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【完結】取引先の上司がストーカーです

「碧くん、お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
指定された店へ行くと、満面の笑みの殿村がいた。どんな如何わしい場所へ誘われるのかと警戒したが、殿村が指定した店は普通の小洒落た居酒屋だった。
「最初はビールだよね?頼んどいたよ!」
「…はい。ありがとうございます。あの…連絡…すみませんでした…。」
「あははは、そうだね。またこんな事が続くともっと虐めたくなっちゃうからさ…今後はやめろよ?」
「…はい。」
最後だけやけにドスが効いていて怖いが、殿村は笑顔で碧の謝罪を受け入れた。
「はい、ビール。」
「…ありがとう。」
打って変わって今度は語尾にハートが付きそうな上機嫌で、殿村は碧にビールを渡した。
とりあえず、怒りは落ち着いたか…?
「…。」
殿村がビールを飲む碧を笑顔で凝視する。
居心地悪いし、怖…。
「と、殿村さんって、会社と今じゃ、キャラがかなり違いますね。」
「あぁ、うん。今は…好きな人の前だから。」
「…。」
ごくり。
頬を染め、ちょっと照れたように話す殿村。
碧はそんな殿村に何の反応もする気になれず、ただただ無言でビールをあおった。
「ところで、小耳に挟んだんですが、小竹向さんの送別会はするんですか?」
「するよ。来たい?」
やはり確信犯だ。殿村は勿体ぶって笑った。
「い、行きたい!殿村さん、俺も、いきたい!」
「ははは。なんかえっち!」
「…。」
なんの話だよ。
殿村が碧らしくなく下品な笑顔を浮かべた。
「蒼くんがそう言うなら、お誘いしても良いけど…。」
碧は殿村の次の言葉に身構えた。
「今日の碧くんの態度次第で決める!」
「え。…と、殿村さん、僕ら、健全なお付き合いをする友達だよね?」
馬鹿みたいだけど、真っ先にえっちな接待が頭に浮かんだ。
碧は顔を引きつらせる。
「そうだよ!だから、まずは楽しくお話しようね!」
「…。」
今まで逃げ回ったから、今度はちゃんと相手をしろって事だろうか?
碧はそう自分を納得させた。
それから2時間弱、殿村と碧は普通に飲んだ。
「あははは、楓くん、それはおかしいって!」
「ふふ、そうかな?」
そしてちゃんと話すと殿村は案外いい奴で面白い。酒も進み、すっかりほろ酔い気分だ。
「碧くんは?最近どう?仕事の帰り遅いよね?」
「ちょっと忙しいかなぁ。でも仕方ないよね。俺の歳って…頑張りどころ感あるし…。」
「ちょっとどころじゃなく忙しそうだよ。」
「うん…。まぁ。」
殿村は心配そうに碧の顔を覗き込んだ。
確かに、連日連夜の徹夜。急に求められる結果。蒼はこの所、仕事に疲れていた。
「碧くんは頑張っていて偉いよね。昔からそう思っていたんだ。碧くんは凄いなって。」
「え?」
前から?どこか懐かしそうに呟く殿村に碧は首を傾げた。
「サボる人も居るのに、碧くんは頑張っていて、それだけでも偉いよ。その上、この前のプレゼンで後輩のフォローもしっかり出来ていたし。」
「…ありがとう。」
殿村の言い回しが気にはなったが、碧は俯いて赤くなった。こんなに面と向かって褒めて、労って貰ったのはいつぶりだろう。
…嬉しい。
純粋にそう感じた。
「…でも、実際問題、楓の方が凄いよ。俺より2つ歳上なだけなのにもう役職持ちだし。」
「昇進なんて運だよ。」
殿村に穏やかな笑顔で頭を撫でられた。
碧はそれを抵抗もせず受け入れた。殿村がそんな蒼を見て、愛おしげに目を細めた。

————-
「碧くんの家ってここでいいの?」
「うん。そうそう!楓くんちょっと待っていてね。今、鍵あける。」
すっかり警戒心も無くした碧は、ニコニコと後ろにいる殿村に話しかけ鍵を開けた。
「よし、どうぞ……わっ!」
鍵を開けて振り向こうとした瞬間、後ろからの衝撃を受けて碧は玄関に倒れこんだ。
そこで漸くボケていた頭が正気を取り戻し、冴えてきた。
殿村が後ろ手にドアの鍵を閉めた。
「ちょっ、ちょっと、楓くん!俺たち、健全なお友達としてお付き合い中だよね?あ、つまずいちゃったかな?」
碧は顔に青筋を立てながらも、誤魔化そうと必死に笑った。
「碧くん、いっぱい俺の連絡を無視したよね。」
「え…だって、それはもう…。」
顔は見えないが、殿村の声のトーンが低い。
「じゃ、服脱ごっか?」
と、思いきや、次の瞬間殿村は急に明るい調子で手を叩きながら話した。
「え⁈け、健全な…」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと、罰として虐めるだけだから。」
どこか大丈夫なのだ。
殿村は依然として柔らかい笑顔で「大丈夫」と繰り返しながら碧に手を伸ばす。本格的に身の危険を感じ、碧は激しく抵抗した。
「碧くん。こんな事言いたくないけど、壮行会、来たいんだよね?」
「!」
しかしその言葉を聞き、碧は諦めたように抵抗する力を抜いた。


———-
「うん。碧くん、やっぱり似合うね。」
「ふっ」
あの後、全裸に剥かれた碧は拘束ベルトをつけられてベッドに転がされていた。
右足と右手、左足と左手をそれぞれ繋がれ、口も塞がれた。足は閉じられるが、ほぼダルマ状態で動けない。
碧は殿村の視線から逃れて身を守るように、体を横向きに倒し、縮こまった。
「はは、可愛いんだから、隠したらダメだよ。大丈夫。罰だからこんなふうに拘束するだけで、俺が愛する碧くんを傷つけることなんてするわけないよ。」
「ん〜!んん〜!」
殿村によって力任せに仰向けにされる。碧の全てを見て、殿村は更に興奮に頬を紅潮させた。碧はせめてもと、必死で足を閉じた。
「ちょっと待っていてね。」
一度殿村が目の前から消えたと思ったら、次は風呂場から洗面器を持って帰ってきた。
「碧くん、電動派じゃないんだね。」
なんの事?
その疑問はすぐに溶けた。殿村の手には俺の髭剃りが握られていた。
「はい。足開いて〜。」
「ん〜ん〜!」
開く訳ないだろ!怖すぎる!
「はいはい。怖いね。怖いよね。大丈夫。大丈夫だよ。」
「ん…っ」
しかし、殿村はあやすように俺の頭を撫で、口枷の上からちゅっとキスをした。
碧はびくりと身をすくめた。
あ…あ…、や、やられる…。
キスという軽い行為でも、その先を連想させる力は絶大だった。
「大丈夫だよ。」
「っ!」
ヒタリ
下半身に冷たい感触。恐る恐る見ると、そこにカミソリを当てられていた。
「罰として頭丸めるとかあるけどさ、碧くんはこっちを剃ろうね。」
「ん〜!」
「暴れたら、切っちゃうから、大人しくしてね。」
「ふっ、んんっ、」
碧は剃刀の冷たい感覚にガタガタと震えながらも固まった。
あぁ、もう…。もう、会社の為にとか、仕事の為にとか、もう、やめる。
だってこんな…こんな自分を犠牲にしてまで、仕事に尽す義理ある?
「よし。完了!」
明るく弾んだ声がして下を見ると、一矢纏わぬ自身が見えた。
最、悪。
だがこれ以上に最悪な事はまだあるようだ。
「…な、なんか、見ていたら勃った…。」
「むっ⁈」
幾分鼻息を荒げた殿村の呟きに、碧はガバリと殿村の股間をみた。
それは服の上からでもわかる程だった。
「はぁー、碧くん!碧くん…!」
「んーーー!」
やたらハァハァと息を乱し殿村は碧に覆いかぶさった。
そしてべろりと口枷を舐め上げる。
碧は殿村の奇行に、これまでになく無茶苦茶に暴れた。
「…挿れていい?」
「んん⁉」
何を⁈何処に⁉だ、だめ‼︎だめだめ‼︎
碧はブンブンと頭を横に振った。
「そっかー。…残念。ま、それはおいおいだね。まだ俺たち友達だし。」
殿村は次が決まったような口ぶりだ。
「じゃ、このままやろうね。」
「ふ⁈」
ぐちゅ
「はーはーはー、碧くん…っ、」
ぐちゅぐちゅぐちゅ
「ふぅぅ…っ!」
これは、なんだ。
殿村は自分のものと碧のものを合わせ、碧にのしかかり腰を動かした。
これではまるで、疑似的にやっている様じゃないか…!
碧の目前には、気持ち良さ気な顔をした殿村が迫る。整った顔が快感で歪み、妙な色気があった。
堪らなく嫌なはずなのに、強制的に与えられる快感が屈辱だ。
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