【完結】静流くんの愛は重い
「柚木、少ないだろこれ。」
「…」
「おいっ!無視するなよ!」
「っ!」
昼休みの屋上。天気は良いが、柚木に空を呑気に見上げる余裕はない。
なんの反応も出来ずに俯いた柚木の前髪を、園田が乱暴に掴む。
(もう…そんな…)
柚木は痛みで引き攣る顔で、園田の顔を見上げた。
園田の後ろには三人程、素行の悪い生徒が楽し気な様子でこちらを見る。
園田には中学の頃からいじめられている。
金銭を要求される事もあれば、殴られる事もあった。
「何睨んでんだよ!」
「ぅ゛」
今日も殴られるらしい。
園田は柚木の腹を蹴り飛ばした。
呻き声を上げて、真後ろに倒れ込む。
(…うぅ…折角、進学してもまた…)
そう考えると涙が溢れてきた。
「…ぅ、…ふっ、……!」
そこでふと視線を感じ目を向けると、屋上入り口の真上、塔屋に人がいた。
寝転んで頬杖をつき、こちらを見下ろしている。
「…」
逆光で表情よく分からなかったが、何故かニンマリと笑っている気がした。
瞬間、ゾッと背筋に悪寒が走る。
理由は分からないが、その人の視線は園田よりももっと不穏なものがあった。
「園田、いじめはダメだろ〜」
「…あ、静流くん!」
(静流、くん…。)
静流は茶化すようにそう言いながら、ゆったりとした動作で園田と柚木の間に降りてきた。
静流。隣のクラスの同級生だ。
皆にリアル王子と騒がれている。
柚木のクラスメイトの、これもまた人気のある功と仲が良く、よく一緒にいるのを目にした。
(なんで…さっきのは気のせいかな?)
静流は功と連れ立って喧嘩もしているなんて噂も聞くが、基本的には教師からの信仰も厚く皆に好かれているらしい。
きっと良い人なんだろう。
「…?」
そんなことを考えてぼんやりしていると不意に静流がこちらを振り返り、ふんわりと微笑んだ。
(…綺麗な顔…)
女の子が騒ぐ理由が分かった。
静流はハーフらしく、瞳も髪も色素が薄い。
それがまた静流の儚い雰囲気を助長させ、人間味を無くしていた。
「園田、もういじめはするなよ。」
「…何で静流くんがそんな…」
園田が戸惑った様に漏らした言葉に、静流はクスクスと笑った。
「何でって、いじめが駄目だとか、当然じゃん?」
そう言い返されて、園田はムッとした顔で黙った。
「園田、もうやめとこうよ。」
「静流はやばいって…」
結局、園田は取り巻きに引かれて渋々と屋上を後にした。
そして園田が去った後、静流はこちらを振り返り微笑んだ。
「君、名前なんて言うの?」
————
それが出会いだった。
それから、柚木はよく静流と連んだ。
ずっと虐められていた柚木にとって、色々な所に一緒に連れて行ってくれる静流は新鮮みもありどんどん仲良くなっていった。
ただ少し、柚木には気になるところがあった。
「柚木くん、俺、来週から一週間は学校休むけど、大丈夫?もし柚木くんが嫌なら一緒にー」
「大丈夫だよ。ご両親のお仕事の手伝いで、イタリアでしょ?頑張ってきなよ。」
「……」
静流が心置きなく行けるようにと、柚木は努めて明るい声色で答えた。
しかし喜ぶと思った静流は微妙な顔だ。
「?どうかした?」
「…柚木くん。俺の前では強がらなくて良いからね。」
「うん。ありがとう…。」
「うん。だって柚木くんにとって俺って特別でしょ?」
「え?」
「そうでしょ?」
急に詰め寄ってくる静流に戸惑う。
笑顔なのに、圧が強い。
気になるところとはこういう所。
静流にとって自分は対等じゃない。
陰口で自分が何と言われているか、柚木だって知っていた。
「ペットみたい」
それを否定する事も出来るが、静流の態度を見ているとあながち間違っていない気がする。
きっと本当は、静流とも一緒にいるべきではないのだろう。
「でさー、明日から会えないの寂しいし、この後うちこない?」
しかし静流は四六時中、柚木をそばに置きたがるのだ。
「うん、ありがとう。だけどうち門限あるから。」
「…そう。」
だから明日からはいい機会かも知れない。
久しぶりに一人で、色々考えよう。
「柚子くん、来週の土曜日はもう日本に戻ってくるから。朝からうちに来てよ。」
「うん。わかった。」
静流が語尾を強めるので、柚木は反射的に頷いた。
———-
結果から言うと、かなり辛かった。
静流くんがいない事は何故か園田達も知っていて、今迄の鬱憤を晴らすようにいつも以上に手酷く当たられた。
「うぅ、蹴られた腹が痛い…。」
柚木はぼやきながら、とぼとぼと静流の家に向かう。
「柚木くん久しぶり〜」
静流のマンションのエントラスを抜け、階に着くと既にドアから顔を覗かせた静流がいた。
いつも以上にキラキラと、笑顔が光っている。
「静流くん、何だが嬉しそうだね。」
「ふふ、分かる?」
「うん。何か良いことあったの?」
「んー、久しぶりに柚木くんに会えたから?」
「そ、そう…」
他愛無い話をしながら、静流の部屋に通された。
静流の両親はアパレル関連の輸入業を行なっており、国内外を行き来しているとの事で、今日も不在だ。
「はい、これ。お土産。」
「ありがとう。ブレスレット?」
「ん。」
静流が買ってきてくれたのは、革製のブレスレットだった。
静流自体も何処か洒落た雰囲気があるが、静流がくれるものもセンスが良いものばかりだ。
柚木が包みを開け見つめていると、静流がそれを取り柚木の右手につけ始めた。
「柚木くん、俺がいない間どうだった?」
静流は長いまつ毛を伏せて、柚木の腕にブレスレット付けながら尋ねてきた。
「あ、…うん、だ」
「いや聞くまでも無いか。」
「…え?…!」
静流の質問に「大丈夫」と答えようとした。
しかし静流は柚木の言葉を遮り、その唇を撫でる。
ピリリと、鋭い痛みが唇に走った。
静流の不在中、顔も殴られた。その時に切れた所だ。
「あのさ、強がりか何のか分かんないんだけど、それ、ムカつくから辞めろよ?」
静流の声が低くなる。
痛いと静流の手を掴むが、静流は手を離さなかった。
「痛いっ!し、静流くんっ!いっ」
静流はなおも続ける。
「痛いよねー。そうだよね〜。だから、これで分かったよね?」
「っ!」
静流はかぷりと柚木の唇の傷に噛みついた。
柚木は突然のことによろけしまった。静流に押し倒される形で床に倒れ込む。
「な、なに…?静流くん?」
悪ふざけにしても、唇をかむなんておかしい。
「怖かったね。一週間。」
「え、だから…なに?」
しかし静流はその体制のまま話し始めた。
心なしか静流のまとう雰囲気が甘い。
それが更に柚木の恐怖心を煽る。
「園田にまた酷い事されたでしょ?沢山殴られたのに、誰も助けてくれなかったんだね。」
「…」
なんでそんなこと知っているのだ。
そう思うと同時に一週間の辛い思い出がどっと押し寄せてきて、柚木は黙り込んだ。
そうだ。
学校で殴られたのを他の生徒は見たのに、柚木の怪我も見えていたはずなのに、誰も何も言ってくれなかった。
助けるなんてもってのほかだ。
「ぼっちで暴力だけ受けて、怖かったね。怖い一週間だったね。今度からは俺がずっと一緒にいるからね。」
「…うん。」
静流はよしよしと柚木の頭を撫でた。
「俺と一緒なら、酷い目にも遭わないでしょ?」
確かに、静流といると不思議と園田達は手を出してこない。
「大丈夫だよ。」
きっとそれは、静流が学校で圧倒的な存在だからだ。
寧ろ静流といると楽しい事だけで、痛い事も怖い事もない。
自分の居場所すらある。
(あれ?なんで…今迄静流から離れたいなんで思ったんだろう。)
思考が鈍む。
ぼんやりと静流を見つめ返した。
(こんなに、静流の側は居心地が良い、自分の場所なのに。)
「ずっと俺と一緒に居ればいいよ。」
「うん。」
静流がふっと笑った。
(ペット…)
しかしやはり、柚木には気になる事があった。
「静流くん」
「何?」
「静流くんと俺は、友達、だよね?」
対等な、とまで言いたかったが躊躇してしまった。
そんな自分が情けなくて下を向いてしまった。
「…」
(あ、…あれ?)
静流からの反応がない。
何故か部屋の中はシンと静まりかえっていた。
(え、まさか)
「し、しず……」
見上げた静流は無表情だったが、柚木と目が合うとニンマリと笑った。
「っ!」
その笑みを見た瞬間、背筋がゾッとした。
『騙す』『操る』『弄ぶ』『悪』
脳内に不穏な文字が飛び交う。
それは静流と最初に会った時に感じた、あの不穏な感覚だ。
「そ…っ、そうなんだ…。静流くん…」
柚木は震えながらも静流を押し除け、その腕の中から這い出た。
「柚木くん?」
静流が含み笑いで、不思議そうに声をかけてきた。
それが更に、柚木の感情を逆撫でした。
「静流くん…、それなら、一人でいい…。もう…いい…。静流くんとは、もう一緒にいれない…。…今迄、ありがとう。」
柚木は静流の目も見れずに、途切れ途切れでも強く言葉を述べた。
そして言い終わると、飛び出す様に静流のマンションを出た。
「はぁ?そんなの、許さない。」
だから、柚木はその後に静流が呟い言葉も聞き逃していた。
「…」
「おいっ!無視するなよ!」
「っ!」
昼休みの屋上。天気は良いが、柚木に空を呑気に見上げる余裕はない。
なんの反応も出来ずに俯いた柚木の前髪を、園田が乱暴に掴む。
(もう…そんな…)
柚木は痛みで引き攣る顔で、園田の顔を見上げた。
園田の後ろには三人程、素行の悪い生徒が楽し気な様子でこちらを見る。
園田には中学の頃からいじめられている。
金銭を要求される事もあれば、殴られる事もあった。
「何睨んでんだよ!」
「ぅ゛」
今日も殴られるらしい。
園田は柚木の腹を蹴り飛ばした。
呻き声を上げて、真後ろに倒れ込む。
(…うぅ…折角、進学してもまた…)
そう考えると涙が溢れてきた。
「…ぅ、…ふっ、……!」
そこでふと視線を感じ目を向けると、屋上入り口の真上、塔屋に人がいた。
寝転んで頬杖をつき、こちらを見下ろしている。
「…」
逆光で表情よく分からなかったが、何故かニンマリと笑っている気がした。
瞬間、ゾッと背筋に悪寒が走る。
理由は分からないが、その人の視線は園田よりももっと不穏なものがあった。
「園田、いじめはダメだろ〜」
「…あ、静流くん!」
(静流、くん…。)
静流は茶化すようにそう言いながら、ゆったりとした動作で園田と柚木の間に降りてきた。
静流。隣のクラスの同級生だ。
皆にリアル王子と騒がれている。
柚木のクラスメイトの、これもまた人気のある功と仲が良く、よく一緒にいるのを目にした。
(なんで…さっきのは気のせいかな?)
静流は功と連れ立って喧嘩もしているなんて噂も聞くが、基本的には教師からの信仰も厚く皆に好かれているらしい。
きっと良い人なんだろう。
「…?」
そんなことを考えてぼんやりしていると不意に静流がこちらを振り返り、ふんわりと微笑んだ。
(…綺麗な顔…)
女の子が騒ぐ理由が分かった。
静流はハーフらしく、瞳も髪も色素が薄い。
それがまた静流の儚い雰囲気を助長させ、人間味を無くしていた。
「園田、もういじめはするなよ。」
「…何で静流くんがそんな…」
園田が戸惑った様に漏らした言葉に、静流はクスクスと笑った。
「何でって、いじめが駄目だとか、当然じゃん?」
そう言い返されて、園田はムッとした顔で黙った。
「園田、もうやめとこうよ。」
「静流はやばいって…」
結局、園田は取り巻きに引かれて渋々と屋上を後にした。
そして園田が去った後、静流はこちらを振り返り微笑んだ。
「君、名前なんて言うの?」
————
それが出会いだった。
それから、柚木はよく静流と連んだ。
ずっと虐められていた柚木にとって、色々な所に一緒に連れて行ってくれる静流は新鮮みもありどんどん仲良くなっていった。
ただ少し、柚木には気になるところがあった。
「柚木くん、俺、来週から一週間は学校休むけど、大丈夫?もし柚木くんが嫌なら一緒にー」
「大丈夫だよ。ご両親のお仕事の手伝いで、イタリアでしょ?頑張ってきなよ。」
「……」
静流が心置きなく行けるようにと、柚木は努めて明るい声色で答えた。
しかし喜ぶと思った静流は微妙な顔だ。
「?どうかした?」
「…柚木くん。俺の前では強がらなくて良いからね。」
「うん。ありがとう…。」
「うん。だって柚木くんにとって俺って特別でしょ?」
「え?」
「そうでしょ?」
急に詰め寄ってくる静流に戸惑う。
笑顔なのに、圧が強い。
気になるところとはこういう所。
静流にとって自分は対等じゃない。
陰口で自分が何と言われているか、柚木だって知っていた。
「ペットみたい」
それを否定する事も出来るが、静流の態度を見ているとあながち間違っていない気がする。
きっと本当は、静流とも一緒にいるべきではないのだろう。
「でさー、明日から会えないの寂しいし、この後うちこない?」
しかし静流は四六時中、柚木をそばに置きたがるのだ。
「うん、ありがとう。だけどうち門限あるから。」
「…そう。」
だから明日からはいい機会かも知れない。
久しぶりに一人で、色々考えよう。
「柚子くん、来週の土曜日はもう日本に戻ってくるから。朝からうちに来てよ。」
「うん。わかった。」
静流が語尾を強めるので、柚木は反射的に頷いた。
———-
結果から言うと、かなり辛かった。
静流くんがいない事は何故か園田達も知っていて、今迄の鬱憤を晴らすようにいつも以上に手酷く当たられた。
「うぅ、蹴られた腹が痛い…。」
柚木はぼやきながら、とぼとぼと静流の家に向かう。
「柚木くん久しぶり〜」
静流のマンションのエントラスを抜け、階に着くと既にドアから顔を覗かせた静流がいた。
いつも以上にキラキラと、笑顔が光っている。
「静流くん、何だが嬉しそうだね。」
「ふふ、分かる?」
「うん。何か良いことあったの?」
「んー、久しぶりに柚木くんに会えたから?」
「そ、そう…」
他愛無い話をしながら、静流の部屋に通された。
静流の両親はアパレル関連の輸入業を行なっており、国内外を行き来しているとの事で、今日も不在だ。
「はい、これ。お土産。」
「ありがとう。ブレスレット?」
「ん。」
静流が買ってきてくれたのは、革製のブレスレットだった。
静流自体も何処か洒落た雰囲気があるが、静流がくれるものもセンスが良いものばかりだ。
柚木が包みを開け見つめていると、静流がそれを取り柚木の右手につけ始めた。
「柚木くん、俺がいない間どうだった?」
静流は長いまつ毛を伏せて、柚木の腕にブレスレット付けながら尋ねてきた。
「あ、…うん、だ」
「いや聞くまでも無いか。」
「…え?…!」
静流の質問に「大丈夫」と答えようとした。
しかし静流は柚木の言葉を遮り、その唇を撫でる。
ピリリと、鋭い痛みが唇に走った。
静流の不在中、顔も殴られた。その時に切れた所だ。
「あのさ、強がりか何のか分かんないんだけど、それ、ムカつくから辞めろよ?」
静流の声が低くなる。
痛いと静流の手を掴むが、静流は手を離さなかった。
「痛いっ!し、静流くんっ!いっ」
静流はなおも続ける。
「痛いよねー。そうだよね〜。だから、これで分かったよね?」
「っ!」
静流はかぷりと柚木の唇の傷に噛みついた。
柚木は突然のことによろけしまった。静流に押し倒される形で床に倒れ込む。
「な、なに…?静流くん?」
悪ふざけにしても、唇をかむなんておかしい。
「怖かったね。一週間。」
「え、だから…なに?」
しかし静流はその体制のまま話し始めた。
心なしか静流のまとう雰囲気が甘い。
それが更に柚木の恐怖心を煽る。
「園田にまた酷い事されたでしょ?沢山殴られたのに、誰も助けてくれなかったんだね。」
「…」
なんでそんなこと知っているのだ。
そう思うと同時に一週間の辛い思い出がどっと押し寄せてきて、柚木は黙り込んだ。
そうだ。
学校で殴られたのを他の生徒は見たのに、柚木の怪我も見えていたはずなのに、誰も何も言ってくれなかった。
助けるなんてもってのほかだ。
「ぼっちで暴力だけ受けて、怖かったね。怖い一週間だったね。今度からは俺がずっと一緒にいるからね。」
「…うん。」
静流はよしよしと柚木の頭を撫でた。
「俺と一緒なら、酷い目にも遭わないでしょ?」
確かに、静流といると不思議と園田達は手を出してこない。
「大丈夫だよ。」
きっとそれは、静流が学校で圧倒的な存在だからだ。
寧ろ静流といると楽しい事だけで、痛い事も怖い事もない。
自分の居場所すらある。
(あれ?なんで…今迄静流から離れたいなんで思ったんだろう。)
思考が鈍む。
ぼんやりと静流を見つめ返した。
(こんなに、静流の側は居心地が良い、自分の場所なのに。)
「ずっと俺と一緒に居ればいいよ。」
「うん。」
静流がふっと笑った。
(ペット…)
しかしやはり、柚木には気になる事があった。
「静流くん」
「何?」
「静流くんと俺は、友達、だよね?」
対等な、とまで言いたかったが躊躇してしまった。
そんな自分が情けなくて下を向いてしまった。
「…」
(あ、…あれ?)
静流からの反応がない。
何故か部屋の中はシンと静まりかえっていた。
(え、まさか)
「し、しず……」
見上げた静流は無表情だったが、柚木と目が合うとニンマリと笑った。
「っ!」
その笑みを見た瞬間、背筋がゾッとした。
『騙す』『操る』『弄ぶ』『悪』
脳内に不穏な文字が飛び交う。
それは静流と最初に会った時に感じた、あの不穏な感覚だ。
「そ…っ、そうなんだ…。静流くん…」
柚木は震えながらも静流を押し除け、その腕の中から這い出た。
「柚木くん?」
静流が含み笑いで、不思議そうに声をかけてきた。
それが更に、柚木の感情を逆撫でした。
「静流くん…、それなら、一人でいい…。もう…いい…。静流くんとは、もう一緒にいれない…。…今迄、ありがとう。」
柚木は静流の目も見れずに、途切れ途切れでも強く言葉を述べた。
そして言い終わると、飛び出す様に静流のマンションを出た。
「はぁ?そんなの、許さない。」
だから、柚木はその後に静流が呟い言葉も聞き逃していた。
1/2ページ