ヤンデレ後輩に頼るしかない話
「ぶっかけられたじゃないですか?」
「いや。確かに毎日何かしらかけられるけど、かけられても変わらない日もあるからな。」
「…毎日かけられてるんだ…」
静流に引かれると、普通の奴に引かれる数百倍腹が立つ。
二子川はぬけぬけと呆れ顔をする静流を睨んだ。
「しかし犬から人間に戻る規則性は早く割り出したいですよね。」
「そうだな。」
数日ぶりに再び人間になれた二子川は、静流と自分の体の変化の規則性について議論していた。
しかしいくら考えても分からず、二人揃って首を捻るばかりだ。
「ゆずくんなら、もっと詳しく見れるかもですねぇ…。あ、因みに、明日はゆずくんが泊まりに来る日なので、人間に戻っても何になっても、邪魔しないで下さいね。」
「は?くるなら柚木に相談させろよ。…てか柚木は、ここにもう住むのか?」
自分のせいで静流に逆らえない柚木を案じ、二子川は心配気に探りを入れる。
「そうですね。丁度あと二週間ですね。退職を伝えても今の職場を直ぐにはやめられないらしいので。」
(柚木、やっぱり仕事は辞めさせらたのか。)
「でも、同棲前のドキドキって良いですよね〜。この前一緒に家具とか、そうそう、ベット見に行きましたよ!」
「…そうか」
「全部ゆずくんの好きにして良いのに、元気がないから景気づけに家具屋のトイレでー」
「分かった。もういい。」
二子川はらしくなく頬を紅潮させ、ペラペラと早口に喋る静流を冷めた目で止める。
「静流。それと…前に俺の事故は事件生があるって言っていたけど、それはなんなんだ?」
「あぁ、はい。これです。先輩が事故に遭った時の防犯カメラの写真なんでけど。功も色々と調べていて。それで、この写真見て貰うと分かります。」
静流が取り出したのは三枚の写真だった。
一枚目は信号待ちする二子川。
二枚目は道に飛び出す二子川と、それに向かってくるトラック。
三枚目は二子川の背を押す誰かの手。人混みで相手の顔は見えず、腕しか見えない。
「にこ先輩、事故に遭う直前の記憶がないって言いましたよね?このにこ先輩を押した人物にも心当たりはないのでしょうか?」
「あぁ、ない。…ただ、この腕時計は功に取られたやつだ。」
三枚目の二子川を押している人物。顔は見えないが、腕時計が見える。
それは高校を卒業する時に、功がしつこく双子川のものを欲しいと言われてあげたものだ。
「…え?にこ先輩、功を疑ってます?」
静流が驚いた顔で聞いてくる。
「それはないですよ!功はにこ先輩とやる為に生きてますし。」
「…きめぇ」
静流が焦った様に謎の弁解をしてくる。
「その為に功のベット手錠付きですし。」
「は?それ…え?な、何用だよ?」
「何用って、逆に何すか。ウブですか。」
静流が馬鹿にしたように鼻で笑う。
「いや、お前、それは頭おかしくない?」
「にこ先輩が期待させるだけさせて逃げるから、あいつ溜まりに溜まってるんですよ。」
「いやいや!それでも狂ってるだろ!」
「散々煽って逃げた分、その時は楽しみですねー。頑張って下さいね♡」
「お前…」
「そもそも、自分の犯行写真なら残さないですよね?これ。」
話に飽きたのか、静流が話を元に戻した。
静流がトンッと三枚目の写真を指で指す。
(確かに…)
しかし誰も功の考えは分からない。
二子川が思うに、功はかなり常識人とはズレている。
「功に会って、直接聴きたい。」
「え?犬になっている事も言うんですか?」
二子川が意を決して言った言葉に、静流は目を丸くする。
「それはばらさないよ。何かされた時、犬だと敵わないからな。」
———-
ピンポーン…
「柚木くん。ようこそ〜。」
「柚木〜、久しぶり。」
「うん…功くんも…久しぶり…」
既に顔が青ざめ震える柚木を、静流が満面の笑みで出迎える。
功もリビングからおざなりにではあるが、声をかけて迎え入れた。
静流は柚木の荷物を自然な動作で受け取り、さりげなく腰に手を回してエスコートする。その動きはスマートそのものだ。
「じゃ、部屋に行こっか〜」
「…え…その……も、もう?」
しかしそっちにまっしぐら過ぎて、そのスマートさが下衆に見える。
「ははは、静流がっつき過ぎ!」
部屋に誘われた柚木の抵抗を功が笑った。
静流は柚木の小さな抵抗に一瞬固まるが、次の瞬間にはまた笑った。
「そうだね。沢山水分取って行ったほうが良いもんね。今日は時間の縛りも無いから、カラッカラになるまでしてあげるね♡」
「えぇ⁈…あ、ごめん…しずくん!っごめ…」
柚木が先程よりも更に青い顔であやまるが、静流は「どうしたの急に?」なんて笑っている。
(哀れ柚木。)
「…!にこちゃん!」
「!」
手を引かれ鬱々とリビングに入ってきた柚木が、功の膝の上に座らされている二子川をみて声を上げた。
二子川に会えた事が余程嬉しいのか、パァァアと効果音が聞こえてきそうな勢いで微笑んで近づいてくる。
「にこちゃん、元気だった?」
「わん。」
柚木はいい奴だ。
思わず愛想良く吠える。
「ちょっと肉付きも良くなってきて…」
「柚木。やめてくれる?」
「…あ」
柚木が二子川へ伸ばした手を功が制す。
功の顔は緩く笑っているが、棘のある物言いだった。
「まーまー、柚木くん、にこちゃんはまた後で触ればいいじゃん。飲み物冷たいのと温かいのどっちにする?」
思いの外強めに柚木を牽制する功に、静流は直ぐに不穏なものを察知して止めに入った。
柚木は半ば強制的に功と二子川から離れた場所に座らされる。
そこから二子川達を観察するようにじーっと見つめてくる。
静流が虐待とかいうから気にしているのだろう。
「功くん。にこちゃんって…功くんが付けた名前?」
「そう。ぴったりで可愛いでしょ?」
「…うん。そうだね…。そうなんだ。」
柚木の問いかけに功が満足気に頷き、柚木はまたじっとこちらを見つめてくる。
(何だ?)
柚木の何処か含みのある視線に、二子川は首を傾げた。
「いや。確かに毎日何かしらかけられるけど、かけられても変わらない日もあるからな。」
「…毎日かけられてるんだ…」
静流に引かれると、普通の奴に引かれる数百倍腹が立つ。
二子川はぬけぬけと呆れ顔をする静流を睨んだ。
「しかし犬から人間に戻る規則性は早く割り出したいですよね。」
「そうだな。」
数日ぶりに再び人間になれた二子川は、静流と自分の体の変化の規則性について議論していた。
しかしいくら考えても分からず、二人揃って首を捻るばかりだ。
「ゆずくんなら、もっと詳しく見れるかもですねぇ…。あ、因みに、明日はゆずくんが泊まりに来る日なので、人間に戻っても何になっても、邪魔しないで下さいね。」
「は?くるなら柚木に相談させろよ。…てか柚木は、ここにもう住むのか?」
自分のせいで静流に逆らえない柚木を案じ、二子川は心配気に探りを入れる。
「そうですね。丁度あと二週間ですね。退職を伝えても今の職場を直ぐにはやめられないらしいので。」
(柚木、やっぱり仕事は辞めさせらたのか。)
「でも、同棲前のドキドキって良いですよね〜。この前一緒に家具とか、そうそう、ベット見に行きましたよ!」
「…そうか」
「全部ゆずくんの好きにして良いのに、元気がないから景気づけに家具屋のトイレでー」
「分かった。もういい。」
二子川はらしくなく頬を紅潮させ、ペラペラと早口に喋る静流を冷めた目で止める。
「静流。それと…前に俺の事故は事件生があるって言っていたけど、それはなんなんだ?」
「あぁ、はい。これです。先輩が事故に遭った時の防犯カメラの写真なんでけど。功も色々と調べていて。それで、この写真見て貰うと分かります。」
静流が取り出したのは三枚の写真だった。
一枚目は信号待ちする二子川。
二枚目は道に飛び出す二子川と、それに向かってくるトラック。
三枚目は二子川の背を押す誰かの手。人混みで相手の顔は見えず、腕しか見えない。
「にこ先輩、事故に遭う直前の記憶がないって言いましたよね?このにこ先輩を押した人物にも心当たりはないのでしょうか?」
「あぁ、ない。…ただ、この腕時計は功に取られたやつだ。」
三枚目の二子川を押している人物。顔は見えないが、腕時計が見える。
それは高校を卒業する時に、功がしつこく双子川のものを欲しいと言われてあげたものだ。
「…え?にこ先輩、功を疑ってます?」
静流が驚いた顔で聞いてくる。
「それはないですよ!功はにこ先輩とやる為に生きてますし。」
「…きめぇ」
静流が焦った様に謎の弁解をしてくる。
「その為に功のベット手錠付きですし。」
「は?それ…え?な、何用だよ?」
「何用って、逆に何すか。ウブですか。」
静流が馬鹿にしたように鼻で笑う。
「いや、お前、それは頭おかしくない?」
「にこ先輩が期待させるだけさせて逃げるから、あいつ溜まりに溜まってるんですよ。」
「いやいや!それでも狂ってるだろ!」
「散々煽って逃げた分、その時は楽しみですねー。頑張って下さいね♡」
「お前…」
「そもそも、自分の犯行写真なら残さないですよね?これ。」
話に飽きたのか、静流が話を元に戻した。
静流がトンッと三枚目の写真を指で指す。
(確かに…)
しかし誰も功の考えは分からない。
二子川が思うに、功はかなり常識人とはズレている。
「功に会って、直接聴きたい。」
「え?犬になっている事も言うんですか?」
二子川が意を決して言った言葉に、静流は目を丸くする。
「それはばらさないよ。何かされた時、犬だと敵わないからな。」
———-
ピンポーン…
「柚木くん。ようこそ〜。」
「柚木〜、久しぶり。」
「うん…功くんも…久しぶり…」
既に顔が青ざめ震える柚木を、静流が満面の笑みで出迎える。
功もリビングからおざなりにではあるが、声をかけて迎え入れた。
静流は柚木の荷物を自然な動作で受け取り、さりげなく腰に手を回してエスコートする。その動きはスマートそのものだ。
「じゃ、部屋に行こっか〜」
「…え…その……も、もう?」
しかしそっちにまっしぐら過ぎて、そのスマートさが下衆に見える。
「ははは、静流がっつき過ぎ!」
部屋に誘われた柚木の抵抗を功が笑った。
静流は柚木の小さな抵抗に一瞬固まるが、次の瞬間にはまた笑った。
「そうだね。沢山水分取って行ったほうが良いもんね。今日は時間の縛りも無いから、カラッカラになるまでしてあげるね♡」
「えぇ⁈…あ、ごめん…しずくん!っごめ…」
柚木が先程よりも更に青い顔であやまるが、静流は「どうしたの急に?」なんて笑っている。
(哀れ柚木。)
「…!にこちゃん!」
「!」
手を引かれ鬱々とリビングに入ってきた柚木が、功の膝の上に座らされている二子川をみて声を上げた。
二子川に会えた事が余程嬉しいのか、パァァアと効果音が聞こえてきそうな勢いで微笑んで近づいてくる。
「にこちゃん、元気だった?」
「わん。」
柚木はいい奴だ。
思わず愛想良く吠える。
「ちょっと肉付きも良くなってきて…」
「柚木。やめてくれる?」
「…あ」
柚木が二子川へ伸ばした手を功が制す。
功の顔は緩く笑っているが、棘のある物言いだった。
「まーまー、柚木くん、にこちゃんはまた後で触ればいいじゃん。飲み物冷たいのと温かいのどっちにする?」
思いの外強めに柚木を牽制する功に、静流は直ぐに不穏なものを察知して止めに入った。
柚木は半ば強制的に功と二子川から離れた場所に座らされる。
そこから二子川達を観察するようにじーっと見つめてくる。
静流が虐待とかいうから気にしているのだろう。
「功くん。にこちゃんって…功くんが付けた名前?」
「そう。ぴったりで可愛いでしょ?」
「…うん。そうだね…。そうなんだ。」
柚木の問いかけに功が満足気に頷き、柚木はまたじっとこちらを見つめてくる。
(何だ?)
柚木の何処か含みのある視線に、二子川は首を傾げた。