逃亡、不可
「…あっ、き、鬼頭さん…な、なに、これ…。」
頭が少しづつ現実を認識し始めてきて、自分のベルトを締めている鬼頭に恐る恐る聞いてみる。
しかし鬼頭はこちらをチラリと見るだけで、また自分の手元に視線を下ろしなにも答えない。
「久世」
「はい…」
「高いところは平気か?」
「え?いえ…、高所苦手です。高所恐怖症です。」
「ちっ、面倒くせーな。…ま、いいけど。」
他に話すべき事はある。
しかし現実についていけず、謎の質問に正直に答えてしまった。
答えさせたわりに、鬼頭は鬼頭で感心なさげに相槌を打つ。
「おら。さっさとパンツ履け。」
「…あ、はい…。」
「…。」
「………いや、ちげーだろっ!」
思わず流されて渡されたパンツを取ろうとして、その手を叩き落とした。
でも一応、パンツは奪って…あ、パンツ。待って待って待って…!
どさくさで奪おうとしたパンツが引かれた。
「何しやが…る…す、すみません。えと、…何するんですか!」
仕方なく下半身を手で隠して怒鳴ると、鬼頭の鋭い視線が刺さる。
こっわい、ご尊顔。
その視線にビビって、声も勢いも尻すぼみになってしまった。
「こんな事、セクハラどころじゃないですよ。」
「…。」
しかし鬼頭は表情一つ変えずに、じりじりとこちらにも寄ってくる。
じっとこちらを見据える目が怖い。
「だから、なんで…」
「座れ。」
「はぁ⁈馬鹿にしっ…ぁ」
また…赤く…。
鬼頭の目が再び赤くなった。どう言う事だ?外のライトに照らされたからか?ビルの25階で?
戸惑いが解決する間も無く、気がつけば体が勝手に動きその場にペタンと座り込んでしまった。
「なに?…え、これ、な」
「口を閉じろ。」
「…ん!」
今度は口が開かない。
頭では声を出せと命令しているのに、操り人形になったように身体の自由が効かなかった。
言い知れぬ恐怖でオロオロとしてしまう。
「ん゛!」
いだい゛!
踏まれた。
キョロキョロしている間に、気がつくと鬼頭がまた音もなく近寄っていた。そしてその足で久世のものを踏む。
力を入れられたのは一瞬だが、痛みはジンジンと後を引く。冷や汗が垂れた。
「何でこうなったか教えてやろうか?」
「…。」
何の話?
下の痛みに全神経が持っていかれていたが、何故か知りたくて鬼頭を見上げた。
血のように赤い目と目が合う。
赤い目の鬼頭も、この状況も、全てが異様だ。
「お前、仕事中に煩いんだよ。」
馬鹿にしたように鬼頭は笑っていた。
「煩過ぎる。仕事中も、俺が何を言っても、俺が怒っても、俺が何しても、頭の中は女とやることばっか。」
「っ!」
しかし鬼頭は明らかに怯えて震える久世を無視して続けた。
ぐりっと再び踏み込まれて、身体がびくりと跳ねた。
痛いし、怖い。
「そんな色欲ばっかりだから、俺が直々に相手してやったんだよ。」
「いだぁっっ!」
あ、声でた。
一際強く踏まれて叫ぶと声が出た。
「何言ってるんですか⁈大体、俺が仕事中に何考えているかなんて、鬼頭さんに分かるわけ…」
「分かるんだよな、これが。」
何を言っているんだ。
大体女とやる事ばっかり仕事中も考えているって…。
そんなわけないだろ!馬鹿にしてんのか!
…とは言えません。考えてます。四六時中。
でも、何故自分の頭の中を鬼頭が知っている?
「俺、悪魔なんだ。」
「え?あ、あく…あくま?」
「あと、久世。今日から俺はお前を飼うことにした。」
「…か、かう?」
馬鹿みたいに片言で言葉を繰り返す久世を、鬼頭が鼻で笑った。
頭が少しづつ現実を認識し始めてきて、自分のベルトを締めている鬼頭に恐る恐る聞いてみる。
しかし鬼頭はこちらをチラリと見るだけで、また自分の手元に視線を下ろしなにも答えない。
「久世」
「はい…」
「高いところは平気か?」
「え?いえ…、高所苦手です。高所恐怖症です。」
「ちっ、面倒くせーな。…ま、いいけど。」
他に話すべき事はある。
しかし現実についていけず、謎の質問に正直に答えてしまった。
答えさせたわりに、鬼頭は鬼頭で感心なさげに相槌を打つ。
「おら。さっさとパンツ履け。」
「…あ、はい…。」
「…。」
「………いや、ちげーだろっ!」
思わず流されて渡されたパンツを取ろうとして、その手を叩き落とした。
でも一応、パンツは奪って…あ、パンツ。待って待って待って…!
どさくさで奪おうとしたパンツが引かれた。
「何しやが…る…す、すみません。えと、…何するんですか!」
仕方なく下半身を手で隠して怒鳴ると、鬼頭の鋭い視線が刺さる。
こっわい、ご尊顔。
その視線にビビって、声も勢いも尻すぼみになってしまった。
「こんな事、セクハラどころじゃないですよ。」
「…。」
しかし鬼頭は表情一つ変えずに、じりじりとこちらにも寄ってくる。
じっとこちらを見据える目が怖い。
「だから、なんで…」
「座れ。」
「はぁ⁈馬鹿にしっ…ぁ」
また…赤く…。
鬼頭の目が再び赤くなった。どう言う事だ?外のライトに照らされたからか?ビルの25階で?
戸惑いが解決する間も無く、気がつけば体が勝手に動きその場にペタンと座り込んでしまった。
「なに?…え、これ、な」
「口を閉じろ。」
「…ん!」
今度は口が開かない。
頭では声を出せと命令しているのに、操り人形になったように身体の自由が効かなかった。
言い知れぬ恐怖でオロオロとしてしまう。
「ん゛!」
いだい゛!
踏まれた。
キョロキョロしている間に、気がつくと鬼頭がまた音もなく近寄っていた。そしてその足で久世のものを踏む。
力を入れられたのは一瞬だが、痛みはジンジンと後を引く。冷や汗が垂れた。
「何でこうなったか教えてやろうか?」
「…。」
何の話?
下の痛みに全神経が持っていかれていたが、何故か知りたくて鬼頭を見上げた。
血のように赤い目と目が合う。
赤い目の鬼頭も、この状況も、全てが異様だ。
「お前、仕事中に煩いんだよ。」
馬鹿にしたように鬼頭は笑っていた。
「煩過ぎる。仕事中も、俺が何を言っても、俺が怒っても、俺が何しても、頭の中は女とやることばっか。」
「っ!」
しかし鬼頭は明らかに怯えて震える久世を無視して続けた。
ぐりっと再び踏み込まれて、身体がびくりと跳ねた。
痛いし、怖い。
「そんな色欲ばっかりだから、俺が直々に相手してやったんだよ。」
「いだぁっっ!」
あ、声でた。
一際強く踏まれて叫ぶと声が出た。
「何言ってるんですか⁈大体、俺が仕事中に何考えているかなんて、鬼頭さんに分かるわけ…」
「分かるんだよな、これが。」
何を言っているんだ。
大体女とやる事ばっかり仕事中も考えているって…。
そんなわけないだろ!馬鹿にしてんのか!
…とは言えません。考えてます。四六時中。
でも、何故自分の頭の中を鬼頭が知っている?
「俺、悪魔なんだ。」
「え?あ、あく…あくま?」
「あと、久世。今日から俺はお前を飼うことにした。」
「…か、かう?」
馬鹿みたいに片言で言葉を繰り返す久世を、鬼頭が鼻で笑った。