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【完結】取引先の上司がストーカーです

※殿村視点

「ははは、やきもちか?本当、面倒くさい変態だなー。」
「…。」
酒を飲むと確かに碧は口が軽くなる、と言うかストレートで浅はかな物言いになるようだ。ちょっとイラッともするが、許容範囲だ。ずっとニコニコしている碧は可愛い。
楓は怒りで一瞬引きつった顔を意識して緩め、ニコニコと話を聞いた。
「てかさ、野中先輩は昔から碧くんにあんなベタベタなの?」
「あー、まー、野中先輩は前からめっちゃ触ってくるよ。でも、そんだけ。」
「野中先輩は碧くんの事好きなのかな?」
「はは、ないない。元カノ紹介してくれたの野中先輩だし。」
「え?」
「え?」
正直そんな気がしてはいたが、やはりか。しかし碧は気づいていないようで、相変わらずケラケラと笑っている。
よし、監禁しよう。
嘘をついたらそうすると、言質はとってある。
ずっとは無理でも、有給取らせるとかして、本腰入れてお仕置きだな。
「てかさ、最近、楓くんとやるの、もはや元カノとやるよりも気持ちいいんだけど。俺やばくない?」
「そっ…そうなの?」
「うん。気持ち良い。だって楓、上手すぎでしょ!もはや、自分でするよりも楓とする方が気持ち良い。俺、やばくない?」
やはり、このまま愛を育むのも良いかもしれない。
…うむ。
自然な形で愛を育む方が良いに決まっている。
何がつぼにはまったのか、「やばくない」と一人で何度も繰り返し笑う碧を見て楓も笑った。
「でも、楓とのセックスも明日までだな!」
「…は?」
内心どきりとする。
続きが聞きたいようで、聞きたくない。
「いや、気持ち良いとは言え、楓くんのアブノーマルにいつまでも付き合ってられないし。コンペ終わったら、俺は即刻元の生活に戻るし。」
もう笑顔も作れず、楓は無表情で碧を見つめた。
そうだと思っていても口に出されると、思いっきり殴られたような、耐えがたい痛みを感じた。
そして次の日のコンペ結果発表日。
コンペ結果を説明する会議中、チラリと碧をみると何処となくぼんやりしてい?いや、普通か?
昨日の会話ばかりが頭に浮かび、らしくもなく不安で堪らない。気を抜くと、貧乏擦りをしそうになる。
「では、こちらからの説明はこれで終わりです。そちらから、何かご質問あればどうぞおっしゃってください。」
「どれだけでも説明します。」それは、実のところ碧に向けて投げた言葉だった。
「…いえ、こちらからは何も…。今まで、短い期間でしたが、ありがとうございました。」
碧がにこりと作り笑いをした。
そもそも上手く行きすぎだったんだ。
碧が帰った後、連絡をしたがやはり返信はない。
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