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無自覚アブノーマル

「本田、目の下くま出来てない?」
会社の昼休み、トイレで歯を磨いているといつの間に居たのか、同僚の深谷に声をかけられた。
「いやねーよ。てか話しかけるな。」
「えー、心配してんのによー。」
深谷は馴れ馴れしく自分の肩に腕を回す。
黒崎と営業に行った後、専門店に行ったのに全然スッキリしない。その為ここ連日、溜まりに溜まっている。
まぁでも、黒崎のあの様子だと、これ以上何かされる訳でもなさそうだ。
よしとすべきなんだろう。
こちらも忘れないと。忘れて、日常に戻らないと…。
「それって、黒崎さんのせい?」
「…は?」
思わず歯ブラシを落としそうになる。
目を丸くして深谷を見返した。
深谷は本田の視線を受け、笑みを深くした。
「…え、嘘…な、なん…、み、見たのか…?」
「…ははっ、そうそう!見ちゃった!」
大きな目を爛々とさせ、ニカっと笑う深谷に本田は顔を青くした。
「さて本田。今度は俺と仲良くしような。…なっ?」
「…。」
深谷はぐいぐいと、本田を強引に引き寄せた。

———
「本田の家やっと入れたし!お前、渋り過ぎ。」
「…。」
「おー、本田布団派なんだ!本田の布団!良い匂いー!」
こいつこんなキャラだったか?
深谷は何処となく高揚した様子で、部屋の隅に出しっぱなしになっていた本田の布団の上に転がる。
正直、嫌だ。スーツのまま布団に乗るな。
しかしどういう魂胆なんだ?
あの後、何度か二人で呑もうと誘われた。
「じゃ、乾杯しよっか!」
「そうだな。」
相変わらず布団の上に陣取り、深谷は本田を手招きした。
仲良くって…そんなに自分と酒を飲みたかったのか?
まぁ、そんな事で済むならいくらでも我慢してやってやる。
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