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【完結】仮想監禁

「晴人さーん!お久しぶりです!」
朝日が眩しい晴れた朝、今日の仕事場であるはな写真スタジオに向かう道中声をかけられた。
振り返ると、スタジオの後輩が笑顔ですこちらに走った。
「拓人か。久しぶり。」
「晴人さん、今日はヘルプなんですよね?久々ご一緒出来て嬉しいです!」
拓人の笑みは晴人へ尊敬の念や親しみが篭っ
ていた。
久しぶりの仕事なので少し緊張していたが、その笑顔を見て少し元の自分を取り戻せる気持ちが強まる。
「てか今晩、終わったら飲みせん?俺また彼女と喧嘩しちゃって…。話聞いてくださいよお〜。」
「まーた喧嘩したのか…。仕方ないなぁ…。まぁ、俺で良ければ幾らでも話聞いてやるよ。」
「毎度ありがとうございます。」
拓人はニコニコと懐いた犬の様に笑った。
よく歳下には懐かれるし、懐かれると悪い気はしない。
晴人と拓人は連れ立って歩き出した。
「てか、晴人さんどこ行っていたんですか?撮影ですか?」
「あ…あぁ、まぁ…そう。撮影だよ。スキル…磨きのために…。」
『どこに行っていたのか。』そう聞かれて思わずギクリとする。
まさか、言えない。
4ヶ月も男に監禁されていただなんて。
首元の消した刺青がチリチリと痛む。
「そういば、結花さんも久々に晴人さんに会えるの楽しみにしていたましたよ!ここだけの話、結花さん、晴人さん狙いですよ。」
「結花ちゃんが?」
結花は、拓人と同じ写真スタジオのスタッフだ。確かに、いつも嬉しそうにはなしかけてくれてくれる。晴人だって、それに悪い気はしていない。
「そうですよ!それなのに、なんか昔、晴人さん、結花さんに酷い事言ったでしょ?もう連絡するな的な…。」
「あぁ、それな…。てか、俺はそんなメッセージ送った記憶無いんだけどな…。」
「ま、女の人ってその辺繊細ですから。先輩は変に鈍感で図太いですからね!気づからないうちにやってんじゃないすか?」
「そう言われると…返す言葉がないよ…。でも、お前には言われたくない。」
ドスっと拓人を蹴ると拓人がうっと唸ってよろけ、また嬉しそうに笑って続けた。
「兎に角、今度、結花さん誘ってあげて下さいよ!」
「そうだな…。」
まだ戸惑いもあるが、晴人も結花に好意を持っている。
今日この後、声をかけてみようか。いや、まだ早いか…。でも、そんな事では、いつまでもアイツに囚われている様で嫌だ。

————
《晴人くん、もう着いた??遅れてごめんね。》
平日の昼前。商業施設の一階に入ったオープンカフェで、晴人はそわそわとスマホを操作した。
「もう、いるよ。でも結花ちゃんは、ゆっくりで大丈夫だよ!…っと。」
女の子と遊ぶのは数年ぶりだ。だって、またこんな風に日常に戻れた事すら奇跡だ。
過去に思いを巡らせていると、首元に痛みが走る。小さくケロイド状のそこは、刺青の後。レーザーで除去したのに、呪いの様に未だに時折痛む。
数ヶ月前、自分を監禁して、好き勝手に扱い、あまつ刺青まで無理矢理入れたあいつ。
思い出すとまだ目眩がする。
ダメだ。考えるな…。もう、逃げ切ったんだから。解放されたんだから。忘れて、次に進むんだ。
晴人はいつの間にか頭を抱え混んでいたが、また手元のスマホが鳴って顔を上げた。
《着いたよ〜!長い間、待たせてごめんね。やっと会えるー!嬉しい♡》
送られたメッセージを見て、思わず口元が緩む。
クールな結花にしてはちょっとらしくないくらい大袈裟なメッセージだが、それが嬉しかった。
一度下を向き息を吐く。
そうだ。全部、やり直すんだ。
決心するようにそう念じていると、カタンッと前の椅子が引かれる気配がした。
あぁ、結花ちゃんか。
「…ゆ……っ!」
「ずーっと、待たせてごめんね。」
目の前の人物に晴人は目を見開らいた。
かき上げるように、柔くセットされた柔らかそうな明るい髪色。優し気な二重。
晴人の反応を楽しんでいるのは明白だ。薄い唇の端を吊り上げていた。
「やっと、会えて、嬉しい♡」
正樹…!
「う、……っ‼︎」
甘い声。それを聞いたとたんに、胸中に堰を切って過去の恐怖が溢れだす。
堪らず椅子から転げ落ちる晴人を、正樹は愛おしそうに目を細めて見つめた。
そして優雅に、晴人の飲みかけのコーヒーに手を伸ばし、一口飲む。
「…美味しい。」
「っ」
床で震える晴人を見下ろし、舌舐めずり。
これは、コーヒーの事を言ってる。分かっている。だが実のところ、自分に劣情をぶつけられた様で背筋がゾッとした。
その瞬間、晴人は脱兎の如くその場を走りだした。
「…へぇー、追いかけっこかぁ…。」
そんな晴人を見て、正樹が楽しそうに呟くのが聞こえた。

—————
「はぁっ、はぁっ…っ」
独りになるのが怖くて、晴人は商業施設に走り込んだ。肩口に振り返った先に正樹はいない。
何処か、隠れて、このままやり過ごして、あいつが諦めた所で、また、逃げて…。
5階のトイレ、広めの個室に逃げ込み晴人は鍵を閉めた。
「はぁっ、…ふっ、ぅ、ううっ…っ」
手が震える。
晴人は個室の中で落ち着きなく歩き回った。
もう諦めたか?いや、あいつが…そう簡単に…諦めるか?どうする、どうする?
「タトゥーは身体に馴染んで薄れるのが良いなって思ったんだ。」
「!」
「だってそれって、俺が、晴人に染みていく様でさ。ゆっくり、浸食する。」
トイレの出口から聞こえたその声を聞き、晴人は思わず自分の口を押さえて息を詰めた。
「なのに、消すなんて。酷いよね。」
不満気な正樹の声だ。
「まぁ…またそれは入れるとして…。」
コツコツとこちらに近づく足音が響く。
「ほら、出ておいで。追いかけっこも楽しいけど、長すぎると興醒めだよ。」
恐怖のあまり、晴人はその場でしゃがみ込み耳を塞いだ。
「自分から出てくるんだよ。」
声が徐々に低くなり、同時に足音が近づいてくる。
「晴人。」
「…うっ、」
こみ上げる吐き気を抑えて、逃げ場はないかとキョロキョロと辺りを見渡す。
しかし、無機質な個室には窓もない。
「はーるーと。」
コンコンッ
何故分かる?
晴人のいる個室をピンポイントで正樹はノックする。
「…で、出ないっ‼︎大体俺は、お前なんかに、もう二度と会いたくなかったんだ!」
「へぇ?」
「何でまだ追ってくるだ!俺が逃げ時点で、気づけよっ!俺は、お前が、好きじゃない‼︎」
「…ふーん。」
ドア越しでも近づきたくない。
ドアから極力離れたところから、晴人は正樹を罵った。
正樹の声が低い。しかしパニックで構っていられない。
「大体なんなんだよ…お前…。怖いよ…。頭…おかしい…。」
「……」
「もう、俺がどれだけお前を嫌いかわかっただろ…諦めて、消えろよ…。」
「……」
「俺がお前を好きになる事なんか、もうないから…。本当……やめてくれよ…。」
「……」
気付けば、正樹の反応がない。
流石に此処まで罵倒されれば、諦めたか…?
カチリッ
しかし晴人の淡い期待は、軽い音で簡単に裏切られた。
開いたドアの先には、マイナスドライバーをもつ正樹が居た。
どうやら、マイナスドライバーで外から解錠したらしい。
「ごめんごめん。開けるのに夢中で最後あたり聞いてなかった〜。で、なんて?」
場違いな程に爽やかな笑顔だった。


—————-
「あーっ、あ゛ぁぁぁっっ!」
意識が朦朧とする。口からは意味のない言葉が断続的に漏れ出る。
「もー、強情なんだからぁ〜。」
一見すると普通の小綺麗な部屋だが、そこは異様だった。普通の部屋の壁に頑丈なU型アイアンフックが取り付けてあり、そこに晴人の両手の手錠に繋がる鎖が繋がれていた。
昔いた監禁部屋だ。
そんな異様な空間で正樹は呆れた声を出して屈み、手を上に繋がれ座らされた晴人と目を合わせた。
晴人は全裸で、後ろに玩具を突っ込まれ、両胸と自身には幾つものローターが取り付けられていた。脹脛と太腿が折り畳まれた形で縛られ、どうにも動けない。
この部屋に連れ込まれて、逃げた仕置きも含めてとこの格好で一晩放置された。
「ほら、ちゃんと言えたら解いてあげるよ。ごめんなさいって。」
「ぅあ゛あ゛…っ!」
正樹がカチカチとコントローラーをチラつかせながら、言葉を促す。
「『勝手に消えてごめんなさい。』」
「ぁぁ…〜〜っっ!」
キリキリキリと、メモリを上げていく。
「『もうしません。反省しました。』って。」
「あ゛ーーーっ!」
「ねー、あーあー言われても分かんない。」
どぷりともはや薄いものが晴人から出て、がくりと頭がおちる。
「ねーってばー。」
正樹が晴人の額を掴み垂れた頭を上げる。晴人は荒い息のまま正樹を睨んだ。
「…あそ。」
「う゛あ゛ぁぁーっ‼︎」
事もなげにそう一言いうと、正樹はメモリを最大まで引き上げた。晴人の痙攣が酷くなり、やがてまたかくりと落ちる。

————-
あれから4日過ぎた。
体の感覚が、変だ。ずっと快感を与えられているような、どこもかしこもビリビリと痺れる。
体がおかしくなるといけないと、正樹は晴人の拘束を時折解くが、それ以外では基本的にあのままだ。
気を使うところが違うだろ。
「ねぇ、謝らないと、ご飯あげないよ?」
今日は晴人の目の前まで椅子を引いて来て、そこに座って頬杖をついた正樹が不満気に話しかけていた。
そう言えば、ここに来て1度も食事をしていない。水も飲んだか?意識がない時に何か入った気がしたから、水は飲まされたのか?人って寝ながら飲めるのか?
晴人は相変わらず、今のない言葉しか出せなかった。
「このままだと、点滴で栄養取る事になるよー。後、管とか入れて無理矢理。」
目を開けるのも怠いし、正樹の顔なんて見たくもない。
暗闇の先から、正樹のため息が聞こえた。
「流石に俺じゃそれ出来ないから医者呼ぶけど。あーあ、医者にこんな可愛い格好の晴人見せたくないなー。」
まさか、本当にこのままなのか…。
でも、何故、謝らなければならないのか。理解できない。
「とりあえず死なない様に出来るかな?先生と相談だな。こういう時の為に、押さえてる医者いるんだよー。」
正樹が本当にそうしそうで、正直ちょっと怖い。
怖いけど…、屈したくない。屈したら、また繰り返しだ。
「そしたら愛し合えないけと、晴人をずーっとこの部屋のオブジェに出来るな…あれ、それも悪くないかもな。」
ふむ。
そんな声が聞こえそうな呑気な声色にまた腹が立つ。
負けたくない。負けたくない。
でも、頭、気持ち良すぎて、止まらな過ぎて、死にそう…。
「晴人がオブジェなら、結花ちゃんにこの状態の晴人の写真撮ってもらおっか?」
あ?
思わず、目を開けてしまった。
「あー、やっぱこれが効くの?自分で言って少しムッとするな。…まぁ、それも追々ぶっ潰すから良いけど。」
不穏な言葉を残し、正樹は懐からスマホを取り出した。
「もしもし、はな写真スタジオですか?」

「あの、出張でお願いしたいのですけど、」
「ぅ、」
はな写真スタジオ。結花の勤める写真スタジオだ。
「はい。そうです。あと、カメラマンの指定があって」 
「あっ、…っ、あ、まっ、き…!」
ガチャガチャと暴れると、正樹は唇に指を当て『シー』っと言う。口の端が上がっている。
「…め…さ、い…!ま、さき…、ご、め…ん!」
久しぶりに今ある言葉を話そうとすると、喉が乾いて言葉がもつれる。
鎖がガチャガチャ鳴る音に声が出て負けてしまう。焦燥感が募るばかりで、正樹は止まりそうにない。
「もー、煩いな。すみません、ちょっと待ってもらっていいですか?」
「あっ、…ゲホっ、…っ」
鎖な音が煩かったらしい。正樹が電話先に待つ様に伝えて、スマホから耳を離した。
「なに?晴人。」
「…」
焦っていて気づかなかったが、いつの間にか玩具が止まっている。晴人が何も言わないと、あたりは静かだった。
勝ち負けがあるかはもう分からないが、正樹は明らかに勝ったという顔をしていて、ムッとしてしまう。
「…あれ?何もないの?じゃ、」
晴人が何も言わないでいると、正樹は不服そうに片眉を上げ、再びスマホを耳に当てようとする。
「ま、まっで!」
「何?」
「…ごめ…さ…い。」
「聞こえない。」
聞こえているくせに。晴人は奥歯を噛み締め、感情を押し殺した。
正樹の、余裕そうな笑顔に腹が立つ。
「出てって、ごめん…なさい。もう勝手に、消えません。」
「本当?」
「…は、反省してます。」
「ふふ、そうなの。」
反射で正樹を睨みそうになるがぐっと堪えて、コクリと頷いた。動きに合わせて首元の鎖がチャリッと鳴るのが嫌だった。
「だから、こっち、来て…。解いて。ス、スマホは…置いて…ください…。」
早く右手のスマホを置けよ!
バクバクと心臓がなる。正樹を見つめるのが最善だとは分かっているが、つい正樹の持つスマホを凝視してしまう。
まだ、通話中なんだよな?
「えー、そんなに俺としたい?」
したくねーよ!
「し、したい…したい、からっ!」
「ふふふ、かぁーい!」
ピッ
正樹がスマホを切り、椅子から腰を上げた。ペリペリと勿体ぶって玩具を外し、その後は晴人の両手の鎖が繋がれたフックをカチャカチャと弄リリース解く。
正樹にキスをされて、恭しくベットに寝かされた。
逃げたいが体が痺れて動かない。
「ふっ、ぁ…っ!」
ちょっとは何かしら準備するのかと思いきや、正樹は無防備に仰向けの晴人に急に挿れくる。
衝撃に思わずのけぞってしまい、それを見た正樹が満足気に笑う。
「いっ、…うっ、うぁ…ん、んん!」
しかし晴人の体を知り尽くした正樹は玩具と違う。適切に攻めたてられ、また口から喘ぎ声が漏れてしまう。
「晴人、『正樹のこと好きー』って、言って。」
「…っ、あ゛っ、んっ…っ」
「はーやーくー。」
罰とでも言う様に、弱いところをグリグリとつかれる。
「あっ、やめっ、」
「言って」
「…っんんっ、ま、正樹のこと、好きっ…っ、ん…!」
「うん。」
「す、好きっ、ま、…っさき…!ん、ぐっ」
「ふふ、もっかい。」
「ふっ、ぅ、う゛ぅ…、まさっ、きっ、すき…っ!」
正樹は幸せそうに笑って何度も何度もそのセリフを晴人に言わせる。
ガクガクと揺れて、もうきっと何も出てない。しかし正樹に止める気配はない。
「んっ。はぁー嬉しいなぁ〜。」
チラリと見えた正樹の顔は、悦に入り恍惚としていた。猟奇的な笑顔だ。ゾッとする。
「…っ!ふぅ…。ほら、晴人、止めないで。もう一回。」
「ぁ゛っ、ぁあ゛っっ‼︎すっ、好きぃ…っ!んっ、ごめっ、…っ!」
永遠とも思える時間の中、止めると何度も攻められる。
晴人は涙を流して譫言を繰り返した。
好き、すきすきすき…。正樹、好き。好き。好き好き好き好き…す、好き?
酷い快感と、意味が分からない言葉。
頭が変になりそうだ。
「ははははははっ‼︎ご褒美。刺青、また入れてあげるね。」
正樹の満足気な声が耳障りだ。
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