無自覚アブノーマル
※黒崎視点
(あー…やってしまった…。)
「黒崎さんは男が好きなんですか?」
「…。」
さっきまでの可愛さは何処へやら、ブスッとした顔で本田は黒崎へ質問を投げた。
ただでさえ落ち込んでいる時に、どストレートで不躾な物言いだった。
(本気で調教してやろうかこのガキが。)
苛つきを込めて睨むと、本田は慌てて目を逸らす。
(ふん。小者め。…あーあ、しかしこれはまずいな。こんな事、本田が労働組合に駆け込んだら一発アウトだ。)
内心焦っていた。焦りからくる苛立ちで、室内で煙草を吸ってしまう程だ。
(何とか…こいつを言い包めなければ…。)
…。
よし。
騙すか。
明らかにこちらの方が分が悪いが、本田は騙せそうだ。
「宜しくな。恭弥。」
これからの事を匂わす様に、本田がこちらに逆らわない様に脅す意味を込めて言ってみた。
(これで少しは…)
「…。」
(何でだよ!)
こちらの意に反して、本田はまた期待の篭った目をこちらに向ける。
(…ま、まぁいい。)
もうこれで終わりだ。これ以上本田と関わると碌な事がない。
何故か残念だと思ってしまう自分を戒める様に、黒崎は心の中でそう呟いた。
————-
しかし本田は、言うなれば沼だった。
もう関わるのは辞めよう。もう辞めよう。
そう思うのに、馬鹿みたいな事をしてくる本田が面白くてつい相手をしてしまう。
エレベーターで擦り寄って来たのは可愛かったし、正直勃った。
(あー、手を出したい。ここで今すぐ。…もう一回だけ…。)
「……。」
「……っ、な、なんですか⁈」
「…もう夜中に馬鹿な事するなよ。」
しかしダメ。社内で、しかも部下が相手なんてハイリスク過ぎる。
自分の過ぎる性癖も自覚している。
欲望はコントロールすべきだ。
…本田は、自分と関わるべきじゃない。きっとこいつは平凡に生きるのが好きなんだ。
本田を残しエレベーターを降りた。
———-
なぜ…本田は……こんなにアホなのか。
「おはようございます!」
「…おはよう。」
(なのに、なんでお前はそうなんだ‼︎)
二人で外回りをする日、本田は何故満面の笑顔で出迎えてくれた。
上がりそうになる口角を、眉間に皺を寄せる事で必死に抑える。
(本田は変態だから後先考えずに靡いたのか?)
二人という空間に若干悶々としながらも、車内ではひたすらに事務処理を行い気分を紛らす。
そんな時だった。
「黒崎さん。」
本田が手を重ね、熱っぽい視線を送ってきた。
(…あー、やっぱりな。)
大方、映像を消させる脅しのネタのためこんな愚行に走ったのだろう。本田のポケットでスマホがピコピコと、録音を印して光っていた。
(なんだ…。)
分かっていたはずなのに、がっかりしてしまった。
本田の一挙一動に動く自分の感情を笑った。
「…は、はぁ…ちょっと、暑いですね。」
そうこうしていると、本田が次の手(?)に出らしい。
胸元を大きく開けてパタパタと扇ぎ、流し目でこちらを見た。
本田の色白の肌がチラチラと見え隠れする。
(肌が白いから、赤い首輪が似合いそうだ。)
「黒崎さんは、暑くないですか?」
本田が体を寄せてきた。衝動が湧き上がってくる。
「煽っているのか?」
「…え?別に…煽ってなんか、していません。…えぇ⁈何ですか?それとも黒崎さん、もしかして俺の事、そんな性的な目で見ているんですか⁈」
「……ふーん。」
(ほんとお前は…)
黒崎は本田を半ば呆れながら見つめる。
(……そういえば、キスはしなかったな。)
本田の白い肌に、ぷっくりと赤い唇。釘付けになる。
(遊んでやるか。)
目を開けたまま身体を傾ける。本田の顔を間近でまじまじと見つめた。
「…あっ」
本田はそのままキスをされる思っていたらしい。目をまん丸に見開き、間抜けズラを晒していた。
「『あ』?」
その、本田が目をパチクリする様に、吹き出して笑いそうになりグッと堪えた。口角が上がる。
「そうか。もしかして熱があるのか?大丈夫か?」
そんな本田を見ていると、無性に触りたくなった。無理矢理な理由をつけ、本田の身体に手を伸ばす。
本田の大きく空いたワイシャツの隙間から手を滑り込ませる。
「…っあ、」
首の筋を伝い、手をその下へ滑らせる。
すると本田が小さく喘ぐ。
その声に、黒崎は目をスッと細めた。
(本田は…プライドも高くて強気だから…逃げ道を少しだけ残して、繋ぐのは片手だけにして)
黒崎の手は本田の肩を指先で撫でた。
黒崎の手に合わせて、本田がびくりと体を捩る。
心持ち、本田の頬が赤くなった。
(逃げ惑うのを追い詰めて、屈服させて、虐めるだけ虐めたら最後は泣いて乞わせて)
黒崎の鋭い目線と合うと、本田の目が戸惑いで揺れる。
そんな顔も、晒さずにじっと強い目線で見つめた。
(最後は本田自ら動かせて、可愛い声で喘がせて…死ぬ程気持ち良くしてやりたい…)
ごくりと、本田が黒崎か、どちらが唾を飲む音がした。
『お前、おかしいよ。』
その時、あいつの声が頭の中に響いた。
そうだ。もうこんな事はしないと決めたのだ。
「俺、付き合ってる奴いるから。」
だから自分への戒めも込めて本田にそう言い放った。勿論、付き合っている奴なんていない。しかしそう言えば、本田はもう絡んでこないだろう。
(あー…やってしまった…。)
「黒崎さんは男が好きなんですか?」
「…。」
さっきまでの可愛さは何処へやら、ブスッとした顔で本田は黒崎へ質問を投げた。
ただでさえ落ち込んでいる時に、どストレートで不躾な物言いだった。
(本気で調教してやろうかこのガキが。)
苛つきを込めて睨むと、本田は慌てて目を逸らす。
(ふん。小者め。…あーあ、しかしこれはまずいな。こんな事、本田が労働組合に駆け込んだら一発アウトだ。)
内心焦っていた。焦りからくる苛立ちで、室内で煙草を吸ってしまう程だ。
(何とか…こいつを言い包めなければ…。)
…。
よし。
騙すか。
明らかにこちらの方が分が悪いが、本田は騙せそうだ。
「宜しくな。恭弥。」
これからの事を匂わす様に、本田がこちらに逆らわない様に脅す意味を込めて言ってみた。
(これで少しは…)
「…。」
(何でだよ!)
こちらの意に反して、本田はまた期待の篭った目をこちらに向ける。
(…ま、まぁいい。)
もうこれで終わりだ。これ以上本田と関わると碌な事がない。
何故か残念だと思ってしまう自分を戒める様に、黒崎は心の中でそう呟いた。
————-
しかし本田は、言うなれば沼だった。
もう関わるのは辞めよう。もう辞めよう。
そう思うのに、馬鹿みたいな事をしてくる本田が面白くてつい相手をしてしまう。
エレベーターで擦り寄って来たのは可愛かったし、正直勃った。
(あー、手を出したい。ここで今すぐ。…もう一回だけ…。)
「……。」
「……っ、な、なんですか⁈」
「…もう夜中に馬鹿な事するなよ。」
しかしダメ。社内で、しかも部下が相手なんてハイリスク過ぎる。
自分の過ぎる性癖も自覚している。
欲望はコントロールすべきだ。
…本田は、自分と関わるべきじゃない。きっとこいつは平凡に生きるのが好きなんだ。
本田を残しエレベーターを降りた。
———-
なぜ…本田は……こんなにアホなのか。
「おはようございます!」
「…おはよう。」
(なのに、なんでお前はそうなんだ‼︎)
二人で外回りをする日、本田は何故満面の笑顔で出迎えてくれた。
上がりそうになる口角を、眉間に皺を寄せる事で必死に抑える。
(本田は変態だから後先考えずに靡いたのか?)
二人という空間に若干悶々としながらも、車内ではひたすらに事務処理を行い気分を紛らす。
そんな時だった。
「黒崎さん。」
本田が手を重ね、熱っぽい視線を送ってきた。
(…あー、やっぱりな。)
大方、映像を消させる脅しのネタのためこんな愚行に走ったのだろう。本田のポケットでスマホがピコピコと、録音を印して光っていた。
(なんだ…。)
分かっていたはずなのに、がっかりしてしまった。
本田の一挙一動に動く自分の感情を笑った。
「…は、はぁ…ちょっと、暑いですね。」
そうこうしていると、本田が次の手(?)に出らしい。
胸元を大きく開けてパタパタと扇ぎ、流し目でこちらを見た。
本田の色白の肌がチラチラと見え隠れする。
(肌が白いから、赤い首輪が似合いそうだ。)
「黒崎さんは、暑くないですか?」
本田が体を寄せてきた。衝動が湧き上がってくる。
「煽っているのか?」
「…え?別に…煽ってなんか、していません。…えぇ⁈何ですか?それとも黒崎さん、もしかして俺の事、そんな性的な目で見ているんですか⁈」
「……ふーん。」
(ほんとお前は…)
黒崎は本田を半ば呆れながら見つめる。
(……そういえば、キスはしなかったな。)
本田の白い肌に、ぷっくりと赤い唇。釘付けになる。
(遊んでやるか。)
目を開けたまま身体を傾ける。本田の顔を間近でまじまじと見つめた。
「…あっ」
本田はそのままキスをされる思っていたらしい。目をまん丸に見開き、間抜けズラを晒していた。
「『あ』?」
その、本田が目をパチクリする様に、吹き出して笑いそうになりグッと堪えた。口角が上がる。
「そうか。もしかして熱があるのか?大丈夫か?」
そんな本田を見ていると、無性に触りたくなった。無理矢理な理由をつけ、本田の身体に手を伸ばす。
本田の大きく空いたワイシャツの隙間から手を滑り込ませる。
「…っあ、」
首の筋を伝い、手をその下へ滑らせる。
すると本田が小さく喘ぐ。
その声に、黒崎は目をスッと細めた。
(本田は…プライドも高くて強気だから…逃げ道を少しだけ残して、繋ぐのは片手だけにして)
黒崎の手は本田の肩を指先で撫でた。
黒崎の手に合わせて、本田がびくりと体を捩る。
心持ち、本田の頬が赤くなった。
(逃げ惑うのを追い詰めて、屈服させて、虐めるだけ虐めたら最後は泣いて乞わせて)
黒崎の鋭い目線と合うと、本田の目が戸惑いで揺れる。
そんな顔も、晒さずにじっと強い目線で見つめた。
(最後は本田自ら動かせて、可愛い声で喘がせて…死ぬ程気持ち良くしてやりたい…)
ごくりと、本田が黒崎か、どちらが唾を飲む音がした。
『お前、おかしいよ。』
その時、あいつの声が頭の中に響いた。
そうだ。もうこんな事はしないと決めたのだ。
「俺、付き合ってる奴いるから。」
だから自分への戒めも込めて本田にそう言い放った。勿論、付き合っている奴なんていない。しかしそう言えば、本田はもう絡んでこないだろう。