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ヤンデレ後輩に頼るしかない話

ぐっ
にゅ
…っ
「…あ゛!」
「良かった!目が覚めた!ニコ先輩っ!!お帰りなさいっ!」
目を開けると目の前にいた功が抱きついてくる。
状況が飲み込めない。
二子川は功にされるがまま固まった。
(見つかった…?え?犬、バレた?は?まず、何…)
「おま…何してんだ…」
「何って…にこ先輩とえっちしてます!」
血相を変える二子川に、功は歯を見せ満面の笑みで答えた。
裸の二子川はいつの間にか功のベットに仰向けで寝かせられ、足の間には功がいた。
ご丁寧にも二子川の背中にはクッションが入れられており、後ろにはすっぽり功のものが入っている。
「にこ先輩、意識っ、戻ったんですねっ!会えて嬉しいっ!何より、病院からでて直ぐにうちに来てくれるなんてっ、はぁっ、凄く嬉しい…!病院の人にここの場所聞いたんですか?」
「っ‼︎てか、…んっ!」
「ふー、にこ先輩…の中、キツくて気持ちいい…」
「うわぁぁぁっ!だからっ!っあ、…まっ、まず、ちょっ、止まれ‼︎」
どうやら病院から抜け出したと思っているらしい。
功は気持ち良さように息を切らしながら動き、キラキラとした笑顔のまま話しかけてくる。
(ふっざけんな!これってもはや睡姦だろがよ!こいつ、本当に最悪最低だなっ‼︎)
腹が立ち殴ろうと引いた手元がおかしい。
見上げると手錠がつけられてる。そしてその手錠がベットの下から伸びるベルトに繋がり、二子川の自由を奪う。
(くそっ、静流が、言ってたやつか…)
激昂してはいるが、こんな不利な状況で煽る事はしたくない。
「んっ、反応があるの…嬉しい…。」
「いやっ、だから、と、止まれって!」
「??…っ、おかしいな…。にこ先輩っ、意識ない時の方が感じるんですかね?」
「あぁ゛⁈」
咄嗟に睨むと、功がクスクスと笑いやっと動きを止めた。
「んー、反応するにこ先輩が愛おしい。…病院のベットでだけど…いっぱい愛し合ったじゃないですか〜!最近では、にこ先輩、ちょっとしたら直ぐに気持ち良さそうに出しちゃってたし。」
「おまっ!寝ている俺に何してんだ‼︎」
「ふふふ…」
功は意味深に笑う。
何をしているかなんて明白だからだろう。
三日月になる功の口と目が怖い。
「寂しかったよ…にこ先輩…寂しいかったぁ〜。やっと、会えて、こうやって…、にこ先輩…」
「…っ、だから、やめろって!痛いって!イヤダってっ!」
功はブツブツと呟き、また動き出す。
二子川はめちゃくちゃに暴れて抵抗した。
人間に戻ったばかりで、動きはギクシャクしているが構ってはいられない。 「あ〜!」
そうこうしていると、二子川が暴れた勢いでずるりと功のものが抜けた。
功が残念そうな声をあげる。
「はー、もう…我儘…可愛いけど、教えないとな。」
「う゛っ、」
功は徐にかがみ込み、何でもない様に二子川の首を掴んだ。
力は弱く、気道は塞がれないが圧迫感が怖い。絶妙な力加減だった。
「にこ先輩、大丈夫。にこ先輩がいい子なら、俺がにこ先輩を傷つけることなんて絶対にありません。」
「…ぅ…っぁ…」
人の首を締めて、場違いな程にこにこと功は笑う。
対する二子川は恐怖に竦んだ。
両手が塞がれているのだ。
ここで功がもう少しでも手に力を込めたら?
功は、自分を殺そうとした犯人かも知れないのに。
「…ふっ、にこ先輩、違う、違ういますから。大丈夫。」
慄いで黙る二子川に功はあやすように話し始めた。
「怖がらせたり、辛いことしたり、そんな事はしたくないんです。だから、聞いて下さい。」
「…っこ、」
「俺、親も含め、他人が全部、無機質な人形に見えてしまうんです。」
「あ?な、なんだよ急に…」
(だから、俺を殺すのも造作もないってか?)
不安になる。
怖くて見上げた功は、もう笑っていなかった。
真剣な様で、何処か苦しげでもある顔だった。
「だから他人に何か感情を抱く事はなかった。でもにこ先輩は違った。」
「?」
「にこ先輩だけはあの人と同じ…。にこ先輩は俺がこの世界で会った、たった一人の俺の恋人…」
「は?いやいや、最後の最後で飛躍が酷過ぎるだろ!」
真剣な功には悪いが、冷静にツッコんでしまった。
前半の他人の話は、功がよく他人に見せる冷たい一面から、何故かすんなり腹落ちしたが…。
後半にかけての話の展開が狂っている。
「だって俺、にこ先輩にしか、興奮出来ないんです…!」
そんな二子川に功はしごく真剣だった。
「こ、興奮って…俺はお前で興奮出来ないんだよっ!…あ、だから、なんか…ごめんけど…。」
気を抜くと怒りで大声をあげてしまう。
二子川は努めて冷静に、優しく功に諭した。
「何で…何で何ですか、にこ先輩…!今なら学生時代とは違って、俺も色々してあげれるのに…っ、俺っ、にこ先輩の欲しいものはなんでも買ってあげられるし、ずっと側にいてあげれます。行きたい所も、何処でも連れていってあげれる…お、お金も、昔の比じゃない程持ってます…っ、だからっ」
功の大きな瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちた。
「一人にしないで。にこ先輩…お願い…俺を受け入れて下さい…っ」
そしてぐすぐすと、子供みたいに泣き出し二子川に抱きつく。
「…功…」
(うん。ごめん無理…)
そもそも無理。
行為なしを前提に恋人になるにしても…やっぱり無理だ。
どう考えを巡らせても、ノーマルに生きたい。
無理だ。
「功、ごめん。それでも俺には無理。」
「…」
「に、にこ先輩…じゃ、最後に…思い出だけ…。やっと会えて、嬉しいんです…。ずっと、会いたかった…」
はっきりと断るが、功は尚も縋るように泣きながら続けたい。
「うん。でも無理。」
「にこ先輩…」
「無理。離せ。しつこい。そゆとこ嫌い。」
「……」
「功?」
功は涙を流しながらピタリと固まった。
じっと、時が止まった様に二子川を見つめる。
茶色い双眼が何を考えているのか、表情からは読めない。
「だから、離せって、こ…」
「あ゛ーーーも‼︎」
「‼︎」
動かない功に声をかけていたが、次の瞬間、功は急にドスの効いた声をあげる。
二子川は思わずびくりと竦んでしまった。
功は苛立った様にガシガシと頭をかく。
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