!」
擦り当てられる妙な弾力と熱、ぬるつきが生々しい。
(いや、本当にそうか…?)
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