箱庭ゲーム
あー
頭がガンガンする。
クーラーが効いているはずの部屋で、俺は一人汗ダラダラだ。
血流が良くなりすぎて、毛細血管が破裂しそう。
「ぁ゛っぁあ゛っっ〜〜〜っ!」
「はい、7回め。山田ぁー、7回射精してもまだまだじゃん。」
汗か涙か。分からないものが頬を伝い、それを華川に舐められた。
ギシギシと関節が鳴る。
俺が暴れるからと、華川持参の拘束具でぎっちりと縛り上げられたからだ。
後手に一纏め。足は折り畳まれ後ろから伸びる紐に繋がれて閉じることが出来ない。
「じゃあ、また当ててあげるね。」
「うぁ゛っ、も、出ない…っ出な…あ゛ぁぁぁぁっ!」
緩い声の割に華川がやっている事は鬼だ。
手コキで出が悪くなると、終わりだと思った。しかし華川は笑顔で「刺激を変えよう」と言った。
それからはこれ。
ローターが俺の亀頭に押し当てられ、華川の大きな手で握り込まれる。
その上でまたぐちぐちと抜く。
「無理っ!む゛ぁ゛ぁぁぁっ〜〜っ!」
俺はもう一度一際大きく跳ねた後、だらりと項垂れた。
もうほぼ何も出てない。
ぽたりと一滴、赤いマグマカップの中で波紋を作るだけだった。
もう意識が朦朧としてきて、ビクビクと痙攣を繰り返すしかできなくなってきた。
限界だ。
「失神するの禁止〜。」
「ぁ゛っ!」
しかし華川はそんなに優しくない。
ガブリと首筋を噛まれた。
その後はチュチュと後ろから頬に口付けられる。
痛くてくすぐったい。
「あはー、山田の匂い。好き…好き…好き」
「んっ!」
「興奮する」
華川は器用に片手で俺のもにローターを固定して指先で弄び、もう片方の手を俺の肌けたワイシャツの中に入れた。グニグニと胸をもむ。
む、胸て…。
俺、男…。
いやもう…華川にとって俺は……。
「っ!」
はくはくと快感を逃すのに必死な俺を、華川は不意に前に傾ける。
そこで俺はびくりと身を強張らせた。
俺の間にぬるりとしたものが入ってきたからだ。
華川のだ。
後ろの穴の上を掠め、入りそうで入らない絶妙な力加減でそれは行き来する。
「はぁっ、はぁっ…ぁっ、こわ…っ、こ…っ」
怖い、怖い怖い!
やっぱ、入れられるの俺の方なの⁈
こわ…ぁっ、あああー、気持ちぃー、気持ちいー、頭、わけわかんな…っ!
俺はぎゅっと目を瞑った。
瞑った目から涙が溢れた。
「ふふ、山田、泣いてるの?」
「もう、出なっぁっっ!〜っ…っ、怖い…っ」
「え?」
「ふ………〜っ、それだけは嫌だ…こわっ…っ、す、すみませんっっ〜っ」
要は浮気した事を謝れってんだろ。
もういいよ。この苦しさから解放されるなら。
俺は恥も外聞なく、華川に謝った。
癪だが、仕方ない。
「えー?なになに?なにが?俺は気持ちいいよ。」
「っ、」
華川はクスクスと笑いながら、相変わらず俺の後ろで腰を動かす。
ムカつく!
やっぱり俺が謝るなんておかしいだろ。
俺はぎゅっと唇を噛み締めた。
「あれ?もう終わり?…はー、気持ちぃーっ。…じゃ、山田そろそろ、いー」
「い、挿れないで!」
やっぱり無理!
そろそろ、と角度を付けてくるので、俺は慌てて叫んだ。
「うん?」
わざととぼけくる華川をぶっ飛ばしたい。
しかし分が悪過ぎる。
「こ、こわい…まって…」
「えー、もうちょっとで、もっともっと気持ち良くしてあげれるのにー。」
気持ち良いわけあるか!
恐ろしい…っ!
「ねー、我慢出来ない。」
「す、すまっ…ぁっ、素股?する?」
「…ぷっ、あははははは!素股のお誘い?」
殺すぞお前。
華川は俺の素股発言に爆笑した。
そりゃそうだけど。
このままでは本当に掘られる。
満足したのか、華川はオレを今度はうつ伏せに倒した。
足を開かせていた紐だけは解かれたが、上手く体に力が入らない。
俺は華川に人形の様に扱われ、腰だけ持ち上げた形にされる。
バグっていた羞恥心がまた機能し出した。恥ずかしい。
「山田、浮気はだめだって、分かった?」
「うっ、うん。すみせ゛っっ、でしだっっ!」
後ろから素股でガクガク揺さぶられ、俺は謝った。
うぅ…こりゅこりゅ、暖かくてぬめった軟骨…気持ち悪い…。
「はっ、っ、もうしない?」
「うっ、もう、…っしないぃ…っ、しない…」
「ふふ、俺が1番?」
「うん…っ」
「俺を1番愛してる?」
「うんっ、うん…っ」
「ふふ…っ」
暫くして華川が息を詰め、足の間が生暖かくなる。
お、終わった…。
文字通り、せいもこんも尽き果てるとはこの事だ。
「はー…気持ちよかった。」
「ハァッハァッハァッ…」
華川は感無量と言ったご様子で、俺の後ろの穴の上に自分の精子を塗りたくってる。
「あ、妊娠します。って言って欲しかったな。」
本当、こいつキモい…。
「んー、でも、山田の可愛いアヘ顔見れたしな。」
………アヘ顔……
「山田、俺は山田だけだから、山田も浮気はもうダメだからね。」
華川は俺の首筋にキスを落としながら、諭すようにブツブツ言っている。
勝手に言ってろ変態。
華川はやっと気が済んだらしい。
華川が背後から抜けて、俺はこてんとベットに倒れこむ。
疲れた…
関節の感覚が鈍い。
疲労感が半端ない。
拘束を解かれたら、ぶん殴って、部屋から即刻締め出そう…。
「でもまだ、3分の2位しか溜まってないねー」
「……」
馬鹿言え。
連続ノンストップとか、殺す気か。
虚な目で華川を見ると、また自分の鞄を漁っている。
嫌な予感がしてギクリと体を強張らせる。
「さ、続き頑張ろうか。」
華川の手にはローションと布切れ?が握られていた。
「え…だから…ごめんて…」
「えー、そうは言っても出し切らないと。山田、また外で交尾してくるでしょ。」
人を犬かなんかみたいに言うな。
「さぁ…」
「ひっ」
華川はまた俺の背後に回ると、俺を抱え直す。
「全部出し切って、反省しようね。」
————-
痛い。
ちんこ痛い。
こんな目覚めの悪い朝、未だかつて無かった。
「…重…」
あと重い。
何故なら、後ろから華川が俺をホールドしているから。
寝ながらバックハグって、女は好きかと思ったけど結構重くて嫌だな。
覚えておこう。
………いや、何で俺が女の気持ち理解してんの?
くそ、めっちゃイラついてきた。
「重いっ!暑いっ!」
「んっ、痛っ」
俺は後から絡まってくる華川の手を振り払い、ベットから蹴り出した。
「本当に足癖悪いなぁ」
ベットから起きた華川は伸びをしながら欠伸をした。
起動までが早い。
絶対、起きてたのに、寝たふりで絡まってきてただろう。
「てか、華川、めっちゃ変態。」
「えー、そう?」
普通はあんなの使わないだろ。
てか、昨日のあれは華川私物の玩具だ。
まさか、使いまわしてないだろうな。
「昨日のあれ、華川も使ってんの?」
「え?」
俺は怪訝な顔で華川を問い詰めた。
華川はきょとんとした顔をする。
「あははは、そんな事してないよー。あれは山田の事を考えながら1つ1つ選んで買ったんだ。」
「……」
気持ち悪いな…。
「大体俺にはあんなの不要ー。俺は山田の写真だけでいけるからね!」
更に気持ち悪い。
爽やかな顔で、想定の上をいく気持ち悪い回答だ。
これが本当にあの、モテモテの華川なのか?
よし。兎に角、別れよう。
なんか…理由…。
あんだけ仕事させて、最初から付き合う気無かったとは流石に言えない。
どう理由を付けようか…。
「…華川ごめん。」
「?」
「俺たちやっぱり別れよう。」
「え!やだ!」
「…」
早っ。
華川は俺が俺が言うや、直ぐに飛びついてきた。
「性癖の…その…性癖の方向性の違いだ。」
「どこが嫌なの?」
バンドの解散かよって理由を適当に言ってみた。
しかし華川は真面目な顔で聞き返してくる。
「俺はああいう風に縛られてするセックスはどうかと…」
「じゃぁしない!今度からはしない‼︎」
必死かよ。
華川はぎゅっと俺に抱きついて首を振る。
そうだな…
「てか、俺、お前とセックス出来ない。」
「…ぇ」
びっくり!
って顔を華川がする。
びっくり!じゃないだろ。当たり前だ。
「ごめん…いけると思ったけど、やっぱり無理そうだった。」
「…」
「俺にとってはさ、身体の相性は大事なんだ。俺、付き合ったらガンガンやりたいし。」
「…………ガ、ガンガン…」
別れ話中なのに勃ってるんですけどこの人。
てか、言いたいのはそこじゃ無い。
それとなく華川を自分から引き剥がしつつ、俺は話を続けた。
「それで…ごめん、やっぱり男同士で出来る気がしない。」
俺は眉を下げて謝罪した。
「……」
華川は暫し黙った後、小さく頷いた。
「うん。分かった。」
「あぁ、ごめんな…」
「山田がやりたくなるまで我慢する!」
「うん。…………え?」
「要は、山田がやりたくなれば良いんだろう?」
「……は?…え、ちょ…」
華川は一人で納得したように何度も頷く。
俺を置いてきぼりで、話を進めるな。
天地がひっくり返っても、やりたくならないから。
「いや…だから、」
「だからごめん!シャツもほつれて、ベットも汚したから、怒ってるんだよな?」
「は?ああ。それは、だけど…」
「全部弁償する!もっといいの買って返すよ!俺、貯金1億ちょっとあるから!」
「ん、……え⁈一億⁈」
「うん。大学から株やってて…現金化した場合の話で、今は見なし額だけど…試算したら最低でもそれくらいは…」
「………」
華川、顔も良くて仕事もできる上に、更にそんなに金持ってんの?
「じゃぁ、なんで…働いてんの?」
「軍資金集め。……と、…や、山田に会いたいから…」
「……」
そんで、俺にベタ惚れ。
何故か恥じらって赤い顔で俯く華川を前に、俺は考えた。
あれ、これ、結構美味しくない?
さっきの話だと、俺が拒否すればやられる事もないし?
俺は考えた末、やはり付き合う事にした。
頭がガンガンする。
クーラーが効いているはずの部屋で、俺は一人汗ダラダラだ。
血流が良くなりすぎて、毛細血管が破裂しそう。
「ぁ゛っぁあ゛っっ〜〜〜っ!」
「はい、7回め。山田ぁー、7回射精してもまだまだじゃん。」
汗か涙か。分からないものが頬を伝い、それを華川に舐められた。
ギシギシと関節が鳴る。
俺が暴れるからと、華川持参の拘束具でぎっちりと縛り上げられたからだ。
後手に一纏め。足は折り畳まれ後ろから伸びる紐に繋がれて閉じることが出来ない。
「じゃあ、また当ててあげるね。」
「うぁ゛っ、も、出ない…っ出な…あ゛ぁぁぁぁっ!」
緩い声の割に華川がやっている事は鬼だ。
手コキで出が悪くなると、終わりだと思った。しかし華川は笑顔で「刺激を変えよう」と言った。
それからはこれ。
ローターが俺の亀頭に押し当てられ、華川の大きな手で握り込まれる。
その上でまたぐちぐちと抜く。
「無理っ!む゛ぁ゛ぁぁぁっ〜〜っ!」
俺はもう一度一際大きく跳ねた後、だらりと項垂れた。
もうほぼ何も出てない。
ぽたりと一滴、赤いマグマカップの中で波紋を作るだけだった。
もう意識が朦朧としてきて、ビクビクと痙攣を繰り返すしかできなくなってきた。
限界だ。
「失神するの禁止〜。」
「ぁ゛っ!」
しかし華川はそんなに優しくない。
ガブリと首筋を噛まれた。
その後はチュチュと後ろから頬に口付けられる。
痛くてくすぐったい。
「あはー、山田の匂い。好き…好き…好き」
「んっ!」
「興奮する」
華川は器用に片手で俺のもにローターを固定して指先で弄び、もう片方の手を俺の肌けたワイシャツの中に入れた。グニグニと胸をもむ。
む、胸て…。
俺、男…。
いやもう…華川にとって俺は……。
「っ!」
はくはくと快感を逃すのに必死な俺を、華川は不意に前に傾ける。
そこで俺はびくりと身を強張らせた。
俺の間にぬるりとしたものが入ってきたからだ。
華川のだ。
後ろの穴の上を掠め、入りそうで入らない絶妙な力加減でそれは行き来する。
「はぁっ、はぁっ…ぁっ、こわ…っ、こ…っ」
怖い、怖い怖い!
やっぱ、入れられるの俺の方なの⁈
こわ…ぁっ、あああー、気持ちぃー、気持ちいー、頭、わけわかんな…っ!
俺はぎゅっと目を瞑った。
瞑った目から涙が溢れた。
「ふふ、山田、泣いてるの?」
「もう、出なっぁっっ!〜っ…っ、怖い…っ」
「え?」
「ふ………〜っ、それだけは嫌だ…こわっ…っ、す、すみませんっっ〜っ」
要は浮気した事を謝れってんだろ。
もういいよ。この苦しさから解放されるなら。
俺は恥も外聞なく、華川に謝った。
癪だが、仕方ない。
「えー?なになに?なにが?俺は気持ちいいよ。」
「っ、」
華川はクスクスと笑いながら、相変わらず俺の後ろで腰を動かす。
ムカつく!
やっぱり俺が謝るなんておかしいだろ。
俺はぎゅっと唇を噛み締めた。
「あれ?もう終わり?…はー、気持ちぃーっ。…じゃ、山田そろそろ、いー」
「い、挿れないで!」
やっぱり無理!
そろそろ、と角度を付けてくるので、俺は慌てて叫んだ。
「うん?」
わざととぼけくる華川をぶっ飛ばしたい。
しかし分が悪過ぎる。
「こ、こわい…まって…」
「えー、もうちょっとで、もっともっと気持ち良くしてあげれるのにー。」
気持ち良いわけあるか!
恐ろしい…っ!
「ねー、我慢出来ない。」
「す、すまっ…ぁっ、素股?する?」
「…ぷっ、あははははは!素股のお誘い?」
殺すぞお前。
華川は俺の素股発言に爆笑した。
そりゃそうだけど。
このままでは本当に掘られる。
満足したのか、華川はオレを今度はうつ伏せに倒した。
足を開かせていた紐だけは解かれたが、上手く体に力が入らない。
俺は華川に人形の様に扱われ、腰だけ持ち上げた形にされる。
バグっていた羞恥心がまた機能し出した。恥ずかしい。
「山田、浮気はだめだって、分かった?」
「うっ、うん。すみせ゛っっ、でしだっっ!」
後ろから素股でガクガク揺さぶられ、俺は謝った。
うぅ…こりゅこりゅ、暖かくてぬめった軟骨…気持ち悪い…。
「はっ、っ、もうしない?」
「うっ、もう、…っしないぃ…っ、しない…」
「ふふ、俺が1番?」
「うん…っ」
「俺を1番愛してる?」
「うんっ、うん…っ」
「ふふ…っ」
暫くして華川が息を詰め、足の間が生暖かくなる。
お、終わった…。
文字通り、せいもこんも尽き果てるとはこの事だ。
「はー…気持ちよかった。」
「ハァッハァッハァッ…」
華川は感無量と言ったご様子で、俺の後ろの穴の上に自分の精子を塗りたくってる。
「あ、妊娠します。って言って欲しかったな。」
本当、こいつキモい…。
「んー、でも、山田の可愛いアヘ顔見れたしな。」
………アヘ顔……
「山田、俺は山田だけだから、山田も浮気はもうダメだからね。」
華川は俺の首筋にキスを落としながら、諭すようにブツブツ言っている。
勝手に言ってろ変態。
華川はやっと気が済んだらしい。
華川が背後から抜けて、俺はこてんとベットに倒れこむ。
疲れた…
関節の感覚が鈍い。
疲労感が半端ない。
拘束を解かれたら、ぶん殴って、部屋から即刻締め出そう…。
「でもまだ、3分の2位しか溜まってないねー」
「……」
馬鹿言え。
連続ノンストップとか、殺す気か。
虚な目で華川を見ると、また自分の鞄を漁っている。
嫌な予感がしてギクリと体を強張らせる。
「さ、続き頑張ろうか。」
華川の手にはローションと布切れ?が握られていた。
「え…だから…ごめんて…」
「えー、そうは言っても出し切らないと。山田、また外で交尾してくるでしょ。」
人を犬かなんかみたいに言うな。
「さぁ…」
「ひっ」
華川はまた俺の背後に回ると、俺を抱え直す。
「全部出し切って、反省しようね。」
————-
痛い。
ちんこ痛い。
こんな目覚めの悪い朝、未だかつて無かった。
「…重…」
あと重い。
何故なら、後ろから華川が俺をホールドしているから。
寝ながらバックハグって、女は好きかと思ったけど結構重くて嫌だな。
覚えておこう。
………いや、何で俺が女の気持ち理解してんの?
くそ、めっちゃイラついてきた。
「重いっ!暑いっ!」
「んっ、痛っ」
俺は後から絡まってくる華川の手を振り払い、ベットから蹴り出した。
「本当に足癖悪いなぁ」
ベットから起きた華川は伸びをしながら欠伸をした。
起動までが早い。
絶対、起きてたのに、寝たふりで絡まってきてただろう。
「てか、華川、めっちゃ変態。」
「えー、そう?」
普通はあんなの使わないだろ。
てか、昨日のあれは華川私物の玩具だ。
まさか、使いまわしてないだろうな。
「昨日のあれ、華川も使ってんの?」
「え?」
俺は怪訝な顔で華川を問い詰めた。
華川はきょとんとした顔をする。
「あははは、そんな事してないよー。あれは山田の事を考えながら1つ1つ選んで買ったんだ。」
「……」
気持ち悪いな…。
「大体俺にはあんなの不要ー。俺は山田の写真だけでいけるからね!」
更に気持ち悪い。
爽やかな顔で、想定の上をいく気持ち悪い回答だ。
これが本当にあの、モテモテの華川なのか?
よし。兎に角、別れよう。
なんか…理由…。
あんだけ仕事させて、最初から付き合う気無かったとは流石に言えない。
どう理由を付けようか…。
「…華川ごめん。」
「?」
「俺たちやっぱり別れよう。」
「え!やだ!」
「…」
早っ。
華川は俺が俺が言うや、直ぐに飛びついてきた。
「性癖の…その…性癖の方向性の違いだ。」
「どこが嫌なの?」
バンドの解散かよって理由を適当に言ってみた。
しかし華川は真面目な顔で聞き返してくる。
「俺はああいう風に縛られてするセックスはどうかと…」
「じゃぁしない!今度からはしない‼︎」
必死かよ。
華川はぎゅっと俺に抱きついて首を振る。
そうだな…
「てか、俺、お前とセックス出来ない。」
「…ぇ」
びっくり!
って顔を華川がする。
びっくり!じゃないだろ。当たり前だ。
「ごめん…いけると思ったけど、やっぱり無理そうだった。」
「…」
「俺にとってはさ、身体の相性は大事なんだ。俺、付き合ったらガンガンやりたいし。」
「…………ガ、ガンガン…」
別れ話中なのに勃ってるんですけどこの人。
てか、言いたいのはそこじゃ無い。
それとなく華川を自分から引き剥がしつつ、俺は話を続けた。
「それで…ごめん、やっぱり男同士で出来る気がしない。」
俺は眉を下げて謝罪した。
「……」
華川は暫し黙った後、小さく頷いた。
「うん。分かった。」
「あぁ、ごめんな…」
「山田がやりたくなるまで我慢する!」
「うん。…………え?」
「要は、山田がやりたくなれば良いんだろう?」
「……は?…え、ちょ…」
華川は一人で納得したように何度も頷く。
俺を置いてきぼりで、話を進めるな。
天地がひっくり返っても、やりたくならないから。
「いや…だから、」
「だからごめん!シャツもほつれて、ベットも汚したから、怒ってるんだよな?」
「は?ああ。それは、だけど…」
「全部弁償する!もっといいの買って返すよ!俺、貯金1億ちょっとあるから!」
「ん、……え⁈一億⁈」
「うん。大学から株やってて…現金化した場合の話で、今は見なし額だけど…試算したら最低でもそれくらいは…」
「………」
華川、顔も良くて仕事もできる上に、更にそんなに金持ってんの?
「じゃぁ、なんで…働いてんの?」
「軍資金集め。……と、…や、山田に会いたいから…」
「……」
そんで、俺にベタ惚れ。
何故か恥じらって赤い顔で俯く華川を前に、俺は考えた。
あれ、これ、結構美味しくない?
さっきの話だと、俺が拒否すればやられる事もないし?
俺は考えた末、やはり付き合う事にした。