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【完結】取引先の上司がストーカーです

「碧くん、気持ちよかったね〜。やっぱり、愛のあるえっちは違うね!」
「愛…あったの…。」
「なかったの?あれ?伝わらなかった?」
「ありましたね。感動しました。」
愛のあるって…。お前がハァハァ言っていたのは覚えている。
事後、殿村と碧は結局一緒に風呂に入っていた。というか、後ろが痛過ぎて一人で入れなかった。殿村が湯船で足を伸ばして座り、その間に座る。差し詰め、人間ドーナツクッションだ。この人はただの椅子。自分に言い聞かせるが、腰にゆらゆら当たるものに先程の行為を思い出して妙な気分になる。
「はぁ〜、晴れて俺たちは恋人だね。」
「そうでしたね…。」
満足気な声を出す殿村に、抱きしめられて、もはや諦めの境地だ。
レッドカード、早かったな。
「楓くんは、付き合うと何かルールとかあるの?」
「ルール?」
「そう。これはしちゃダメとか、こうしよう、とか。」
こうなったら、ルール内でなんとか上手くやりくりするしかない。
何にしても、コンペが終われば殿村ともおさらばだ。
「うーん。パッと思いつかないけど、俺以外と浮気は禁止、男又は女と二人きりで会うの禁止、メッセージは無視しない、嘘はつかない、俺第一に行動する、金曜日から日曜日はどちらかの家に泊まる。週に数回は夕食を一緒に食べる。可能な限りセックスはする。とか?」
「け、結構多いね…。」
つらつらと述べる殿村に、碧は顔を硬らせた。
抜け道どころか、全部塞がれている。道がない。パッと思いついただけで多すぎだ。
「じゃ、湯冷めしてもだし、お風呂上がろっか!」
「あ、いって。」
「ごめん!抱えてあげるね。」
碧はどこか嬉しそうな殿村に抱えられ、風呂を出た。

「碧くんの髪も、俺が毎日乾かすね!」
風呂から上がると、殿村が碧の髪を乾かしながらまた嬉しそうに話した。
「…会った時はな…。」
「ふふ、そうだね。」
ニコニコと笑って、殿村は碧の髪を乾かした。長い指が碧の頭皮を傷つけないように優しく乾かす。トリミングされる犬みたいな、大事にされている恋人みたいな。いや、犬だ。またうっかり流されて、絆されるところだった。
あぁ、それにしても、ふわふわと暖かくて、心地良くて…眠い。
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