無自覚アブノーマル
「案外普通ですね。」
横を歩く黒崎に話しかけた。
「そりゃ入れただけだからな。」
展示会は同業界の様々なメーカーが一堂に会し、自社製品の説明をする展覧会だ。
会場はオフィス街のイベント会場。
駅から距離がある為、結構歩く。
「黒崎さんの服、ヒヤヒヤして着る必要もなかったなーあんなのまで入れられて…」
本田は黒崎のパンツとセーターを着ている。
本田が着るとスタイルの違いで、黒崎のセーターはオーバーサイズニットになり程よく前は隠れた。
しかし服を汚すなと脅されて、また尿道プラグまで入れられた。
後ろのローターよりも、そちらの方が100倍気になる。
「全然よゆー…ひっ!」
会場に着いて受付の列に並びながら軽口を叩いていると、カチリと音がして黒崎がポケットの中のリモンを押した。
その途端、中にあるローターが振動を始める。
ぶわりと忘れていた快感が押し寄せて、思わずよろけた。
「…ぇ、あ…っ?」
「よゆー?」
目を白黒させ戸惑う本田を黒崎が笑う。
意地の悪い笑顔だ。
付き合ってやっている体だったくせに、ノリノリじゃないか!
ローターは黒崎がいれたが、きっちり前立腺の上に設置されていたようだ。
ピンポイントで弱いところをぐりぐりと突かれ、腰が砕けそう。
「やめっ、ちょっ、…っ一旦、」
ここまでとは思わなかった。
考えれば、アブノーマルへの完落ちを防ぐ為に玩具の類は試していない。
だからたかが玩具と舐めていた事もあり、この快感は想像以上だった。
止めようと黒崎の腕に掴み掛かろうとするも、軽く避けられた。
「本田、周りにバレるぞ」
そして本田の体を支えるフリをして、耳打ちされる。
(確かにっ)
はっとして、口を押さえた。
キョロキョロとしてみるが、幸いまだ周囲には気づかれてはいない。
「やめっ、…っ!」
「本田、顔が赤いな?大丈夫か?」
早々に勃ってしまった。
そんな事既に気づいているくせに、黒崎は心配そうな声色で本田の背をさする。
「因みに、服、伸ばすとか汚すとかしたらペナルティだからな。」
どさくさに紛れ、きっちりと追い込みもかけてくる。
「ちょっと、こんな不意打ちっ…っ!やめろっ……っ!」
「はは、お前、立場分かってる?」
黒崎はおもしろくて仕方ないと言う顔だ。
意地悪な顔。
「…っ黒崎さん、顔が子悪党ですね…」
「…」
黒崎の言い方が気に食わなかった。
カッとなって憎まれ口を叩くと、黒崎はぴくりと片眉を上げる。
くるりとこちらを振り返り、無言のままポケットからリモコンを取り出すと、本田にだけ見えるようにチラチラとふった。
「?」
黒崎は終始真顔なので、意図が読めない。
「!」
明らかに疑問符を浮かべる本田を見て、にっと黒崎の口角が上がったと思った瞬間だった。
「……あ!っ!…あ、すみまっ!」
キリキリとメモリを上げられる。
堪らず前屈みでよろける。
「〜〜〜‼︎」
支えようと足をついた時、一際締め付けてしまって軽くいってしまう。
「本田来てたの⁈いや、それより…黒崎さんもいらっしゃっていたのですね‼︎」
声をかけられて振り返ると、会社の女性先輩がいた。昔お世話になった先輩だ。
黒崎は会社で密かに人気があるから、黒崎と話せる機会だと思って来たのだろう。
「こんにちは。来場者の反応はどうかな?」
「んー、そこそこ質問もされてますよ!でも、あの競合他社の…」
黒崎は会社の時の様に淡々と話す。
先輩は先輩で、黒崎に釘付けだ。
流石に本田の中に入っているスイッチは切られたので、ホッと一息つく。
(…あんまり、よくなかった。)
興奮すると思ったけど、やってみたら違うかも。
大体、日常の中に変態行為を持ち出さない為に黒崎とやってんのに、これじゃ意味なくない?
(今のうちにこっそりトイレで抜こう。二重の意味でぬこう…。)
「恭ちゃんじゃーん!」
「…え」
こそこそとその場を離れようとした時だった。
聴き慣れた高めの可愛い声。
振り向くと京香(きょうか)がいた。元カノだ。
ちょっと地味な雰囲気もあるが、本田はそこに安心感を感じて好きだった。
今見ても、やっぱり好みだ。
「…ぁ、久しぶり。」
因みに別れた原因は京香の浮気だ。
深谷が何か仕掛けたとはいえ、そんな別れ方をしたので話しかけられたのは意外だった。
京香はニコニコと笑うが、本田の方が妙に緊張していた。
「本当。前は結構一緒にいたから、久しぶりだね。…あの時は…ごめんね?」
にこりと笑う。
可愛い!ぎゅっとしたい!
本田は無意識のうちに頬が赤くなった。
頭の片隅ではこの期に及んでニコニコ笑うなと腹も立つが、その笑顔は可愛いと思ってしまう。
最近は深谷とか黒崎とかむさい男ばかりに囲まれていたから、尚更ドキドキしてしまう。
「久しぶりだね。そっか、京香、企画開発部に移動したんだったな。」
「うん。恭ちゃんは?まだ営業部?ちゃんと成績出せてる?」
「…」
ふっと小馬鹿にした様に笑われる。
京香は可愛いけど、毎度上から目線だ。
懐かしい。
「あれー?てか、今日はいい服着てるね?私が教えてあげなくても、そこそこお洒落に着れるようになった?」
「…うん。京香、色々、服もアドバイスくれたもんな。」
「ふふ…。ていうか、」
「本田。」
「「!」」
京香がまた何かを言いかけた時、急に肩を引かれた。
「何してる。」
どきりとする。そうだ。黒崎もいた。
何故か黒崎の方に体を引かれ、肩を組まれた。
(まさか…ここでローターのスイッチ入れたりしないよな?)
自分の性癖はあれど、京香にだけはもうこれ以上痴態を晒したくない。
でも黒崎は京香と自分の関係なんて…知らないよな?
本田の体は緊張で強ばる。
それを黒崎がチラリと見たのが、気配で分かった。
「…あ、く、黒崎さん…。」
そんな本田の緊張には全く気づかず、京香が小さく漏らした。
京香も黒崎が好きらしい。
急に出てきた黒崎に、ソワソワと上目遣いで頬を染めている。
横を歩く黒崎に話しかけた。
「そりゃ入れただけだからな。」
展示会は同業界の様々なメーカーが一堂に会し、自社製品の説明をする展覧会だ。
会場はオフィス街のイベント会場。
駅から距離がある為、結構歩く。
「黒崎さんの服、ヒヤヒヤして着る必要もなかったなーあんなのまで入れられて…」
本田は黒崎のパンツとセーターを着ている。
本田が着るとスタイルの違いで、黒崎のセーターはオーバーサイズニットになり程よく前は隠れた。
しかし服を汚すなと脅されて、また尿道プラグまで入れられた。
後ろのローターよりも、そちらの方が100倍気になる。
「全然よゆー…ひっ!」
会場に着いて受付の列に並びながら軽口を叩いていると、カチリと音がして黒崎がポケットの中のリモンを押した。
その途端、中にあるローターが振動を始める。
ぶわりと忘れていた快感が押し寄せて、思わずよろけた。
「…ぇ、あ…っ?」
「よゆー?」
目を白黒させ戸惑う本田を黒崎が笑う。
意地の悪い笑顔だ。
付き合ってやっている体だったくせに、ノリノリじゃないか!
ローターは黒崎がいれたが、きっちり前立腺の上に設置されていたようだ。
ピンポイントで弱いところをぐりぐりと突かれ、腰が砕けそう。
「やめっ、ちょっ、…っ一旦、」
ここまでとは思わなかった。
考えれば、アブノーマルへの完落ちを防ぐ為に玩具の類は試していない。
だからたかが玩具と舐めていた事もあり、この快感は想像以上だった。
止めようと黒崎の腕に掴み掛かろうとするも、軽く避けられた。
「本田、周りにバレるぞ」
そして本田の体を支えるフリをして、耳打ちされる。
(確かにっ)
はっとして、口を押さえた。
キョロキョロとしてみるが、幸いまだ周囲には気づかれてはいない。
「やめっ、…っ!」
「本田、顔が赤いな?大丈夫か?」
早々に勃ってしまった。
そんな事既に気づいているくせに、黒崎は心配そうな声色で本田の背をさする。
「因みに、服、伸ばすとか汚すとかしたらペナルティだからな。」
どさくさに紛れ、きっちりと追い込みもかけてくる。
「ちょっと、こんな不意打ちっ…っ!やめろっ……っ!」
「はは、お前、立場分かってる?」
黒崎はおもしろくて仕方ないと言う顔だ。
意地悪な顔。
「…っ黒崎さん、顔が子悪党ですね…」
「…」
黒崎の言い方が気に食わなかった。
カッとなって憎まれ口を叩くと、黒崎はぴくりと片眉を上げる。
くるりとこちらを振り返り、無言のままポケットからリモコンを取り出すと、本田にだけ見えるようにチラチラとふった。
「?」
黒崎は終始真顔なので、意図が読めない。
「!」
明らかに疑問符を浮かべる本田を見て、にっと黒崎の口角が上がったと思った瞬間だった。
「……あ!っ!…あ、すみまっ!」
キリキリとメモリを上げられる。
堪らず前屈みでよろける。
「〜〜〜‼︎」
支えようと足をついた時、一際締め付けてしまって軽くいってしまう。
「本田来てたの⁈いや、それより…黒崎さんもいらっしゃっていたのですね‼︎」
声をかけられて振り返ると、会社の女性先輩がいた。昔お世話になった先輩だ。
黒崎は会社で密かに人気があるから、黒崎と話せる機会だと思って来たのだろう。
「こんにちは。来場者の反応はどうかな?」
「んー、そこそこ質問もされてますよ!でも、あの競合他社の…」
黒崎は会社の時の様に淡々と話す。
先輩は先輩で、黒崎に釘付けだ。
流石に本田の中に入っているスイッチは切られたので、ホッと一息つく。
(…あんまり、よくなかった。)
興奮すると思ったけど、やってみたら違うかも。
大体、日常の中に変態行為を持ち出さない為に黒崎とやってんのに、これじゃ意味なくない?
(今のうちにこっそりトイレで抜こう。二重の意味でぬこう…。)
「恭ちゃんじゃーん!」
「…え」
こそこそとその場を離れようとした時だった。
聴き慣れた高めの可愛い声。
振り向くと京香(きょうか)がいた。元カノだ。
ちょっと地味な雰囲気もあるが、本田はそこに安心感を感じて好きだった。
今見ても、やっぱり好みだ。
「…ぁ、久しぶり。」
因みに別れた原因は京香の浮気だ。
深谷が何か仕掛けたとはいえ、そんな別れ方をしたので話しかけられたのは意外だった。
京香はニコニコと笑うが、本田の方が妙に緊張していた。
「本当。前は結構一緒にいたから、久しぶりだね。…あの時は…ごめんね?」
にこりと笑う。
可愛い!ぎゅっとしたい!
本田は無意識のうちに頬が赤くなった。
頭の片隅ではこの期に及んでニコニコ笑うなと腹も立つが、その笑顔は可愛いと思ってしまう。
最近は深谷とか黒崎とかむさい男ばかりに囲まれていたから、尚更ドキドキしてしまう。
「久しぶりだね。そっか、京香、企画開発部に移動したんだったな。」
「うん。恭ちゃんは?まだ営業部?ちゃんと成績出せてる?」
「…」
ふっと小馬鹿にした様に笑われる。
京香は可愛いけど、毎度上から目線だ。
懐かしい。
「あれー?てか、今日はいい服着てるね?私が教えてあげなくても、そこそこお洒落に着れるようになった?」
「…うん。京香、色々、服もアドバイスくれたもんな。」
「ふふ…。ていうか、」
「本田。」
「「!」」
京香がまた何かを言いかけた時、急に肩を引かれた。
「何してる。」
どきりとする。そうだ。黒崎もいた。
何故か黒崎の方に体を引かれ、肩を組まれた。
(まさか…ここでローターのスイッチ入れたりしないよな?)
自分の性癖はあれど、京香にだけはもうこれ以上痴態を晒したくない。
でも黒崎は京香と自分の関係なんて…知らないよな?
本田の体は緊張で強ばる。
それを黒崎がチラリと見たのが、気配で分かった。
「…あ、く、黒崎さん…。」
そんな本田の緊張には全く気づかず、京香が小さく漏らした。
京香も黒崎が好きらしい。
急に出てきた黒崎に、ソワソワと上目遣いで頬を染めている。